国の役人が一般市民の土地に令状もなしに突然現れ、建築中の家は聞いた事もない法律に反するので建設を即中止し、しかもそれまで規則を破っていた罪で何百万ドルという罰金を課すと言われたらどうするか。これは恐ろしい社会風刺の映画でもなんでもない。実際にオバマ政権下におけるアメリカ市民の身に起きている現実なのである。
自由国家の基本は個人の所有物(特に土地)を政府は勝手に取り上げることが出来ないことにある。政府が個人の土地を押収する場合にはよっぽど合法な理由がなければならないし、その理由を明確に提示する義務がある。だから警察が個人の住宅を捜索する際には必ず令状がいる。高速道路などの公共施設建設のために私有地を使う場合は、それ相応の補償をする義務がある。だが、オバマ王政権下の環境庁(EPA)のお役人どもにはそんな理屈は通らない。
サケッツ夫妻は数年前に.63エーカーの土地をアイダホのプリーストレイクに2万3千ドルで購入した。土地は湖からすぐそこという格好の避暑地。土地は開発中の分譲住宅地のど真ん中にあり、市から上下水もひいてもらった。三年前、夫妻は住宅建設に必要な許可をすべて取り寄せ、何もかも合法に揃ったところで住宅建築作業を開始した。
突然環境庁のお役人が建築現場に現れ、サケッツ夫妻の建築は環境保全規則に違反しているといって建築の即中止を命令。基盤のために掘った穴を埋め、10フィートごとに木を植えろなどと要求し、サケッツ夫妻の土地をフェンスで覆ってしまった。夫妻の土地はそのまま三年間なにもせずに放置された状態になっている。
環境庁の役人は、サケッツ夫妻が自分の土地に家を建てるのに、なんと50万ドルの許可金を要求。それをしないならば一日3万7千5百ドル、現在の合計総額なんと4千万ドルを課すと脅迫している。
夫妻は EPAから、土地購入の際はその土地が『湿地帯』であるかどうか調べる義務があると言われたという。

「それで調べてみたのですが、『その土地が湿地帯だと指定されていることをどうしたら知ることができるのですか』ときいて『これがその地域です』と言われた場所を実際にみたらうちの土地は含まれていないんです。」と夫人。

そこでサケッツ夫妻は法廷に訴えようとしたところ、裁判所はそういう業務的なことについては判定できないとはねつけられたという。夫妻は先ず「法律遵守命令」に従い25万ドルの手続き量を支払って建設許可をとり、その後で決定に抗議するようにと言われた。それをしないのであれば、一日ごとに$37,500の罰金を課すと。
$27000ドルで買った土地に家を建てるのになんで25万ドルの手続き料を払わなきゃなんないんだよ!そんなことが出来る市民がどこに居る?
環境庁は民間市民が自分の資金で購入した私有地をあたかも公共地であるかのようにあつかい、しかも市民から土地を奪っておきながらなんの補償もしないどころか、土地の所有者が家を建てようとしたといって膨大な罰金を課すと脅迫しているのだ。こんなことが自由国家でおきてもいいのか?
というわけで、ザ・パシフィックリーガルファウンデーションという基金団体がサケッツ夫妻になりかわって弁護士ダミエン・シェフをたて、最高裁に訴えたところ、最高裁はこのケースを取りあげることとなった。
問題の焦点は政府が補償なく市民の土地を取り上げることが出来るかどうかということにある。
サケッツ側の言い分は環境庁のやり方が米国憲法修正条項の第五条、「市民の命と自由と所有物は合法な手続きなくして奪われてはならない」に反するものだと主張。
環境庁はクリーンウォーター(清潔な水)規制が、環境庁に規制に従わない市民を罰する権利を与えていると主張している。
しかし問題のなのは、クリーンウォーター規制の内容は非常に漠然としており、どのような行為が規則違反なのか明記されていないことにある。サケッツ夫妻は環境庁に自分らがどの規則をどのように違反しているのか書面で提示して欲しいと要求したが、環境庁は自分らにそんなことを証明する責任はないと言われたという。度重なる夫妻の要求に環境庁がなんらかの書類を送ってきたのはなんと7ヶ月後。
つまり、環境庁の役人は自分らの気分次第でどのような土地も環境保全地区に指定することができ、それがどこかにきちんと記されていようがいまいが、市民に多額の罰金を要求してゆすり取る権利があると主張しているのだ。
しかも環境庁がふりかざす「法律遵守法」によると、環境庁はサケッツ夫妻の私有地に令状もなく勝手にはいりこんだり、夫妻の個人的な会計情報を取得する権利もあるのだという。
市民が自分らがどんな規則に違反しているのかも言い渡されずに土地を奪われ罰金を課されるというなら、役人が個人的に私腹を肥やすためにありもしない法律を笠に着る可能性は多いにある。実際にはらった罰金が役所に届いているのかどうか全く疑わしい。そんなことが許されるならこれはもう代表制共和主義などというものではない。
もし政府にそのような権利があると最高裁が判定した場合、最早我々は自由の国アメリカに住んでいるとは言えなくなる。私にはとても最高裁が環境庁の横暴を認めるとは思えない。このケースの展開は非常に大事なものだ。


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