またまたオバマの失言、アフガニスタンでアラビア語の通訳が足りないって?

私は何度もヒラリーが賢く見えるオバマの失言の話はここここなどで書いてきたが、今回もまたまたバラク・オバマがおかしなことを言った
ミズーリ州で選挙運動中のオバマはアフガニスタンの戦況がうまくいっていないことの理由として、アフガニスタンに充分なアラビア語通訳がいないことがあると語ったのである。下記はレッドステートから引用。

「特定の数の(通訳)しかいないのに、それが全員イラクにいってるので、アフガニスタンの我が軍は困っています。」とオバマは語った。もちろん事実はアフガニスタンではアラビア語ははなされておらず、通訳はほぼ100%地元市民が使われている…ことを考えると間違いを通りこしてお笑い草である。

オバマは続けて、「我々にはアフガニスタンに農業の専門家が必要です」と語った。「ヘロイン用の芥子ではなく、他の作物を生産できるように援助する人員が必要なのです。なぜならアフガニスタンの麻薬取引がテロリストネットワークの資金源となっているからです。ですから農業専門家が必要なのです。」
「でも専門家をすべてバグダッドへ送っていてはアフガニスタンに行く人がいません。」

イラクとアフガニスタンでは自然環境が違いすぎる。イラクの専門家をアフガニスタンに連れて行っても意味ないだろう。レッドステートはオバマの文化や産業の無知に加えて、アメリカ軍がひとつところに出動したら別の場所へは出動できないと思い込んでいる軍事的な無知さ加減にも呆れている。現状はアフガニスタン出動軍の規模はイラク戦争以前も以後も全く変化がないのである。次期大統領を目指そうという人がこんなことも知らないなんて信じられない。しかもアフガニスタンの状況は決して悪化していない。
以前から私はタリバンがアフガニスタンで春の総攻撃を予告しておきながら、冬の間にNATO軍にこてんぱんにやられて来た話はしているが、オバマはそうした事実すら知らないらしい。
でもカカシさん、アフガニスタンの状況はあまり話題にならないし、オバマが知らなくてもそれほどおかしくないんじゃありませんか、ブッシュ大統領だって以前にパキスタンのムシャラフ大統領の名前を思い出せなかったこともあることだし、、とおっしゃる読者もいるかもしれない。
だが、ブッシュがムシャラフの名前を知らなかったのは、パキスタンではクーデターが起きた直後で、しかもアメリカにとってパキスタンが大事な国になるという前触れが一切なかった時のことである。しかもそれまで当時のブッシュ大統領候補はパキスタンのパの字も語ったことが無かったのである。
それに引き換えオバマ上院議員は何度となくイラク撤退の理由としてアフガニスタンの状況をやたらに引き合いに出してきている。しかもオバマは上院議会でNATO監督の管轄権があるヨーロッパ委員会の会長なのである。これについては同じ民主党候補ライバルのヒラリー・クリントンが2月の討論会でこんな指摘をしているのである。
オハイオ州のクリーブランド市での討論会でヒラリー・クリントンは民主党候補ライバルのオバマに対して「NATOはアフガニスタンの任務に対して不可欠である」しかるにオバマ氏はアフガニスタンにおけるNATOの存在をどう強化するかについて一度も審議会を開いたことがないと批判した。
これに関してオバマは自分が委員会の会長に任命されたのは大統領選挙運動がはじまった2007年の初めだったと言い訳をした。つまりオバマは図らずも自分は選挙運動に忙しくて肝心の上院議員としての仕事を怠っていたと白状してしまったのである。
オバマのこの無知蒙昧な発言を聞いていると、NATO管理の立場に居ながら、オバマはアフガニスタンの治安維持はアメリカではなくNATO軍の管轄なのだということすら知らないのではないだろうかと疑いたくなる。
ところで現在イスラエル訪問中のブッシュ大統領の演説でおもしろいものがあった。それに対するオバマの反応が傑作なので是非それを次回紹介しよう。


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カリフォルニア最高裁、同性結婚禁止法は違憲と判決

今年の3月8日のエントリーで、カリフォルニア最高裁で同性結婚を禁止する州法が合憲かどうか審議されているという話を紹介したが、本日この法律は違憲であるという判決が下った
この判決は2000年に通った州法22条を覆すものだが、この州法とは、すでに1978年に取り決められた結婚は一夫一婦制という言葉をさらに強調するべく「カリフォルニアにおいては一夫一婦の間でのみ結婚が正式に認められる」というもので、61%の圧倒的な州民の支持で通過していた。
民主党が独占するカリフォルニア州議会において、この法律を覆す議案が二回通っているが、知事のシュワちゃんは二回とも拒否権を使って拒絶してきた。その理由は「州民に意志を尊重する」というものだった。ところが、これを最高裁が違憲としたということは、法廷が州民の意志をふみにじったことになる。
この判決には二つの問題がある。ひとつは言わずと知れた同性結婚の合法化による弊害だが、もうひとつは法廷による独裁だ。
同性結婚の弊害については前に同性結婚は文明社会を破壊するで書いているが、一つの州で結婚が認められれば、別の州でも認めざる負えなくなるのでこれはカリフォルニア州の問題だけでは済まされない。
また法廷が気に入らない法律をきちんとした理由もなく違憲としてしまう弊害はこのことだけでは収まらない。アメリカは三権分立を基本としており、法廷に立法権はないはずだ。それが州民の意志を無視して法廷が強引に特定の法律をおしつける行為は非常に問題だ。
では、カリフォルニア州民はこのまま意に反した同性結婚をみとめざるおえないのかというとそうではない。州民には州憲法改正という最後の手段がある。
すでに保守派や宗教グループが協力して憲法改正案を11月の選挙時の項目に入れる運動が起きている。州務長官は6月の終わりまでに選挙項目に入れるだけの署名が集まったかどうか判断を下すことになっている。すでにこのような州憲法改正法は26の州で通過している。これによって憲法が改正されれば、今回の法廷判決は無効となる。
この判決は実は英語で言うところの「偽装した祝福」というものだという見方もある。つまり、11月の一般選挙を前にして保守派が政治に関心を持つ大事な問題が持ち上がったとなると、リベラルが多いカリフォルニアでは普段はあまり元気のない保守派層が何が何でも憲法改正案を通させようと投票に現れるからである。せっかく投票にいったのだから、地元の共和議員にも票を入れておこうということになり、保守派議員には有利な結果が生まれる可能性がある。
また、大統領の大事な役割に裁判官の任命があるが、もし次の大統領が民主党から出れば、連邦政府の裁判官は必ずはリベラルが任命される。特に最高裁ではすでに高齢の二人がおり、次大統領が新しい最高裁判官を二人任命しなければならないことは確実だ。裁判官がリベラルであれば、今回のカリフォルニアの同性結婚のように法廷からリベラルな方針が国民に強制される可能性大である。
全国の保守派がカリフォルニアを見て、次期大統領は絶対に民主党に渡してはならないと考えて、マケインはバリバリの保守派ではないと支持に消極的だった有権者もオバマよりはよっぽどましと気がついてくれるかもしれない。
リベラルの性質はおごりの行き過ぎ。今回はカリフォルニア法廷はリベラルに権限を渡せばどういうことになるかを顕著に表す例であった。そしてこれは保守派の取るべき道をはっきりさせたものと言えるだろう。


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マフディ軍、ほぼ全面的に降伏だが、、NYTの不思議な報道

昨日ニュースでイラクで政府軍にこてんぱんにやられているイランの飼い豚モクタダ・アル・サドル率いるマフディ軍がやっと政府が要求していた停戦条件を受け入れたという記事を読んだのだが、マフディ側の報道官がノーリ・アル・マリキ首相が主張していた武装解除には応じないと言っていたことや、イラク政府側はいつでもサドル・シティへ攻め入れられると書かれていたことなどから、いったいどういう条件がまとまっての停戦なのかさっぱり理解できなかった。
今日になってニューヨークタイムスの記事を読んでみると、余計にわけが分からなくなった。アメリカの主流メディアを読む場合はかなり行間を読む技能を身につけておく必要がある。

この取り決めによって大事な地方選挙を数ヶ月に控え不人気な混乱状態から双方が後退できることとなった。どちらが勝ったのか明らかではなく、停戦までどれだけかかるのか、停戦をどれだけ保持できるのか定かではない。 しかし少なくともいまのところシーア間での戦闘は終わりを告げた。

この間までイラク政府がマフディ軍に押され気味だと言っていたニューヨークタイムスが「どちらが勝ったのか明らかではない」と言っているところをみるとイラク政府が勝ったと読むことができる。後の方の文章を読んでみよう。

合意条件の元でノーリ・アル・マリキ首相の政権は現在無法状態となっているサドル市の統括権利を獲得し、そのかわりサドル氏の民兵軍で直接戦いに参加していないメンバーを逮捕しないことが保証された。

停戦交渉を行う決断は双方がお互いに地盤を失っていると気がついたことから始まった。サドル市の市民は自分たちの被害について双方を責めている。

戦いが始まる前は、サドルシティはマフディ軍の連中が思うままに牛耳っていたのに、停戦後は政府軍が市を統括する権利があるというなら、どっちが勝ったのか明白ではないか。
だいたい戦闘をやっている双方が地盤を失うというのはどういう意味だ?お互い競り合って引き分けならお互いに土地を失うはずはない。どちらかが土地を失ったならどちらかがその分を獲得しているはず。この文章全く意味をなさない。
またサドルシティの住民はほぼみなマフディ軍の仲間かサドルの支持者のはずで、その住民が自分らの苦労の原因がマフディ軍にもあると責め始めたということは、住民によるマフディ軍への支持が減っているということになる。
この後もNYTはサドル派が政治的な支持を失い孤立してしまっていること、マリキ政権には他党からの支持があることを記載している。そしてマフディ軍がどれだけ痛手を負ったかということについても認めざる終えない。

シーア民兵たちも損失は上がる一方だ。彼らはより多くの犠牲者を出しており、戦闘に真っ先に巻き添えになる市民の死亡についても責任を問われている。木曜日からすでに30人以上が殺されている。(カカシ注:おなじみのビル・ロジオによるとマフディ軍は3月25日の戦いが始まって以来すでに合計562人を殺されている。)

NYTの複雑な書き方で混乱しないようにここで整理してみよう。

  • サドル市はマリキ政権の統治下となった。
  • 政府は戦闘に参加したマフディメンバーの逮捕は続行する。
  • マフディ軍は政府軍側より多くの犠牲者を出している。
  • マフディ軍はサドル市民からの支持を失いつつある。
  • サドル派は政治的に孤立し、マフディ取り締まりについて他党がマリキ政権を支持している。

これでもどっちが勝ったか明らかではないのは反米の主流メディアくらいだろう。
ここでさらにわかりやすくするために、ビル・ロジオに実際の停戦条件がどういうものだったのか説明してもらうことにしよう。

  • イラク政府とマフディ軍は4日休戦する。
  • 休戦後、イラク軍はサドル市に入り令状があるか、もしくはマフディ軍が中武器及び重武器(ロケット弾、ロケット、モーターなど)を所持している場合の逮捕を続行する。
  • マフディ軍とサドル派はイラク政府が警備統括をすることを認識し法の施行のため警備軍を運用させる権限を認める。
  • マフディ軍は国際ゾーンへのモーターやロケット攻撃などの一切の攻撃を止める。
  • マフディ軍はサドルシティ市内の路肩爆弾をすべて取り除く。
  • マフディ軍は「違法法廷」を閉鎖する。
  • イラク政府はサドルシティへの入り口を解放する。
  • イラク政府はサドルシティ住民への人道的救済を行う。

マフディ軍は武装解除には応じないと息巻いているが、イラクは危ない国なので一般人でも自動小銃やライフルの所持は合法とされている。だから中もしくは重武器の没収を認めるということは、事実上武装解除を認めるということになる。またこうした武器を持っている人間をイラク軍は令状無くして逮捕出来るのであれば、結果的にイラク軍はマフディ戦士の逮捕は自由に出来るということだ。イラク政府がサドルシティ住民への救済を行うという点は非常に重大だ。すでにサドルシティ市民はマフディ軍に今回の戦災を責めているなか、イラク政府が現れて市民への救済を始めたら市民はいったいどう感じるだろうか?一般市民にとって自分たちの生活を守ってくれる方こそ自分らの味方のはずである。マフディ軍がイラク政府にその役割を受け渡したということは自分他たちにその能力がないことを認めたことになる。
これでもどちらが勝ったか明らかではないかな、NYTさん?
さて、この先がNYTとビル・ロジオの間で食い違う点なのだが、ロジオによるとイラク政府はサドル派に停戦に応じるように圧力をかけたわけではなく、内部からの圧力によって停戦に合意する動きがあったのだという。ダワ党のアリ・アル・アディーブ氏は、「サドルシティ市内の市民からの圧力が彼らにもっと責任もった行動をさせたのです。」と語っている。
しかしNYTの記事ではイランからイラク政府に働きかけがあったと書かれている。

停戦条約の三人の関係者によると、イラク議会のシーア派メンバーが今月の初めイランを訪れた後、イランが引き分け状態にその影響力を及ぼしたとのことである。

カカシが思うに、イランにはイラク内政に影響を及ぼすような力はない。だいたいイランがイラクに影響を及ぼしたいならイランからイラクへ使者が送られてくるはずで、イラクからイランへシーアメンバーが訪問するというのは話が逆だ。
NYTはイラクのシーアメンバーがイランに対してサドル派に政府への抵抗を止めるよう説得して欲しいと嘆願に行ったと言いたいのだろうが、もしサドル派が勝っているならイランが何故イラク議会メンバーのそんな嘆願を聞く必要があるのだろうか?イランにとって民主主義のイラクなど目の上のたんこぶである。イラクがイランに同調するシーア派連中によって牛耳られればそれに超したことは無い。もしサドル派がイラクで勝利をおさめつつあるならば、イランがサドル派援助の手を緩める必要がないどころか、ここぞとばかりにサドル派援助を強化させるはずである。
ではイラクシーア派の使者たちはイラン政府に何を告げたのであろうか?
イラン政府は馬鹿ではない。もし正式にイラク政府と戦争をするとなれば背後にいるアメリカにイラン攻撃の正式な口実を与えることになるのは充分に了解している。イランは秘密裏にイラク内部の抵抗組織を援助してイラク政府の安定を崩しアメリカ軍に痛手を負わせたいだけなのだ。面と向かってイラク・アメリカ同盟軍と戦う意志もなければ能力もない。
となればイラクの使者がイラン政府に告げた内容は自ずと明白になる。もしカカシが壁の蠅ならこんな話を聞いただろう。
イラク使者「イランさん、あんさんがたイラン政府がサドル派をそそのかしてイラク政府に盾をつかせてるっつうのは周知の事実でござんす。表立っておやりじゃねえんで今のところアメリカさんは無視してやんすけどね。しかしこれ以上サドル派が抵抗を続けるなら、こちとらとしてもあんさんがたのやり方をおおっぴらにしねえわけにはいかねえんでござんす。そうなりゃアメリカさんも黙っていねえでしょう。あんさんらもアメリカさんと正面切っての戦はやべえはず。どうです、このへんで手を打ってサドル派を撤退させてはいかでやんすか?」
てな具合での説得というか脅迫が行われたと考える方が自然だろう。
こうやって読んでみると、今回の停戦条約の実態がかなり明らかになったと言える。それにしてもアメリカ主流メディアの新聞記事解読に要する技能は半端じゃないな。


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謎につつまれる聖火エベレスト登頂

昨日のエントリーで紹介したぼやきくっくりさんのエントリーでも、中国登山チームによる聖火登頂の秘密めいたやり方にはいくつかの疑問が残るというご指摘があった。登山チームの全員が無事生還したのだろうかというのもその一つだ。

…気がかりなことがあります。「全員」が無事にチョモランマ(エベレスト)山頂にたどり着いたのでしょうか?
…チョモランマでは通常の登山でも毎年死者が出ており、(アルピニスト・野口健)さん自身、昨年登頂した際に仲間を一人亡くされているそうです。
 日頃から訓練している登山家であっても死と隣り合わせの危険が伴うのに、聖火ランナーたちは日にちが厳命されているから、悪天候の中でも決行せざるを得ない。そういう厳しい条件下での登頂となったわけです。
 1960年代にチベット側からのチョモランマ初登頂を達成したのは中国隊でした。実はこの時、死者が出たのではないかと登山関係者の間で言われているそうです。公式記録には全く載っていないが、「初登頂記録」を輝かしいものにするために公にしなかったのではないかと、野口さんは言います。
 今回の聖火リレーで死者が出れば大変な騒ぎになります。…入山禁止の理由を中国側は「チベット側から入山したチベット人がネパール側に出てそのまま亡命することを防ぐ」としましたが、本当の理由は、聖火隊が遭難した場合に隠すためであろうと、野口さんは見ています。
 近くに別の登山隊がいれば、万一死者が出たらばれてしまう。そうなれば当然、世界中から非難を浴びることになるからです。

全員生還したのかという疑問もそうだが、その前にそもそも本当に登頂できていたのかさえかなり疑わしいと、カカシとは数年来のネット仲間、ハミッシュ・エディさんが指摘している。

聖火をエベレスト山頂に灯すというたいそう派手なイベントもその派手さのわりには、ずいぶんと分かりにくい。
登山隊は本当にエベレスト山頂に到達したのだろうか?
というそもそものところから失礼ながらも疑問を抱く人が少なからずおりまして…。国際的な宣揚という意味では、この聖火のエベレスト登頂はそれほどうまく目的を達成することができなかったのではなかろうかなどと心配になるわけです。

エディが紹介している4月30日ヘラルド・トリビューンの記事によると(翻訳はエディ):

中国国営テレビは、ベース・キャンプから世界最高峰のエベレスト登頂までの聖火リレーを生放送するという、技術的に極めて難しい初の番組を組む準備に取り掛かり始めた。同テレビによると、登山隊は出発地点から8,300メートル(27,390フィート)上を目指し、頂点の8,850メートル(29,035 フィート)を登頂するための準備を終えたという。

しかしながら、31人で構成されているという登山隊がエベレスト頂点のどこで聖火を灯すのか。登山隊はどこにいるのか。そして、いつ頂上に到達するのかなどについての情報がまったくもたらされてこない。北京デイリーのウェブサイトは、この情報の欠如を「ベース・キャンプを覆う不可思議なヴェール」とたとえた。
…新華通信はベース・キャンプにいる天気予報士のYang Xingguo氏が水曜日の遅くに、強い吹雪のため3日は登山できそうにないと語っていたことを紹介している。

中国側はオリンピック100日前を記念して連休中に登頂を達成させたかったようだが、結局達成のニュースがあったのは8日になってからだった。

【北京=竹内誠一郎】北京五輪の聖火を携えた中国の登山隊は8日午前9時(日本時間10時)過ぎ、世界最高峰チョモランマ(英名エベレスト、8848メートル)の登頂に成功、チベット族女性隊員の手で、頂上で聖火が掲げられた。
国営中央テレビが登山隊に同行し、実況生中継で伝えた。

中国チーム以外に目撃者が居ない以上、生中継とかいってもどこから映しているかなんてはっきり言ってわからない訳だし、かなり怪しいものだ。
私は二年連続してエベレスト登山のドキュメンタリーを観たが、サミットへの挑戦は並大抵のものではない。一歩一歩歩くだけでマラソンを完走したかのような疲労を感じるという。標高が高いため空気は薄く、酸素ボンベなくしてはたいていの人は歩けない。頂上で居られるのはほんの数分で、それ以上長居をすると脳に異常をきたすそうだ。だからこんな場所で聖火妨害なんてとてもとても出来るものではない。亡命をするにしてもわざわざ危険なエベレストなど登らずとも他に方法があるはずだ。
中国側のいい分は単なる言い訳に過ぎないことは明白。いったい中国は何を隠しているのだろうか?


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いつからレバノン政府にアメリカの後押しが付いたわけ?

レバノンにおいて反政府側のシーア派と政府側のスンニ派との宗派間争いが続いている話は先日もした通りだが、それに関するアソシエートプレス(AP)の記事を読んでいて不思議な表現に気がついた。

イランに支持されたヒズボラとその仲間がベイルート政府のイスラム居住区を占拠し、その武力の強さを見せ、合衆国に支持された政府側と戦った。レバノンの1975-1990に起きた内乱以来最悪の事態となった。

ヒズボラはイランの工作員であり、イランから資金、人員、訓練を受けたイランの先鋭部隊である。しかしレバノン政府は民主的な選挙によって選ばれた正規の政府であり、アメリカとは無関係だ。レバノンの選挙にアメリカはなんら関与していない。
アメリカがレバノン政府を支持するとしたら、それは単にレバノン政府が正規な政府であると認めるということに過ぎず、それならフランスやイギリスも同じように現政府を独立国の正規政府として認めているのとなんら変わりはない。それなのに何故APは、あたかもレバノンがアメリカの統治下にあるかのような書き方をするのか。
その理由はレバノンのおける紛争はイラン対アメリカの代替え戦争だという印象を読者にもたせたいからだろう。イラクではイランの手先のモクタダ・アル・サドル率いるマフディ軍がイラク・アメリカ連合軍によってこてんぱんにされているので、無関係なレバノン紛争を持ち出してきて、イラクが収まってもレバノンではアメリカが押され気味だと言いたいのだろう。
そこまでしてアメリカの通信社がアメリカをこき下ろしたいというのも不思議でしょうがない。


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聖火エベレスト登頂の「オリンピック精神」

私の英語版のブログBiglizards.net/blogのほうで、いかに中共の留学生が長野や韓国で暴挙を働いたかということを紹介したが、その際に今回の聖火エベレスト登頂について冒頭に書いたところ、親中共のコメンターから、どこからも妨害されずに聖火が登頂できて良かったというコメントがあった。

OK…カカシ、君もミスター苺も反中国側を支持してることは知ってる。だからエベレスト山に関することだけコメントさせてもらう。

個人的に反中国(「親チベット」)の暴徒がオリンピック「精神」に対してやったことをみてきた後で(特に英国やヨーロッパの各地で)オリンピック聖火が邪魔されずにエベレスト頂上まで上るのを見られたのは気持ちよかったよ。

あ、そう。エベレスト登山のために大金かけて何週間も地元で訓練積んで、いざサミットへと挑もうとする登山家を9日間も足止めしておいて、「聖火が邪魔されず」に良かっただって?「チベット解放」という旗を持っていたアメリカ登山家がネバールから追放されたそうだが、中国国外での言論の自由まで圧力かけて阻止しておいて、何がオリンピック精神だ!
このコメンターは以前にもオリンピック聖火を政治に利用するなとチベット支持者達を批判していた。だが聖火を政治に利用しているのはいったい誰なのだとこっちが聞きたい。
ぼやきくっくりさんが紹介している登山家の野口健さんによるとエベレスト登山の現地の様子はこんな感じだ。

自然現象よりも人間社会のほうがよほど怖く、またたちが悪い。なにしろエベレスト街道には中国から私服に化けた公安、または情報機関などのいわゆる工作員ら約50人が潜んでいるとのこと。そしてベースキャンプにも中国大使館員と思われる人物がテントを張り監視活動を行っていた。メラピーク登山最中にもダークグリーンに塗られた軍用機がエベレスト上空を何度も旋回しているのを目撃した。

 やれ5月10日まで上部キャンプに上がってはならないだとか、信じられない事に登山隊付きの医師までもが「ベースキャンプから退却せよ」とのお達しがネパール観光省からあったとのこと。そして山頂を目指していたアメリカ人登山家が「フリーチベット」(チベット解放)と書かれた旗を持っていただけなのにエベレストから追放されてしまったとか。なにゆえに中国は越境までしてネパールにそこまで圧力をかける必要があるのか。そこまでしてなにを隠したいのか。中国はチベット問題を「内政干渉」と表現されるが、ネパールで行っている行為はどのように説明されるのだろうか。内政干渉どころかネパールを完全に支配下におき属国扱いしているではないか。
 「言論の自由」が一切許されない、まるで戦時中の日本の憲兵による、またはナチのゲシュタボのような異常な監視体制化下の中で山頂を目指さなければならない全ての登山隊がまことに不憫でならない。聖火リレーを走った日本人選手の中に「スポーツと政治は別ですから」とのコメントがあったそうな。いかにも綺麗な「正論」でしょう。しかし、もしチベットでの悲劇を目の当たりにしたら、その「正論」が通用しない世界があることを知るに違いない。なにしろ「ヒマラヤ登山」という「スポーツ」が中国の政治によって弾圧されているのだから。(強調はカカシ)

中国国内で自国民を弾圧するのは中国の自由かもしれない。100歩譲ってチベットが中国の一部だという理屈が通って、チベット独立の言論が中国国内で許されないとしてもそれを我々がどうこういうのは内政干渉かもしれない。
だが、今回の聖火リレーで中国の見せた態度はどうだ?中国は世界のどこでも反中共の批判は断固許さない。中国から聖火防衛隊のような暴力団を送り込むか、出なければ地元の中国人暴徒を勧誘して外国で暴れさせ、中国への批判は世界中どこであろうと暴力で対処すると全世界に知らしめたのである。これはまだ度合いは違うとはいえイスラム過激派テロリストのやることと何の変わりもないではないか。
ところで12人の中国登山チームの8人までもがチベット人だったという。多分エベレストでガイドをやっている経験豊かな地元の人間を中国人として起用したのだろう。彼らも中国のプロパガンダに利用されてさぞかし悔しかったことだろう。
こんな国でオリンピック協会はオリンピックをやることを許可したのだ。そんな大失態を犯しておいて、今更政治とオリンピックは別だなんてきれいごとはいってられない。


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二つに一つじゃないんだけど、、、インテリジェントデザイン対無神論

アップデートあり:下記参照
先日ベン・スタインという俳優で保守派政治評論家が監督した、マイケル・ムーア風の進化論批判ドキュメンタリー、Expelled: No Intelligence Allowedという映画を見た。実はこの映画に関する評論はしようかどうかちょっと迷っていたのだが、本日、偶然にも左翼フェミニストの小山エミさんが無神論者について書いていたのを読んで、関連のある話題なのでちょっとお話することにしよう。
先ずはベン・スタインのExpelled…の映画評論をする前に、アメリカにおける進化論に関する問題について説明しておく必要がある。アメリカはユダヤ・キリスト教の信者が非常に多い。以前からアメリカは非常に宗教心の強い国だと書いているが未だに旧約聖書の「創造説」を文字通り信じている人が少数とはいえ結構な数居るのである。そういう人たちは進化論を受け入れることは神への信仰を捨てることにつながると誤解している。
困ったことに無神論者で科学作家のリチャード・ドーキンスなどが、進化論に代表されるように科学と信仰は相容れないと断言してしまっていることから、本来ならば対立する理由のない進化論受け入れ側と創造説側の二つのグループが不必要な争いを行う結果となっている。
しかし創造説側は最近、といっても20年くらい前だが、科学説である進化論に打ち勝つためには、旧約聖書を持ち出してきてもそれは宗教だと片付けられてしまい、説得力がないことに気がついた。そこで彼らは創造説に科学的根拠があることを説明するために新たに「インテリジェントデザイン(ID)」という説を紹介した。
これは自然哲学で神の存在を証明する論理としてウィリアム・ペイリーの「盲目の時計職人」という説をもとにしている。複雑な構成を持つ時計が荒野に落ちていたら、それを作った時計職人がどこかに存在するように、他の複雑な実態も意図的に作った誰かが存在するはずだという理論である。地上に存在する生物、特に人間は、あまりにも複雑すぎる生体であり、誰かの意図的な設計なくしては説明できないというわけだ。無論この理論にはかなり穴があいているが、ベン・スタインの映画はこの理論を元にしている。
Expelled…はマイケル・ムーアも真っ青になるほど不公平で理不尽な構成になっている。先ず映画は冒頭のテーマソングでベルリンの壁を映し、東側の共産主義が進化論側で西側の自由主義がID側であると象徴。
スタインは進化論説者をダーウィニストと呼び、あたかも進化論がダーウィンという教祖によって創設されたカルトか何かのような表現をしている。しかも進化論を受け入れたら単に無神論者になるだけでなく、ユージェニクスを推進したナチスや共産主義者になるとさえ示唆しているのである。
これほど根拠もなく相手側を侮辱するやり方もないだろう。私は保守派評論家としてスタインのことはこれまで尊敬していたが、今回の映画を見てその卑怯なやり方に非常に失望した。根拠も示さずに感情のみに訴えるなら、左翼やリベラルと何の変わりもない。スタインはムーアより頭がいいだけ質が悪い。
スタインのやり方が卑怯な例のひとつとして、スタインはドーキンスのような進化論説者のなかでも過激な無神論科学者だけを集めてきて、「神など存在しない」と何度も繰り返させる。スタインは敬虔なクリスチャンであり克つ進化論を受け入れている遺伝子学の第一人者であるフランシス・コリンズのような科学者がいるにも関わらず、そういう人を一人も紹介しない。
映画の中でも進化論と宗教は矛盾しないと唱える人を紹介しておきながら、その人たちがどういう説を持ってして矛盾でないことを説明しているのかを紹介せず、あたかも彼らが信仰者をだまして進化論を受け入れさせようとしているかのようなコメントを入れている。皮肉なことにその一番の手助けをしているのが、進化論を信じる者は無神論者であると言っているドーキンスなのである。
はっきり言ってドーキンスのような無神論者とスタインのようなID論者は一つの硬貨の二つの顔だと言っていい。
科学を信じたら神を信じられないなど一体誰が決めたのだ?種の進化という真実を学ぶことによって神の力を信じられなくなるなどと本気で信じるなら、スタインこそ神への信仰に自信がない無神論者なのではないか?彼の信仰とはそんなにも軟弱なものなのか?
私は神の存在を信じる。科学を学べば学ぶほどその神秘さに驚嘆しない科学者はいないだろう。これこそ偉大なる神の創造であると信じることに何の無理があるというのだ?種族の進化こそ神の設計であると考えれば進化論と創造説に矛盾はない。何故ここに無意味な矛盾を見いだす必要があるのだろうか。これこそ信仰者を科学的に無知にしておきたい無心論者の陰謀を感じるのは私だけだろうか?
ところで、小山エミが無神論者たちが、無神論という宗教の信者になってしまっているのではないかと書いているがそれはかなり的を射ていると思う。

無神論者たちのふるまいは、信仰者のそれと何ら変わらないのではないかーーすなわち無神論者たちは、無神論という新しい宗教の信者であり、その他の宗教の信者と本質的に何ら変わらないのではないかーーという問いかけは、多くの人が直感的に感じるものだ。…

…ユートピア思想と選民思想(自分たちこそ最も優れた人間であるという思い込み)は、わたしが参加しているグループにおいても頻繁に感じた。かれらから見れば、宗教を信仰している人はそれだけでかれらより非理性的であり、冷笑するしかない対象なのだ。このままいくと、迷える子羊=信仰者を救うために無神論の布教活動でもはじめかねない。

進化論専門の科学者のなかに無神論者が多いことは確かだが、無神論を唱えるひとが必ずしも科学的な考えに基づいて無神になったというわけではない。進化論進化論と大騒ぎして創造説を馬鹿にする人々の間でも進化論が科学的に証明されているという事実だけを鵜呑みにしてその科学的な学説を何も理解せずにまるで信仰のように受け入れている人々がどれほどいることだろう。つまり、進化論そのものが信仰となっている人々が無神論を唱える人々のなかに少なからずいるのだということも念頭に置いておく必要がある。
科学は真実を求めるものにとってすばらしいものである。だが科学は中立だ。科学は道徳的判断を下さない。それを見誤ると無神論者も創造説者も同じ間違いを犯すのである。
神を信じるか信じないか、進化論では二つに一つの答えは見いだせないのだ。
アップデート: 本文中に引用した小山エミさんがこのエントリーへの返答をこちらでしている。それに対する私の返答はこのエントリーのコメント欄でさせてもらった。


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レバノンでも、シーア対スンニの宗派間争い

シーア対スンニの宗派間争いといえば、イラクかと思うとそうではない。シリア系のシーア派ヒズボラがレバノンで地元スンニ派と熾烈な戦いを繰り広げている。
木曜日ベイルート市街地でシーアヒズボラはスンニ派レバノン政府軍によるシーア派武装解除に抵抗してロケット弾やマシンガンを使って応戦した。この戦いで4人が死亡、8人が負傷した。
スンニのリーダーであるサアード・ハリリはヒズボラの頭であるハサーン・ナスララに戦闘員を撤退させ「レバノンを地獄から救うよう」に呼びかけている。
今回の暴動のきっかけは、政府がヒズボラの取り締まりを強化すると発表し、その第一段階としてヒズボラ同士の交信ネットワークを違法と断定、ヒズボラとつながりがあるとされたベイルート空港の警備部長を交替させたことにある。
ナスララは全国放映のテレビ演説でヒズボラの交信ネットワークが2006年夏のイスラエルとの戦争の際に多いに役立ったとし、「対イスラエル・アメリカ抵抗運動への挑戦」だとして次のように宣言した。

「我々を逮捕しようとするものは我々が逮捕する。」「我々を撃つものは我々が撃つ、我々に上げられた腕は我々が切り落とす」

まったくいつもながらイスラム教過激派の言うことは勇ましい。やることはいつもお決まりの野蛮なテロ行為だが。
パレスチナでもイラクでもそうだが、中東で暴力沙汰が起きるたびに、常にイスラエルやアメリカが原因であるかのようにイスラム過激派は責任転嫁をするが、結局彼らのシーア対スンニという宗派争いに外部からの手助けなど必要ないのだ。彼らのぶつかるところ常に戦ありである。平和な宗教が聴いて呆れる。
とはいうものの、レバノンにおける宗派間争いにはシーア対スンニの勢力争いであることに違いはないが、その背後にはイランとサウジアラビアがいることも無視できない。
ヒズボラはシリア系のテロリストだが、その裏にイランがいることは周知の事実。イラクでサドルを使って宗派間争いを激化させようと色々工作をしているイランはレバノンでも同じようなことをやっているわけだ。
スンニ派のリーダーは近隣のスンニ派諸国に援助を訴えかけているが、サウジやエジプトは口は達者だが政府が直接介入することは先ずあり得ないだろう。ただしレバノンがシーア派国になるのはサウジやエジプトにとっても好ましいことではないので、対スンニテロ行為の資金援助くらいはしてくれるかもしれないが。
ヒズボラはいまのところベイルート空港を占拠しているが、レバノン政府軍は本格的な攻撃は始めていない。


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エリート意識まるだし、ミッシェル・オバマの悲観的なアメリカ像

ジェラマイアー・ライトもさることながら、民主党大統領候補のバラク・オバマのミッシェル夫人の毒舌はかなりなもんである。
先日からロサンゼルスのラジオDJ、ヒュー・ヒューイットの番組でミッシェル夫人が先週から行っている選挙演説の抜粋を放送しているが、聴いていて信じられないような内容である。
先ずミッシェル夫人はオバマの民主党大統領候補指名が決定していない理由は常に周りの人間によって、目標の高飛びの棒が不当に上げられているからだと文句を言ったのにこじつけて、アメリカ庶民の生活も常に目標の棒が不当に上げられて人々は、どれだけ苦労しても目標に届くことが出来ないのだと語った。オバマ夫婦には庶民の苦労がよくわかる。何故なら自分たちも苦労している庶民だからだと言う訳だ。
ミッシェル夫人は自分たち夫婦が苦労人であることを強調したいらしい。
この間からバラク・オバマがペンシルベニアの有権者を卑屈になっているといって馬鹿にして以来、ライバルのヒラリー・クリントンがオバマをエリート意識に凝り固まり庶民の気持ちが理解できない人間だと言い続けているので、なんとかしてオバマ夫婦はこのイメージ打開をしようと必死なのである。エリート意識まるだしのヒラリーにエリート扱いされるんじゃオバマもおしまいだ。
バラク・オバマはケニアで白人のアメリカ女性とケニア男性の間に生まれた。両親はすぐ離婚し6歳まではハワイで育つ。その後母親の再婚相手のジャカルタの実家で4年間暮らす。その後はハワイへ戻って一流大学のコロンビア大学卒業後、これもまた一流のハーバード法律学校へ進み、弁護士となった。コミュニティーオーガナイザーとかいう訳の分からない仕事を数年した後、地方議員になり上院議員になりと、とんとん拍子で出世してきた人間である。
これがミッシェル夫人になると、もうエリートコースまっしぐらである。
ミッシェル・オバマ、1964年1月17日、イリノイ州シカゴ生まれ。 プリンストン大学を卒業後、ハーバード法律学校へ進み、シドニーオースティン法律事務所に勤務。年収楽に40〜50万ドルは稼いでいるエリート弁護士だ。
オバマ夫婦は二人の年収を会わせたら、楽に百万ドルは行くだろう。こんな金持ち夫婦の苦労とはいったいどんなものなのか、ミッシェル夫人の話を聴いていると思わず笑ってしまう。
ミッシェルは大学卒業後学生時代に借りたローンの返済額が月々の住宅ローン支払いよりも高かったと愚痴る。大学卒業した人間が借金だらけになる世の中は良くないと言いたいらしい。だが、一般家庭の人間はそんな借金してまで学費の高い名門校へなど行ったりはしない。何故ならそんなことをして卒業しても返せる当てがないからだ。ミッシェルがそこまでするからには返せる当てがあったということだ。それに普通の若い夫婦は大学卒業してすぐに百万ドルの住宅を購入するような余裕もない。
ミスター苺は学力ではプリンストンに受かったが、学費が高すぎてとうてい行かれなかったので、州立の大学へ行った。ミッシェルが借金したくなかったなら、無理して私立の名門校へなど行かず学費の安い州立のシカゴ大学へ行けばよかっただけの話。プリンストン大学へ行った人間が学生ローン返済に苦労したなんて、一般人にはばかばかしくて聴いてられない愚痴だ。エリート意識に凝り固まっているからこそ言える戯れ言である。
またミッシェルはバラク・オバマの母親の苦労話をする際に、彼女がカンザスの田舎町に生まれたにも関わらず大きな夢を持っていた、と語った。おいおい、カンザスの田舎町で生まれたら夢をもっちゃいけないのかよ、それってカンザスを馬鹿にしてないかえ?
ミッシェルは都会生まれなので常に地方の人間を馬鹿にする傾向があるが、こういうところにミッシェルのエリート意識が顔をのぞかせるのだ。この間のオバマのペンシルベニア州民への侮辱といい、今回のカンザス州民を田舎者扱いする態度といい、エリート意識まるだしだ。
しかもミッシェルはバラク・オバマが子供のころケニアやジャカルタといった第三世界に住んでいたことや、大学卒業後シカゴの貧民窟で住民救済活動をしていたことなどをあげて、バラクは「なにもかも見てきた」と自慢した。
ちょっとちょっと、ミッシェルさん、海軍の戦闘パイロットに志願して行かなくてもいい危険な任務に出かけていって北ベトナムの捕虜になり4年も捕虜生活をして拷問を受けたのに仲間を売り渡さずに帰ってきた人よりも、バラク・オバマは苦労人で何もかも見てきたって言うんですかえ?
ところでミッシェルはこの演説のなかで面白いことを言った
労働階級の庶民はどれだけがんばっても中々成功しない、自分も本来なら成功できない立場にあった。という文脈でミッシェルは自分は学校の成績は良くなく、全国の学力テストでも低い点数を取ったという。だから本来ならばプリンストンへも行かれないはずだったというのだ。ハーバードへも進めないはずだったと。
おかしいなあ。どうして点数が足りない人間が名門校に入れたのだろうか?もしかしてミッシェル・オバマは黒人優遇制度のアファーマティブアクションに救われたのでは?
そういえば、ミッシェルは学生時代にどうも自分が教授や同級生たちからよそ者扱いされてるように感じたと書いていた。自分はここに属しないという実感があったと。私はこれは彼女の被害妄想だと考えていたが、もし彼女が学力が足りないのにAA制度のおかげで身分不相応な大学へ進んだとすれば、周りから白い目で見られたとしても不思議はない。彼女が自分はこの大学に属しないと感じたのは実際彼女が属しなかったからなのではないだろうか。
ミッシェルが卑屈なのはアファーマティブアクションで不当に優遇されなければ成功できなかったという後ろめたさがあるからなのかもしれない。


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イラク軍シーア派民兵との戦い、壊滅状態のマフディ軍

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3月25日、イラクのノーリ・アルマリキ首相はバスラのサドル派民兵に向かって驚くべき抜き打ち攻撃をおこなった。そのあまりの抜き打ちさにマリキ首相は攻撃が始まって二日後になるまでアメリカ軍にシーア派退治を始めたことを知らせるのを忘れていたほどだ。
アメリカ軍はあわててイラク軍に追いつくべく近距離空援助や必要な後方援助を送り込んだ。当初はバスラの戦いはかなり危なっかしい状態に見えた。ケツの青いイラク軍の一隊など敵に圧倒されて退散するという一幕もあったが、マリキ首相は即座に援軍をおくりこんで開いた穴を塞いだ。バグダッドのスラム街であるサドル市で別の前線が展開されたが、そこではアメリカ軍が先導してマフディ民兵らに立ち向かい大勝利を得た。
熾烈な戦いが繰り広げられたが、イラク軍の指揮のもと、最終的にはアメリカ民主党がイラクが独立国として成立するに必要不可欠として挙げていた条件が満たされる結果となった。モクタダ・アル・サドル率いるシーア民兵に断固立ち向かうことによってシーア多数派はシーアだけでなくイラク全土を統治する資格があることを証明したのである。民兵軍をサドルが率いるとはいっても、サドルがイランに逃げ隠れしてからすでに一年近くなる。実際にサドルがどれだけマフディ軍に影響力をもっているのかかなり疑問だ。
一ヶ月以上になる戦いだが、マリキが賭けに勝ったことはかなり明らかになってきた。

  • サドル派はバスラをはじめ他の市や地区で完全に撤退状態で、サドル市では壊滅状態にある。
  • サドル派への攻撃によってマリキ首相をついに信用することにしたスンニ派のタリーク・アルハシーミ副大統領がスンニ派政党に政権に戻るように呼びかけた。
  • サドル自身は完全にその不能さをみせ、イラク政府に対して全面戦争の脅しをかけておきながら、マリキの騎士の突撃作戦の勢いが全く弱まらないのに腰を抜かして数日後には再び停戦を嘆願するという弱さをみせている。
  • マリキ首相は引き続き攻撃をすすめており、今や後片付けの段階にはいっている。イラク軍は兵站(へいたん)と近距離空軍の援助さえあれば独自に軍事作戦が行えるということを証明した。そして全党参加の政権統一も含め、アメリカの民主党がイラク政府に要求していたすべの条件が整いつつある。

その詳細を吟味してみよう。


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