この間行われた第三回目で最後の米大統領候補討論会では外交問題よりも現在の金融危機や健康保険、教育問題といった国内政策が主軸となって論じられた。そのなかでも共和党候補のジョン・マケインが持ち出した鉛管工のジョー(Joe Wurzelbacher)という人が意外な主役となったのが興味深かった。

マケイン: オバマ議員は鉛管工ジョーと会話で、我々は富を分配する必要があると締めくくりました。つまりジョーから金を取り上げてオバマ議員に渡し、オバマ議員にその富を分配させろというのです。

マケインがこの男性の名前を持ち出したのは、オバマの増税政策への批判が理由だ。オバマは年収25万ドル以上の『金持ち』の所得税を増税することによって、95%のアメリカ市民の税金を減らすと公約している。これに対してマケインはこの経済低迷の時期に誰の税金も引き上げるべきではないと主張している。マケインにいわせれば年収25万ドルを稼いでいるのは決してオバマの言うような『金持ち』ではない、その例としてオハイオ州でオバマの選挙運動中にオバマに向かって「俺の税金を上げる気か?」と抗議した鉛管工ジョーのように一日12時間以上も働いてやっとの思いで規模拡大が出来るようになった中小企業の人々を罰する政策なのだと指摘したのである。
ここで明らかにしておくが、アメリカ市民の低所得者である40%が所得税を支払っていない。アメリカの所得税の60%以上が上位5%の高所得者によって支払われているのである。95%のアメリカ市民の税金を減税するということは、すでに高額の所得税を払っている高所得者の税金を引き上げて、その金で現在税金を払っていない40%の市民に福祉手当を与えるということになるのだ。
マケインが鉛管工ジョーの名前を持ち出したのも、オバマが増税して罰しようとしているのは決して上位5%という『金持ち』ではなく、ジョーのようなごく普通のビジネスマンなのであり、罪といえば単に一生懸命働いて年収25万ドルをやっと稼げるようになったというだけの中小企業経営者のことを指しているのだということを強調したかったからだ。
オバマをはじめ民主党の連中は何かと中流階級の減税を唱える。だが、年収25万ドルの中流家庭を『金持ち』と指定することによって結果的に中流階級は増税されることになる。年収5万ドルくらいしかもらっていない一般労働者からしてみれば、年収25万ドルといえば非常に多いように感じるが、夫婦共稼ぎで双方重役だったり中小企業の経営者だったりすれば年収25万ドルなどさほどたいした金額ではない。そしてこの中小企業こそがアメリカ経済の基盤を担っているのである。何故成功者を罰するのだ?とマケインは問いかけている。
朝のトークラジオを聴いていたら、ある歯医者さんから電話がかかって来て、自分のオフィスでは9人の従業員がいるが、年収は25万ドルを超えているので、もしオバマの増税政策が実施されれば自分は従業員の昇級を見送らなければならない、健康保険も削らなければならなくなると語っていた。それでなくても経済が低迷している今日、これ以上の増税は企業縮小にもつながる。つまり、リストラである。
自分の年収は5万ドルだから25万ももらっている金持ちが多少苦労したって知ったことかと思うのはあさはかだ。増税は金持ちだけに影響があるのではない。『金持ち』の首が回らなくなれば一番最初に影響を受けるのは『金持ち』に雇われている年収5万程度の一般労働者なのである。
オバマのやりかたは富の再配分という典型的な社会主義だが、この主義は健康保険政策にも現れている。アメリカには日本のような国民保険は存在しない。雇用主による社会保険か個人保険があるのみ。国が経営している保険といったら高齢者を対象としたメディケア、メディケイドといったものくらいだ。アメリカの医療費は世界中でも一番高額で保険を購入できない市民も多い。その対策としてオバマの計画はどのようなものかというと、、、

オバマ:私の政策はこうです。あなたがすでに健康保険を持っているなら何もする必要はありません。 雇用主を通じて健康保険をもっているならその保険を維持し、好きな医師を選び、好きなプランを維持することができます。

私たちがしようとしているのは経費を下げようということです。それによって皆さんの負担を下げることです。一般家庭の保険料を年間平均2500ドルほど下げることが出来ると推定しています。
もしすでに保険を盛っていなければ、マケイン議員や私が公務員として持っているような連邦政府による選択を供給します。これで低い医療費で高質の治療を受け、医師を選ぶことができます。

オバマはすでに保険を持っている人にはオバマの政策は影響を与えないと強調しているがそれは正しくない。オバマの政策では雇用主に対してあらゆる規制を課す。例えば今まで保険の対象になっていなかった美容整形だの性転換手術だのといったものまで含まれる可能性があるのである。そうなれば必然的に雇用主が払う保険料が増え負担が増す。それでもし雇用主が政府の課す無理難題を受け入れることが出来なければ、雇用主は政府から罰金を課せられる。しかしもし罰金の金額が従業員にかかる保険料よりも低かった場合、必然的に企業は従業員の保険を一切止めて罰金(税金)を払うことで済まそうとするだろう。
ということはだ、今会社を通じて社会保険を持っている多くの労働者がオバマ政策のおかげで保険を失い、連邦政府経営の国民保険に無理矢理参加させられるという状況が生じるのである。
これとは対照的にマケインの保険政策は連邦政府から個人に5000ドルの保険料用の税金控除をし、現在のように居住州のなかでしか保険が購入できないという規制をなくして、この5000ドルを使って国中どの州でも自分の好きな保険に入れるようにするというものだ。ここでもまたマケインは鉛管工ジョーの名前を持ち出した。

そこで私の古い友達のジョーですが、ジョー、オバマ議員の政策では、中小企業の経営者で(中略) 我が友よ、君がオバマ議員が強制する保険計画を導入しなければ、オバマ氏は君に罰金を課すのです。

….
へい、ジョー君は金持ちだ、おめでとう。新しくビジネスを購入するために一日10時間から12時間も週七日間働いていた。(オバマ氏に向かって)でもあなたは富を分配したいという。つまりジョーの金を取り上げてあなたがどう使うかを決めようというのです。
でもジョー、君は金持ちだ。おめでとう。いまや君はオバマ議員が強制する保険制度を供給しなければ罰金を課せられる階級に入った。君が自分の家族や子供達や従業員に良いと思う制度を選ぶんじゃなくて、オバマが議員が強制するんだよ。

とまあこんな調子で討論中マケインの攻撃にオバマの防衛という形が続いた。これまでの討論のなかでもマケインは最高の出来だったと思う。
無論主流メディア、特にCNNなどは討論後二時間にしてフォーカスグループとかいう視聴者からアンケートをとって、討論はオバマの圧勝だったなんて意味のない調査結果を発表して世論操作に必死だ。
また今朝になって、オバマ支持者の奴らが鉛管工ジョーの地元へ出かけていてジョーに嫌がらせを始めたという話を聴いた。ミッシェル・モルキンによると、主流メディアはジョーの私生活を洗い始めあら探しをしているという。
問題なのはジョーの私生活ではなくて、ジョーの質問に対してオバマが「富を配分したい」と答えたことにあるのではないか?こういう社会主義まるだしの本音を語ったオバマの言葉にこそ注目すべきである。
マケインがそのことを討論会で何度も指摘したことは非常に効果があったと思う。これがマケインの支持率向上に反映するかどうか、ここ数日の世論調査に注目しよう。


1 response to マケイン圧勝! 鉛管工ジョーが主役になった米大統領候補討論会

vbNullString15 years ago

マケインが討論勝ったって笑える。Joe the Plumberって配管工の免許だってなかったし、嘘ばっかりで共和党に雇われたサルでしたね。残念。

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