去年の12月に公開され、日本では三月公開の「ローンサバイバー」あえて訳すなら『孤独な生還者』なんてどうかな?アフガニスタン戦争中に実際にあった戦闘を元にしたアメリカ海軍誇るシールチームの武勇伝。制作費も低く地味な映画なのにも拘らず意外な人気で大入り満員。封切から四週間も全米売り上げナンバー1の座を保った。それにしても人気がないはずの戦争映画なのに、こんなにも人気があるのはいったい何故? 今日はその謎を探ってみよう!(とドキュメンタリーテレビの冒頭みたいな台詞を書いてみた。)
この映画のあらすじは、実はカカシ自身が書いた2007年にマーカス・ルテレル原作本を読んだ時のエントリーがあるので引用しよう。(ネタバレあり!)

たとえばこの状況を読者の皆さんはどう判断されるだろう。アフガニスタンの山奥にテロリストのアジトがあるので偵察に行って来いと命令を受けた海軍特別部隊シール4人が、偵察中に羊飼いの村人三人に出くわした。戦闘規制では非武装の非戦闘員を攻撃してはいけないということになっているが、彼らの顔つきから明らかにアメリカ人を憎んでいる様子。シールの4人はこの三人を殺すべきか開放すべきか悩んだ。開放すれば、仲間達に自分らの任務を知られ待ち伏せされる可能性が多いにある。かといって、キリスト教徒としてまだあどけない顔の少年を含む一般市民を殺すのは気が引ける。第一タリバンかどうかもわからない市民をやたらに殺したりすれば、殺人犯として帰国してから裁判にかけられる可能性は大きい。シールたちはどうすればよかったのだろうか?

結論から言わせてもらうと、シールたちは殺すという意見が一人で、もう一人はどっちでもいい、他の二人が殺さずに開放するという意見で羊飼いたちは開放された。そしてその二時間後、シール4人は200人からのタリバン戦闘員たちに待ち伏せされた(中略)(生還者は後に)「どんな戦略でも、偵察員が発見された場合には目撃者を殺すのが当たり前だ。それを戦闘規制(ROE)を恐れて三人を開放したことは私の生涯で一番の失態だった」と語っている。

イラク/アフガン戦争中には、戦争を描いた映画がいくつか作られたがどれも不入りだった。それでハリウッド映画業界では、ブッシュ政権下の戦争がアメリカ国民の間で不人気なため、これらの戦争を描写した映画も不人気なのだという結論がくだされた。しかし、彼らが一つ見落としていた大事な点がある。それは、どれもこれも反米映画だったということだ!!
いったいどこの誰が金を払って自分の国をけちょんけちょんに貶す(けなす)映画など観に行くか?
これについてはカカシも過去に幾つか書いて来た。
学習力ないハリウッド、「ストップロス」反戦映画がまたも不入り
反戦映画が不入りなのは何故か
悲劇的な封切り、ディパルマ監督の反米映画「リダクテド」
今回の映画が好評なのは、悪者はタリバン、正義の味方はアメリカ軍、とはっきりしているからだろう。そして二百人からの悪者に囲まれながらたった四人で数時間に渡り闘い続け相手をほぼ全滅させたという快挙がアメリカ人の正義感を振り起こすからだろう。
映画は原作にほぼ忠実ではあるが、ただ時間の問題もあり、大事なシーンがかなり削られている。たとえば主人公のマーカスがシールになるための訓練をした数週間がオープニングのシーンで役者抜きの本物の訓練の模様が流れるだけ。それとタリバンとの熾烈な闘いの後に一人生き残ったマーカスが親米なアフガニスタン村民に助けられてからの時間もちょっと短過ぎる。本ではもっとアフガンの村に行ってからの描写がされており、村人たちとの交流も詳細に書かれている。映画ではこのあたりのシーンが足りない。また原作にはない戦闘シーンなどが加えられている。
映画に批判的な意見は、ほとんどが反戦主義の左翼リベラルたちによるもの。右翼のプロパガンダだとか戦闘を美化しているとか、ま、くだらないものだばかりだ。
特にLAウィークリー誌の載ったエイミー・ニコルソンの批評がひどすぎると、人気ラジオDJのグレン・ベックが旅費を負担するから自分の番組に出演して原作者で生還者のマーカス・ルテレル本人の前で言ってみろと番組で言うほどだった。
先ず彼女の記事は「バトルシップのピーター・バーグ監督の最新映画はプロパガンダまるだしのねつ造映画」と始まり、原作はルテレルの直筆ではなく、ルテレルがイラクに出動中、イギリスのゴーストライターが劇的にするために10人の敵を200人と書き換えたものだと続く。まったく何を根拠にこんな出鱈目を書いているのか。私はこの話だけでなくアフガニスタンやイラクでの戦闘がどのようなものだったか、かなり詳しく追っていた。
タリバンの戦闘員たちは重武装をし残虐であるとはいえ、その戦闘技術はアメリカ軍のエリートシール隊とは比べ物にならない。アメリカ兵ひとりあたり20から30人のタリバン戦死者が出るなんて言うのはごく普通に起きていた。何故かと言うとタリバンたちのやり方は物量作戦。つまりむやみやたらに突撃してくるだけで作戦がない。守り体制にあるアメリカ兵たちからしてみたら射撃しやすい状態にある。とはいえ、たった4人対200人ではいくらアメリカ兵が有能でも圧倒的に不利。救援なしではいずれは負ける。当時の戦闘状態を把握している人ならルテレルの記述はさほど大げさとは思えない。それを敵がたった10人だったなんて馬鹿なことが言えるのはニコルソンがどれだけアフガニスタン戦争を解っていないかという証拠だ。
彼女はアフガニスタン戦争はアメリカが勝手に始めた茶色人悪白人善という感情の戦争に地元民が巻き込まれただけという書き方。そして戦地に送られたシールたちもまた政権による犠牲者なのだと言いたいらしい。ま、ウィークリーみたいな零細新聞なんかに書いてる批評家の書くことなんか気にしてもしょうがないが、左翼リベラルの批評なんてのは往々にしてこんなもんだ。
ニコルソンはベックの番組で取り上げられたことで、誰も読まないウィークリーを読んだ退役軍人や家族たちからツイッターで非難囂々。軍人について何もしらないニコルソンが軍人たちの意見を聞くのもジャーナリストとしての勉強になるかもしれない。ま、無理でしょうけどね。


Leave a Reply

Your email address will not be published.