アメリカのケーブルチャンネルで放映中のヤンガーという番組がある。これは離婚して突然独身になった40代の女性リザが再就職しようにも年齢差別で雇ってもらえず年齢を10何歳もさばよんで20代を装って就職するという設定。主役を演じるサットン・フォスターはブロードウェイ女優の美女。化粧や服装で20代に見えないことはないが、ジェネレーションギャップで20代の上司や同僚たちと話をあわせるのが大変。つい昔の話をしたり昔かたぎの仕事意識が出て冷や汗をかく。
これは架空の話だが、カリフォルニア北部のシリコンバレーと呼ばれるハイテック地区では、最近若年層が圧倒的権力を握っており、40歳を過ぎた労働者の失業率が激増しているという。
アメリカ就労者の中間年齢は42歳。しかし、ハイテック企業の集中するシリコンバレーにおける中間年齢層はなんとアップルで31歳、グーグルやテスラは30歳、フェイスブックやリンケディンになると29歳もしくはもっと若年層が圧倒的多数を握っている。他の企業でも中高年層の従業員をリストラするところが多く、経験をつんだ中高年の長い履歴書に猜疑心を持つ会社も増えているという。
22歳でフェイスブックの会長となったマーク・ザッカーバーグなどは若者は(中高年より)頭がいいと言って憚らない。それで年齢差別を理由に訴訟を起す人々も増えてきた。2008年から2015年にかけて15のテック企業で226件の苦情がカリフォルニア州の公平雇用及住宅省に寄せられており、これらの苦情は人種や性別差別による苦情を28%も上回るという。
しかし、訴訟は訴える方にもお金がかかるし、将来の就職にも支障を来たす。それで普通の中高年就活者はなんとか若く見せようと異常なまでの努力をしている。何せ自分の子供より若い年代の雇用主に雇ってもらおうというのだから大変である。普通なら多々の経験をつんでいることを示す履歴書も、ここ近年のものしか示さないとか、身分証明写真も若く観られるように撮ってもらうとか、人によって整形手術までして若返ろうとする。
カリフォルニアのサニーベル市で中高年を対象に就職カウンセラーをしているロバート・ウィザースさんは10年以上古い経歴は履歴書に書かないようにアドバイスしている。そして就職用ウェッブサイトのプロフィール写真はプロの写真家に撮ってもらい、面接先の会社の駐車場に行って社員がどんな服装で通勤しているか調査するように示唆している。
たとえば今年の一月に7年間勤めた会社をリストラされた60歳のソフトウエアーエンジニアはカジュアルなネクタイ無しのボタンダウンシャツにカーキーのズボンにスニーカーを履いて面接に行く。携帯機種やビデオゲーム機などについて地元の学校で勉強。ジムにも通い、白髪染めを使って暗い茶色に染めた。また、目の下にある隈を取る整形も受けた。20代の人たちと一緒に働くためには、流行の文化に合わせた知識を持ち若く見せることは生存にかかっているという。
ハイテック産業は技術の発達が早いから、たとえその産業の企業で勤めていたとしても、何年も同じ会社に勤めていると専門外の知識は遅れてしまう。私自身、今リストラにあったら絶対に同じ分野の職種にはつけないだろう。かなり身につまされる現実だ。特にリストラされるのは40歳過ぎの中高年が圧倒的に多いのに対し、求人は20代かせいぜい30代前半までという厳しい現実。どうりでフェイスリフトとかの若返り整形手術が流行るわけだよなあ。
それにしても、老齢化がすすむ社会で中高年を差別するのは社会にとって決して良いことだとは思えないのだが。


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