カリフォルニア州の公立大学入学の資格に人種を考慮に入れてはいけないという提案209番という法律がある。この法律が通ったのがちょうどカカシがコミュニティーカレッジという日本でいうなら公立の短大のようなところに行っていた頃だったので、4年生大学に編入する際に私が日本人であることはまるで影響がなかった。
同ブログでも何度となくお話してきたが、アメリカにはアファーマティブアクションという制度がある。もともとは有色人種が大学入試時や就職の際に白人より差別されないようにするという目的で作られたもので、元来大学などへ入学する文化のない有色人種の若者が大学に行きやすくするように政府が手助けするというのが名目だった。しかし、それがいつの間にか有色人種を白人より優遇するという制度に変わってしまった。
特に問題なのはコータとよばれる人種別枠組み制度。州の人種構成の割合をほぼそのまま大学の生徒にあてはめ、黒人は何%ラテン系は何%と決める訳だ。すると州で非常な少数派である東洋人の枠組みは他の人種より極端に減ってしまう。ところが、生徒の学力は人種によって非常な違いがあり、特に東洋人は優秀な生徒が多く大学受験をする生徒が他の人種よりも圧倒的に多いため、東洋人の一流大学への倍率は他の人種の何十倍にもなってしまうという非常に不公平な現象が生じた。
たとえば、ある中国系生徒がバークレー大学を受験した際、学校の成績はオールAで、SATと呼ばれる全国学力テストもほとんど満点だったのに受験に落ちてしまった。ところが同じ大学に受験したラテン系の受験生はこの中国系生徒の6割程度の成績だったのに入学したなんてケースは日常茶飯事だった。それで1990年代後半のカリフォルニアではユダヤ系や白人や東洋系の生徒らによる大学を相手取った訴訟が続発していた。それが提案209へとつながったわけだ。
さて、最近になってこの法律を覆そうという動きが、黒人やラテン系の間で起きている。
民主党が圧倒的多数を占めるカリフォルニア州上院議会は提案209番(大学入試に人種を考慮に入れては行けないという法律)を覆すSCA5という法案を提案し、たった20分の討議で可決。今度の選挙で州民の支持を得ることができれば、20年ちかく続いた人種平等の大学入試制度が黒人ラテン系優勢の人種差別制度へと逆戻りすることになる。
即座に州人口の14%を占めながら大学進学率は30%以上という東洋系市民の間から異議の声があがった。なにしろアファーマティブアクションで一番損をするのは東洋人。皮肉なことにかつてユダヤ人たちがそうであったように、東洋系は学力が他の人種よりも圧倒的に勝り大学進学志望者も他の人種よりも極端に多いことが仇となり、全体的な人口比率は低いため人種別のコータ制になると一番弱い立場に置かれる。
ロサンゼルスタイムスによると、東洋系市民から学力の劣る多人種の枠組みが増えた場合、自分達の子供達が大学に入れなくなるのではないかという心配が生まれた。特にWeChatという中国語ソーシャルネットワークでは心配する中国系カリフォルニア市民の声が高まった。このバックラッシュによって提案者はSCA5を撤回せざるおえなかった。
しかし、ベルガーデン市代表で中南米系党員会のリカルド・ラーラ会長は、まるで怯む様子をみせない。今度の州選挙ではアファーマティブアクションと英語とスペイン語の二カ国語教育の復活を求めて選挙運動に挑むと息巻いている。
はっきり言ってこれは、共和党が民主党が独占する州議会の議席を多少でも取り戻す絶好の機会である。
カリフォルニア州には160万の東洋系有権者が住むとされている。そのうち42%以上が民主党に登録している。カカシのような共和党登録者はたったの25%。2008年の全国選挙ではなんと64%の東洋系がオバマに投票。2012年の選挙では何と79%がオバマに投票!これは州のラテン系の72%を大きく上回る数字。え〜なんでえ〜?
しかし、SCA 5の通過を機会に、共和党州上院議員候補のピーター・クオ(台湾生まれの保険会社勤務)氏は、反アファーマティブアクションを選挙運動の軸にしようと決意した。彼の選挙区であるイーストベイは40%がアジア系で完全に民主党独占地区。しかしアファーマティブアクションによって民主党の票が割れて完全青(民主)地区が赤(共和)に変わればカリフォルニア全体の政治色に異変を及ぼすことになる。
だいたい東洋系が民主党支持である必要は全くない。ハリウッドの影響かもしれないが、共和党は人種差別の党だというリベラル左翼のプロパガンダがカリフォルニアでは浸透してしまい、実際には保守であるべき東洋人でも民主党を支持してしまうことが多い。
何度も書いているが、東洋人は中国系にしろ韓国系にしろ日本系にしろ、そして最近はベトナム系にしろ、教育を重んじる文化がある。そのため一世代目は英語もはなせず学歴が低くても、二世代目になると大学進学は当然のようになるし、弁護士や医者やビジネスマンになるのは極普通。だから東洋系にはアファーマティブアクションもバイリンガル教育も必要ない。いや必要ないどころか、これらの制度は東洋人が一番損害を受ける制度なのである。
カリフォルニア州の人口割合は、白人の数が減る一方、東洋系市民の数がラテン系を追い抜きつつある。今回アファーマティブアクション復活提案がすぐに撤回されたことで、カリフォルニアにおける東洋系の力が顕著となった。これで東洋系を共和党に引きつけることが出来れば、青一色のカリフォルニアも変われるかもしれない。


5 responses to 東洋人を圧伏するカリフォルニアのアファーマティブアクション復活運動は共和党のチャンス!

oldman10 years ago

>白人の数が減る一方、東洋系市民の数がラテン系を追い抜きつつある。
ここで言う「東洋系市民」のほとんどが中国人ではありませんか?
何年か前の記憶ですが、オークランド市長は中国系女性だったような。
中国系がどんどん力をつけて、しまいには中国系大統領が誕生するかもしれないと青山繁晴氏が心配していました。次はヒラリー・クリントンで、その次が中国系かもしれないと。
そんなことになれば、日本にとって破滅的な影響が予想されます。
特に心配なのが、2億円程度のお金を積めば簡単に永住権が取得できるとかで、中国人富裕層が流れ込んでいるらしいことです。大統領選挙では、彼らの金がほぼ無限に集まり、選挙を有利に戦えるでしょう。
つまり、中国系富裕層の流入は計画的なトロイの木馬であり、やがてアメリカは中国人に乗っ取られるかもしれません。
たぶん、アメリカ人はそんなことは夢にも思っていないでしょうが。
そう考えると、アファーマティブアクションの復活は日系人としては、歓迎すべきことのような気がしますが、いかがでしょうか?
 

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苺畑カカシ10 years ago

oldmanさん、
カリフォルニアの東洋人で一番多いのはフィリピン系だそうです。その次が中国、そして韓国、台湾、といったように続くようです。中国大陸の広東語を話す中国人は北部に集中し、北京語を話す台湾系は南部が多いとか。韓国人は南部が圧倒的に多いですね。日本人は散り散りばらばら。ま、ガーディナとかトーレンスには昔の名残が多少あって日系人が多いといえば多いですが、あのあたりも最近は中国系が多いですね。
東洋人の場合は、二世代目くらいからアメリカ社会に溶け込んでしまうので、親がどこからきたかということはあまり問題になりません。
中国系裕福層がアメリカを乗っ取るなんてことは、ちょっと考えつきませんねえ。それよりイスラム系のアメリカ乗っ取りの方が怖いけど。

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mhgt10 years ago

私は昔からAAシステム嫌いです。というか考えてみて、「平等ってなんだ?」って本当に感じるんです。確かに産れて着ながらの環境は平等じゃありません。特にそこの人種が絡んでくるのも経済的なアメリカ歴史は、分かっておりますが・・・
考えてみれば・・東洋系だって基本的には黒人やヒスパニック同様に低い位置から始めたアジア移民。そこからコツコツやってきたのもアジア移民。特に日系に関しては、WW2で収容所、収容所から又1文無しでコツコツやってきたのが約60年前。そこから、中流、中流上、中には上流の住所のに住めるようになったのは、個人、コミュニティーの努力でしょう。私の夫が貧困層出身なんですがその頃は日系人も同じコミュニティーにウジャウジャいた、と言います。
ここからが肝心、同じ平等なら、人種、コミュニティーだって帰られるんです。それを変えようとしない人種コミュニティーが、今更AA使って、特別扱いしろって、結局は、「人種的に劣ってます」って言ってるようなもんでしょ?と、日頃から思うんです。
自分の子供とか見てると、なんか可哀相ですもん。
アジアの血が流れてるだけで、平均生徒の何倍か成績良くないといけないって、逆に不公平ですもん。
チョット最後に・・私はヒスパニック系の違法者のアメリカ乗っ取りの方が怖いです・・・これって、違法したって特別優遇って言ってるような物なので、秩序崩れる社会の想定ですよ。

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In the Strawberry Field7 years ago

少数民族が得をする国、アメリカの白人がマイノリティーを装うわけ

アメリカは人種のるつぼである。よってアメリカにおいては人種に関する話題が後を絶たない。しかもBLMのようなアメリカの左翼リベラルがことあるごとに国内の『人種問題』を誇張して報道しまくるので、諸外国においてアメリカ国内における『人種問題』に関して完全なる誤解を招いてしまう。 この間、私のトランスジェンダーに関する記事にトラックバックを送ってくれた東大出の凡人というイギリス在住(?)の日本人ブロガーさんのエントリーを読んでいて、他国よりは理解度がありそうなイギリス在住人にすら、ここまでアメリカを誤解され…

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ハーバード大学入試審査に見る組織的な東洋人差別、訴訟で明らかになる – Scarecrow in the Strawberry Field6 years ago

[…] 東洋人を圧伏するカリフォルニアのアファーマティブアクション […]

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