昨日もリベラルの言論弾圧について書いたが、リベラル政治評論家、イワン・ウィリアムス氏がNPR公営ラジオ局から解雇された件は予想以上に大きな波紋を呼んでいる。
イワン・ウィリアムスはリベラルの政治評論家だが、リベラルとしては珍しく論理たてて紳士的に議論を出来る人なので、フォックスニュースの政治評論番組にレギュラーで出演したりしても違和感はない。考え方は完全なリベラルなので私はほぼ全くといって同意できることはないのだが、それでも最近の左翼リベラルと違って常識というものがある人だ。
そのウィリアムス氏が契約先のNPRという公営ラジオ局から解雇された公の理由は、ウィリアムス氏はNPRのリポーターなので、政治的な意見の発言は局の規則に触れるということだった。そしてNPRのビビアン・シラー会長はさらに、ウィリアムス氏がイスラム教徒に対してどのような感情を持っていようと、それは氏と精神科医と広報担当者の間でのみ表現されることだと発言してウィリアムス氏を「私を気違い扱いしている」と怒らせるに至っている。
だが、昨日も書いたように、ウィリアムス氏が解雇された本当の理由は氏の発言内容ではなく、氏がNPRが敵として忌み嫌うフォックスニュースの番組に出演していることにある。そのことについては、NPRはかねてから忌々しく感じていたのである。
これについてYSジャーナルが詳しく日本語で説明してくれている。(強調はカカシ)

NPR は、Official Statementで、契約打ち切りの理由を説明しているが、興味深いのは、”Williams’ presence on the largely conservative and often contentious prime-time talk shows of Fox News has long been a sore point with NPR News executives.” の部分である。つまり、Juan Williams が FOX NEWS に出演している事が気にくわなかったと言っているのである。(この発表を書いた人は妙な所で本音が出て正直であるが、馬鹿であろう。これこそ政治的に不適当なコメントである)

     (中略)
リベラルは、リベラルが保守系と仲良くする事さえ我慢出来ないらしい。

同じく当局の記者でフォックスニュースの番組に1997年からずっとレギュラー出演しているマーラ・ライアソン女史も、常々フォックスとの関係を断ち切るようにとNPRからかなり圧力を受けてきたが、ウィリアムス氏の解雇を期にライアソン女史とフォックスの関係についても、さらにリベラルからの批判が強くなっているようだ。
なぜ、NPRは自分らの記者がフォックスニュースに出演することを忌み嫌うのか。2006年5月付けのNPRウェッブサイトのこの記事にその本音が現れている。
この記事では、NPRの聴取者の声を借りて、NPRの記者であるウィリアムス氏とライアソン氏がフォックスニュースに出演するのは、あたかもフォックスニュースがそのスローガン通り「公平で均衡」であるかのような虚りの印象を視聴者にあたえる手助けをしていると批判している。つまり、両氏はフォックスニュースのバリバリ右翼保守的思想を隠すための隠れ蓑になっているというのである。
では、そういうNPRは中立なのかといえばとんでもない! NPRは国から運営補助金を貰っている公営ラジオ局である。従ってその運営方針は政治的に中庸でなければならないことになっている。だが、それは表向きのことであって、NPRが左よりなのは周知の事実。左向きの意見ならどれほど極端な内容でも許容するNPRが、自分らが充分にリベラルではないと感じる政治的に正しくない意見は排除する、その姿勢は偽善としか言いようがない。
その偽善については両氏と共にフォックスニュースの評論番組にレギュラー出演しているチャールス・クラウトハンマー氏が強く指摘している。
PBS公営テレビ局のインサイドワシントンという番組で、クラウトハンマー氏は同じくNPR記者のニーナ・トッテンバーグ女史に対して、女史はしょっちゅう(左翼リベラルの)政治意見を表現しているのに、それは良くてウィリアムス氏が政治的意見を表現するのはいけないというのはどういうことだ、あなたの立場とウィリアムス氏の立場とどう違うのだ? これはダブルスタンダードだ偽善だ、と当のトッテンバーグ女史に詰め寄った。
他の出演者は女史にラジオ局の方針を問いつめるのは筋違いだと弁護に入ったが、クラウトハンマー氏は、「私はイワンを弁護しているのだ!」と続けた。(トッテンバーグ女史は過去にとある共和党議員について、議員とその家族がエイズにかかればいい、などという発言をしている。)
さて、ウィリアム氏の弁護だが、上記のYSジャーナルが面白い指摘をしている。

表現の自由を根拠に、Juan Williams(イワン・ウィリアムス) の契約打ち切りに抗議しているのは、何と保守系の放送関係者ばかりである。黒人の人道活動家、ヒスパニックの国会議員、リベラルのコラムニスト、未だに誰一人彼の擁護に立ち上がっていない。

たしかに、「私を気違い扱いした」と怒っていたウィリアムス氏の発言が放送されたのは、保守派ラジオトークショーホストでフォックスにも番組を持っているグレン・ベックのラジオ番組だった。
左翼リベラルのいう表現の自由とは、左翼リベラル思想を表現する自由であって、保守派やその他の意見の表現は保証されるどころか隠滅されなければならないのだ。
面白いのは、ウィリアムス氏がばリばりのベラルとして著名であるだけに、それまで特にNPRの左翼リベラル偏向について知らなかった一般市民にさえその事実が暴露されてしまった点だろう。YSさんによると、中庸であることが義務づけられているNPRが左翼偏向しているのであれば、国からの運営補助金は取りやめられるべきだという提案が共和党議員からすでに出ているという。これでNPRが国からの補助金を差し止められたら、それこそ自業自得というものだろう。


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