14日付けのニューヨークタイムスで、オバマ政権は今後テロ容疑者を『敵性戦闘員』とは呼ばないことにしたと報道している。ニューヨークタイムスはこの『敵性戦闘員』という言葉はブッシュ政権が勝手に使いだした造語であるかのような報道をしているが、この言葉自体は別に新しいものでもなんでもない。
ブッシュ前大統領がテロリストを『敵性戦闘員』としたのは、2001年の9月11日以降、テロとの闘いは単なる国家警備政策ではなく戦争であるという認識から生まれたものだ。戦争をしている以上、敵側で戦っている人員は単なる犯罪者ではなく戦闘員であるという解釈である。
オバマ王は、アメリカがテロリストと戦争状態にあるという認識から遠ざかりたいようだ。それで以前から『テロとの闘い』という言葉も使わないようになっていた。以下は朝日新聞の記事より

オバマ大統領は、就任直後の1月22日に出した大統領令でグアンタナモ収容所の1年以内の閉鎖を命じた。オバマ政権は発足以降「テロとの戦い」という用語も基本的に使わなくなった。前政権が多用した「敵性戦闘員」という概念も捨てることで、オバマ流への移行を象徴的にアピールしたかたちだ。

今回の新政策の背景には、連邦最高裁が昨年6月、グアンタナモ収容者にも拘束の不当性を裁判所に訴える権利が保障されているとの判断を示したことを受け、人身保護令状審査の訴訟の一括審理が、ワシントン連邦地裁で始まったことがある。
この裁判の判事が、被告である米政府にどういう人物が「敵性戦闘員」にあたるのかの定義を13日までに文書で提出するよう命じていた。これに対し、司法省は「敵性戦闘員」というレッテルを張ること自体を今後は廃止するとの回答を出した。

確かにオバマ王は、対テロ戦争にはずっと反対派で、ブッシュ政権の対テロ政策にはずっと手厳しい批判を述べて来た。だから今回の方針変更もオバマ皇太子が選挙中にした公約の行使であると解釈することも出来る。だが、言葉使いはともかく、オバマ王の政策はブッシュのそれと何処がどう違うのであろうか?
朝日新聞の記事では冒頭で、

オバマ米政権は13日、「敵性戦闘員」はキューバ・グアンタナモ米軍基地内の対テロ戦収容所で無期限に拘束できるとしてきたブッシュ前政権の政策を撤回する方針を発表した。

と書いているが、記事の終わりのほうで、

ブッシュ前政権は、軍最高司令官である大統領には拘束を命じる広範な権限があると主張したが、オバマ政権はこれを修正。国際テロ組織アルカイダやアフガニスタンの旧政権タリバーンに「支援活動をした」というあいまいな嫌疑だけで拘束できるという前政権の解釈に対しては、「実質的な支援」をしたとみられる場合だけ拘束が可能、との見解を示した。

ただ、その「実質的な支援」をどう定義するかについてはまだ明確にしていない。また、議会による9・11テロ後の戦争権限付与決議や戦時国際法を根拠に、大統領は「公訴手続きなしでの拘束を命令できる権限」を引き続き有しているとしている。

これってオバマ王得意の単なる言葉あそびではないのか?テロリストを「敵性戦闘員」と呼ばないとか、無制限な拘束はしない、とか言っておいて、だが大統領には定義もはっきりしない「実質的な支援」をしたかどうかも判定せずに独断で「控訴手続きなしでの拘束を命令できる」というのであれば、単に言葉使いを変えただけでブッシュ政権の政策と何ら変わりはないではないか?
どうしてこれが「ブッシュ前政権の政策を撤回する方針」ということになるのだ?
就任早々グアンタナモの収容所は閉鎖すると大々的に大統領命令を出したオバマ王だが、実際にどうやって閉鎖するつもりなのか、収容者をどうするのかという詳しい話は一向に進んでいない。一年後に閉鎖とか言っていたが、それも今後の調査の結果次第とかいう曖昧な発表で、本当に閉鎖になるのかどうかさせ全く見通しがついていない状態だ。
つまり、ことグアンタナモ収容所に関してはオバマ王の政策はブッシュ前大統領の政策をそのまま引き継いでいるかたちとなっているのである。
オバマ王が口先だけで「チェンジ、チェンジ」と言ってる割には、やってることはブッシュ政権と大した変わりはない。いやそれどころか、自分が選挙運動中に散々批判していたブッシュ政権や議会によるイヤーマーク(匿名で予算案に含まれる議員たちの代表地区企画)や国家負債など、ブッシュ政権の時の何倍という数や額で通った議案をオバマ王はそのまま抗議もせずに調印してしまっている。
何がチェンジなんだ!


Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *