カーン川での濁流下りを終えた我々苺畑夫婦は、ハイウェイ99を北へ走ってヨセミテに向った。写真家アンセル・アダムスの名をとった自然公園の山中で三日間の乗馬旅行をするためである。我々が乗馬旅行をするのは2002年の夏にグランドキャニオンの南淵からラバで中腹まで下った一日のツアーを含めると、これで5回目。ヨセミテは2003年の時から8年ぶりの二回目だ。
ミスター苺が、ミナレッツパックステーションという家族でやっている小さいな業者に我々二人だけのガイド付きツアーを申し込んでくれた。二人だとガイドと我々二人用の馬三頭と、荷物運び専門のラバが三頭の行列となる。
ヨセミテにはハイキングコースがいくらもあるが、アンセル・アダムス自然公園あたりは道が非常に険しいので徒歩でこなすのはかなり大変である。8年前にヨセミテに行った時は、最初の一週間ツオルムメドウ(私にはトゥワォロミーと聞こえるのだが、カタカナ表記はツオルムらしい)という草原のあたりを一週間ほどハイクしたが、標高一万フィート以上でのハイキングは空気が薄くて非常に大変だった。グランドキャニオンのハイクで荷物を持って行きすぎて懲りたので、超軽量キャンプに挑戦した我々夫婦は色々なものが足りなくて閉口した。特に食べ物が干し肉とお米だけだったというのは完全に間違っていた。
それに比べて馬の旅は楽だ。先ず空気が薄くがれきだらけの険しい山道を歩かなくて済む。荷物はラバが運んでくれるから折りたたみの椅子だのテントだのマットだのを持って行ける。食料でも重たい缶詰や瓶類をいくらでも詰めるからおいしい物が食べられる。人に寄ってはクーラーに入ったビール2ダースとか持ってくる人もいるというが、我々はキャンプ中の飲酒は危険なのでしない。
もっとも乗馬は馬だけが運動していて乗り手はただ乗っかっていればいいのだ、と思って挑んだら大変な事になる。乗り手に袋に入ったジャガイモみたいに乗っかっていられるほど馬にとって不愉快なことはないし、そういう乗り方は乗り手にとっても乗り心地が悪いだけでなく落馬する危険がある。
我々の選んだ道は標高5000から9000フィートまで登る険しい山道の行程で、場所によっては馬のたてがみに顔がつくような上り坂があったり、馬の尻に頭が付くような下り坂がある。川をいくつも横切るので、時々馬がジャンプしたりするから、馬の両脇を脚で掴むようにしていないと振り落とされる可能性が大きい。
つまり、乗馬は全くの土素人というような人にはお薦め出来ないコースである。
にも関わらず、乗馬旅行もこれで五度目ということで、今回の乗馬は二年前のカナダのローキー山脈で参加した五日間コースの時よりずっと楽に感じた。
先ず我々が乗ったのは馬ではなく乗り専門のラバだったのがよかった。ラバは馬より気質がおとなしいので、ちょっとしたことでパニックになって後ろ足で立ち上がるとか、突然意味もなく走り出すといかいうことをしない。(カナダではよく馬が疾走して止めるに苦労した。)また、木々の間を通り抜けるにしても、こちらが特に手綱で誘導しなくても乗り手に気を使って木を大きく回ってくれる。これが馬だと自分の身体さえ通れれば大きな枝が上から垂れてる木の下だろうと狭い道だろうとどんどん歩いて行こうとするので乗り手は手綱をひくのにかなり技術を要する。(しつけの悪い馬になるとわざと木に寄りかかって乗り手の脚を身体と木の間にはさんだりするけしからん奴までいるから、乗り手はかなり気を使う。)
ただ、ラバは頑固なので、道草を食って動きたくないと思ったら乗り手が蹴ろうがどうしようが動かないという場合はある。また、馬のように感情的ではないので乗り手になつかない。馬なら気に入った乗り手には頬ずりしてきたりするが、ラバは乗り手などちょっと煩い荷物くらいにしか思っていないのか、降りてしまえば一瞥もくれない。馬なら三日も乗っていれば愛着が湧く物だが,ラバには全くそういう感情移入は出来なかった。


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