日本のメディアは次期大統領選挙は民主党のオバマとヒラリーの間だけで選ばれるかのような報道をしているようだが、実は先週たて続けに起きた民主党のスキャンダルで、共和党候補のマケインの支持率があがっている。
バラク・オバマ関係のスキャンダルといえば、先日お話したジェラマイア・ライト牧師の過激発言だけでなく、現在贈賄容疑などで裁判にかけられているアントワン・トニー・レズコ(Antoin “Tony” Rezko)というビジネスマンとオバマの関係が以前にオバマが認めていたよりももっと深い関係であることが明らかになってきた。
レズコは長年に渡ってオバマのいくつかの選挙運動で資金調達をしてきた人物だが、レズコの怪しげな商売方法が明るみに出るにつれ、オバマはレズコとの関わりを過小評価してきた。しかしレズコの裁判によって、レズコからのオバマへの献金が注目を浴びてきたため、先週の金曜日、オバマはレズコとはこれまで認めてきたよりもずっと深い関係にあったこを認めざる終えなくなったのだ。今わかっているだけでレズコはオバマのために25万ドルの献金を集めたということだが、その詳細はオバマ側からは明らかにされていない。
さて、ヒラリー側のスキャンダルだが、ヒラリーの選挙事務所で役員をつとめていた、1984年には民主党の副大統領候補として立候補したこともあるジェラルディーン・フェラーロ女史が、「バラク・オバマが白人だったら、いまのような立場にはないだろう」といったことから、オバマ側から人種差別的な発言をしたと責められ、ヒラリーの選挙事務所から辞任するという騒ぎがおきた。はっきりいってフェラーロ女史の発言は真実だと思うが、それはそれ。人種差別はいけないと常に他人をお説教しているリベラル政治家としては失言だったというわけだ。
これに続いてヒラリーにとって都合の悪いことに、ヒラリーを支持していたニューヨークのエリオット・スピッツァー知事が高級娼婦を長年に渡って雇っていたスキャンダルが明るみに出て、知事を辞任するにまでにいたった事件が起きた。スピッツアー氏は知事になる前に州の検事をしていたが、その時売春リングを摘発した手柄で名を揚げたひとであるだけに、その頃から自分は一晩2千ドルとかいう高級娼婦を雇っていたというのだから呆れる。
さて、どうしてスピッツアー知事のスキャンダルがヒラリーに関係あるのかという話は産經新聞の古森さんが詳細にわたって説明してくれているのでちょっと引用しよう。

さてこの事件には多くの重要な側面がありますが、まずいまものすごい勢いで進行中の大統領選挙キャンペーンへの影響が考えられます。その面で最も頻繁に指摘されるのが、ヒラリー・クリントン候補の人気への悪影響です。いくつかの要因があげられます。

まず第一は、このニューヨーク州知事はクリントン候補の最有力支持者の一人だったという点です。クリントン候補は周知のように、ニューヨーク州選出の上院議員、同じ民主党のエリオット・スピッツァー知事の熱心な支援を受けてきました。同知事は大統領選挙の予備選の段階でも、クリントン候補を強く推し、やがてはニューヨーク州での同候補の予備選大勝利に寄与していきます。
つまり民主党の上院議員と州知事という形での二人三脚で、クリントン候補をスピッツァー氏が助けてきたのです。スピッツァー氏はオバマ候補には背を向けました。そしてクリントン候補を選び、支援を明確にしたのです。その支援は全米レベルでも大きな話題となりました。しかしその「同志」の片方がスキャンダルで失脚すれば、他方によい影響が及ぶことはないでしょう。

第二の要因として、古森さんはスピッツアー知事の政策であまりの悪評版で撤回せざるおえなくなった違法移民への自動車免許書発行について、当初は支持していたヒラリーが後に反対したことを追求されてしどろもどろの答弁をしたことなどが、今回の知事のスキャンダルで蒸し返されたことを指摘している。
また第三の要因はこれがセックススキャンダルであるということから、ヒラリーの夫のビル・クリントンのセックススキャンダルを人々に思い出させるという悪影響がある。これについて、アメリカのコメディアンたちはさっそく趣味の悪い冗談で花を咲かせているという。

意地の悪いコメディアンたちはすでに、今回の事件とクリントン前大統領とを結びつけるジョークや寸劇をテレビで演じ始めました。「スピッツァー氏の最大の弁解を聞きましょう。『こういう行動はすでにクリントン大統領が法律で許すようにしたと思っていた』」(デービッド・レターマン)「ヒラリーはいまニューヨーク州内で二番目に最も怒っている女性だろう」(ジェイ・レノ)

さてこのようなスキャンダル続きはオバマにもヒラリーにも良い結果をもたらしていない。ワシントンタイムスによれば、どちらの支持率も共和党候補のマケイン議員に比べて落ちているという。
四日間に渡って行われたラスマスン世論調査では、マケインがクリントンとオバマの双方相手に6%支持率が上がった。また先週の日曜日のギャロップ調査ではマケインは双方に誤差の範囲程度の遅れをとっていたが、金曜日になるとその差さえ消えてしまったという。ゾグビー調査では、マケインは45:39でヒラリーより6%優勢となった。
オバマとヒラリーがお互いに攻撃しあうだけでもマケインには有利なのに、二人の周りの人間がこれでは候補者たちも苦労するというものだ。もっとも類は友を呼ぶともいうので、自分達に全く責任がないともいえないわけだが。
マケインはヨーロッパや中東を訪問するなどして、すでに次期大統領としての貫禄をみせはじめている。そろそろ日本のメディアも共和党候補のマケイン議員に注目する時がきているのではないだろうか?


2 responses to スキャンダル続きの民主党に共和党マケインが優勢に!

frappuchino16 years ago

こんにちは。今回初めてコメントします。
政治的なもの、保守派の動向などをきちんと説明したり文章に表現できるカカシさんは凄いと感心します。
これからも遊びに来させて下さい。
うちの夫は黒人で共和党という超マイノリティなのにアジア人の嫁までもらって更に少数民族の一途をたどっています(笑)

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scarecrowstrawberryfield16 years ago

フラパチーノさん、
コメントありがとうございます。黒人で共和党というのは珍しいですが、まったくいないわけではないですよね。黒人の人たちは信心深く保守派の人が多いので、本来なら共和党を支持してもよさそうなもんなんですが。(リンカーン大統領の政党だし、、、)
もし今回オバマもヒラリーも駄目で、将来コンデリーザ・ライスさんが大統領に立候補なんてことになったら、アメリカ歴史初の黒人で女性の大統領ということで民主党の有権者は悩むでしょうね。(笑)
カカシ

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