カカシはオバマの顔をテレビで観ると虫酸が走るので、出張中はなるべくテレビニュースを避けていた。だいたいまだ就任もしていないのに、オバマはやたらと記者会見を行って、次の政権での方針を演説しまくっている。まったく忌々しいたらないのだ。しかもオバマが立つポディウムには「次期大統領事務所」と書かれているのには笑ってしまう。Office of the President (大統領事務所)というのは存在するが、『次期』大統領のオフィスなどというものは公式には存在しないのだ。就任までまだ一ヶ月以上もあった時から、オバマはすでに大統領気分。アメリカの主流メディアはオバマ一色で、あたかもオバマの決断が今すぐ法律となって施行されるかのような扱いかただ。
ま、それはともかく、産経新聞の古森義久さんがオバマ次期政権の人事について興味深い意見を述べられておいでなので、そこからちょっと引用したい。

オバマ氏は国防長官にブッシュ政権の現職ロバート・ゲーツ氏を、財務長官にこれまた現政権下の連邦政府機関たるニューヨーク連銀総裁のティモシー・ガイトナー氏を、それぞれ任命した。…

オバマ氏が新政権の主要人事として最初に発表したのは大統領首席補佐官へのラム・エマニュエル氏の起用だった。
同氏はワシントンの究極のインサイダーだったからオバマ氏の脱ワシントン宣言をいぶかる声が起きた。…
 オバマ氏が政権引き継ぎチームの責任者に選んだジョン・ポデスタ氏も70年代からワシントンで民主党議員の補佐官やロビイストとして活動し、90年代はクリントン大統領の首席補佐官だった。…
エマニュエル、ポデスタ両氏に加え、象徴的なのは国務長官に任命されたヒラリー・クリントン氏である。
商務長官に選ばれたビル・リチャードソン氏もクリントン政権の国連大使、司法長官に任命されたエリック・ホルダー氏も同政権の司法副長官、国家経済会議委員長となるローレンス・サマーズ氏も同政権の財務長官だった。

なんだこれじゃ、せっかくヒラリー・クリントンに打ち勝って大統領の座を得たのに、政権のメンバーはクリントンの息がかかった奴らで満ちているではないか。この人事のどこが「変革」なんだよ、と生粋の左翼やリベラルなら腹をたてるべき人事である。
オバマは選挙に勝つために極左翼に迎合しておきながら、一旦大統領になったら左翼を裏切って中庸に走ろうというのだろうか? だとしたら同性愛者を軍隊に入隊させると公約しておきながら、就任一ヶ月で裏切ったビル・クリントンと同じではないか。ということはアメリカ社会はオバマの左翼政治に破壊される危険はないのかもしれない。信念がないってのはこういう時便利だな。
しかし、ワシントンでも指折りの左翼と言われたオバマがそう簡単に中庸に寄るとは考えがたい。特に国内政策ではかなり左に寄ると思われる。国民保険とか年金とかヨーロッパ風の社会主義が起用されることは免れないだろう。
興味深いのは古森氏も指摘されているように、国務長官へのヒラリー・クリントンの起用である。イラク戦争絶対反対姿勢をとってきたオバマと比べ、ヒラリーはずっと鷹派だ。ヒラリーおばさんにはかなり強い外交政策がある。これがオバマの考えと一致するとはとても信じられない。国務長官は大統領の意志を反映するべきであり、全く相反する人を選ぶとブッシュ大統領とパウエル前国務長官の任期後半で起きたように国の外交が混乱してしまうからである。特にオバマはアフガニスタンやパキスタンで継続中の対テロ戦争を引き継がなければならない。イランや北朝鮮の脅威とも立ち向かって行かなければならない。ロシアの共産主義化も無視できない。そういう時に自分の信念と全く違うヒラリーを大事な国務長官に選ぶというのはどういう意味をもつのだろうか?
昨日、職場のクリスマスパーティで、弾道ミサイル防衛(BMD)が話題に上った。この間去年に引き続き二度目の日本海上自衛隊によるBMD実験があり、続いてアメリカの地上BMD実験があったばかりでもあり、今後のBMDプログラムの行方が案じられた。(どちらの実験も一応成功)一緒のテーブルで席を同じくした同僚は「オバマが大統領になったら、BMDなんておさらばだよ。俺たちも失業さ。」と首を降った。
確かにオバマの選挙運動中はそういう危険性はかなりあると思っていたのだが、オバマ次期政権の人事を見ているとそれはどうかなという気がしてきた。オバマは自分の代でアメリカが危機にさらされるようなことは避けたいのだろう。それで自分にはよくわからない外交はこれまで通りにしておいて、ことなかれ主義を貫こうという気持ちなのかもしれない。
オバマがなにもしないでくれたほうが、我々保守派には好都合である。


3 responses to 何が変革?クリントンファミリー一色のオバマ新政権

oldman15 years ago

カカシさんはどんなお仕事をされているのか多少興味があったんですが、サンジエゴ、ホノルル、佐世保などに出張ということで、海軍関係かなと推定しました。同僚の方がBMD関係ということであれば、なお確かなわけですね。
ところで、BMDは日本の生命線であるわけでして、「もうやめた!」 なんてことを言われると日本国民は途方に暮れます。
2005年7月、中国人民解放軍国防大学防務学院院長・朱成虎少将は「米国が台湾問題に介入すれば米本土への先制核攻撃も辞さない」と公言して物議を醸しましたが、たぶん米国は核攻撃の脅しに屈するだろうと私は見ています。「他国のためになんで米国が核の脅威にさらされねばならないんだ」という世論がわき起こるのはほぼ間違いありません。その結果、米国は台湾防衛を放棄するでしょう。
同じ事は日本防衛についても言えるわけで、日米同盟は有名無実化しました。日本が中国の脅威に対抗するには自主防衛力を高める以外に道はありません。
しかし、日本の核武装は憲法改正もままならない現状ではほぼ不可能であり、頼りはBMDしかないわけです。
オバマ政権がBMDをどう扱うのか、注目したいと思います

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oldman15 years ago

書き忘れました。
海上自衛隊のBMD実験は失敗だった、という報道がありました。直前に目標を見失ったということでした。
カカシさんは「一応」成功と、微妙な表現をされていますが、どういうことでしょうか?

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Sachi15 years ago

oldmanさん、
海上自衛隊はBMD実験は続くでしょう。アメリカのBMDプログラムが一旦中止になったとしても、外国と契約しているものを途中でやめるということはないでしょうから。いや、海上自衛隊ががんばって日本近海を守ってくれれば、オバマ政権には好都合のはずです。おっしゃる通り、日本の防衛をアメリカ任せにしているのは危険です。日本にはがんばってもらわないとね。
この間の実験はミサイルに問題があったようですが、システム的に問題があったわけではないですし、海上自衛隊も訓練通りの行動をしているので、システムの実験としては成功です。標的を撃ち落とすという目的は達成できなかったので、全面的には成功とは言いがたいですが、いちおう任務完了ということです。
でもノーシガー(葉巻でのお祝いはなし)でしたね。残念。
カカシ

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