この間、アメリカ人と結婚してホノルルに住み始めて数年という日本人の友達と食事中、彼女が「英語がそれほどうまくなってるわけでもないのに、日本語を忘れちゃうのよね。」と言う。「カカシちゃんはアメリカ生活長いのに、よく忘れないわねえ。」とも言われた。実は私もアメリカに住み始めてほんの数ヶ月という時にそういう体験をした。英語もろくろくしゃべれないのに日本語忘れてどうすんだよ、と自分でも情けなくなったのだが、実はこれは外国語を学ぶのに誰もが通り過ぎる関門であるようだ。
本日見つけたこの記事バイリンガルな人の「脳の構造」についての最新報告は非常に興味深い。冒頭の記者の体験談が私の体験とそっくりなのに驚いた。

留学先のメキシコシティから数日ほど帰国していたときに、わたしは父親に「『lavadora』を使ってもいい?」と尋ねた。

「何だって?」。父はスペイン語がわからなかった。とはいえわたし自身も、メキシコで半年ほど過ごしてやっと会話できるようになったくらいだ。洗濯しようとして、頭のなかに浮かんだ唯一の言葉がスペイン語だったのはなぜだろう?
「あぁ、うーん…服を洗うやつ」。自分に何が起きているのか、わたしにはわからなかった。
「洗濯機のことか?」
「そう、それ!」とわたしは言い、20年以上も覚えて使っていた名詞を認識し、安心した。

私の場合は「冷蔵庫」が思い出せなくて、里の母に「リフジレーター」と言ってしまって戸惑わせた記憶がある。
ペンシルベニア州立大学で、バイリンガル能力とその認知的影響を研究している心理学者、ジュディス・クロールは「バイリンガルが操る2つの言語は、しばしば“競合”するものです」とワシントンDCで開かれたアメリカ科学振興協会の演説で語った。
この記事の記者は英語を母国語に持つスペイン語とのバイリンガルだが、「スペイン語を話すときは、意識して認識のスイッチを切り替えなければならない。何年もの間、毎日スペイン語を話していてもそう感じる。」と書いているが、まさしくカカシも同じである。
カリフォルニアではそういうことは先ずないが、ハワイのホテルに泊まっていてフロントに電話をしたりすると、日本名の客からの電話だと「はい、フロントです」と日本語で答えてくることがある。特に大手ホテルではこういうことがままあるのだが、英語で話すつもりで電話をしたのに日本語で返ってくると一瞬言葉につまって「え~、あ~、は~」となってしまう。
反対に、特に意識していないときには、どちらの言葉で話しかけられてもきちんとその言葉で答えたりする。以前にミスター苺が仕事に熱中しているフランス人の同僚にフランス語で話かけたら、普段はフランス語など話たこともないのに、ちゃんとフランス語で答えてきて、ミスター苺が知ってる簡単なフランス語でやり取りをしたのに、その同僚は他のことを考えていたらしく、自分がフランス語をしゃべっていることにしばらく気づかなかったという。解るなあ、その気持ち。
クロール教授によると、外国語から母国語に切り替える時も、母国語から外国語に切り替えるのと同じ作業を脳はしているのだという。「特に外国語の環境にどっぷりつかっていると、母国語を見つけるのに一苦労します」とクロールは言う。「一瞬、パニックになるかもしれませんね」

「第2言語を学習中、母国語は忘れやすくなるかもしれません」とクロールは言う。「ですが、それは言語を規則化するための重要なプロセスなのです」。彼女の実験結果によると、「母国語を忘れるといった学習初期に表れる影響を受けやすい人は、第2言語を習得する能力に優れているかもしれない」という。
そして、話す単語1つひとつを選択するのは、脳が重量挙げをしているようなものなのかもれない。(略)バイリンガルが常に直面するこのような負荷は、不要な情報をふるいにかけて決定を行う能力(実行機能)の向上につながるとクロールは考えている(

記者も書いているが、私も日英バイリンガルな友達と話すときは、言葉が日英ごっちゃになることがある。これは自分の怠慢のせいだとおもっていたのだが、そうでもないらしい。

「1980年代、人々は言語の混合は病的なものだと考えていました」とクロールは言う。「しかし、実際はごく自然なものです」。また、(言語を混同することで)わたしの脳が怠けているというわけでもない。わたしはいまだに単語を選ぶたびに2つの言語から選んでおり、単に毎回同じ選択をしているわけではないのだ。

私の場合、自分が選んだ単語がどっちの言葉に属するかどうか一瞬忘れることがある。それでレストランで「お勘定、プリーズ」とか言ってしまって変な顔をされてから、「あれ、お勘定って英語じゃなかったけ?」なんて首をひねったりしている。
この間はミスター苺が「チェックプリーズ」といいながら両手の指をつかって四角を作った。実はこれは日本の「お勘定」とか「おあいそ」のときのボディランゲージ。英語の場合は指で署名をするしぐさになる。私といつもお寿司屋さんに行ってるせいで、ミスター苺のボディランゲージがバイリンガルになってしまった、、のかも?


1 response to 外国語勉強中に母国語を忘れる人は習得が早い

In the Strawberry Field7 years ago

ぶってるわけじゃない、英語が未熟なほど日本語を忘れる不思議な現象

最近、るりらんレトリーバーとか横澤夏子のコントで、帰国子女ぶってるちょっと嫌味な女の子の描写があって気が付いたことがある。二人のコントで共通しているのは、最近英語圏(多分アメリカ)に行って返ってきたらしい若い女性が日本人と話をしている時、やたらにおおげさなアメリカ人ぽい身振りをしてみたり、簡単な日本語を忘れて、「あ~ん、あ~ん、フレンドって日本語でなんていうだっけ~」とか「きゃんぱ~い?あれ、きゃんぱ~いでよかったんだっけ?」などとやること。多分二人ともこういう帰国子女との交流があって観察したのだろ…

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