ジョン・マケインの支持率が下がっているなか、ミスターイチゴはこの間、マケインが勝つ可能性を少しでも保とうというなら、ふたつのことが起きなければならないと語っていた。第一に木曜日の副大統領弁論会で共和党副大統領候補のサラ・ペイリンが圧倒的な勝利を得ること。これはただ間違いを犯さない無難な演技なんてものでは絶対にだめで、民主党のジョー・バイドンに対して誰の期待も大幅に上回るパフォーマンスでなければ駄目だ。そして二つ目は、下院で審議されている経済安定法案が民主共和の同意を得て通ること。
どうやらこの二つとも実現したようだ。討論会の翌日の金曜日、
安定法案は通過した。

【ワシントン=西崎香】米議会下院は3日、最大7千億ドル(約75兆円)の不良資産買い取り制度などを柱にした「緊急経済安定化法案」(金融救済法案)を賛成263―反対171で可決した。ブッシュ大統領は同日署名し、成立させた。米国発の金融恐慌を回避する枠組みはできたが、金融危機の収束にはなお時間がかかりそうだ。

….法案は、相次ぐ金融破綻(はたん)で混乱した市場を鎮める緊急対策として打ち出されたが、先月29日の下院で国民負担増を警戒する強い反対にあい、23票差で否決されていた。再審議の可決をめざし、ブッシュ政権と議会指導部は総額1100億ドル(約12兆円)の減税などを追加。景気対策の色彩を強めた結果、それぞれ民主党から32人、共和党から26人の計58人が賛成に回った。同じ法案はすでに上院が1日に可決させている。
……易な救済との印象を薄め、国民負担増を食い止めるために(1)救済する企業から株式を得る権利をもらい、株価が上がった時に売って利益を得る(2)救済する企業の経営陣の報酬を抑える(3)住宅ローンの焦げ付きを防ぐため、政府が保証する低金利ローンへの借り換えを加速させる、なども盛り込んだ。

木曜日の討論会はかなり見甲斐のあるものだった。英語のトランスクリプトはこちら。
ペイリンのテレビから受ける印象は非常に良かった。彼女は輝いていたし明るい感じで言葉には自信が伺え、やり手のイメージをかもし出した。ペイリンはカメラを直接見て話たため、アメリカ国民に直接話しかけている印象を与えた。バイドンの方が点数で買ったという評論家もいるが、討論の点数稼ぎで勝っても選挙に勝たなければ意味はない。点数だけで勝てるなら、ニクソンはケネディに勝っていたはずだが、テレビ写りのいいケネディにニクソンはかなわなかった。不公平かもしれないが、このテレビ時代これは仕方ない。ペイリンが美人なのも得をしている。
しかし私はバイドンが点数でも勝ったとは思わない。ペイリンはしっかり自分の立ち場をまもったように思う。では前置きはこのへんにして討論の内容について吟味してみよう。
経済:
最初の質問はいわずと知れた経済安定法案について。討論直前に法案がお流れになってしまったばかりだったので、これはアメリカの政治に悪い面か良い面を示すものかという質問だった。
ジョー・バイドンはまずブッシュ政権を批判することからはじめた。

これは過去8年にわたる経済政策がいかに最悪のものであったかという証拠です。その結果が今回にみるウォールストリートの状態です。

バイドンはブッシュ政権のディレギュレーション、つまり規制の緩和と連邦政府による管理不行き届きが今回の株暴落の原因だとしているが、こういうところに彼がいかにリベラルな政治家であるかということが出てくる。元はといえば、政府が市場に関与しすぎたことが原因で今回の問題が起きたのである。政府が邪魔をせずに自由市場に任せておけばこんなことにはならなかったのだ。それもすべて民主党が始めたCRAに端を発し、問題を解決しようとしてきた共和党をことあるごとに邪魔してきたのも、金融企業から賄賂をもらって悪い住宅ローンが株式市場に流れるのを見てみぬふりをしてきたのも民主党だ。いまさら管理不行き届きをブッシュ政権のせいにしないでほしいね。
ま、それはともかく、バラク・オバマには計画がある。

まず最初にオバマは(政府による)管理が必要だと語っています。財務省長官のために誰かがチェックすることができなければ空小切手は書かないことです。

二つ目に、家を持つ人々や一般の市民に目を向けることです。
三つ目に彼はこの場合、納税者を投資者のように扱うべきだと言っています。
そして最後にこの法案によって(企業の)社長などが利益を得ないようにすることです。なぜなら長期的にみてこの法案で金儲けをする人がかならず出てくるからです。
われわれは中流階級に注目する必要があります。なぜなら中流が育っていれば経済がそだち、みんながよくなるからです。金持ちや大企業ばかりに目をやっていてはいけません。….

まったく民主党の典型的なやり方だ。中流階級対「金持ちや大企業」。こうやって無理矢理アメリカ国内で階級同士に敵対心をもたせようというわけだ。しかし大企業が多くの納税者を雇ってくれるのではないのか? 上位10%の金持ちや大企業が80%のアメリカ経済を支えているという話を以前にきいたことがある。リベラルは金持ちや大企業の税金を上げさえすれば国家収入が上がると勘違いしているが、そんなことをすれば企業はどんどん海外に出て行き、アメリカ国民の多くが職をうしない、税金は入ってくる税金も大幅に減るのだということがオバマやバイドンにはわからないのだろうか?
サラ・ペイリンの答えはまず自分が中流階級のサッカーママであるとして、中流階級の苦しみは自分には良く分かると語った。しかし驚いたことに視聴者の反応を調べていた分析者の話ではここが反応が一番低い部分だったという。どうやら納税者は自分たちに同情してくれる政治家ではなく、結果を出せる政治家を求めているようだ。
しかし後半のペイリンの答えはマケインはブッシュ政権とは違うということを強調した。

幸いなことにジョン・マケインは改革を代表する者です。覚えておられるでしょうか、二年前、ファニー・メイとフレディー・マックの改革の必要性を押していたのは誰あろうジョン・マケ印です。警鐘を鳴らしていたのは彼だったのです。

しかし、過去一週間のマケインの党を越境した両党協力の努力によって、議会ではやっと議員たちがマケインの言葉に耳をかたむけつつあるとペイリンは語った。妥協案が通ればそれはマケインの努力の賜物である。ここで注意すべき言葉は「変革」そして「両党協力」。過去にはマケインが何かと党を越境して民主党と協力しあうやりかたは、ばりばりの保守派たちを怒らせ、リベラルなメディアを喜ばせた。しかしペイリンはマケインのこの実績をとって、マケインには意見の違うものを集めて法案を通してきた実績があるが、バラク・オバマは民主党の路線から脱線したことは一度もないと語った。つまり、本当の変革者はマケインなのでありオバマではないと主張してるわけだ。
バイドンは両党のギャップを埋めるにはどうしたらいいかという質問は一辺倒の言葉で流し、マケインが数週間前に言ったアメリカ経済は根本的に(安定性が)強いというコメントを批判した。バラク・オバマの選挙陣営はこの発言によってマケインが国民の苦しみを理解していないという汚い選挙宣伝をやっているのを受けての発言である。しかしペイリンはこの間違いを正した。

ジョン・マケインが経済は根本的に強いといったのはアメリカの労働者のことを言っていたのです。アメリカの労働者は世界中でもっとも偉大であり、創造力があり、労働倫理には根強いものがあります。

ペイリン技あり!ペイリンはバイドンこそアメリカの労働者のことが理解できていないと指摘したわけだ。ペイリンはさらに自分の市長として、後に知事として改革した実績をリストアップ。一匹狼といわれてきたマケイン同様、自分も変革者であると強調した。
サブプライムローンについてのペイリンの答えは批評家の間でもかなり良く受け止められた。

われわれは投資を扱っている組織を連邦政府が厳しく監視することを確かめなければなりません。そしてわれわれは借金をしないようにしなければなりません。私たちの両親が私たちがまだ最初のクレジットカードを持つ前に言ってくれたように、不相応な生活をしないことが大事です。私たち個人がそれぞれ責任をもたなければなりません。経済がこのようになったのはアメリカ国民のせいではありません。しかしこれは私たちが色々と教訓にする良い機会です。そして二度と私たちは利用されてはなりません。

税金についてもペイリンは攻撃をやめなかった。さすがバラクーダとあだ名があるだけあって、噛み付いたら話さない勢いをみせていた。ペイリンはオバマが増税案に94回も投票していることを指摘。そしてバイドンが提案した年収25万ドル以上の人の税金を上げるというやり方はアメリカ社会の根源となっている中小企業を傷つけるものだと批判。そして「所得再分配」という非常に強い言葉をつかってオバマ&バイドンは社会主義的だとした。しかもバイドンは過去に増税を愛国的だと言ったことについても下記のように批判。

タッド(夫の名前)と私が住む中流社会のアメリカでは、(増税)は愛国的でなどありません。愛国的なのは政府よ、お前はいつも解決策とは限らない。いやはっきり言って問題であることのほうが多い。家族に課する税金を減らして民間企業や一般家庭が富めるようにしてくれというものです。

面白かったのは、バイドンがなにかとマケインは石油会社などの大企業の味方だという言い方をしはじめると、決まってペイリンが自分が石油産出州の知事として石油会社と政治家の癒着と戦って改革を実現したのは自分だと反撃してきたことだ。それでバイドンのマケインへのこの手の攻撃は常に裏目に出てしまった。
というわけで経済に関して、ペイリンはマケイン&ペイリンこそが変革者なのであり、オバマとバイドンはこれまでどおりの増税第一のリベラル政治家であることを印象付けることに成功した。
外交:
イラク戦争についてもペイリンの攻撃は続いた。ペイリンはオバマは戦争に反対しただけでなく、反対しないと公約していたにもかかわらず、戦争に必要な経費の予算案にも反対したこと指摘。 これについて当時真っ先に批判したのは誰あろうジョー・バイドンであること。オバマが政治的な圧力に負けて公約を破ったことや、バイドンがオバマは大統領に適していないと語ったことなども持ち出した。
自分の言葉をつかっての攻撃にバイドンはマケインも戦争の予算案には反対票を投じていると指摘した。しかしこれはマケインは別の予算案を支持していたから民主党の規制だらけの予算案に反対したというにすぎない。こういう批判は非常に不誠実だ。ま、民主党だから当たり前だが。
バイドンの息子はイラクに派遣されたこともあり、ペイリンも息子はいまイラクへ向かっている。だからイラク戦争は二人にとっては個人的にも非常にだいじなことである。しかしバイドンとちがってペイリンには根性があると私は思った。ペイリンはオバマの撤退計画を「白旗の降参だ」と批判した。

あなたがたの計画はイラクにおいて白旗の降参です。わが軍が本日聞かなければならない言葉ではありません。そしてそれはわが国民が頼りにすべきことではありません。あなたがたは増派に反対しました。増派は成功しました。バラク・オバマはいまだにそれを認めることさえできないでいます。

バイドンはブッシュ政権のイラクにおける失態を何べんも繰り返した。バイドンはそうすることでイラクの失態があたかもマケインの失態であるかのように思わせたいようだった。しかしこのやり方はばかげている。マケインは常に元防衛長官のラムスフェルドのやり方には批判的だった。マケインは最初からもっと多くの軍隊を起動しなければ駄目だと抵抗戦力が問題になる前から口をすっぱくして唱えていたkらだ。
バイドンはオバマが過去に何度も繰り返したように、ジョン・マケインは対テロ戦争の焦点をイラクにあてているが、これは間違いだと強調した。テロリストはアフガニスタンやパキスタンなどよその国にいるのだと。
これに対しペイリンは優しい笑顔をうかべながら、イラクが戦争の焦点であると語ったのはペトラエウス将軍とアルカイダだと指摘。また、ジョン・マケインはブッシュ大統領とは違うこと、バイデンが過去ばかり見て未来を見ようとしないと語った。戦略を変える増派を押していたのはマケインだ。ここでもペイリンはマケインこそが変革者なのだと主張することを忘れなかった。
イランについてはペイリンはオバマが条件抜きでイランの大統領と会談をすると言ったことについて、これはナイーブを通り越して判断力に欠けると激しく非難。そこで司会者は外交は大切ではないのか質問した。
ジョン・マケインが条件抜きでの会談はしないと言っているのは、まったく敵国との交渉を行わないという意味ではない。色々なレベルでの交渉は無論行われなければならない。そうしなければどうやってマケインのいう「条件」を設立することができるのだ?これにもペイリンは非常に良い答えを出した。
自分は数日前にニクソン時代の国務省庁官であるキッシンジャー長官と外交の大切さを語り合ったとした後で、アメリカを嫌っている独裁者と条件抜きで差し出向き合うなど正気の沙汰ではない(とまではいってないか、、、)。これは判断力が悪いだけでなく危険だと語った。
このキッシンジャー長官云々というのは、先の大統領討論会でオバマがやたらとキッシンジャー長官の言葉を持ち出してきて、長官も条件抜きで独裁者と向き合うべきだと語ったと大嘘をついたことへのジャブである。明らかにオバマはキッシンジャー長官とは面識がないが、マケインは長官とは35年来のつきあいだし、ペイリンも個人的に長官を知っているようだ。
で、討論の結果は?
全体的にみてペイリンはすばらしかったと思う。冒頭に書いたように、マケインが今回の選挙で勝つ可能性を多少でも保つためには、1)ペイリンが期待以上のパフォーマンスをすること、2)下院で経済安定法案が通過すること、だ。私はこの二つとも実現したと思う。しかしこれが実際にマケイン&ペイリンの支持率を上げることになるかどうか、それは数日後の世論調査をみるまでは分からない。
私は支持率はあがると思う。大統領討論会といい副大統領討論会といい、民主党候補の話を聞いていて、やつらが政権を握ったときのことを考えたら背筋が寒くなる思いだ。
本日は10分間で1ドルという馬鹿高いインターネットカフェから書いてるので、推敲に時間を要せない。間違いだらけのエントリーになっていたらぜひご勘弁のほどを。


2 responses to 副大統領討論会、ペイりン強さ見せる!

vbNullString11 years ago

副大統領候補ディベートの後もマケインの支持は下がり続けてますね。

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Sachi11 years ago

vbNullStringさん、連続のコメントありがとうございます。
うちのブログはアメリカの保守派の声を紹介するブログですから、もちろん偏向しています。
これからもよろしく。
カカシ

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