ブログ仲間のマイク・ロスさんが、カリフォルニアの砂漠アンテロープバレーに住む人々が次々にカリフォルニア政府の横暴によって住み慣れた土地を追われるというユートゥーブを掲載している。ビデオの中で紹介されている地元記者LAウィークリーのマラ・メルニコフの記事から読んでみよう。
2007年10月17日、カリフォルニアの砂漠に夫のジャックと二人暮らしのマーセルは、夜一人で留守番をしていた時、突然ドアを強く叩く音で目を覚ました。ドアの外には武装し防弾チョッキを着た警察官のような男が三人立っていた。
先頭の男は、自分はロサンゼルス郡の職員で Dupuis夫婦の家は郡規制に違反するので、すべて取り壊すようにと通告した。木造のキャビンは夫のジャックが何十年と住んで来た家で、ジャックが前妻と子育てをした家でもある。
マーセルは自分の家を取り巻く敷地を武装した郡職員が取り囲んでいることに気がつき、恐れおののいたという。
何故、突然郡政府が個人の敷地内に乗り込んで来て、敷地内の建物をすべて取り壊せなどと命令できるのか。そんなことが自由の国アメリカで許されるのか。いったいどんな権限があって、、、
驚く事に法律上郡政府にはその権限があるのだ。
郡にはNuisance Abatement Teams略してNATなる隊がある。名前を直訳するなら「近所迷惑排除隊」である。2006年に設立されたこの隊の仕事は、郡が取り決めた厳しい安全規則に従わない家屋や建物を排除することである。しかしそのあまりにも横暴なやり方は、砂漠に住む多くの低所得者たちを長年住み慣れた家から追い出しホームレスの憂き目に追い込んでいるという。
だいたい近所迷惑というのはお隣近所に人が住んでいるから成り立つのであり、四方八方何キロも人家のないような砂漠の真ん中に建っている家に何がおいてあろうといったい誰に迷惑をかけているというのだ?
そりゃ確かに住宅街の真ん中の家で錆び付いたトラックや壊れた冷蔵庫などを裏庭に放置していたり、裏庭の草がぼうぼうで火事を誘発するような危険な状態だったりした場合には、地元政府が家主に清掃を強制することは出来る。
普通の住宅街で突然誰かが教会を開けて多くの人々が集まって大声でお祈りを始めたり、自動車修理工場を設置されたりしたら近所迷惑も甚だしい。そういう規則違反をどんどん取り締まるのは当然だ。
だが、地元政府が課す建築規制には理解できないような不思議なものがいくつもある。例えば我々の住むLA郡のとある市では、裏庭の塀の高さが何フィートと決まっており、それより5cmでも高かったら規則違反となる。また、前庭にアメリカ人が好んで使う低いピケットフェンスという塀も何故か違法。
はっきり言って地元政府の建築規制に端から端まで素直に従っている家など存在しないだろうし、そんなことを政府役員がいちいち取り締まっていたら役人がいくらいても足りない。それでなくても不経済で困窮する州予算を、そういう無害なことで無駄遣いしてもらいたくない。
ましてや、特に誰に危険を及ぼすでも迷惑をかけるでもない人々の家々に対して、住宅街にのみあてはまるような規則を砂漠の真ん中に住む人々に厳しく当てはめる意味がどこにあるのだろうか?
Dupuis夫婦は政府の規制に協力して直すところは直すからと嘆願したが、役人は「取り壊せ」の一点張りで夫婦の嘆願には聞く耳持たずだったという。職人を雇うお金などない夫婦は長年住み慣れたマイホームを自分らの手で板一枚づつ釘いっぽんづつ取り外して家を解体したのだそうだ。
ジョーイ・ガロという元軍人の身障者に起こったこともひどい。ガロはロサンゼルスから車で一時間くらいのところにあるアンテロープバレーという砂漠に一人で住んでいた。ガロは庭に野菜などを育て食べ物はすべて自給自足。水も井戸の水を浄水して使い、電力はソーラーパネルを使い、完全に独立した生活をしていた。
回りには向こう何キロも人家のない砂漠のど真ん中。そんなガロの家に突然郡政府の役人がやってきて、ガロの土地にはがらくたが多くありすぎて「近所迷惑」で違法だと宣告。すぐさま片付けろと命令を受けた。
ガロは家の回りの灌木を取り除き、政府の言う「がらくた」も片付けた。しかし、役人たちはその後も何度もガロの家にやって来ては、やれ納屋を取り除けモーターホームを取り除けと次から次へと難癖を付けて来た。その度ごとに政府の要請にガロは従ってきた。にもかかわらず、ついに政府はガロが住んでいる家自体が汚な過ぎて近所迷惑なので破壊しろと言い渡した。そして、何と役人は侮辱にもガロにホームレスの集会のパンフレットを渡したと言う。
役人はガロに理不尽な要請をする度に近所からの苦情を理由にしたが、ガロは「うちの一番近い隣家は5キロ先だよ。誰に俺んちが見えるってんだよ。」と首をかしげている。
郡政府はこの法律は1970年代から全く変わっておらず、何も今始まったことではないと主張する。しかし以前は、こういう特に誰に被害が及んでいる訳でもないど田舎における軽犯罪の場合、見て見ぬ振りをするのが普通だった。いや、政府には他にやることがいくらでもあるから、そんな取るに足らない規則を強制する余裕も興味もなかったのである。
それが何故か2006年から突然郡は規則の施行に積極的になった。
1936年に建てられ、映画「キル・ビル」でも使われた砂漠の教会で牧師を勤めるオスカー・カステナダのところにも役人が来た。「私は22年もこの家に住んでいて、誰からも苦情を聞いた事がない」と抗議するカステナダに役人は「じゃあ我々は22年遅れて来たということだ。」と非情に答えたと言う。
郡政府は市民の住宅に無断で入り込むようなことはしていないと主張する。だが、ここに法律の落とし穴がある。
驚くことに、郡の法律では、建物が郡の規制に従って合法に住宅として登録されていない場合、住民が何十年に渡って自分の土地に住んでいようと、その土地や家屋を「空屋」と認定することが出来るのだと言う。
ここが大事な点なのだが、普通の住宅なら政府のお役人と言えども令状もなしにずかずか入り込むことは出来ない。だが、「空き屋」となればそんな遠慮はいらないというわけだ。しかも、空き屋と指定された土地には、それが例え自分の土地であっても認可なしに住む事はできないのである。もし政府の通告を無視してそのまま居座れば不法侵入で逮捕されることもある。自分の土地に住むことが法律違反になってしまうのだ!事実そうやって逮捕されて何十日も臭いメシを食わされた人々が何人かいる。
メルニコフの記事には他にも色々な人々の悲劇的な逸話が紹介されているが、砂漠の一軒家に自分らだけで住もうなどという人々は、特にお金があるわけでもなく、他にいくところがあるわけでもないので、今住んでいる家を追われればホームレスになるしかない。政府の要請に従わずにロサンゼルスの牢屋に放り込まれたひとや、郡の規制に従おうとなけなしを貯金をはたいて破産してしまった人など、その悲劇的な話は後を断たない。
しかし今までずっと無視されてきたマイナーな法律違反が何故突然武装した郡職員が強制施行するような犯罪へと変貌したのだろうか? 郡政府にはこのあたりから住民を追い出したい他の目的があるのではないか、と地元の人々は勘ぐり始めている。
砂漠に住むトラック運転手たちの間では、こうした郡の横暴なやり方に抗議するAVTOという団体が結成された。最初はトラック運転手のみの集まりだったが、そのうち砂漠に住む住民達の助け合い団体へと拡大している。
この組織のメンバー達の間では、郡の役員たちが自分らの存在を正当化するために派手な取り締まりを行っているとか、自分らの権限を誇示するためだとか、またはこの土地を将来商業用に使うために住民の追い出しにかかっているとか、色々な憶測がされている。私は多分そのどれも正しいと思う。
2006年以降、砂漠の住民たちは色々な間違いから、どのように政府と合法に闘って行くかを学んだ。もともと建築規制だの住宅規制だのに無知だった人々は、あらかじめ法律がどのように書かれているかを学んだ上で、「近所迷惑」というレッテルを張られる前に、向こう三軒両隣の人々から「近所迷惑ではない」という書類に署名してもらうなど、政府からの因縁と闘う用意をしているという。
また地元市会議員の議席が空席になったのを機会に、自分らの代表を議会に送り込むことにも成功した。
規則というのは人々の安全を守り土地を清潔に保ち、隣近所の平和を守るためにあるべきもの。それが政府がむやみやたらに権限を振り回して弱者を虐げるものへと変貌すべきではない。
しかしさすがにデザートラッツ(砂漠のネズミ達)といえども文明人。その戦い方はいかに政府が理不尽でも反撃は合法で筋の通ったものであることが喜ばしい。リベラル連中がよくやるような徒党を組んで市議事堂に乗り込むなんてことをしないでくれてよかった。
カリフォルニアの私有地の権利を守るためにも、彼らの健闘を祈りたい。


1 response to カリフォルニア政府の横暴によって、砂漠から追われる人々

Sachi8 years ago

chapelの訳は「協会」ではなく「教会」の間違いであるというご指摘をコメンターの方からいただきましたので訂正いたします。
また、不必要な個人攻撃がありましたのでコメントをひとつ削除させていただきました。
カカシ

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