先ず最初に言っておくが、私の先のブログエントリー、ジェンダーフリー、左翼が幅を効かす女性運動はmacskaさんへの個人的な攻撃ではない。私が攻撃したのはアメリカ及び日本の女性運動を乗っ取った、もしくは乗っ取ろうとしている左翼連中なのである。
しかしmacskaさんは私の意見に関して反論をなさっておいでなので、礼儀としてこちらでも誤解のないよう説明をしておくべきだろう。


実を言えばカカシはmacskaさんが個人的に左翼でも共産主義者でもレズビアンでも全く興味がないし、ご本人がそうではないとおっしゃるならそれはそれでかまわない。個人的にどういう理由でmacskaさんがバックラッシュという著書を応援しているのかということも私はあまり興味がない。問題はmacskaさん個人のし好ではなく、macskaさんが支持している左翼フェミニスト運動なのだから。
レズビアンフェミニスト云々については、フェミニストのなかにはポリティカルレズビアンという人たちがいて、自分は本当は異性が好きなのにもかかわらず、政治的な女性優位を目指すあまり男性とのセックスをあきらめたという過激派がいる。私のいうレズビアンフェミニストとはそういう部類の人々のことだ。私にはレズビアンの友達がいるのでこの件については一応知ってるつもり。知らないで適当な言葉使いをしたわけではないのであしからず。
ま、この辺まではあまり主題とは関係ないことなのでどうでもいいのだが、次の点はちょっと重大。

マルクス主義フェミニズムって、マルクス主義を徹底批判するフェミニズムのことなんですが。あと、上野は「ジェンダーフリー」概念に反対で、「男女平等」を掲げる、まさにソマーズが言うところのエクィティフェミニストなんだけど(笑)

私がアメリカのフェミニズムは共産主義の一角であるマルクス主義者に乗っ取られたと書いたことは撤回するつもりはない。macskaさんはマルクス主義フェミニズムとはマルクスに批判的なフェミニズムだとしているが、ここでいう「批判的」と言う言葉はアカデミックな意味でのことで、その考えに反対しているという意味ではない。上野千鶴子の本も宣伝しているこのサイトでの説明はこうなっている。

マルクス主義フェミニズム

マルクスがほとんど顧慮しなかった性・性別という要因をマルクス主義に導入することで、従来の階級闘争還元的な社会主義フェミニズムの限界を乗り越えようとするフェミニズム理論。1970年代のアメリカを中心に発展。
 マルクス主義フェミニズムは,ラディカル・フェミニズムの見解とマルクス主義を統合する。マルクス主義は資本主義社会における搾取の構造を分析するが,マルクス主義フェミニズムは,社会階級だけでなく,さらに「性階級」をも分析の対象にする。すなわち,女性差別の起源が資本主義的な家父長制のなかにあると主張する。労働と家族の分離,生産労働と家事労働の分断,そして前者の優位性という根強いイデオロギーのなかに,女性差別の複合的要因を見出す。
 労働というと,ものを生産して賃金を得る「生産労働」だけを指すが,マルクス主義フェミニズムは,「再生産労働」という概念を新たに導入する。たとえば育児労働,家事労働,看護・介護労働などが,再生産労働と呼ばれる。
 こうした労働は,ひとが生命を維持し生活を活性化するために不可欠な活動である。それにもかかわらず,賃金が支払われることのない無償労働であって,そのほとんどが女性に委ねられてきた。
 これは,明らかにジェンダーの社会化からくる一種の搾取であって,従来のマルクス主義はこの点を見落としていた。 マルクス主義フェミニズムは,資本主義が資本家と生産労働者と再生産労働者の3層からなる複雑な搾取構造である点を指摘する。
 資本主義の進展にともなって,女性も生産労働に動員されることになるが,そうなると女性は二重の搾取のもとに置かれるという。すなわち,生産労働者として搾取されるうえに,「女性の本来の仕事は家庭だ」とする性役割の不当な押しつけによって,もうひとつの搾取が女性労働者に加えられる,というのである。

マルクス主義フェミニズムはフェミニズムを考えるうえでマルクス主義は不十分であったという意味でマルクス主義に「批判的」ではあるが、マルクス主義の根本に異議を唱えているのではないのである。それどころかマルクス主義の基本を拡大してフェミニズムにあてはまるようにすべきなのだという考え方なのだ。社会主義は個人の所属する団体を重視する考えで、個人の能力によって評価されるという資本的な思想ではない。そういう思想を持っているひとが個人の才能を強調するエクイティーフェミニズムを信じるのは不可能なのである。
現在のフェミニストたちが自分たちのことを「私はジェンダーフェミニストではない、エクイティフェミニストだ。」と主張したがるのは、左翼が自分を左翼と認めたがらないのと全く同じ理由だ。単純にジェンダーフェミニストとかジェンダーフリーといった概念がその本質を理解されるにつれ一般市民から見放されてしまったことを彼女たちは承知しているからだ。しかし自分らをいくらエクイティフェミニストだといってみても実際にそうではないのだから名称だけ変えても意味はない。
本当のエクイティフェミニストかどうかを確かめる方法は簡単だ。

  • 質問1:大学などの理数学部で女子生徒や女性教授の数が男性に比べて極端に少ないことは、応募者数に関係なく男女差別なので女性の数を増やすべきであると思うか?
  • 質問2:歴史的に迫害されてきた少数民族や女子に公平な機会を与る目的でつくられた、これらの人々への特別考慮をするアファーマティブアクションを支持するか?
  • 質問3:タイトル9によって、学校内で男女同じように運動部が設けられその活躍や規模に関係なく同じ予算をあてがわれなければならないという法律を支持するか?

もしこれらの質問にすべてイエスと答えれば、ジェンダーフェミニストだし、ノーと答えればエクイティフェミニストだということになる。
次にクリントンのセクハラ問題に対するアメリカフェミニスト団体、おもにNational Organization of Womenに関する問題。

クリントンのセクハラ疑惑云々については、米国の保守系メディアで繰り返し宣伝されたデマ。疑惑が「クリントンを引きずりおろす」ことを公言していた保守系政治雑誌で(クリントンは殺人犯で麻薬密輸犯だという事実無根の記事に混じって)まず報じられ、原告による記者会見が保守系団体のスポンサーで開かれた時点で、NOW は支援の可能性を探ろうと原告側弁護士と接触を取ったけれども、支援を断ったのは原告側の方。その後 NOW は(事実がはっきりせず、原告との接触もできなかったため)クリントンを一方的に批判することはなかったけれども、クリントンが現職大統領であることを利用して裁判を遅らせようとしたことについては「原告に裁判に訴える機会を与えるべきだ」として批判していた。 NOW が原告のことを「嘘つきだとか田舎者だとかいってさんざん糾弾した」証拠があるなら、それを見せて欲しい。

先ずクリントン大統領のセクハラ問題を「疑惑」とか「保守系メディアで繰り返し宣伝されたデマ」などというところからして、macskaさんのバイアスが完全にばれてるわけだが、NOWのような組織が公式サイトで犠牲者の悪口など言うはずはないし、表向きは公平を保っているような声明文を発表していたことは確か。
しかし保守派のクレアランス・トーマス裁判長にセクハラを受けたといって非常に下らない理由でセクハラを訴えたアニタ・ヒルへの積極的な弁護に比べて、ポーラ・ジョーンズへの扱いは非常に冷たかった。NOWの会長のパトリシア・アイルランドは、右翼がこの事件を利用してクリントンを陥れようとしているとし、ポーラ・ジョーンズはその手先であるかのような声明文を出している。

ジョーンズさんの信用度がこうした関係によって自動的に失われるとは言わないが、右翼指導者たちとのかかわりは彼女の訴えを不誠実なものにしていると考える。

この声明文が発表されたいわれというのも、自分らの政治ライバルのセクハラ被告には厳しいNOWが自分らの支持する政治家によるセクハラを無視していると保守派からさんざん叩かれたことへの返答だった。また、NOWが敵の敵は友達と考えてイスラム教過激派による女性弾圧を無視しているという私の意見についてmacskaさんはこうおっしゃる:

NOW がタリバンやイスラム教原理主義による女性迫害を取り上げていないという点も、まったくのデタラメ。これは単純に、NOW のウェブサイトを「taliban」あたりで検索すれば、女性迫害についての記事や NOW の年次総会で可決されたタリバン非難決議やらがいろいろ出てくる。よくもまあこんなにすぐにバレるデタラメを書けるものだ。ていうか、わたし NOW 嫌いなのに、あんまりデタラメ書くから擁護するハメになっちゃった、どーしてくれる。

これは私がNOWがタリバン批判を「全くしていない」と書いたことへの反論だが、私はNOWがタリバンやイスラム教の女性迫害を一度も批判したことがないと言う意味で書いたのではない。ブッシュ政権がイスラム教テロリストに戦いを挑んで以来全く批判が聞かれなくなったという意味で書いたのだ。
現にNOWは2001年の911事件直後くらいまでは声高にタリバン批判をしていた。タリバン政権下の女性迫害に関してブッシュ政権が何もしていないとか、ブッシュ政権がアフガニスタンに送ることになった支援金についてもかなり批判していたことを私は今でも覚えている。
ところが、一旦そのタリバンを倒すためにブッシュ政権がアフガニスタン戦争をはじめるとなったら、突然静かになってしまった。NOWはアフガニスタン戦争が始まってからタリバン批判を積極的にしていない。タリバンがブッシュの敵となり、タリバン批判が保守派批判につながらなくなった途端にその批判をやめてしまったのである。タリバンで検索して出てくるNOWのこのページでも2001年10月以降のイスラム教批判は見つけられない。
アフガニスタン戦争やイラク戦争がNOWによって取り上げられる場合は、常にこれらの戦争によって状況はかえって悪くなった、もしくはタリバンを倒した後でも女性の立場は良くなっていない、といった批判でしかない。
それから名誉殺人についてだが、これも”Honor Killing”で検索してみるとこのページが出てくるが、”NOW Supports Legislation that Denounces ‘Honor’ Killings and Violence Against Women”「NOWは名誉殺人や女性への暴力を糾弾します」という題名のページに「イスラム」という言葉が一度も出てこない。’NOW, Nadler Unite Against “Honor Killings”‘というページには「イスラム教」と言う言葉はでてくるものの、名誉殺人とイスラム教は直接関係ないという関連で出てくるだけだ。名誉殺人という行為自体は糾弾してもおよそイスラム原理教批判などにはなっていない。それどころかイスラム教批判を必死に避けているのだ。
最後にフェミニストがやたらに「性」を持ち出すことについて、

あのー、トランスジェンダーの作家を紹介したら、どうしてそれが左翼主義の促進になるんでしょうか? マジ分からん。…
フェミニズムはいわゆる「女性」だけでなく、人種も階級も障害も国籍も扱いますがなにか。それらを扱わずに、すべての女性のためになる運動ができるわけがないっての。

左翼フェミニストにかかっては、何もかもが政治に関連付けられてしまうという典型的な発言である。macskaさんはいわゆる”the personal is political”という左翼のモットーに従っていると言える。
追記:macskaさんがクリスティーナ・ホフ・ソマーズ女史が保守派である証拠として、保守派シンクタンクから支援金をもらっているという話を書いておられる。直接ブログのほうにコメントを残そうとしたのだがうまくいかなのでこちらで答えておこう。
保守派から支援金をもらったからといって、調査者自身が保守派であるという証拠にはならない。彼女の調査がたまたま保守派に気に入られたというだけの話である。macskaさんはホフ・ソマーズの著書を読んでいれば彼女が保守派であることは明白だおっしゃるが、私の読む限りそのような印象は受けない。
それでもホフ・ソマーズが極右の保守派だといいはるのであれば、移民、人工中絶の合法性、健康保険、対テロ戦争、銃砲取り締まりなど保守派にとって非常に大切な事柄について彼女がどういう見解を示しているのか是非その情報源を添えた上で提示していただきたいものだ。その上で本当にホフ・ソマーズ女史が保守派だと分かったら、カカシとしてはこんなうれしいことはないが。(笑)
ところで『学問的には左翼よりむしろ保守の主張する「減税、小さな政府」の側をリベラルと呼ぶ伝統がある』というのは19世紀の話だ。20世紀のリベラリズムを「減税、小さな政府」などと定義つけるひとはアカデミックでも存在しないだろう。


2 responses to エクイティーフェミニストからジェンダーフェミニストへ

*minx* [macska dot org in exile]15 years ago

それよかロムニー vs. ハカビー代理論争やろうよー

 苺畑カカシさんから、反論されちゃいました。人のこと言えないけど、ペース早いよねー。 問題はmacskaさん個人のし好ではなく、macskaさんが支持している左翼フェミニスト運動なのだから。 http://biglizards.net/strawberryblog/archives/2008/01/post_624.html  だった

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In the Strawberry Field15 years ago

ジェンダーフェミニストの見分け方

アップデートあり、下記参照。 先日から続いているフェミニズムに関する討論で、macskaさん(ペンネームは小山エミ)はかなりお疲れのようなので彼女の最新の反論を取り上げながら、ジェンダー及びエクイティフェミニズムについて最終的にまとめてみたいと思う。その後でmacskaさんが犯した間違いについて指摘してただしておきたい。…

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