先日ヒラリー・クリントンのボスニア訪問体験談のなかに、ちょっと誇張した表現があったらしい。毎日新聞の記事から引用しよう。

アメリカの選択:大統領選予備選 クリントン氏「ボスニアで銃火浴びた」…ウソと判明

 【ワシントン及川正也】米大統領選民主党候補指名を争うヒラリー・クリントン上院議員が96年3月、ボスニア・ヘルツェゴビナを訪れた際の体験として「銃火をかいくぐった」と発言、これがウソだったことが判明し釈明に追われている。「安全保障のプロ」を売り物にするクリントン氏の手痛い失点になった。
 クリントン氏は先週の演説で、ボスニアのツズラ空軍基地に降り立った時の話を紹介し「着陸時に狙撃手の銃火を浴びた。予定された歓迎式典は中止され、頭を低くし(送迎の)車まで走った」と発言した。
 ところが、当時の映像を米メディアが公開。クリントン氏が悠然と米軍機から降り、混乱なく出迎えを受けていた。クリントン陣営は「言い間違いだった」とウソを認めた。思わぬボロに「外交経験は誇張」との批判を裏付ける結果になった。2008年3月27日

『ウソと判明』とはちょっとメディアとしては厳しい言い方だな。ヒラリーべったりのアメリカメディアを見なれているカカシとしてはこの毎日新聞の口調はかなり手厳しいと思う。
この話を聞いていて私は自分が初めて軍用ヘリコプターに乗った時のことを思い出した。これは同時に私が初めて米軍の護衛艦に乗った時のことなのだが、すでに沖に出ている船へ私はヘリコプターに乗って行ったのだ。ヘリがフライトデックに着陸してドアが開いた時、私は普通の地面に足をおろすように脚を延ばしたら、ちょうど波の関係で足下の甲板が下がってしまい私は足をすくわれた。私はよろよろと前のめりになってひっくりかえるところだったのだが、そこへ力強い海兵隊員の太い腕が伸びてきて私は抱きとめられた。立ち上がろうとした私の頭をもう一つの腕が押さえつけた。腕の主は「かがんでいろ」と怒鳴った。私はヘリから船の中までほとんどこの太い腕に担がれるようにして走っていったのを覚えている。言っておくが私がいたのは戦場ではない。サンディエゴの沖合の平和なアメリカ領域の海である。
ヒラリーがボスニアでの体験談をした時、私はこんな感じで銃火をかいくぐったのかなと想像したのである。ところがCBSのビデオをみていたら、ヒラリーはお供と一緒に普通に飛行機からおりてくるようにヘリコプターから降りて、出迎えのみなさんに笑顔で手を降りながら歩いていた。ちいさな女の子から花束をもらったりしておよそ危ないところにいるという感じはない。

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出迎えの少女から花束をもらうヒラリー


もっともこの程度の誇張でヒラリーがウソをついたと大騒ぎすることもないという気はしないでもない。自分のちょっとした体験をおもしろおかしく誇張してあたかも自分が英雄であったかのような体験談は誰でも多かれ少なかれしていることだし、ヒラリーが戦場を訪問したことは事実なのだから多少の誇張くらいどうってことはないだろう。ただし、それはこれが単に元ファーストレディが昔話をしていたというだけのことならばの話である。それが次期大統領を目指す候補者としての外交体験の例として出された場合はその事実を吟味されるのは当然のことなのかもしれない。
第一特に嘘をつく必要もないところで、しかもすぐばれる嘘をつく悪い癖があると思われるのは大統領候補としては望ましくない。
ただ私としてはヒラリーのこのような誇張よりも、オバマの周りにいる反イスラエル精神まるだしのアドバイザーのほうが心配なのだが。ま、その話はまた改めてすることにしよう。
ところで、ヒラリーとオバマとの間がかなり険悪になってきていることから、漁父の利というかなんというか面白い世論調査があったので紹介しておこう。

指名敗北でマケイン氏応援の比率拡大、民主党2候補の支持層

ワシントン(CNN) 米大統領選の民主党候補指名争いで、歴史的な接戦を演じているオバマ、ヒラリー・クリントン両上院議員の支持者が、それぞれの候補が指名を得られなかった場合、共和党候補の指名を確定させたマケイン上院議員に一票を投じるとの割合が拡大していることが最新世論調査で26日分かった。
CNNとオピニオン・リサーチ社が3月14日─16日に共同実施した。この割合はオバマ陣営で、今年1月の26%から3月には41%に拡大。クリントン陣営では35%から51%に伸びた。
民主党全国委員会のディーン委員長はこの調査結果に触れ、「マケイン議員が大統領になれるのは民主党内が割れた時のみ」であることを改めて示したと警戒している。
ギャラップ社も3月に同様の世論調査を実施、オバマ氏支持者の19%が、クリントン氏が指名を勝ち取った場合、マケイン氏支援に転じると回答。逆の事態の場合の比率は28%だった。
支援する民主党候補が指名を得られず、対抗馬の共和党候補者に相当数の票が流れた例は1980年、84年の大統領選で起きた。レーガン元大統領がそれぞれ26%、25%の民主党票を奪っていた。
また、オバマ、クリントン両候補の支持票が指名獲得の勝敗後、マケイン氏に大きく流れかねない背景には、マケイン氏の評価で民主党が割れている事情もあるとみられる。CNNとオピニオン・リサーチ社が今年2月1日─3日に実施した民主党員、支持者対象の世論調査では、マケイン氏を「好感」していたのが44%、逆は42%ときっ抗していた。

もっとも今はそんなことを言っていても、実際の一般選挙になったらオバマファンもヒラリーファンも鼻をつまんで民主党に入れるかもしれない。だから今の時点での世論調査はあまり当てにはならない。ただし、マケイン議員はバリバリの保守派ではないので、民主党の候補者が気に入らない民主党有権者がそれほど抵抗なく支持できる候補であることは確かだ。これがミット・ロムニーとかだったら無理だっただろう。


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