先日の月曜日、オバマ王はリビアへのアメリカ軍による空爆について説明する演説を行った。だいたい空爆を始めて一週間半以上もたってから、国民に対してアメリカ軍がリビアで何をやっているのかを説明するということ自体が大統領として無責任な態度ではあるが、その説明すら全く説明になっていないという情けなさだった。
先ずオバマ王はこのように演説を始めた。

今夜、私はアメリカの人々に私たちの指揮のもとにリビアで行われている国際的努力について、私たちがこれまでにしたこと、これからしようとしていること、そしてそれがどのように私たちに関係があるのかを説明いたします。

アメリカはリビア戦で指揮を取ったりはしていないので、ここでいう「私たち」というのがアメリカのことなのか国際NATO軍のことなのかよくわからない。
しかし、軍隊を嫌いな大統領が軍隊の総指揮官をやると、こういう情けない演説になるのかという典型がこの部分だろう。

..私たちは世界における色々な試練に関して武力を使うことは好みません。しかし私たちの価値観や国益がかかる場合には責任ある行動に出なければなりません。ここ6週間に渡りリビアで起きた事がまさにそれなのです。

オバマ王はここでリビアが最近革命のあったチュニジアとエジプトの真ん中に位置している事、カダーフィが長年に渡って独裁政権をおこなって人々を弾圧してきたことなどを語り、アメリカ市民がカダフィー政権によって殺されたことも持ち出した。
そして先月、近隣国の革命に刺激されたリビア市民がついにカダーフィ政権に立ち向かって反乱を起こした事に対して、カダーフィが自国民にを攻撃し始めたと背景を説明。
で、オバマ王は大統領として何を最初に行ったかといえば、リビアにいるアメリカ市民の批難。そして数日のうちにカダーフィの暴力に対して「迅速に数々の対応」をした。迅速に行った数々の対応というのは、カダーフィの外国にある資産を凍結したこと、国際安全保障理事会の指導に従ってリビアへの武器輸出を禁止したこと、カダーフィを戦争犯罪者と指定したことだ。そして我らが大統領オバマ王がリビアの独裁者カダーフィに向ってどのような勇敢な態度を取ったかと言えば、、

私は、カダーフィは今すぐ権力の座から身を引く必要があると申し上げました。

す、すばらしい〜! こんな勇敢な態度にカダーフィはさぞかし恐れをなして身震いしたことだろう。
ま、とにかくだ、オバマ王はカダーフィに対してヨーロッパの同盟国と協力し合いながら色々と軍事行使以外の対策を取ってきたが、カダーフィが自国民への空爆を止めないので止む負えず10日前から空爆をカダーフィ軍に対して空爆を始めたと説明した。
このまま放っておけばリビアの何千という人々がカダーフィに虐殺されてしまう、そのようなことを放っておくのはアメリカにとってもいいことではない。自分は放っておけないと。
なんで? ここが問題だ。自国に直接攻撃してきていない国にアメリカ軍を出動させるのであれば、その理由はもっとはっきりしていなければならないはずだ。それがブッシュ大統領のイラク侵略の時にも問題になったのはないか? オバマ王を始め、民主党や左翼リベラル連中がブッシュのイラク戦争に大反対だったのは、イラクが直接アメリカに攻撃をかけてこなかったからで、そういう国の政権交替を武力で行うことがアメリカにとって何故大事なのかということが、討論の焦点となったからではなかったのか?
自国の市民を大量に虐殺しているというだけなら、イラクもリビアも何の変わりはない。イラクへの武力行使が正当でないというなら、何故リビアへの武力行使は正当ということになるのだ?
オバマ王は無論、今回のリビア攻撃が前大統領のブッシュと比べられることは充分に承知の上だ。それでオバマ王はすかさずここで、自分のリビア攻撃がブッシュ前大統領のイラク武力行使とどう違うのかを説明し始めた。

(リビア攻撃に関して)アメリカは単独で行動に出たのではありません。それどころか私たちは強く増大する同盟軍に参加しました。この同盟軍には英国、フランス、カナダ、デンマーク、ノルウェー、イタリア、スペイン、ギリシャそしてトルコといった長年に渡って一緒に闘ってきた親しい同盟国が含まれています。そしてそのなかにはカタールやUAEといった、リビア市民を守る責任を取ろうというアラブ同胞も含まれています。

イラク戦争ではアメリカには同盟軍は一つも参加していなかったと言うのか? 勇敢に闘ったイギリス、オーストラリア、オランダ、日本の軍隊は私たちが夢見た幻だったとでも? 単に国際社会の協力があり、多くの同盟国が参加していたということだけなら、ブッシュのイラク侵攻の時の方が今回のリビア攻撃より同盟国の数は二倍以上多かった。これではリビア戦争の正当化になど全くなっていない。
オバマの演説はやたらと国際社会との協力云々といったことが強調されており、アメリカが指揮をとって色々対策を取っているといった内容ではない。しかも、この演説で何度も強調されたことは、オバマ王にはカダーフィ政権を倒す意志が全くないということ、従って陸軍を侵攻させる気もないこと、アメリカの役割は限られており、リビア市民の安全確保が達成された今となっては指導権はNATOに移譲し、アメリカは援助するのみの助演役者に徹するということだ。
オバマは国際社会と協力してカダーフィが辞任するよう圧力をかけていくつもりだと語っているが、カダーフィ将軍は権力の座から退くべきだと断言した割には、実際にリビアで政権交替があるかどうかは国際社会とリビア市民の問題だ、政権交替はアメリカの仕事ではない、自分は直接関係ないと語っている。やたらに関わってアメリカの税金を無駄遣いしたくないと。
だが、リビア状況が直接アメリカに関係ないのであれば、何故ちょっとでも軍事行使に参加したりするのだ?関係ないなら放っておけばいいではないか。最後まで見届ける気持ちがないのなら、何故最初からかかわり合いになるのだ?
ラルフ・ウォルドー・エマソンという詩人が言っていたなあ、「王に挑むなら王を殺さねばならない」と。戦いを挑むなら最後までやれ。敵の大将にやたらな情けを見せて塔に幽閉したり外国に追放したりすると、必ずやっかいものが大将を担ぎ上げて反乱を起こす。追放された源の頼朝が後に平家を滅ぼしたように、パリに追放されたホメイニが後にイスラム宗教革命をイランで起こしたように、パパブッシュが湾岸戦争で見逃したサダム・フセイン政権と息子のジョージ・Wがイラク戦争で闘わなければならなかったように。
今、国際社会がカダーフィの辞任を迫りながらも、実際にカダーフィ打倒の努力を全くせず限られた役割でリビアで空爆を行ってみたところで、お金が底を付き世論に見放された西側諸国が飽きてリビアから去った後には、カダーフィの勢力はこれまで以上に強靭なものとなるだけだ。
革命や反乱に参加したリビア市民は想像を絶する虐待の目に合うだろう。アメリカだけに限らないが、西側諸国がリビアの内乱に口出しするのなら、カダーフィ政権の完全打倒をまっとうすべきである。特にカダーフィ自身、そして彼の息子や部下など一族郎党皆殺しにしなければならない。追放などといったなまっちょろいやり方では駄目である。
そこまでする勇気がないなら、最初から関わりになどなるべきではないが、今となってはもう遅い。被害の少ないうちにさっさと手を引いた方がいいだろう。だが、中途半端に手を出してめんどうだからと言って放っぽり投げるとなると、最初から何もしなかった時よりオバマ王は国内でひどい打撃を受けることになるだろう。
オバマ政権はカダーフィ打倒のために直接手を汚したくないことから、リビアの反乱分子に武器調達を行うなどというバカなことを言っている。反乱分子が単に反カダーフィだからといって、彼らが親米とは限らない。彼らが自由平等を求める文明人だという保証はどこにもない。いや、それどころか、彼らがアメリカの宿敵アルカイダの一味であるという情報もあるくらいなのだ。そんな怪しげな勢力を武装したりすれば、リビアは後々アフガニスタンやパキスタンよりやっかいな国になってしまう。
ではオバマ王はいったいどうしたら良いのだろうか? カダーフィ政権を倒し、リビアが自由民主主義国になるよう再建に協力するか? いや、それはできないだろう。それではブッシュ前大統領が正しかったと認めるようなものだからな。


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