きょうは日曜日で特にお話することが思い浮かばないので、ちょっととりとめのない話をしよう。
私のブログの読者の方々からよく聞くのは「カカシさんの日本語は変だ」というご意見である。どういうふうに変なのかという具体的なことを指摘して下さる方が少ないので、どうすればいいのかちょっと困惑する。(コメンターのエマニュエルさんのように政府機関の名称や軍階級の訳が間違っているとか具体的なご指摘は非常に助かる、、でもマニーさん、お手柔らかに!)これは言い訳でもなんでもないが、はっきり言って言葉使いがおかしいのはカカシのみならず、最近はアメリカでも日本でも不思議な言葉使いをする人が増えていると思う。
最近の若いもんは手紙一つ書けん!
実は先日もらった30歳くらいの日本人男性からの手紙の終わりに、「前略、敬具とか難しい言葉つかえなくてすみません。」と書かれていたのをみて驚いてしまった。これは、私が面倒くさい挨拶を飛ばして「前略」ではじめて「敬具」で終わらせた手紙への返事だった。(注:コメンターの方から「前略」ではじめて「敬具」で終わるのはおかしいとご指摘を受けた後、自分の書いた手紙を読み直してみたら「かしこ」で締めくくってあった。相手の返事に「敬具」とあったのでてっきり自分で書いたものと勘違いしていた。)
「前略」という書き出しは、堅苦しい挨拶抜きで書く時の決まり文句だが、それを「難かしい言葉」と言われたのには驚いた。最近の若者は(30歳といえば十分に大人の社会人だが)いったいどういう教育を受けているのだろうと首を傾げてしまったのである。
しかしこういう傾向があるのは何も日本だけではない。この間も私は職場でメールの冒頭に”Dear Sirs,”と書いていたら、私より若い上司に「”Sir”というのは将校クラスの人につける敬称だから下士官に使ってはいけない」と注意された。私の手紙の相手が曹長の位だったので、彼は私が間違えたのだと思ったらしい。しかし間違っているのは上司のほうなのだ。普通アメリカで公式な手紙を書く場合、相手のことをよく知らない時は”sir”を使う規則になっているのだ。軍隊の位とは何の関係もない。私の若い上司はそういう常識を知らないのである。
そういえば最近もらうメールで、”Dear Kakashi,”ではじまって”Sincerely yours,”で終わるものをみたことがない。これは日本語でいえば「拝啓」と「拝具」の部類だが、メールだからなのか普通の手紙だったらそうではないのかよくわからないが、若い頃に秘書としての教育を受けたカカシとしてはこういうふうに何でも非公式になっていく傾向は全く好ましく思えない。
手紙を書くのが苦手な人には不思議な概念かもしれないが、昔ながらの手紙の書き方というのは手紙をかけないひとのためにあるのである。何故ならば、冒頭の季節の挨拶だの手紙の終わりに書く決まり文句などを覚えていれば、内容が希薄でも一応手紙として成り立つからだ。それを知らないと何もかも最初から考えなければならず、手紙を書くことが結構難かしい課題となってしまうのである。
法律家だった父が昔、新しく雇った若いアシスタントについて「最近の若いもんは手紙ひとつまともに書けん」と嘆いていたが、その時の「若いもん」とはカカシの年代のことを指していた。私が書いた手紙についても「カカシの手紙は字が汚い上に誤字脱字が多くて読めたもんじゃない」と言われたものだ。まさかこの年になって私も父と同じように「最近の若いもんは、、」というとは思っていなかった。(笑)
左翼に乗っ取られた教育制度
ミスター苺は職業が物書きなので文章はきちんと書く人だが、彼がいうに最近の若いもんが手紙ひとつ満足にかけないとしたら、それはひとえに左翼に乗っ取られた教育制度のせいだという。
私が高校生の頃はまだまだ詰め込み教育の真っ最中で、ゆとり教育なんて言葉は聞いたこともなかった。
今は冒頭しか覚えていないが「月日は百代の過客にして、行き交かふ年も又旅人なり。」とか「つれづれなるまゝに、日暮らし、硯に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ。」なんてのは無理矢理暗記させられた覚えがある。勉強大嫌いで日本での大学受験は完全に失敗したカカシでも一応このくらいは覚えているくらいだから当時の詰め込み方針もまんざら悪くなかったのかもしれない。
数学専攻だったミスター苺は昔、大学生に数学を教えていたことがあるが、その時理数系の学生ですら「証明」の意味が分かってない学生が多く驚いたといっている。「でもダーリン、幾何をやっていれば証明なんて当然でしょう?」とカカシが聞くと「ユークリッド幾何学ならね、でもそんなもの、今時教える中学校なんてないよ。」ミスター苺にいわせると、最近のアメリカの公立学校では数学をきちんと教えられる教師など存在しないという。なにせ他の学部で落ちこぼれた学生が教育学部に集まるので数学が苦手どころか数学恐怖症の人が多いのだそうだ。そんな人間に数学を教わる学生はいい迷惑である。数年前に教育学部の学生で分数の足し算ができない人に算数を教えてあげたことがあった。大学生にもなってなんでこんな算数ができないのだろうと不思議に思ったものだ。(なんでそんなやつが大学に受かったのだ?)
まさか日本の学校もこんなふうになってるんじゃないだろうなあ。
でもやっぱりカカシさんの日本語は変よ!
私が義務教育を受けたのはいまから?十年前なので、変な日本語を書く言い訳は全くないのだが、あるとしたら文章の書き方をきちんと習ったのはアメリカの大学へ行ってからだったということかもしれない。だから私は常に英語を念頭に置いて文章を書くため日本語の表現が不思議なものになってしまうのだ。
いつだったか、私は誰かに「それは真っ黒な嘘」といったことがある。「ちょっと待ってよ、それは真っ赤な嘘でしょう?」と言われて、あ、そうだっけ、と思い出した。英語では悪いことは黒と表現するからてっきり真っ黒だと思い込んでしまったのだ。もっともこういうことはよくあることで、私は日本語のことわざと英語のことわざが混合してしまうことが少なくない。ある時私は「ない袖は振れない」といいたくて、”I can’t shake a sleeve I don’t have.”と言ってアメリカ人に「なんじゃそれ?」という顔をされたことがある。(笑)
そういういい加減な日本語を書いているカカシが「最近の若いもんは、、」なんていう資格は全くないのかもしれない。言葉なんてものは時代と共に変化するもので、いつまでも抵抗していても意味はない。特にネットでのチャットや携帯電話のテキストメッセージなどによる略語が普通の文章にもはいってくるようになれば、さらに我々の話し言葉も書き言葉も変化していくことだろう。
確かにカカシの日本語は変だが、それより分けの分からない日本語がさらに横行するようになるのは時間の問題なのだろう。


9 responses to カカシさん、日本語が変よ

oldman16 years ago

こんにちわ。
私はカカシさんの日本語が変だとは思いませんが、ときどき違和感を覚えることがあります。
「どういうふうに変なのかという具体的なことを指摘して下さる方が少ない」ということですので、僭越ながら二三指摘させていただきます。
私が違和感を感じるのは、ほとんどがカタカナ言葉です。日本での一般的な表記と少し違うわけですが、日本流の方が本当は変なのだと思います。
ペイトリアット・・・パトリオット
アクマディネジャード・・・アフマディネジャド
アルカエダ・・・アルカイダ
ラムスフェルド・・・ラムズフェルド
ご参考になれば幸です。

ReplyEdit
pumpkin116 years ago

こんにちは。1,2ヶ月前から眺めていますが、初コメントです。
パレスチナ関連のエントリーを特に興味深く見させていただいています。
自分の日本語能力に自信があるわけではないですが(当方四捨五入で30歳)、カカシさんの日本語は特に気になりませんよ。
ただ、今回の手紙の例はあまりよくない例では。
前略で始めたら普通は草々などで終わらせます。敬具で締めるのであれば拝啓などで始めなければおかしいです。
定型から中途半端にはずすのであれば、むしろ使わない方がよいのでは。
私も目上の人宛でなければ定型はまず使いません。

ReplyEdit
scarecrowstrawberryfield16 years ago

pumpkin1さん、
おっしゃる通りです。「前略」なら「早々」か「かしこ」で終わらすべきです。自分の手紙をもう一度みてみたら、ちゃんと「かしこ」で終わってました。彼の手紙に「敬具」と書かれていたのでてっきり自分で書いたのかと勘違いしてました。(笑)「敬具」で終わるのは「拝啓」ですね。失礼。他人の言葉使いを批判していて自分がこれではしょうがない。自分でも分かってない証拠です。(反省!)
カカシ

ReplyEdit
scarecrowstrawberryfield16 years ago

oldmanさん、
カタカナ表記の訂正、ありがとうございます。外国語をカタカナ表記するのは非常に難かしい。これはいってみれば個人がどういう音をきくかによるわけですから。しかし一般的な表記というものは存在するわけで、より多くの人にわかってもらうためには一般的な表記をするように心掛けるべきでしょう。
カカシ

ReplyEdit
アレン16 years ago

カカシさんの日本語が変じゃないと私は思います(笑)。語彙豊かにお書きになりますし、おもしろいです。でも、アメリカの中高等教育の実況を触れたからちょっと感想を言わせて頂きます。
私はその産物です。そして2年間もアメリカの大学に通っていた経験もあります。もしご主人に会えば「なんで大学に入れたの」と言われるほど数学に苦手です。なにせ高校では次の試験のためだけ教わっていました。それで要領だけ勉強しても(というより目を通しても)大丈夫です。優等コースでも勉学に没頭せずにすむという形になっています。いわゆる「生涯学習」志向ではありません。またおっしゃる通り教えている科目もぜんぜんわからないくせに教えている教員が主流です。
また、私は思うにはアメリカの大学が二分しています。一方では本物の大学がありますが他方では高校の継続にすぎない大学がほとんどあります。私の属した大学は後者です。英語のちゃんと書ける子があまりにもまれな存在でした。そしていうまでもありませんが高校と同じくなっている大学は教授面でも教育面でも学生数面でも問題化していると思います。
まあ、私の2銭でした、、(笑)

ReplyEdit
Emmanuel Chanel16 years ago

カタカナ英語が,英語の発音とかけ離れているという例なら沢山ありそうですね.ただ,アフマディネジャドとかアルカイダになると,ペルシャ語やアラビア語の発音規則ではどうなっているのか特定出来ないと,カタカナ語の方がおかしいとまでは断定出来ないのでは?英語発音で世界の全ての言葉が回っている訳でもないですからねえ.
後,大学卒業後に入学する Law School や Business School は,大学の附属のものであっても,それぞれ,ロー・スクール,ビジネス・スクールと訳した方が無難です.前エントリーの”スタンフォード大学ビジネス科”は,多分, Stanford Business School (Wikipedia によると,正式名は, Stanford Graduate School of Business.スタンフォード・ビジネス大学院とでもすべきか?)なのでしょうが,スタンフォード・ビジネス・スクールとした方が良いでしょう.
それと,試験的に, Yahoo! Japan 掲示板 イスラエル関連トピ アーカイヴという検索サイトを作りました.イスラエル関連トピ検索のみならず,捕鯨韓国サッカー批判などの検索ページもあります.
それにしても, Yahoo! Japan 掲示板では, adventureoftheultraworld 氏以下の投稿者連が殆ど姿を消してしまいましたね.

ReplyEdit
scarecrowstrawberryfield16 years ago

アレンさん、

私の2銭でした、、

なんと英語的表現!でも「銭」なんて単位良く知ってますね!
マニーさん、
学校名の件は確かにおっしゃるとおりかもしれませんね。
カカシ

ReplyEdit
Emmanuel Chanel16 years ago

なんと英語的表現!でも「銭」なんて単位良く知ってますね!

私はどういう意味かさっぱり分からず,アルクの辞書を引きました.(cf. cents)
銭なんて単位は,日本人なら,朝夕の外国為替相場の報告でよく目にするものなので,誰でも知っているようなものです.って,アレンさんは外国の方でしたっけ?
ちょっとエントリーの趣旨から離れますが,イスラエル関連で, adventureoftheultraworld さんやらを初めとする皆を呼べるものなら,私の掲示板にでも呼びたいのですが,どうすれば良いのだろう?ってな感じです.

ReplyEdit
scarecrowstrawberryfield16 years ago

マニーさん、
“My two cents” といったら、「私のつまらない意見ですが、、」といったような奥ゆかしい表現ですよ。アメリカ英語ではよく使います。
外国文化が入ってくるとこういう風に外国風の言い回しも一緒にはいってきますね。だからアメリカのイディオムはイギリスのものとはかなり違うというのもうなずけます。日本でもことわざは中国から由来したものが多いですが。
「銭」は為替相場では使うんですね。気が付きませんでした。
カカシ

ReplyEdit

Leave a Reply to scarecrowstrawberryfield Cancel reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *