サブプライムローンの危機に瀕して、民主党率いる下院議会は解決策を出さないまま先日、今期の議会を休会する旨を発表した。その理由というのが傑作なのだが、誰も解決策を考えられないからだというのだから笑ってしまう。もちろんここでいう「誰も」とは「リベラルな民主党の誰も」という意味だが。
現に民主党の力など借りなくても、ブッシュ政権のヘンリー・ポールソン財務省長官( Treasury Secretary Henry Paulson)の提案のおかげで、なんとか当面の危機は免れそうな見通しである。下記はCNNの日本語版より。

ワシントン──ブッシュ米大統領は20日、向こう2年間で不良資産を最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金で買い取る米政府方針を発表した。米議員らは今週末、財務省および連邦準備制度理事会(FRB)の関係者と案の詳細を詰め、この1週間世界を揺るがした金融危機の軽減に努める。

ブッシュ大統領は、訪米したコロンビアのウリベ大統領との共同記者会見の席上、米国が前例のない事態に対応していると発現。「(金融危機は)大きな問題なので、措置の規模は大きい。奏功すると確信している」と述べ、米政府が大勢の専門家と連携して案を策定したことを強調した。
買い取り対象となるのは、銀行や住宅ローン会社で焦げ付いている住宅ローン関連の資産。議会指導者らは金融危機の緊急対策案を超党派で支持し、26日の議会休会前に可決する見通しだ。

元はと言えば自分らでまいた種、本来ならば民主党こそが悪の根源となったサブプライムローンの本質的な改革に挑むべきなのだが、リベラル連中がそんなことをするわけがない。
ブッシュ大統領の方針発表のおかげで大暴落をした株式市場も回復の兆しをみせている。しかしブッシュ大統領の解決策は一時的なものなので、長期的な問題はまだ解決されていない。
民主党が無力であると認めた以上、ここはひとつ共和党がこの問題を中心に選挙運動に取り組んでほしいものである。民主党が作り出したアメリカ経済最大の危機を民主党攻撃の武器に使わないという手はない。
共和党はこれまでに何度も住宅ローン改革の提案をしてきた。だからここでひとつこれまでの共和党の提案を解りやすくまとめて国民にアピールすべきだ。たとえば社会主義的なCRA法(注1)をいますぐ撤去する、銀行ローンを肩代わりするファニーメイやフレディーマック(注2)の改革など得策だろう。
無論民主党がそのような提案に賛成するわけはないので、共和党はその事実を最大限に国民にしらしめ、本当の変革を望んでいるのはバラク・オバマ率いる民主党ではなくて、マケイン率いる共和党なのだと提唱すべきである。
注1:CRA法、1970年代にジミー・カーター大統領政権が作り出したにCommunity Reinvestment Actのことで、銀行や信託会社に返済能力のない借人に住宅ローンを提供するよう強制した法律。
注2: ファニーメイとフレディマックとはThe Federal National Mortgage Associationの通称で、1968年に設立された連邦政府がスポンサーとなっている住宅ローン専門の金融機関だ。二つの機関は一応民間企業ということになってはいるが、連邦政府によって保護されているためほぼ政府機関といっても言い過ぎではない。お役所仕事が常にそうであるように、これらの機関の管理はずさんで不祥事は絶えない。


4 responses to 米経済危機、いまこそ共和党の出番

ハズレ社会人16 years ago

CDS残高6500兆円突破 デフォルトを防げ

オツカレです。
AIG救済あたりから一気にクローズアップされるCDS。
[21日 CNN ワシントン]不良資産買い取りに7000億ドル

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hatch15 years ago

えーっと、もう少し公平に歴史を見ませんか苺さん。
大体、30年前の法律(CRA法)を民主党が作成したからこんなことになったというのは、強引です。その時代の要請というのを考えないとだめでしょう。
それに、苺さんの言う
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ファニーメイとフレディマックとはThe Federal National Mortgage Associationの通称で、1968年に設立された連邦政府がスポンサーとなっている住宅ローン専門の金融機関だ。
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は正確ではありません。正しくは1968年にファニーメイが民営化され、フレディマックはファニーメイを保管するために1970年に設立されたが正解。日本人の私がちょっと調べただけで間違いを正せることを安易に書かないようにオススメします。
さて、以下にアメリカの住宅ローンの変遷を引用します。
菅野哲正さすらいブログ からの引用です。
http://nk.e-consul.info/11_business/post_46.html
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サプライムローン問題とアメリカ住宅ローン事情

サブプライムローン問題の混乱は一応小康を保っているかのようですが、今後、世界のどこの市場に飛び火しないとも限りません。
ちょっと気になったので、この問題の背景になっている米国の住宅ローンの事情について調べてみました。
アメリカの住宅ローンを考える場合、1929年の大恐慌にまで遡らなければなりません。
アメリカ経済が大恐慌から立ち直るために、テネシー川の開発などの公共事業が大規模に行われたことが有名ですが、政府は同時に中産階級向けの住宅融資に力を入れたことも忘れてはなりません。
内需の拡大には、公共事業と住宅建設が大いに役立つことは、今も昔も変わらぬ事実です。
特に1920年代中ごろに100万戸近くあった新規住宅着工件数が、1930年代中ごろには10分の1に減ってしまいましたから、住宅産業のテコ入れは景気回復のうえからも最重要でした。
そこでアメリカ政府は、FHA(連邦住宅庁)を設立して、低所得者に対する債務保証を行いました。
FHAが誕生したのは1934年ですが、政府はもうひとつファニーメイ(連邦抵当金庫)という組織を1938年に作りました。
これは例えばアメリカ西部の住宅ローンを東部に売るといった具合に、住宅ローンを流動化する役割を担っていました。当時のアメリカで西部は住宅需要が活発で、これを豊かな東部の資金でまかなうことにしたのです。
1930年代に登場したFHAとファニーメイは大きな効果をあげ、
1940年代の初めには住宅着工件数は、ほぼ大恐慌前の水準に戻りました。
★ 住宅ローンの証券化で融資残高が急増 ★
1970~80年代に入って、折からの高金利と長期の固定金利による貸付は、住宅ローンの貸し手である金融機関(主にS&L)の経営を圧迫しました。
そこで考えられたのが、「住宅ローンの証券化」の動きです。
つまり金融機関が抱える住宅ローンの金利リスクを市場に転嫁するわけです。
1938年設立のファニーメイは1968年に民営化され、同時に設立されたジニーメイ(政府抵当金庫)とともに住宅ローンの証券化に乗り出すことになります。
また、1980年代に経営破綻したS&Lに替わって、大手商業銀行が子会社としてモーゲージバンカーを設立し、ここが新たな住宅ローンの融資機関になりました。
今回のサブプライムローン問題で経営危機が噂されるカントリーワイド社は、米国最大のモーゲージバンカーです。
2000年代に入ってからの世界的な金利低下を受け、アメリカの住宅ローン金利も低下の一途を辿りました。同時に好景気による住宅ブームが起きました。
ブームの中身は、もちろん実需もありますが、値上がり期待の投資目的の購入もありました。
1995年から2005年までの10年間で住宅ローンの融資残高は約2倍(約1200兆円)になり、2005年貸付総額は349兆円と、日本の同時期の23兆円の約15倍です。
融資残高ベースで約60%が証券化しています。
ちなみにわが国の住宅ローンの証券化の割合は、約6%です。
アメリカでは本来証券化市場が発達しているため、住宅ローンの利用者は長期固定金利の住宅ローンを選ぶことが出来たわけですが、住宅価格の値上がりによって、返済開始当初の返済額をできるだけ低く抑える変動金利型住宅ローンを利用する人が多くなっています。
また固定金利型のなかにも、一定期間は金利のみを返済して、その後、元利均等返済する「インタレストオンリー(IO)型」が登場して、当初の返済額が低く抑えられているローンの利用者が増えています。
今回の一連のサブプライムローン騒動の中で、これらの人々のローンの焦げ付きが拡大しているのも、大きな問題です。
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ちなみに1980年代に破綻したS&Lはアメリカ人がこよなく愛する「素晴らしき哉、人生」原題”It’s A wonderful Life”の舞台になった金融機関の一つです。
先ほども書いたように、人間に30年以上先の見通しを求めるのは無理です。その責任は時代の変化を感じず、先人の知恵をその時代にあうように変えないで手をこまねいた現代人にあると私は思います。
ああ、そう言えばFRB理事長が主張したAIG救済案に難色を示したブッシュ大統領に対して、理事長は「あなたは大恐慌を引き起こしたフーバー大統領になるつもりか!」と迫ったそうですね。
先人の轍を踏まなかったブッシュさんに拍手。

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Sachi15 years ago

hatchさんへ、
ファニーメイの設立はルーズベルト大統領の時代ですが、民営化が68年だったんですね。ご指摘ありがとうございます。
ただ、30年前だろうと60年前だろうと自由市場への社会主義的な政府関与が市場に問題をもたらすことは充分に予期できたことなので、ジミー・カーター政権の責任は多大にあります。それにその後で、すでに問題となって来た時に共和党が何度もこの悪法を撤回しようとした法案を金融企業からの賄賂をもらっていた民主党が阻止してきた責任は拭えません。
今回の大きな問題は証券化された住宅ローンのなかにサブプライムローンが含まれていたということです。本来ならばサブプライムは証券にまわしてはいけないはずなのですが、ローンが売却される度に元々のローンがサブプライムだったのか普通のローンだったのか解らなくなってしまったことに問題があるわけですね。
それで蓋を明けてみたら中身がなかったっていう状態ですよ。私は元来政府が市場に関与するのは好きじゃないですが、今回はしょうがなかったと思います。
カカシ

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hatch15 years ago

まず、苺さんの言う
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CRA法、1970年代にジミー・カーター大統領政権が作り出したにCommunity Reinvestment Actのことで、銀行や信託会社に返済能力のない借人に住宅ローンを提供するよう強制した法律。
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これのもう少し詳しい経緯を探してみました。
「米国のコミュニティ開発金融機関と支援の仕組み
−欧米地域金融調査①(米国編)−」
URLは長すぎたので上の括弧内をググってください。pdfファイルとHTMLバージョンの両方がヒットするはずです。
米国は歴史上コミュニティに根ざした小さな銀行が多かった。ところが1980年代、レーガン大統領の金融自由化により・・・以下は上記文章からの引用です。
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自由化前は、商業銀行、貯蓄金融機関、信用組合がそれぞれの別の業態として成立していたが、自由化以後、貯蓄金融機関と商業銀行の同質化、統合が進み、地域金融機関の大規模な再編が生じた。この再編は、地域金融に大きな歪みを生じさせたと言われている。すなわち、銀行空白地域の出現、地域的な資金偏在、基礎的金融サービスの低下である。
この地域金融機関の大規模な再編の歪みに対応して、クリントン政権下、地域再投資法の強化及び、1994年、リーグル地域社会開発・規制改善法により、コミュニティ開発金融機関(CDFIs)(コミュニティ振興の公共目的を持つ銀行、信用組合、非営利法人)を支援する CDFI ファンドの設置等が行われた。これらの支援に基づき、各地域でコミュニティ開発金融機関CDFIs)が設立され、現在の地域金融システムが成立した。
このような地域金融システムが成立した背景には、「地域の資金を地域に還元する」という思想とこのためのシステム(地域再投資法)が存在していることがある。地域再投資法に基づき、当局は、ほぼ1年半毎に金融機関が地域の信用需要に応えているかを検査し、4段階の総合格付を公表する。当局は、金融機関の合併・買収、支店開設等の審査にあたり、当該格付を重視して可否判断を行うのである。地域再投資法の評価については、市場規律をゆがめる等の批判はあるものの、地域金融振興の観点からは、大銀行、中堅銀行がコミュニティ開発金融機関(CDFIs)へ出資する理由となり、コミュニティ開発金融機関(CDFIs)発展の原因となったと考えられる。
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なるほど、1970年代以後もレーガンが自由化し、政権交代後、今度はクリントンが元に戻して、規制を強化したわけですね。
共和党支持の苺さんの主張も間違いではありませんね。
でも、サブプライム問題をこれだけを原因とするのは無理があると私は考えます。
私が見つけたサブプライム問題をわかりやすく解説したのが下記のサイトです。
ベア速 やる夫で学ぶサブプライム問題
http://vipvipblogblog.blog119.fc2.com/blog-entry-148.html
9.11からイラク戦争後まで続いたアメリカの低金利政策と世界中の金余り現象、これがアメリカの住宅バブルを生み、返せなくなれば値上がった住宅を売れば返済できるという考えを蔓延させた。こんなところでしょうか。
ところで、苺さんはウィリアム・レヴィットという人をご存じでしょうか?
第二次大戦後、戦場から帰還した兵士たちの住宅難を解消すべく、2×4住宅を発明し、大量の住宅を短期間に作り上げた人です。今も全米にあるレヴィットタウンの生みの親です。私自身はこの人を下記の本で知りました。デイヴィッド・ハルバースタム著「ザ・フィフティーズ 1950年代アメリカの光と影」新潮OH!文庫 全3巻 原題は THE FIFTIES。
アメリカの製造業の健全な創意工夫がわかって非常におもしろかったです。簡単に言えば、住宅産業のヘンリー・フォードとでも言うべき人です。
この人の極めつきの名言がこちら。時代は50年代共産主義との冷戦下です。
「自分の家と土地をもっていれば、共産主義者になどなるわけがない。何しろ、あれこれやることが多すぎるからな」
苺さんの言うように、返せもしない人間に大金を貸すのは無茶です。しかし、恒産をもてない人間の堕落は社会の不安を生みます。
1950年代、アメリカの製造業は活力があり、大量の労働者が必要でした。今のアメリカは軍事力は圧倒的ですが、製造業に力がありません。日本は産業の取捨選択が下手すぎですが、アメリカは儲からないからと産業の切り捨てが早すぎたのではないでしょうか。
この点については共和党とか民主党の問題ではなく、アメリカの問題だと私は考えます。いかがでしょうか?

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