昨晩で四日間続いた共和党大会が終了した。全体的にアップビートで未来への楽観的なムードが漂う非常に気持ちのいい大会だった。数々の演説の中で共通していた点は、アメリカは特別な国だ、成功者は讃えられるべきで責められるべきではない、家族愛の大切さ、アメリカは生まれは貧しくても努力と才能で成功が可能な国、アメリカンドリームは今でも可能だというもの。
オバマ現大統領への批判もあったが、ほとんどの演説者は4年前に有権者がオバマに夢を託したかった理由は多いに理解できるとして、オバマは公約をすべて破り国民を落胆させた、オバマが大変な経済を受け継いだことは確かだが、四年近くも経って今だに他人のせいにしてばかりで、状況やよくなるどころか悪くなるばかり、このままオバマにアメリカの未来は任せられない、と無所属への呼びかけが目立った。
特にこの大会で気がついた事は、共和党がこれまでのような高年のふんぞり返った政治家の集まりではなく、斬新で新鮮な若手の活躍が目立ったことである。しかも大会で演説をした若手の政治家達の多くが、すでにここ数年色々な活躍をして名前の知られた人たちだった。
民主党やリベラルメディアがかもし出す共和党のステレオタイプとは異なり、これらの共和党政治家たちは様々な民族的背景を持つ人々である。
クリス・クリスティー(49歳):大会でキーノートスピーカーを演じた。75%が民主党支持というニュージャージー州で共和党知事としてがんばる体当たり知事。元検察官。父親はスコットランド系移民、母親はアイルランド系移民。座依存するお役所仕事を根底から覆して破産寸前の州財政を建て直した男。組合などへの攻撃もすさまじく、その強行なやり方に敵も多い。歯に衣を着せないすぱっとした性格が有名。
マルコ・ルビオ(41歳):フロリダ代表上院議員。キューバ移民二世。大会ではロムニーの紹介役を演じた。フロリダの税金システムの大改革を唱える期待の若手。
スザンナ・マティーネズ(53歳):ニューメキシコで初めての女性州知事、合衆国初めてのラテン系知事でテキサス出身。2011年に知事になったばかり。元検察官助手。
スコット・ウォーカー (44歳):言わずと知れた組合潰しのウィスコンシン知事。コロラド出身でバプティスト牧師の息子。組合が始めた弾劾選挙で圧勝したことでも有名。低迷するウィスコンシンの経済を組合の執拗な妨害にも関わらず好転させたやり手知事。
そしてもちろん若手スターナンバーワンと言えば、副大統領候補のポール・ライアン(42歳)。大統領候補のミット・ロムニーとは25歳も年が違うということで、文字通り次の世代。
副大統領任命受任の挨拶でも、ミット・ロムニーのipodの曲名はエレベーターミュージックみたいだったとその古さをおちょくったりした。体脂肪率7%とかいうアスレートで、プロのスキー選手を真剣に考えたことがあるとかいうスポーツマン。若い頃はフィットネストレーナーのバイトをしていたこともある。
ライアンは若いとは言え下院予算委員会の委員長として活躍しており、彼の提案した予算削減案は斬新なものとして評判を得ている。よって当然ながら民主党からは忌み嫌われている。
共和党が若返ったことの理由のなかで特に大事なのがティーパーティーの存在だろう。ティーパーティーは社会面では保守派だが、経済面では本当の意味での改革を求めている。これは左翼リベラルが歪曲した『革新』とか『革命』といった言葉とは全く別物で、政府による個人への生活の介入を極度に嫌うもの。はっきり言って代表のない課税反対というアメリカ革命の本質に乗っ取った思想。まさしくボストンティーパーティーの名を継ぐにふさわしい市民運動である。
ティーパーティーは左翼リベラルのジョージ・ソロなどという黒幕が高予算で主催するような人工芝運動とは違って、高課税の割には不景気が悪くなるばかりの社会に不満を持った市民達の間で起きた本当の意味での草の根運動。だからティーパーティーにはこれといったリーダーは居ない。
彼らは共和党と深いつながりがあるとはいうものの、共和党だからというだけで盲目的な支持はしない。共和党でも長年大きな政府にどっぷり浸かり、市民の苦労もよそに自分だけ私腹を肥やして腐敗に満ちているような政治家は見放される。
四年前、ジョン・マケインを候補に選んだ共和党は、それまで通りの年功序列主義の党だった。党大会でも何かエネルギーが欠けていたように思う。だが、今回の共和党は違う。ティーパーティーによって息を吹き返したような熱力を感じる。
若返った共和党、ミット・ロムニーを筆頭にアメリカンドリームの息を吹き返らせてくれ!


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