ヒラリー・クリントンの腐敗しきった本性が、漏れたメールやFBIの捜査などであかるみに出るにつけ、ネバートランプの勢いは失せ始めている。どうしてもトランプには投票しないと息巻いていた人々も、ヒラリーが政権を握った場合の恐ろしい未来を考えると、鼻をつまんでもトランプを支持しなければならないという気持ちが強くなってきているからだ。だが、そういう人々にとって毎日のようにメディアに取り上げられるトランプの「暴言」は非常な苛立ちを覚える。
保守派評論家で反トランプのベン・シャピーロなどはメディアが反共和党候補なのは当然のことなので、メディアに揚げ足を取られないようにトランプはもっと気をつけるべきだと批判している。同じく保守派だがヒラリーよりはマシという理由でトランプ支持のヒュー・ヒューイットはラジオのインタビューで、もっと一般市民に受け入れらるような言葉使いをすべきなのではないかとトランプに質問(というより教授)したりしていた。
しかしヒューイットの番組に次の日にゲストに来た社会学の大学教授が、「トランプが言葉使いを変える必要はない、トランプはあのままでいいのだ」と発言し、ヒューイットを驚かせていた。そしてその時、カカシもまた、トランプはこれでいいのではないだろうかと思うようになった。
ここ数日、反トランプのメディアが「問題」にしたトランプの発言を三つほどひろってみる。ひとつは民主党大会でアメリカ軍人としてアフガニスタンで戦死したイスラム教徒の両親カーン夫妻が壇上に立ち、父親が「トランプはアメリカ憲法を読んだこともないのではないか」と批判した。翌日トランプは「父親だけが話して、母親はそばに立っているだけで何もいわなかった。言わせてもらえなかったのかもしれないが」というようなことを言った。このことをメディアはトランプがイスラム教徒の女性は男性の前で発言権が無いと示唆したのであり、反イスラムの人種差別だと批判した。
左翼リベラルがトランプの挙げ足を取るのは当然としても、保守派の間からも戦死者の親を侮辱するとは何事かと批判が生まれた。イスラム教徒を無差別にアメリカに移民として受け入れることは危険だ。トランプの姿勢はテロ活動の活発な危険な国からの移民は規制すべきだというもので、それは決してアメリカの憲法違反ではない。だからそういうふうに反論すればよかったのに、奥さんには発言権がないのではないかなどとくだらないことを言うな!といったように。
二つ目は、トランプが演説中にヒラリーが大統領になったら国民の銃法所持権利が迫害されるだろう、だがそれは憲法補整案第二条(国民の銃所持を法律)支持派の人々は黙っていないだろう。そうなったら大変なことになる。という発言をした。これを主流メディアはトランプは銃所持者にヒラリー・クリントン暗殺を煽っていると報道した。トランプがそんな意味で言っていないことなど文脈を見れば容易にわかるのに、メディアはわざとそれを歪曲してトランプがヒラリー暗殺を称えたと何日も言い続けたのである。
三つ目は、オバマ政権のイラク撤退についての演説で、トランプがオバマがイスラム国の創設者であり、ヒラリーはその第二創設者だと語った。ラジオトークショーのヒューイットはトランプとのインタビューでアメリカがイラクから撤退したことで生まれた穴にイスラム国が生まれたという意味だろうとトランプの言葉使いをただそうとしたが、トランプはオバマこそがイスラム国の創設者だ、フットボールなら最も大事な選手だ、と息巻いて前言を撤回する気をみせなかった。
こういうトランプの態度は、もともとトランプに友好的な態度を持っていない右翼保守の批評家たちにとっては非常に苛立ちを覚えるものだが、ベン・シャピーロなどは毎日のように自分のポッドキャストで「良いトランプ、悪いトランプ」と称して、トランプにはいいアイディアもあるのに変なことを言って台無しにしていると批判している。
カカシがトランプを嫌っているのは読者諸氏なら十分にご存知のことではあるが、私は昨日ふと思ったのである。トランプのこうした「暴言」はメディアや反トランプ保守派が言うほどトランプを傷つけているのだろうかと。
トランプが共和党候補として立候補した一年ちょっと前、誰もトランプを真剣に取り扱わなかった。トランプはビジネスマンとしてはアメリカでは有名で歯に衣を着せない毒舌家としてリアリティーショーなどでも人気ものだったが、政治家としてはド素人。普通の政治家なら気をつけて物をいうところを、ポリティカルコレクトネス(PC)なんぞなんのその、人種差別だ男尊女卑だのと言われようがどうしようが、頭にうかんだことをまるで自己規制せずに発言するトランプ。トランプは普通の政治家が言ったら政治生命が終わってしまうようなことでも平気で発言し、それが選挙運に動悪影響を及ぼすどころか彼の人気をどんどん上げてしまった。
だったら今更トランプが気をつけて口を慎む必要があるのだろうか?
共和党予選中はヒラリーに対して最も勝つ可能性がない(と思われる)候補者をメディアが応援したというのは事実だ。フォックスは比較的親共和党で特に親トランプだが、反共和党で反トランプの他局でもトランプの傍若無人ぶりは視聴率を上げるという理由もあっておもしろおかしく取り上げていた。おかげでトランプは普通の候補者が何億ドルという莫大な金額を出しても広告しきれないほどのメディア報道の恩恵を無料で得たのである。
しかし一旦共和党候補になってしまうと、反共和の主流メディアはこれまでのようにトランプを持ち上げなくなる。それどころか最近の反トランプ報道はかなりひどいものがある。CNNやMSNBCの政治討論番組では評論家は親クリントンの左翼リベラルばかりで、たまに保守派のゲストが招かれても、クリントンのEメイルやクリントン基金のスキャンダルについて言及しはじめると中継なら映像を切り替えたり、スタジオゲストの場合はマイクを切ったり、ホストがゲストに何も言わせないように立て続けにしゃべったり(時には怒鳴るつける)やり方で反クリントン意見を徹底的に弾圧している。
アメリカメディアはクリントンに焦点を当てるとスキャンダルばかりなので話題をそらすためにトランプの発言をひとつひとつ取り上げては「問題発言」として何日も否定的な報道を続けている。しかし、私にはこのメディアの反トランプキャンペーンがそれほど効果を挙げているようには思えない。いや、かえって逆効果になっているのではないかとさえ思えるのだ。
トランプは常にメディアは自分に対して不公平な報道をしているといっている。トランプファンでなくても左翼リベラルでなければそれはあまりにも明白だ。それに対してメディアは毎日のようにトランプの揚げ足取りの報道を続けている。もともとメディアに対する信用度など地に落ちている昨今、こういう報道が続けば続くほど、真実を語っているのはトランプだけだという印象を人々に与えるのではないだろうか?
特に左翼リベラルが一般市民に強制しているPCな言論規制には多くの人々がうんざりしている。そんななかで、PCおかまいなしのトランプが『イスラム教徒はアメリカに危険をもたらす、『違法移民の無制限な受け入れはアメリカの経済にとってよくない』などと言えば、よくぞ言ってくれた、という気持ちにはなっても、トランプは言葉使いを気をつけるべきだ、というふうにはならないだろう。それをメディアがトランプはこんなことを言った、あんなことを言った、といちいち問題にしたら、それこそ『何が悪いんだ!、そのとおりじゃないか!』という意見が増えるのではないだろうか?そしてそれがかえってトランプ支持につながるのではないだろうか?
ヒラリー・クリントンの選挙運動は金にものを言わせて何百万ドルのテレビ広告費を使っているという。それにくらべてトランプは一銭も使っていない。まるでテレビ広告を出していないのだ。にもかかわらずトランプは毎日のようにテレビに顔を出して話題になっている。否定的な報道ばかりかもしれないが、それが本当に否定的な結果を及ぼすのかどうかわからない。もしかすると主流メディアは意に反してトランプ応援運動に加担しているのではないだろうか?
今後ヒラリーとトランプの支持率がどう動くか見ものである。


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