アップデート:2017年7月19日現在
この問題については真面目な取材を続けていたUSAトゥデイの記事によると、ロクテはガソリンスタンドで起きた事件についてブラジルの裁判所はロクテの行為は犯罪ではなかったとして起訴を却下した。つまり、ロクテらアメリカの水泳チーム4人が嘘をついていた事実はないという結論だ。
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この間、オリンピック水泳メドレーで金メダルを受賞したライアン・ロクテら四人の選手たちについて、カカシはロクテ選手の供述は嘘ではないと思うと書いた。ブラジル当局の言い分はどうもうさんくさい言いがかりに聞こえたからだが、そう思ったのは私だけではなかったらしい。
アメリカの主流メディアのひとつUSAトゥデイという新聞がロクテ事件について詳細を調べるためリオデジャネイロに取材に行った。その報告というのが非常に興味深い。
先ずリオ警察は、ロクテ選手らが強盗にあったというのはまったくの作り話であり、実際は立ち寄ったガソリンスタンドのトイレのドアや石鹸皿を破損するなどの蛮行のため、ガソリンスタンドの警備員から弁償を迫れたに過ぎない。選手らは被害者どころか加害者であると主張した。
しかしリオ警察の言い分には、それこそおかしな点が多い。
先ず選手らがガソリンスタンドのトイレドアや鏡などを破損したという証拠が無い。
USATodayの取材班が事件現場のガソリンスタンドのトイレを調査したところ、トイレのドアにも鏡にも石鹸皿にも破損された形跡が無い。トイレ自体は故障中で使用禁止になっていたが、それは今も事件当時のまま。
リオ警察が発表した監視カメラのビデオには選手らがトイレ方面から車に戻ってくる映像は写っているが、トイレは視覚外であるため選手らがトイレに入ったかどうかさえ解らない。現に選手らはトイレが故障していて入れなかったので外の潅木の陰で立ちションをしたと証言している。警察に尋問されたベンツ選手はトイレ付近にも監視カメラがあったはずだと証言しているが、そのようなビデオがあったとしても公表されていない。
ただ、壁に張ってあったポスターをロクテがはがしたことは本人も認めている。
ガソリンスタンドの警備員の行為は強盗ではないのか?
選手らがトイレのドアや内部を破損した事実がないとすれば、いったい警備員たちの行動はどう説明されるのだろうか?いや、それを言うなら、前にも書いたように例え選手らがトイレを破損した事実があったとしても銃を向けて弁償しろと迫る行為が合法とは思えない。いくらブラジルでもそんな野蛮な行為は合法ではないだろう。
当初ロクテ選手らは自分らは強盗に合っていると思ったのだという。何しろ警備員はポルトガル語で話しており、選手らには何もわからない。突然銃を向けられて金を要求されれば誰だってそう思うだろう。
ブラジルで25年弁護士をしているという女性は、選手らが強盗にあったと被害届をだしたとしてもそれが虚偽の届けだったと判断するのは難しいといっている。
目撃者の証言がロクテ選手らの証言を裏付けている
選手たちが無事に帰国した後で、ロクテ選手は再びマット・ラウアーのインタビューを受けている。その時ラウアーは、最初は言葉が解らずに強盗にあっていると思ったとしても、途中で英語の解る通行人が通訳をしてくれた時点で、事態は単なる交渉へと変化したのではないかと何度もロクテを問い詰めた。
ラウアーの世界ではどうなっているのか知らないが、銃を突きつけられてありったけの金を置いていけという行為はおよそ「交渉」などとはいえない。それに対してロクテ選手は「強盗」「たかり」「交渉」と色々解釈できるかもしれないと答えた。しかし選手たちはとにかく金を払ってその場から去りたいという一心だったという。
さて、バイリンガルの通行人、フェルナンド・デルーズという人物は警備員が銃を抜いたのを目撃し、事態が悪化するのを恐れて割り込んだのだという。デルーズさんは数日後に警察の取調べで事がエスカレートしないように中に入ったと証言。証言を取った警察官は「あなたが割り込まなかったらどんな悲劇が起こったか知れない」と言ったという。
警察に「証人」として拘束され後の開放された選手のひとりベンツ選手が認めた警察の供述は、ロクテ選手の行為は単にポスターをはがしたこと、このポスターを巡って警備員とロクテが激しい口論になり、その後金を渡したことが含まれている。これはロクテ選手が帰国後のインタビューで訂正した供述と一致する。
目撃者のデルーズも警察も選手らが弁償金として金を請求されたことをきちんと理解できたか疑問だとしている。ベンツ選手は自分は偽りの供述は一度もしていないと主張している。
選手らが虚偽の被害届を出したというのは嘘
実は、虚偽の被害届どころか、選手らは被害届など全く出していないのだ。それについて証言が嘘ではないかという疑惑が出る以前に、何故ロクテ選手らが事件直後に警察に被害届を出さなかったのかメディアからの質問にロクテ選手はトラブルに巻き込まれるのではないかと思ったからだと答えていた。事件直後選手らはまだ酔っ払っていたので被害届など出すような状態ではなかったのだろう。強盗にあったという話がおおっぴらになったので警察が質問に来たが、選手らの証言は詳細がはっきりしていなかったということだった。ベンツ選手は最初から話を変えていないといっているので、四人の証言がまちまちで話にならなかったのだろう。ま、酔っ払って強盗に合った直後ではそれぞれの証言がまちまちなのは当然。これをもってして虚偽の被害届を出したというのはかなり無理のある話だ。
ではブラジル当局はロクテ選手を起訴するのだろうか?法律上ロクテ選手の起訴は取り下げられるべきではあるが、ここまで事を大きくしてしまった以上ブラジル政府はそう簡単には引き下がらないだろう。上記の弁護士はブラジル検察がなんだかんだと手続きを引き伸ばしてロクテに嫌がらせをする可能性は大なので、さっさと謝って罰金を払ってしまうのが得策だと言っている。やっぱり恐喝が目当てだったんだな。
さて、アメリカ国内の世論もロクテ選手が嘘をついたという雰囲気が薄れてきている。大型スポンサー四つから見放されたロクテ選手だが、昨日二つの企業が新しくスポンサーについた。アメリカの人気長寿番組「スターと踊ろう」の出演も決まった。
ロクテ選手らはまだ国際オリンピック協会から制裁を受けるかどうかの公聴会を控えている。その日付はまだ確定していない。
はっきり言って、ロクテ選手らに落ち度があったとしたら外国で羽目を外して酔っ払ったということだけだ。それにしたって自分らで運転せずにタクシーに乗ったのであり、アメリカだったら何の問題も起きなかっただろう。なぜオリンピック協会から制裁されなければならないのか全く理解できない。
こんなの単なるアメリカバッシングに過ぎない。


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