カカシがアメリカに来たのはちょうど1980年代のバブル経済の頃だった。当時の日本企業の世界進出、特にアメリカ市場への進出はすごかった。
日系企業による不動産売買もすさまじく、当時私が勤めていたアメリカの不動産ブローカーは大もうけをしていた。ニューヨークへ観光で遊びに行った時も、地元のガイドさんに「ビル買いに来たのか?」と冗談で言われたほどだ。
しかし最近になって、日本企業におけるアメリカでの失態が目立ってきた。本日のAPニュースから読んでみよう。
最近アクセルペダルの機能問題でトヨタ車が大幅リコールにあったばかりなのに、今度はホンダも窓スイッチ欠陥でリコールということになって日本の自動車会社の評判ががた落ちである。問題なのは自動車産業だけではない。先日の日本の航空会社の代表のような日本航空の破産宣告や、ソニーが市場でアップルに一位の座を奪われるなど、日本企業の数々の経営不審や失態が明らかになって来ている。

第二次世界大戦の灰の中から立ち上がった経済巨人に一体何がおきたのか?

トヨタ、ソニーそしてジャルの問題はそれぞれ異なるが、共通する点があると専門家は言う。それは世界進出への危険と現状維持意識、そして成功による奢りもしくは崩れるには大き過ぎるという油断だ。
「奢りと、ある種の油断が要因と言えます。高品質の第一生産者としてのランクに危機はないという考えです。」とベテラン東京トレーダーで、現在はニューエッッジグループという香港のファイナンシャルサービス会社でチーフストラテジストのカービー・デイリー氏は言う。現在の世界的経済危機が日本企業の弱点を暴露したのだという。「どこにも隠れ場所はありません。」

日本企業の品質管理は定評があったのだが、最近その評判が落ち目になるなか、中国や韓国の積極的な進出が注目されている。
電化製品では右に出るものはないと思われていた日本製品も、最近は安価で性能のいい他のアジア諸国の製品に市場を押され気味である。それでコストを下げて競争しようとしたトヨタやソニーは品質を犠牲にしてしまったのではないかと専門家たちは分析している。
また、あまりにも早く世界史上に拡大し過ぎたのではないかという見方もある。経営体制が企業の規模拡大に追いついていないというのである。
その結果がアメリカ、ヨーロッパおよび中国で7百万台のリコール。先週アメリカでは売れ行きナンバー1だったカムリー含む8種が生産一時停止となってしまった。不良品ゼロという評判だったトヨタ社でこのような不祥事が起きるとは専門家でも信じられないという。
ソニーの問題は、ソニーがいくつかの市場傾向を見誤ったことに端を発しているという。LCDテレビへの変換への反応が遅く韓国のサムソン電気に先を越された。1980年代に携帯ミュージックプレーヤーのウォークマンの成功に満足してしまって、デジタルプレーヤーへの転換に遅れを取り、アップルの iPodに市場を奪われた。その他もろもろの電化製品でも他のアジア諸国の競争相手に遅れを取ってしまった。
専門家はソニーが証券や映画や他のビジネスに手を延ばしている間、ソニーは焦点を忘れてしまったのではないかという。2006年ソニーはノートパソコンのバッテリー発火で、1000万のバッテリーをリコールするという失態を犯している。ソニーはハワード・ストリンガー会長の基本に帰る姿勢が評価されているとはいうものの、未だに赤字状態である。
日本航空の問題は、これまでにも国内で色々取りざたされてきたが、要するに大企業はつぶしたくないという政府の政策によって人工的に維持されてきたといっていいだろう。
JALの場合、諸外国のホテルに投資するなどの野心が仇になったようだ。また、アメリカの自動車会社とも共通する面として、定年後の従業員へのペンションが大き過ぎるということなども破産の原因となったのだろう。
しょっちゅう飛行機に乗るカカシのような人間からしてみたら、JALのサービスはいつも凄いなと感じていた。もっともその分航空券も高いので、私はJALはめったに乗ったことがなかったが。業界ではJALの贅沢三昧はジョークだったという。
余談だが、カカシにも個人的な記憶がある。昔はスチュワーデスといえば女性の仕事としては花形だった時代があった。当時スチュワーデスの初任給は普通の女性事務員の二倍以上だった。(私もスチュワーデスになりたかった女の子の一人なのだが、容姿端麗頭脳明晰まではよかったのだが、いかんせん背が低い。仕方なく諦めた。)
しかも、スチュワーデスの勤務時間は短く、日本からアメリカに飛んで来たら、二日休んで三日目に帰り、また二日休みという贅沢ぶり。ロサンゼルスで泊まるホテルも一流ホテル。持ってる鞄などもブランド品。国際空港のあるロサンゼルスでは、地元日系人の間では日本のスチュワーデスはつんつんしていると評判が悪かった。
おなじ航路を飛んでいたアメリカの航空会社のスチュワーデスたちは、お給料も低くハードスケジュールで、お金がないので成田付近のオデン屋さんでちびちびオデンを食べていた。
それで、他の航空会社はどうしてJALはあんな贅沢が出来るのだろうかと不思議がられていたものだ。やっぱり政府という後ろ盾があってのことだったわけだ。
さて、この記事では日本では世界で起きているリコール問題は大して取り上げられていないとある。記事では日本でリコールが起きているわけではないからだとしているが、実はそうでもない。先にリンクした中央日本の記事では、

日本政府によると、04-08年に日本国内でリコールされた車の台数は99-03年の2倍にのぼる。自動車だけではない。電子企業のシャープは26日、冷蔵庫100万台をリコールすると発表した。96-01年に生産した48種の冷蔵庫に扉の欠陥が見つかったからだ。

日本で08年の1年間、自動車・食品・薬品を除いた製品の安全問題でリコールした例は189件にのぼる。05年に比べ8割以上も増えている。

日本企業は初心に帰って気持ちを引き締める必要があるのではないだろうか。そうでないと、どんどん他のアジア諸国に市場を奪われてしまうだろう。


2 responses to 次々と崩れる日本企業の経営と評判

oldman14 years ago

日本国内の雇用状況が激変しています。正社員が減少し、派遣労働者が30%に達しているようです。当然、企業への忠誠心は衰え、良い製品を作ろうという熱意が低下します。下請への親企業からの値下げ要求も苛烈を極めているようです。これらが品質低下に結びついているのでしょう。
そして、その背景として新興国からの低価格品の流入があり、日本企業は厳しい価格競争に直面しているということがあります。
そして、さらに言うなら、その背景には行き過ぎたグローバリズムがあるのではないでしょうか。一部の企業は中国などへの進出により大儲けしているのでしょうが、日本、米国、ヨーロッパなどの国民は失業や賃金低下などにより生活レベルを切り下げざるを得ない状況に追い込まれています。米国では、再就職をあきらめた人もカウントすれば、実質的な失業率は17%に達するという話を読みました。
中国は米国の元切り上げ要求を受け入れず、世界経済は中国一人勝ちの様相を呈しています。
これらの問題を解決するには、行き過ぎたグローバリズムを修正して、保護貿易をある程度復活するほかないのではないでしょうか。

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Sachi14 years ago

oldmanさん、
グローバリズムの行きすぎというのはあたってると思いますね。拡大すればいいというものじゃない。
でも今回のリコールはオバマ政権による、自国の自動車企業を守りたいという策略なのではないかという話も聞かれます。
確かにトヨタにも落ち度はあるんでしょうけど、こんな大規模なリコールが本当に必要なのかどうか、その辺もちょっと疑問ですね。
カカシ

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