先日ちょっとご紹介したイギリス在住の東大出の凡人さんのブログを読んでいたら面白いことが書いてあったのでちょっとお話したいと思う。凡人さんは自称イギリス人より発音のいいクィーンズイングリッシュを話せるということで、それに比べて最近のイギリス人はまっとうなクィーンズが話せないと嘆いている。彼のブログエントリーには必ず冒頭の部分を英語で読んだ音声が張ってあるので日本人が話すクィーンズイングリッシュとはどういうものなのか聴いてみる価値はある。
さて、彼が話題にしているのは、イギリス人は往々にしてクィーンズイングリッシュを話さないということ。クィーンズに憧れてイギリスに行った外国人はロンドンあたりに居る一般の人のクィーンズとは程遠い発音には困惑する。いったいこれは本当に英語なのかあ~?と思ってしまう。それはまさにカカシも一度だけロンドンに行った時にそう思った。
日本ではイギリスとひとくに言って、スコットランドもアイルランドもイングランドもウェールスでも一緒にしてしまっているが、正式にはユナイテッドキングダム(UK)とかグレーとブリテンとか呼ばれ、領土が小さい割りには方言が何十とある。しかもそれぞれの方言で発音が全然違う。ロンドンのコクニーとかスコットランドの訛りなんかは語彙も違うから慣れてないと全く違う言葉であるかのように聞こえてしまうのだ。
ま、日本でも東北や九州の方言は字幕なくしては理解できないようなのがあるから、UKのそれも全く同じ理屈。
で、凡人さんはUKに行った最初の頃、このロンドン訛りの人の英語が全然理解できなくて、相手からかなり馬鹿にされたんだそうだ。

女王陛下の英語を東京弁、アメリカ英語を大阪弁、カナダ英語を京都弁、オーストラリア訛りを河内弁になぞらえると、イギリス庶民の英語は「ウチナーグチ」(沖縄弁)に例えるのが適当だし、的確だと私は思う(^_^;)
話してる相手が英語版の「ウチナーグチ」で、何を言ってるんだかチンプンカンプンで全く聞き取れないんですから、当然聞き返す。んでもって、何回も、何回も、何回も、何回も聞き返していると、奇妙なことが起きます。
こちらは相手の言うことが理解できない。でも、向こうはこちらの言うことを理解できるという状況だと、相手は次第にいらだってくるのよ。そもそも話している相手は、誇り高い“クイーンズイングリッシュ”の本家本元の(はずの)英国人。
その英国人の立場からすると、「自分は訛っている」との自覚はあっても、それはあくまでも“多少 訛っている”のであって、外国人が理解不能なほど自分の訛りがひどいとは全く思っていない。
これ、本当の本当!(>_<)。イギリス人に限らず欧米人は私達・日本人みたいに謙虚な国民性ではありませんから、本当に夢にも思ってませんです。(略)
人間にはプライド(=うぬぼれ)があり、それはまあ仕方ないのですが、でもでも、この「自分の英語はそれほど悪くない」式の自惚れが大問題。その結果起きるのは、自分の英語–コックニーでもヨークシャー訛り、はたまたアイルランド訛りでも–それほど悪くない(はず)なのに、それを理解できないなんて、理解できないほうに非がある。極端な場合、お前はバカか!に近い見下した態度になることがある。
こちらとしては「あんたが訛ってるから、言ってることが分からないんだよ。BBCの話し手みたいな英語を話せよ!このバカ!」とか心の中で思っているのですが、そんなこと口に出せませんから、本当につらい口惜しい思いをしました。

あははは、、私も始めてニューヨークのブルックリン訛りの人と電話で話していて、相手の言ってることが全然理解できなくて同じような思いをした。あんまりこっちが理解できないので、(明らかに私の英語は日本語訛りだし)、「ちょっと、あんたじゃ話しになんないわ。英語の解る人と換わってよ!」と言われてすごい悔しい思いをした覚えがある。お前の英語が訛ってんじゃねえか!標準語話せ!と凡人さん同様思ったものだ。
実はカカシが子供の頃の義務教育英語はクィーンズイングリッシュだった。私が自宅で使っていた英語の教材もすべてクィーンズだった。独自に通った英語学校の先生もイギリス人だったので、私の英語の基礎はクィーンズイングリッシュだったと言って差し支えない。それで始めてアメリカ英語と接したときの私の驚きは凄まじいものだった。よくアメリカ人の英語が理解できないと、自分の未熟さを棚にあげて、「私の英語はクィーンズイングリッシュだから、、」とかなんとか言い訳していた。実際はクィーンズだの米語だのと言ったレベルではなかったのだけどね。
ま、それはともかく、凡人さんによるとアメリカに行くとクィーンズイングリッシュを話す人はもてはやされるという。彼自身がアメリカで英語を話すと「わ、クィーンズイングリッシュだ!」と即座に尊敬の眼差しで見られるんだそうだ。
確かにアメリカ人がイギリス英語に憧れているというのはその通り。でもアメリカ人にはクィーンズイングリッシュも標準語もどきの英語でも同じに聞こえるから、アメリカで「あ、イギリス訛りだ!」と思われるとピアース・モーガンみたいな無知蒙昧な馬鹿でも頭がいいと錯覚される。それでこれは聞いた話なのだが、イギリス人はアメリカに来てもイギリス訛りがなくならないように、アメリカ訛りに感化されないように、常にイギリス訛りを磨いているんだそうだ。そういえば、最近アメリカのテレビ番組ではイギリス訛りの司会者やタレントがごちゃまん出てる。ニュースのアナウンサーですらアメリカのニュースなのにBBCさながら訛りの人が結構いる。彼らは絶対に米語風の発音に直さない。
凡人さんの言うとおり、彼らの英語はクィーンズではなく、学校で教わる標準語もどきのようなものらしい。UKの上流階級の人たちが話す言葉使いはボッシュと呼ばれるが、最近は上流階級の人たちでもポッシュを話すと気取っているとか相手を馬鹿にしているとか言われかねないので、わざとポッシュを庶民的に崩して話す人が増えたそうだ。これは凡人さんに言われるまでもなく、以前にユーチューブで見たポッシュ発音の先生が話していたのを聞いている。
さて、それではアメリカの標準語とUKの標準語がどのくらい違うのか、それを比べているビデオがあったので張っておこう。最初に自己紹介をしている女性がイギリス標準語、彼女が紹介するレイチェルという女性がアメリカ標準語で同じ文章を発音している。英米の違いに興味のある方はちょっと聞き比べてみてはどうかな?
個人的に言うと、クィーンズイングリッシュの方が日本人にはわかりやすいし発音しやすい英語だと思う。特にポッシュの人たちは早口で話さないし、ひとつひとつの単語を綺麗に発音してくれるので日本人には向いている。ただしそう思ってロンドンあたりに留学しても本当のクィーンズにめぐり合えずに失望してしまうのかもしれないが、、


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