2012年の9月11日にリビアのベンガジにある米領事館がテロリストに襲われ領事を含む4人が殺害された事件で、ホワイトハウスはユーチューブに掲載された反イスラム映画に感化された抗議者たちが突発的に暴徒と化して領事館を襲ったのだと主張し続けていたが、実は事件当時からホワイトハウスは襲撃が計画的にされたテロ行為であることを知っていたことを証明するlイーメールが公開され、遅まきながらやっとニュースメディアが騒ぎ始めている。
事件当日から数週間に渡って、当時の国務長官だったヒラリークリントンもオバマ王も国連外交官のスーザンライスも、そしてホワイトハウス報道官のジェイ・カーニーが言い続けてきたのとは裏腹に、クリントン長官の下で副長官を務めていたベス・ジョーンズが書いたメールには襲撃はアンサー・アル・シャリアというテロ軍団の仕業だと記されているという。
私は今まで知らなかったのだが、領事館襲撃の直後その日のうちにアンサー・アル・シャリアは犯行声明を出しており、国務庁はそのことを知っていたのである。
ジョーンズ副長官は事件翌日の9月12日午前9時45分にリビアの領事長と話をしたが、その際にリビア領事が襲撃はカダフィ前大統領の残党ではないかと言ったのに対し、副長官はアンサー・アル・シャリアというイスラム過激派の仕業だと答えたと報告している。
このメールは2013年8月に一般公開をしないという約束で議会に提出されたが、先日共和党のリンカーン・チェイフィー上院議員が一般公開の許可を求め承諾され今回の公開となった。
もしホワイトハウスが襲撃はユーチューブビデオに感化された暴徒の仕業だと思っていたのなら何故副国務長官がリビア領事にテロ軍団の仕業だと疑っているなどという話をするのか?とチェイフィー議員。これは全くつじつまが合わないではないか?
また別の書類によると、当時国務庁報道官だったビクトリア・ニューランド現副長官は、CIAが作成した公式文書に前々から攻撃の可能性があることを警告していたという文節があり、このようなことが公開された場合、議会から何故警告を無視したのかと国務庁を批判する道具に悪用される恐れがあると心配していることが記されており、後にその部分はCIAの当時の副長官によって書面から削除された。当時のCIA長官だったペトラエウス長官はこの決断には反対だった。長官はオバマの再選当選の直後セックススキャンダルで失脚した。
この間の記者会見でカーニー報道官は記者たちからの質問に「当時持っていた情報を公開したに過ぎない」と、いまだに当時はホワイトハウスは突発的な暴徒の仕業だと思っていたと主張し、状況が明らかになるにつれ序々に真相を発表したと主張している。だがホワイトハウスはいまだに襲撃が計画的なテロ行為だったとは認めていない。
私がここで非常に不思議なのは、何故ホワイトハウスが襲撃を単なる突発的な暴徒によるものだと主張しなければならなかったのかということと、犯人が誰であれ、どうして四人のアメリカ人を見殺しにしたのかということだ。
ホワイトハウスも国務庁も領事館を救うために出来る限りのことはしたと主張しているが、米軍諜報アフリカ司令部長だったロバート・ロベル副将軍(退役)はもっと救出につとめるべきだったのに、やろうともしなかったと議会の公聴会で証言した。この副将軍も政権への批判をあからさまに行ったために引退を余技なくされた軍人の一人かもしれない。副将軍は国務庁からの命令をじりじりと待っていたが、ついに出動命令は出なかったと語った。
スティーブン大使のもとで副大使を務めていたヒックス副大使も、トリポリで自分のボディーガードをしていた四人の特別部隊の隊員に出動命令がでなかったと証言している。
カーニー報道官は一連の批判について、共和党が悲劇を政治に利用しているだけだとして、二年も前に起きた取るに足らないことを今更ごちゃごちゃ言わないでよね、とでも言わんばかりである。
そういえば当事、民主党はベンガジ事件をノンスキャンダル(スキャンダルではない)として、小さなことを何を大げさに、と騒ぐほうがおかしいという姿勢をとっていた。アメリカを代表する領事と職員とボディガードのアメリカ人四人が殺されたのに、何がノンスキャンダルなのだ!
では先ほどカカシが掲げた質問の答えを考えてみよう。

1)何故ホワイトハウスは偽りの犯人像をでっちあげたのか?

当事のアラビアはアラブの春とかいってリビアでもエジプトでもそれまでの独裁者が次々に倒された時期だった。しかしたとえこれらの独裁者が悪玉大王だったとしても、それに代わる革命派が善玉かといえばそうともいえない。それどころかリビアでもエジプトでも過激派イスラム教テロリストたちが政権を握り、エジプトではすぐにクーデターが起きてモスラム同砲団政権は失脚。いまだに危ない状態が続いている。リビアではどういうことになっているのか私にはよくわからない。
さて、オバマ政権はこの「アラブの春」という幻想を信じたかったのだろう。だからリビア領事館の警備を厳しくしすぎるとリビア新政府を刺激すると考えたのかもしれない。それともクリントン国務長官は外交のことなど全く興味がなく、リビア領事の安否など、どうでもいいと思っていたのかもしれない。何にしても長官はスティーブン領事からの度々の嘆願もCIAからの警告も完全無視を決め込んでいた。
そして起きたのが911領事館襲撃事件。犯行が計画的なテロ行為だったということになると、クリントンがいかに領事館の警備を怠っていたかがばれてしまう。911同時多発テロの記念日であることすら忘れていたということが明らかになり、国務長官のくせに何やってんだ、ってことになってしまう。
また、オバマ王は大統領再選のための選挙運動で忙しかった。もともと外交になど全く興味のないオバマ王だが、選挙直前にテロリストの脅威に注意を払っていなかったと批判されるのは不都合。それで犯行は突発的なもので予知できないものだったとする必要があったのだ。それで偶然公開されたイスラム教批判のユーチューブビデオを持ち出してきて、これのせいだ!となったわけである。
2)なぜ四人のアメリカ人を見殺しにしたのか?
犯人が誰であれ、何故四人のアメリカ人を見殺しにしたのだろうか。副将軍が言うように何故CIAや軍隊をもっと出動させなかったのだろう?オバマやクリントンが冷血非道な人間だとしても、大使が殺されたら政治的に大問題なはずだ。何故出来る限りの救出に及ばなかったのだ?
ロベル副将軍は国務庁はどういうふうに救出作戦を実行するか迷っていたのではないかという。それで決断が遅れたのではないかと。ロベル副将軍は要するに国務庁には非常時に対応できる外交政策のプロがいないと批判しているわけで、かなり手厳しい。
だが、ロベル副将軍の考察は甘いと思う。国務庁の連中が不能なのは同意するが、ヒラリーはことを荒たげたくなかったのではないか。一応友好関係を結んでいる国に救出とはいっても軍隊を派遣するということは一大事である。それで救出がうまくいけばまだしもだが、それでも犠牲者が出たらどうするのか。アメリカ兵がリビア市民を殺したらどういうことになるのか、それに対処するだけの技能がクリントンにもオバマにもない。だからここは領事には悪いが小規模な救出がうまくいかない場合は領事や職員たちには犠牲になってもらうしかない、と思ったのではないか?
それにしても、何か大事が起きたときに何の手立ても考えられない人間が国務庁長官をやっていたのかとおもうと全く情けない。ケリー現国務長官も全くあてにならない。
ところで、この大事件が起きている間、肝心のオバマ王は何をしていたのだ? 大統領は状況室には居なかった。ちょっと顔を出しただけでずっと状況を観察していたわけではない。翌日にはベガスの献金運動に参加していることは周知の事実だ。
こんなやつを再選させた過半数のアメリカ市民は、いったい何を考えていたのかね。


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