オバマ政権始め民主党やリベラルは、保守派や共和党が女性に戦いを挑んでいると言いがかりをつけ、「対女性戦争」を今回の一般選挙のキャンペーンとして使っている。だが、実際に誰かが誰かに戦いを挑んでいるとしたら、それはオバマ政権の方であり、その標的はカトリック教会及びユダヤ・キリスト教というアメリカ文化の基本となる宗教そのものである。(イスラム教は無論例外)だが、民主党がでっち上げた架空の「対女性戦争」が、女性有権者の間で全く影響を及ぼしていないのとは反対に、オバマ王による「対宗教戦争」は、オバマ王支持層の間に大きな波紋を生んでいる。
先日、アメリカ全国各地で無数のカトリック教会及びカトリック系大学などが、一斉にオバマ政権のいわゆるオバマケアと呼ばれる国民皆保険制度に対して抗議すべくオバマ政権を相手取って訴訟を起こした。その理由は、オバマケアが雇用主に強制している従業員保険による避妊費用負担は、避妊を否定しているカトリック教に対して、アメリカ憲法第一条で保障されている宗教の自由を迫害するものだというもの。これについては以前にも教会がオバマケアを拒絶する声明を出した時に書いた事がある。
カトリック教会はこれまで、その人道的な立場から、福祉社会を率先する民主党の強い味方だった。無論我々保守派からしてみれば、民主党の言う「福祉」とは政府が国民を統括し弾圧するための道具なのであり、実際の福祉とは無関係なことはよくよく承知していた。であるから、これまでのカトリック教会による民主支持は誤った観点から始まったと言える。だがそれが、オバマ王のあまりの傲慢な態度にカトリック教会は漸くその事実に気づいたようだ。
この訴訟がオバマの再選選挙にどのような影響を与えるか、CNNのカファティーファイルでは、オバマ政権は訴訟について何も声明を出していないが、長年の支持者である教会を敵に回すことがいいことであるはずはないと語る。だが、それだけでなく、カファティーはオバマ王は最近カトリックだけでなく、同性結婚を巡って、やはりオバマの誠実な支持者であった黒人キリスト教会を怒らせるような発言をしたと指摘する。
先日オバマ王が同性結婚を公に支持した発言と、それを真っ先に支持した黒人市民団体NAACPの声明は、これまでオバマの熱狂的な支持層であった黒人キリスト教会とその信者達をまっぷたつに割る衝撃を与えた
近年NAACPは黒人の人権を守る市民団体などというのは建前で、単にその影響力を使ってリベラル左翼政策を促進する民主党の手先と成り下がっている。であるから、個人的には同性愛者を嫌っているメンバー達も、政治的な理由でオバマの政策には全面的に賛同するのは特におどろくべきことではない。
だが、黒人教会の多くは、実際に敬虔なクリスチャンが多く、聖書の教えに従うのであれば、同性結婚を支持することは出来ないのである。となってくると、それを公に歓迎したオバマ王を支持することも難しくなるというわけだ。
比較的リベラルなキリスト教徒らからは、せっかく黒人が大統領になるという歴史的な出来事が起きたのに、たったひとつの事柄だけで、その快挙を台無しにするべきではないという意見も出ている。だが、オバマが大統領に立候補した時、オバマ自身が敬虔なキリスト教徒であるというイメージを大々的に打ち出していた。オバマの両親がイスラム教徒なので、オバマは特に神経質に自分のキリスト教ぶりを主張したのである。多くの黒人市民はオバマが自分と同じ神を信じ、自分らと同じ価値観を持つ、下手をすれば救世主のような存在だという印象を持っていた。であるから最近のオバマの発言は神の教えを冒涜するものであり、自分たちへの裏切りであるとも取れるわけだ。
比較的知られていることだが、黒人社会は白人社会よりもマッチョな文化が存在し、同性愛は一般社会よりも受け入れられていない。最近行われたピュウーの世論調査では、白人の間で同性結婚の支持は47%なのに対し、黒人の間での支持は39%に留まっている。
このことだけで、黒人層によるオバマ支持が減るかどうかはまだよくわからない。だが、オバマや民主党が黒人は圧倒的にオバマ支持だとたかをくくって油断していると、大変なことになるかもしれない。
ところで、最近いくつか発表された世論調査において、アメリカ市民の間では同性結婚を支持する人の数が増えているという結果が出ているが、私にはどうしても納得がいかないのである。もし本当に半数近くのアメリカ市民が同性結婚を支持しているというなら、なぜ全国各地の州で同性結婚を否定する結婚は一夫一婦制のみという法律や憲法改正案が出る度に、州民の圧倒的な支持を受けて可決されるのだ? 比較的リベラルで、圧倒的に民主主義のカリフォルニア州ですら、一夫一婦制の正式な確立をした憲法改正が過半数で通っている。同性結婚を合法にした州は、どこも州民投票によるものではなく、裁判所や議会の決断によって決められたものに限る。州民投票によって同性結婚が認められた州は存在しない。
10月末に民主党の全国党大会が開かれることになっているノースカロライナ州でも先日5月9日、同性結婚を禁止する憲法改正案が圧倒的多数の州民投票で通過した。
世論調査と選挙結果がこのように大きく食い違う理由について、ミスター苺がこんなことをいった。アンケートを受けた回答者たちは、質問者に正直に答えていないのではなかというのだ。世論調査で問題なのは誘導質問などもあるが、それよりも、回答者が質問者がどのような答えを期待しているか察知し、質問者が気に入るような答え方をする場合が多いという。
たとえば、「あなたはお手洗いに行ったら必ず手を洗いますか?」という質問に対して、実際に洗わない人でも、洗わないとは答えにくいはず。いくら匿名でも質問者に自分の不清潔な習慣を知られるのは恥かしいと思って「必ず洗います」と答える人も結構居るのでは?
ということは、メディアなどで日夜連続で同性結婚を支持しない人間は同性愛恐怖症の差別主義者だと決めつけるイメージを押し付けれている市民からしてみれば、同性結婚に反対しますと正直にアンケートに答えにくかったという可能性は多いにある。世論調査で嘘をついても別に罪になるわけではないし、調査でどれだけ自分のプライバシーが守られているか解らない場合、見ず知らずの人に自分の正直な意見をいうのは憚られるということもある。
昔のように、誰も同性結婚など支持しておらず、メディアでも同性愛は異常な行為だという描写が普通だった頃は、こういう調査で同性結婚に反対すると答えることに抵抗を持つひとは少なかったはず。だからこういった世論調査で国民の意見を正確に把握するのは難しい。州民の本音は州民投票に現れる。
さて、そうしたことを考えると、オバマ王の最近の行動はどうも腑に落ちない。何故オバマ王は自分の支持層に波紋を及ぼすようなことを立て続けにするのだろうか? 避妊費用負担にしろ同性結婚にしろ、そんなアジェンダを押しているのは一部の過激派だけだ。そんなことに肩入れしても特に票が集まるとは思えない。それよりも、それに反対する人々の怒りを買うことのほうが問題なはず。いくら経済という国民が一番きにしている問題から話題をそらせたいからと言って、このような話題を選ぶのは的外れにもほどがあるのでは?
どうもオバマのやることは理解できない。


1 response to オバマ政権の対宗教戦争

Sachi12 years ago

YSジャーナルさんもこれについて書いてるんで、一応リンクはって置こう。
カカシ

ReplyEdit

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *