ウィスコンシンでは現知事の弾劾裁判が6月上旬に行われる予定だが、先日それに向けて民主党の知事候補を選ぶ予選選挙において、労働組合が強く押していたキャスリーン・フォーク候補が惨敗し、結局民主党知事候補は前回の選挙でスコット・ウォーカー現知事に負けたトム・ベレット氏が選ばれた。つまり、ウィスコンシン州は二年前の知事選挙をもう一度やり直す事となったのである。
興味深いのは、もともと労働組合がウォーカー知事によって奪われた団体交渉権を取り戻すことが目的で始まったはずの弾劾選挙運動なのに、ベレット候補の選挙スローガンには団体交渉についてはまったく触れられていない。それよりも、ベレット候補はウォーカーの州の雇用率を問題に取り組もうとしている。

知事となった暁には、トム・ベレットはスコット・ウォーカーの全国で最悪の雇用率を出した政策を覆し、マディソンに持ち込まれたウォーカーとその一味による腐敗を撲滅します。そしてついにはウォカーとその共和党一味がアメリカのどこよりも激しく挑んだ共和党による対女性戦争を終わらせます。

何故ベレット氏が去年あれだけ問題になって多くのデモが起きた州公務員の団体交渉権について全く触れないのかといえば、それを第一の主題として立候補したフォーク氏の惨敗から、民主党有権者ですら、公務員の団体交渉権は特に重要な問題だと考えていないと判断したからだろう。
しかし、ウォーカー知事の代になって、ウィスコンシン州の雇用率ががた落ちしたとか、低かった雇用率が全く上がっていないというのであれば、雇用率を選挙運動の主題に持って来るのは正当なやり方といえるが、問題なことにウォーカー知事の代になってから、ウィスコンシンの雇用率はわずかながら上昇していることを、ウォーカー陣営はすぐさま公表した。
州当局の話だと、スコット・ウォーカー知事の一年間、2010年12月から2011年12月までの間、公務、民間、を合わせて2万3千321の職が増えたという。
有権者にとって、どうでもいい公務員の団体交渉権や、わずかながらとはいえ、有権者が望んでいたように雇用率上がっているとなると、いったい民主党は何を理由にウォーカーを弾劾するというのか、その正当な理由を有権者に伝えるのは難しい。二年前に選挙できちんとウォーカー知事を選んだ有権者からしてみれば、なんで特に問題を起こしてもいないウォーカー知事を弾劾しなければならないのか疑問に思い憤りを覚える人も多くでるだろう。単に味方の候補者が勝たなかったからというだけで正当な選挙で勝った相手を弾劾すると言う行為は、かえって民主党のためにならない。
ここでもし、ベレット氏が負けたら、二年後の正式選挙の時にベレット氏が候補になることは先ずありえない。二度も続けて同じ相手に負けた候補など民主党有権者を三たび候補に選ぶとは思えないからだ。となると州民主党はベレット氏に勝るとも劣らぬ候補者を二年後めざして育てなければならず、そういう人物を探すのは容易なことではないはずだ。
また、選挙運動には金がかかる。四年に一度の割合で予算を組んでいた全国民主党委員会からしてみても、地元民主党が不必要な弾劾裁判に選挙資金を無駄使いしていることは忌々しく思われていることだろう。
それが証拠に、全国共和党委員会の方はウォーカーの勝利のために惜しみなく資金援助をすると約束しているのと比べ、全国民主党委員会はあまり乗り気の態度に出ておらず、地元党員たちから不満の声があがっているという。
州民主党が全国民主党委員会に請求した50万ドルの選挙運動資金はまだ支払われていない。州民主党委員会は共和党の10倍もしくは20倍の選挙資金を使って投票促進運動をするつもりだという。だが、全国委員会からの資金が届かない限りそれは不可能である。弾劾選挙を三週間後に控え、この時点で資金切れでは民主党も苦労する。
これで勝てばいいが、もし負けたら、次回の正式な選挙における全国民主党委員会からの資金援助はもっと渋られるだろう。
ま、そうなっても身から出た錆だからしょうがないよな。


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