アメリカの銃規制に関する日本メディアの記事は大抵が反銃所持の立場からされているので、あまり読む価値がないと思っていたのだが、12/25/12にされた特集はすでに教師が銃携帯を実施している学校への取材などが含まれ、NHKとしては意外に均衡のとれた報道になっていたので紹介したいと思う。
先ずは冒頭で、司会の傍田アナウンサーによる紹介から。

「アメリカでは乱射事件が起きるたびに銃規制の必要性が叫ばれながら、徹底した規制の強化にはつながってきませんでした。幼い児童を含む26人の命が奪われた今回の事件を機に、今度こそ厳しい規制を導入すべきだという声が高まっています。今日(25日)の特集は、乱射事件に揺れるアメリカの現状です。」

こういう事件が起きる度に「銃規制の必要性を叫」ぶのは反銃派のリベラル達で、一般市民は銃規制の必要性などそんなに考えていない。興味深いのは惨事が起きたニュータウン市ですら、銃規制に関する反応はまちまちだということだ。
犠牲者の知り合いで地元で金融関係の仕事をしている男性は、ネットで銃規制を呼びかけたところ、瞬く間に世界中から1万5千の賛成が得られたとある。ま、フェイスブックで「いいね」とクリックするだけなら誰でも出来るから余り意味はないと思うが、こういう反応は期待通りなので驚かない。惨事が起きるとすぐ銃のせいにするのはリベラルのおきまりだ。おもしろいのはその反対に同市において銃砲取扱店が繁盛しているということ。

小宮記者
「事件が起きた小学校の周辺では住宅街の中に銃を販売する店があって、外からでも簡単に銃を見ることができます。」
この地区で10年前から銃を販売している、ビック・ベンソンさんです。
以前は週末だけ店を開けていましたが、事件後問い合わせの電話が鳴り止まず、今では平日も休みなしで営業しています。
鉄砲店店主 ビック・ベンソンさん
「とても心苦しいことだが、これでもうけさせてもらっている。」
午後4時、開店と同時に店は銃を求める人であふれかえります。
訪れるのはごく普通の市民。政府が規制を強化する前に、銃を手に入れようという人たちが、店に殺到しているのです。
住民
「規制されて購入できなくなる前に、銃を買いにきました。」
売れ筋はセミオートマチックのライフル銃。
連射が容易で殺傷力も高いことから、一時は法律で規制されていました。
この危険な銃が、駆け込み需要で飛ぶように売れていきます。
ビックさんの店の売上げは以前の2倍以上に増えました。
銃がさらに出回りかねないという皮肉な事態に、住民は戸惑いを隠せずにいます。
住民
「私には理解できません。もう銃は必要ないはずなのに。」
20人の子どもが犠牲になった惨劇をきっかけに、銃規制の強化に動き始めた市民。
しかしその悲劇の町でさえ、銃の売れ行きが倍増するという矛盾は、アメリカの銃社会が抱える問題の根深さを示しています。

この短いセグメントの間だけでも、NHKの反銃主義偏向はあきらかだ。セミオートのライフル銃を『危険な銃』と表現していることや、住民の『銃は必要ない』という感想を取り入れたり、『アメリカの銃社会が抱かえる問題』といったように、アメリカが銃社会であることが問題なのだという決めつけている。
問題なのはこういう惨事が起きる度にそれを悪用して違憲な銃規制を行い国民をコントロールしようとする政治家達にある、などということはリベラルな日本メディアには思いも寄らない。
しかし、ここでNHKが偉いのは、全米ライフル協会のラピエール副会長による武装した警備員を全国の学校に常備すべきだという意見を紹介したのみに留まらず、もうすでに教師を武装させているというテキサスの学校を紹介していることだ。

アメリカ南部テキサス州。
カウボーイ文化が色濃く根付き、銃の愛好家が多い州として知られます。
望月記者
「テキサス州のこちらの学校では、5年前から教師たちが銃を携帯することが許可されています。」
幼稚園児から高校生まで103人が在籍する、州北部の公立学校です。
テキサス州ではほかにも教師に銃の携帯を認めている学校がありますが、それを公表しているのは、全米でもこの学校だけです。
この学校では、一番近い警察署まで車で30分以上の距離があるため、以前から防犯カメラを30台以上設置するなど、警備に力を入れてきました。
しかし2007年、南部バージニア州の大学で男子学生が32人を殺害した銃乱射事件をきっかけに、これまでの対策では不十分だと、教師に銃を持たせることを決めました。
デビット・スイート教育長
「こうした事件が起きないよう、新たな措置が必要でした。家族を守るように、教師には生徒を守る責任があります。犯人が武器を捨てることを拒めば迷わず撃ちます。」
銃を所持するのは、特別な訓練をうけた教師たち。州の法律に基づき、地元の教育委員会から許可を得ています。しかし25人の教師らのうち、誰が銃を持っているのかはトップシークレット。誰が銃を持っているのか犯人がわからないことが、抑止力につながると考えているのです。私たちの取材にもノーコメントです。
「銃を携帯していますか?」
校長
「それは言えません。」
生徒
「生徒も保護者も、この対策を支持しています。」
生徒
「銃を持っている先生は知りません。事件があっても先生がいると思うと安心です。」
保護者
「子どもがここの生徒で安心です。(コネティカットでも)教師が銃を持っていれば犠牲は少なかったと思います。」
さらにこちらは乱射事件に巻き込まれた場合に、どう行動すべきかを指南するビデオです。
制作したのは同じテキサス州のヒューストン市。
異変を感じたら、まず素早く「逃げろ」。
逃げ道がなければ「隠れろ」。
そして、最後の手段は全力で「戦え」と教えています。
今全米各地の学校からビデオを授業で使いたいという問い合わせが、相次いでいると言います。
ヒューストン市公安・国土安全保障担当 デニス・ストレムスキー部長
「この国で銃犯罪が起きるのは変えようのない事実です。ですから備えなければならないのです。」
銃愛好家として知られるテキサス州のペリー知事は、事件後、より多くの学校で、教師に銃を持たせるべきだと主張。西部オレゴン州など少なくとも5つの州の議員が、テキサスの学校にならって、教師の銃携帯を認める法整備に動き出しています。
テキサス州 ペリー知事
「学校での銃の携帯を提案したい。」
銃によって銃を制するというテキサス州の取り組み。
しかし自衛のための銃の広がりにどこで歯止めをかけるのか、その答えは見えていません。

何故自衛による銃の広がりに『歯止めをかける』必要があるのか、NHKはそれを言及していない。何度も強調しているようにアメリカ社会で合法に銃を所持している人々による銃犯罪は極めて少ない。犯罪を犯すのは銃を使う使わないに限らず、もともと犯罪者なのであり、銃はたんなる道具に過ぎないのだ。
この番組でもそうなのだが、アメリカで銃規制が実現しないのは、政治的な力を持つ全米ライフル協会のせいだと言う人が多い。確かにNRAには政治力があることはあるが、もっと銃規制の障害となっているのは、アメリカ市民の多数が銃所持権利の大切さを強く感じていること、また長年にわたる試験的な規制により、銃規制が犯罪を減らせないと実感している人が大勢いることなどがあり、そういう市民の銃に対する感情の方が、NRAの影響力よりも大きいのである。NHKもその事実に気がついている。

当然とも思える規制すら実現が難しいのがアメリカの現状です。
今回の事件を受けても最新の世論調査では、規制強化に賛成する人が半数余りにとどまっています。背景にあるのはアメリカ国民の『銃を所持する権利』への根強い思いと、自衛意識の強さです。
市民
「悪いやつが銃を保持する限り、自分を守るために銃は必要だ。」

「当然とも思える規制」というのはNHKがアメリカの実情や歴史や社会的な背景を理解しないで、日本の常識でアメリカを計ろうとするから出て来る言葉だ。

オバマ大統領は先週、この演説に就任以来初めて、銃規制問題を盛りこむ方針を明らかにしました。この中でどこまで具体的な規制に踏み込めるのか、それに向けて現在の銃規制への機運を逃さずにさらに高めていけるのかが鍵です。
悲劇を繰り返さないために、銃規制の強化を実現できるのかどうか。
オバマ大統領の指導力が問われています。」

ここでもまた、「銃規制の強化」が「悲劇を繰り返さない」ことにつながるという勝手な決めつけがされている。NHKが番組内で紹介したテキサスの学校では、あきらかに銃規制よりも教師を武装させることこそが「悲劇を繰り返さない」ことになると考えているわけで、銃規制が銃による暴力犯罪を減らすことになるとは考えられていない。

鎌倉
「オバマ大統領がどこまで新たな銃規制を実現できるか、道のりは容易ではなさそうですね。」
傍田
「連邦レベルの銃規制の法律は1993年制定の『ブレイディ法』が代表的です。
ブレイディは、81年のレーガン大統領暗殺未遂事件の際、流れ弾で頭を撃たれて半身不随となった報道官の名前なんですね。
全米を揺るがした事件だったんですが、今回は抵抗の手段を持たない多くの子どもたちが犠牲になったという点では、それ以上の惨事と言っていい部分もあると思います。
ブレイディ法以来の本格規制が実現するか、アメリカ政治の大きな焦点になってくると思います。」

オバマ王が本気で銃規制に最重点おいたりしたら、国民から非常な反感を買うだろう。
アメリカが銃社会だというのは事実である。確かに人口あたり銃所持の割合が世界的にも圧倒的に多いのがアメリカである。だが、アメリカが銃社会であると言う事自体は特に問題ではない。この間から何度も書いているように、アメリカより合法な銃所持率がずっと低く銃規制もずっと厳しいラテンアメリカの諸国でアメリカなどとは比べようもないくらい高い犯罪率が見られる。
大量乱射事件に対する反応が市民による銃規制運動ではなく銃買いだめになるのも、いかにアメリカ国民が銃による自衛に重点をおいているかが伺われるというものだ。
NHKの番組は、アメリカの最終的なゴールは銃規制にあるのに、何故かそれがうまくいかないでいる、と結論づけているわけだが、それ以前に犯罪を減らすために銃規制が理想なゴールなのかどうか、先ずそこから考えてみる必要がある。
とはいうものの、NHKのこの特集はアメリカの主流メディアの報道よりも公平で均衡のとれたもの(フェア・アンド・バランスド)だったので、読む価値ありだ。


2 responses to NHK番組、教師が銃携帯の学校紹介 

mhgt7 years ago

逆に、オバマの「銃規制」の報道が、銃の買い求めの倍増に繋がったとも言えますね。だから、私的意見では彼こそがNRAと繋がって儲けさせた・・とも言えるのはリベラルの人達は考えないでしょうね。(凄く皮肉なんですけど、結果的にはオバマの一言で、
「禁止される前に買わなきゃ!」って反動が作用したんです)
アメリカ市民だけで軍隊組めますからね。
持ってる人は、平均八丁って言われてます。

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Sachi7 years ago

マックさん、新年おめでとうございます。
持ってる人は平均八丁? ふ〜む、うちには何丁あるかな? (あるとは言ってませんが、、、)
カカシ

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