ちょうどミスター苺がこの話をしていたので、ここでも取り上げようと思っていたら、イギリス在住の小林恭子さんのブログでも詳しい説明が載っているので、こちらでも紹介しておこう。
ことの起こりは、この間イギリス国教の大教祖ともいうべきカンタベリー大主教がイギリスでも一部イスラム回教法であるシャリアを取り入れるべきだと語ったことだ。カンタベリー大主教ともあろう人がイギリスの平和を乱しているイスラム教にここまで寛容というのは、寛容を通り越して愚かとしか言い様がない。まずは産經新聞の記事より。

英国国教会大主教「イスラム法部分適用」 「1国2制度になる」論争に 2月9日16時10分配信 産経新聞

英国国教会の最高指導者、カンタベリー大主教が7日、英BBCラジオの番組で、英国内で「シャリア法(イスラム法)」を部分的に適用することは「避けられないと思う」と述べ、大論争を巻き起こしている。
 大主教は、英国内の移民が持つ抑圧感を和らげるためには、すべての移民社会が公的手続きに参加できるようにすることが重要との認識を示し、「シャリア法の一部を適用することを考える余地がある」として離婚手続きを一つの例に挙げた。
 英国には約160万人のイスラム系移民が地域社会を形成しており、離婚や結婚では英国の司法体系とは異なるイスラム独特の手続きを取っている。英国と母国で一人ずつ妻を迎える例もある。
 シャリア法には、公開処刑やムチ打ちの刑、女性差別など人権問題に発展する内容も含まれているため、大主教は、過剰な刑罰や女性差別は認められないと強調した。
 しかし、1国2制度を認めると法の支配を根幹から揺るがしかねない。英首相官邸の報道官は「英国の法律に違反する行為をシャリア法で正当化することは認められない。シャリア法を民事裁判に適用すべきではない」と即座に大主教の考えを退けた。大主教周辺からも「発言は英国を驚かせた」などと批判的な意見が相次いだ。(ロンドン 木村正人記者)

これに関して小林さんは反対意見を述べておられるが、その一番大きな点は法の前ですべての人が平等ではなくなるということだろう。

私はいろいろな理由から、シャリア法を入れる、その考え方を反映させることに反対である。一つには、「法の前で英国民が平等」という原則が崩れる。何世紀もかけて、宗教と法を切り離してきた、世俗主義の流れに逆行する。何故イスラム教だけを特別とするのか?

例えばイギリスでは重婚は違反だがシャリアでは合法だ。人工中絶はイギリスでは合法だが社リアでは違法だ。となると同じイギリスにすんでいるイギリス人でも、イスラム教徒とそうでないひとたちは全く別の法律の元に生きるということになってしまう。これではイギリスに移住してきたイスラム教徒がイギリス社会に溶け込むなど無理である。

英国に居住する、ある女性は、「イスラム教徒の女性」という存在なのか、それとも「英国民の女性」という存在なのか?自分は「英国市民」という意識であっても、「イスラム教徒だから」と、別の決まり・法体系で扱われたら、どう感じるだろう?

 私はこれまで、欧州の中のイスラム社会・文化とホスト社会の文化との融合に関して考えをめぐらせてきた。ホスト社会がもっと変わるべきとも主張してきた。しかし、どこかで互いに結びつくための共通の価値観を共有することは非常に重要だし、これは譲れないものと思う。価値観の「同化」ではなく、互いに了解の上の、「共有」が肝心だ。
 現在の英国において、シャリア法の一部反映は社会をばらばらにするだけのように思える。

問題なのはウィリアムス大主教は個人を個人として考えず、その個人が所属している団体を単位にものを考えていることだ。ミスター苺にいわせると、大主教はもう神を信じていないに違いないという。彼が代表する宗教では神が決めた普遍の正義というものが存在する。だがイスラム教徒であれば娘が親が決めた相手以外の男性とつきあっているかもしれないという疑惑だけで娘を殺すことはシャリアで許されているが、無実の者を殺すことはアングリカン教では禁じている。これは殺人者がイスラム教徒であろうとキリスト教徒であろうと殺人の罪は罪なのであり、同じように罰を受けるべきという原則があるのだ。もし大主教がイスラム教徒は特別にこの規則から免除されるというのなら、ウィリアムス大主教は自分の神の決めた「普遍の正義」を信じていないということになる。つまり、ウィリアム大主教は神を信じていないのだ。

『人は神を信じなくなると何も信じなくなるのではなく何でも信じるようになる』

長くなるのでミスター苺の分析は明日から何編かに分けて掲載する。今日は一応簡単な紹介まで。


3 responses to イギリス、カンタベリー大主教のイスラム教一部適用提案に懸念の声

oldman16 years ago

欧州は1000万人のイスラム教徒を受け入れたそうですが、人手不足を補うことが目的だったのでしょうか。
私から見て、これは歴史的な大失敗でした。今後何百年何千年にわたって欧州に災厄をもたらすだろうと見ています。ユダヤ人の移住から2000年もたってなお癒しがたい傷が残っていたわけですから。
トルコをEUに参加させるという話があるようですが、信じられない思いで見つめているところです。
日本にも1000万人の移民を受け入れるべし、とする主張が存在します。極めて危険です。
http://blog.livedoor.jp/jipi/archives/51005609.html

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In the Strawberry Field16 years ago

「イギリスはシャリア法を適用すべき」イギリス国教カンタベリー大主教の発言が呼ぶ波紋、その1

昨日イギリス国国教会の最高指導者、『カンタベリー大主教が7日、英BBCラジオの番組で、英国内で「シャリア法(イスラム法)」を部分的に適用することは「避けられないと思う」と述べ』た話についてちょっと紹介したが、きょうはお約束どおり、ミスター苺の詳しい分析を参考にしてこちらでも考えてみよう。 人は神を信じなくなると…. 人は神を信じなくなると何も信じなくなるのではなく、なんでも信じるようになる。 –とはG.K. Chestertonが 言ったとか言わないとかという話だが言ったとすれば名言だ。 イギ…

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In the Strawberry Field16 years ago

イギリス、カンタベリー大主教の発言が呼ぶ波紋、その2

今日は、イギリスの国教教会の最高指導者であるカンタベリー大主教の問題発言についての分析を続けよう。これまでのお話は下記参照。 ことの起こりはこちら カンタベリー大主教の発言が呼ぶ波紋、その1 個人主義より全体主義 ウィリアムス大主教にとって大事なのは個人ではなく、その個人が所属する団体である。この場合は無論イスラム教団体だ。 ウィリアムス主教はイスラム教団体がシャリアを求める以上、イスラム教徒全員がシャリアの法のもとで生きるべきだと主張する。ウマと呼ばれるイスラム教徒たちはサウジアラビアに住んでいよ…

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