この間、カカシは毎年一回の健康診断を受けに行った。そのとき主治医のおなごせんせから破傷風の予防注射を推薦された。破傷風なんて、まちがって釘を打ち抜いたとかナイフでさされたとかいう深い傷でも負わない限り特に心配するような病気ではない。不思議に思って首をかしげていると、おなごせんせは「最近百日咳が流行ってるのよ。破傷風のワクチンは百日咳にもよく効くのよ。」とおっしゃた。せんせはこの間赤ちゃんを産んだばかりなので早速予防摂取を受けたとのこと。百日咳なんて今日日(きょうび)かかる人なんているのか、乳児への予防注射が出来てからほぼ絶滅した病気ではないのだろうかと思ったのだが、ここでふと思い当たることがあった。
読者諸君は最近、麻疹やおたふく風邪や風疹の予防注射が自閉症の原因となるという話が嘘でたらめであるとブリティッシュ・メディカル・ジャーナルが発表したニュースを聴いているだろうか?

ワクチンで自閉症はでっちあげ 英医学誌に報告(2011.1.06)

 【ワシントン共同】麻疹、おたふくかぜ、風疹の新3種混合(MMR)ワクチンの接種と自閉症との関連性を指摘した1998年の論文は(アンドリュー・ウェイクフィールド)医師のでっちあげだったとの報告を、英国のジャーナリストが英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル電子版に5日発表した。
 ジャーナリストのブライアン・ディアー氏は今回、論文の対象となった患者の親への聞き取りや診療記録の調査を実施。接種後に自閉症の症状が出たとされる12人のうち、5人は以前から症状があり、3人は自閉症ではなかったと結論付けた。
 欧米では論文発表後にワクチン接種が減って、はしかが流行。今も副作用を疑う人が少なくないという。

このようなでっちあげ論によって被害を受けたのはインフルエンザのワクチンだけではない。子供から命を奪い、生存者は一生後遺症を患うポリオや、乳児や幼児には命取りになる百日咳なども、嘘でまかせワクチン恐怖症のために、現代社会では信じられないような巻き返しをおこしているのだ。
上記の1998年の調査結果がランセットで発表されて以来、小児予防接種の危険性を唱えるウェブサイトはあちこちに生まれ、メディアも医学的な証拠もきちんと提示しないまま、センセーショナリズムを取り上げて大々的にワクチンの危険性を唱え始めた。(別処珠樹著のこれなんかいい例)
この話は1990年代に起きた豊胸整形に使用されるシリコンが身体に害を及ぼすという似非理論が幅を利かせたヒステリーを思い出す。整形手術などは危険ならば受けなければいいだけの話だが、乳幼児の予防注射は受けなければ後々ひどいことになる。いや、10年以上にわたるでっちあげ医学のために、イギリスやアメリカでは予防接種を受ける乳幼児が激減し、それと共にほぼ絶滅状態にあった病気が激増した。たったひとりのでっちあげ論文のため、何十年に渡って勧めてきた予防接種運動は大幅に後もどりしてしまったのである。
科学ジャーナリストのマイケル・フメントによると、このワクチン自閉症論でっちあげ事件は氷山の一角だという
最初からランセット医学誌に発表されたウェイクフィールド医師の説はつじつまが合わなかった。近年確かに自閉症患者の数は増加しているが、それは患者数が増えているというより、医学の発達と共に正しく診断される患者が増えたというだけにすぎない。
自閉症は多種のワクチンに使われる防腐剤のチメロサールが原因だとされ、アメリカでは2001年からチメロサールの使用は禁止されたが、その後自閉症患者の数は全く減っていない。スエーデン、デンマーク、カナダなどでもチメロサールの使用は禁止されたが、これらの国々でも自閉症患者の数は増え続ける一方である。
しかも、自閉症を起こすといわれたMMRワクチンにはもともとチメロサールは使われていなかった。MMRに関してはその後も色々な事実が明らかになっている。

  • 2004年、合衆国メディスンリポートはMRRもしくはチメロサールの関連性は発見できなかったと発表。
  • 2005年の日本の調査では、MRRワクチン使用を差し止めた横浜市において、自閉症患者の増加比率は差し止め前と全くかわらなかった。
  • 同年、コチランライブラリーが139の調査結果を見直した結果、MMRと自閉症を結びつける証拠は全く発見されなかった。

ところで、元の調査書を発表したウェイクフィールド医師に関しても、数々のスキャンダルがうかびあがってきた。

  • ロンドンのサンデイタイムスのブライアン・ディアフィールド記者はウェイクフィールド医師に関する膨大な資料を集めた。なかでも、医師は調査結果発表の2年も前にワクチン製作の製薬会社に訴訟を計画していた弁護士グループから70万ドルの謝礼金を受け取っていた。また、医師の調査対象となった12人の患者はあらかじめ医師が選んだ患者であり、患者や家族らも医師が肝心な要点で事実を歪曲していると証言している。
  • 2004年にはウェイクフィールド調査の共著者の12人のうち10人までもが記事を取り下げている。
  • 2010年1月、英国医師会は、ウェイクフィールドは調査において不誠実で無責任は行動をとったと批判。翌月、ザ・ランセットは元記事を取り下げた。三ヵ月後、ウェイクフィールドは医師免許を失った。

ウェイクフィールドの処分云々もだが、このけしからん藪医者の調査を信じて子供に予防注射をうけさせなかった親たちはどうなるのだ?いや、それをいうなら嘘でまかせのために現代社会において簡単に予防できる病気にかかって死んだ子供や後遺症で苦しむこどもたちのことはどうしてくれるのだ?
冒頭で書いた百日咳だが、1980年にはほんの一握りの件数しかみられなかったのに、去年2010年のカリフォルニアでは1947年以来最高の8000件が記録されている。入院する患者の60%が乳児でそのうちの10人が命を失った。
百日咳のワクチンはランセット調査には含まれていなかったが、予防注射のワクチン恐怖症が、多くの親たちにワクチン全体に対する疑惑を生んでしまったのではないだろうかと、カリフォルニア、オハイオ市のアクロン小児病院、百日咳専門医Blaise Congeni医師は語る。カリフォルニアはアメリカでもワクチン拒絶症の「震源地」なのだそうだ。
フメントも指摘しているが、薬でも何でも大病の原因になるというニュースは大々的に報道されるが、その研究や調査には怪しい点が多いという話はめったに取り上げられない。何かが危ないというニュースは即座に広まっても、特に問題はないという医学的な証明には何年もかかる。その間に、この嘘でっちあげ論は信じられないような膨大な被害を生み出す。
先に述べた豊胸手術に使われたシリコンインプラントにしても、たかが整形手術だと思うかもしれないが、訴訟に告ぐ訴訟で倒産に追い込まれたインプラントを製作したダウコウニング社はシリコンインプラントだけでなく、心臓につけるペースメーカーや腰の人口関節なども製造していた。こうした医学用品製造では第一といわれたダウコウニングの倒産は医療社会に大打撃を与えた。(何も悪いことをしていないのに訴訟をおこされた整形外科医たちや、すでにインプラントを受けていた女性患者たちの苦悩も無視できない。)
そして近年のこのワクチン恐怖症ヒステリー。
はっきり言って、私は親たちにも非常な責任があると思う。予防注射の副作用がニュースで大々的にとりあげられているからといって、安易に子供の予防接種をやめてしまうのは考え物だ。いったい副作用とはどういうものなのか、その危険性はどのくらいのものなのか、予防接種を受けないことによる弊害と比べてどちらがもっとも危険なのか、親としてきちんと学ぶべきである。
子供の命と将来がかかっているのだ。メディアのハイプに惑わされてはいけない。


2 responses to 似非医学、ワクチン恐怖症が生んだ数知れない悲劇

mhgt9 years ago

私個人的には、医学の調査と言うのはあんまり信じてないので、ケースバイケースですが、自閉症と予防接種を関連させた運動は、ハリウッドママにもありましたね。
夫の親戚にも自閉症の子が居ますが、予防接種の前に私は何故か、母体や精子の「ドラッグ使用率」なんかも関連あるような気もします。自閉症って一言で言っても、産まれ付きもあるだろうし、科学的な事でも起こるだろうと。
私個人としては、幼児期間の規定の予防接種は拒否した事はないです。それ無しじゃ、学校いけない場合もあるんじゃないでしょうか? 私の娘は家庭学習ですけど。
但し、最新ワクチンや最新のインフルエンザの予防接種は、私は信用してない訳です。夫の持病の処方も、製薬会社の儲けだとしか思ってませんし。
シリコンの話は…考えられますよ。体に異常物質詰め込んだら、体が拒否します。自然の原理だとは思います。但し、胸の手術は、私の中では贅沢品なので、勝手にして、の状態ですけどね(笑)。

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Packersmoversbangalore3 years ago

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