国防を他人任せにする危険

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先日私はずっと以前からのネット知り合いで東南アジアでNGO活動をしてらっしゃるアセアンさんと日本の護衛艦が日本の商船を守るべきなのではないかという話をしていた。その時彼が言ったことがきになったので、アセアンさんのご了承を得てここにそのやり取りの一部を掲載する。しかしその前にちょっと寄り道をさせてもらう。関係ないようだが後でちゃんとつじつまを合わせるのでご心配なく。
私の好きな小説のひとつにJ.R.R.トールキンの「指輪物語」がある。ピータージャクソンが映画化したロードオブザリングス三部作は、小説の映画化としては稀にみる良い出来だった。しかしただひとつ私が失望したのは、ジャクソン監督が「ホビット庄の掃蕩」という章を完全に省いてしまったことだ。原作ではサウロン相手の戦争が終わって、英雄たちがそれぞれの故郷に帰ったところで話がめでたしめでたしと終わるかというと実はそうではない。
物語のはじめに描かれているホビット庄は非常に平和で、もう何世代も戦争をいうものを体験したことがない。ずっと昔にはひどい戦争があって、何人もの村人が戦って死んだという歴史はあるにはあるのだが、あまりにも遠い昔のことなので、村人たちの記憶にかすかに残っているに過ぎない。なんにしても今の平和主義のホビットたちには全く無関係な話である。外部から戦争が近づきつつあるという噂を聞いても、それはどこか遠いところで起きていることで、自分達には関係ないと思っているホビットたち。たまに外部からの怪しげな男達を境界線の村の宿で見かけることがあるが、ホビットたちは汚れた服を着て厳しい顔つきのこの男たちには気味悪がって近づかない。
しかし実はこのレンジャーと呼ばれる怪しげな男達こそが、ホビット庄を守るべく村に迫ってくる悪の軍隊たちと日夜命がけで戦っているのだ。ホビットたちはレンジャーに感謝するどころか、彼らの存在にすらほとんど気が付かない。ホビット庄が平和ならそれでいいのだと考えている。
さてここで話をアセアンさんとの会話に戻そう。

アセアン: 「米国が(この際ですから、ハッキリ言いますが)米国一国だけが「世界平和(爆笑:此処が嘘で、米国本土の安全保障のため”だけ”)の為に汗をかいている時に、責任も果たさす金儲けに走るのか?」式の”難癖”もハッキリ言って難癖以外の何物でもない。

何せ、日本はその金儲けで得た世界第二位のGDPの中から、膨大な金額を米国に対して米軍とか言う傭兵組織のレンタル料金として支払っている(あははは)…..
世界中の海域で海上警備行動なんて馬鹿げた活動が出来るのは米国しかないんだからその費用を出して上げるから頑張ってね!でいいんじゃないですかね?(笑) 早い話が金をしっかり払ってんだから、キッチリ警備してよねっ!ってことですかね。。。。。。
カカシ:言っちゃ悪いですが、こういう言い分がアメリカでは非常に悪評を買いますよ。つまりですね、自分らは金だけ出して危ないことはアメリカ任せっていう姿勢はアメリカ人には徹底的に軽蔑されます。
軍事強化して極東守って自分らのタンカー守って、対テロ戦争にも直接参加してれば、アメリカがどうのこうのいってきたからって一銭も払う義理なくなるんですよ。…はっきり言って、アメリカ人からしてみたらそういう態度のほうがよっぽども尊敬できます。
アセアン:日本の大多数の国民はですね(多分)、米国から(国際社会からかな?)尊敬されなくなって戦争するよりはヨッポドまし!・・・って思ってるんですよ。。。多分ね。憲法9条とか言う話は、まぁ”言い訳”ですよ、言い訳。
いいじゃないですか!米軍を派遣する、駐留する、移転する、戦争する経費を払ってくれる奇特な国家(?)なんて世界中探しても日本くらいなもんですよ…
日本の安全保障に関する基本概念はどんなに世界中から蔑まされようが、日本本土が攻撃を受けさえしなければ良い!っと言うのは、太平洋戦争の苦い経験があるからですよ!

もしもアセアンさんのような考え方が日本人の一般的な考え方なのだとしたら、私は非常に残念だ。これが侍魂を持って降参するくらいなら戦って死ぬと言っていた誇り高い日本人の成れの果てだとしたら、これは本当に情けない限りである。現代人はいったいご先祖さまにどうやって顔向けできるのか不思議でしょうがない。
しかし金だけ払って傭兵に国を守ってもらおうという考え方は、単に情けないだけでなく非常に危険な考えで、決してうまくはいかない方法なのである。この傭兵政策にはいくつか問題がある。

  • 先ず第一に、自分らが防衛の戦いさえも拒絶するという態度は戦争を避けるどころか かえって戦争を招いてしまう

    イランのアメリカ大使館が占拠されたとき、当初過激派学生たちは人質を4~5日拘束する計画だった。ところが当時のカーター大統領がイランへの報復はしないと公言してしまったため、過激派たちは人質を444日も拘束するに至った。
    サダム・フセインが湾岸戦争後国連の停戦条約をやたら破って傲慢な態度をとっていたのも、クリントン大統領が本格的な戦争をやるつもりがないことをフセインは充分に心得ていたからだ。
    オサマ・ビンラデも1998年のインタビューで、「アメリカは弱い、アメリカは戦わない」と言っていた。そのアメリカの逃げ腰な態度が2001年の911事件を招いたのである。
    弱いと見られれば攻められる。強いと見られれば敬遠される。

  • 第二に傭兵の忠誠心は雇い主の日本にあるわけではない。彼らには彼らの都合がある。.

    アセアンさん自身が指摘しているように、アメリカは世界平和のためなどと奇麗事をいってはいるが、実は自国の国益を最優先に考えている。私個人としてはアメリカの平和は世界平和につながると考えているため、この考え方には全く矛盾を感じない。ただ、もし日本を守ることがアメリカの国益と矛盾した場合に、アメリカは日本などためらいもなく見捨てるだろう。そうでなくても、アメリカは全治万能の神ではない。アメリカだけで全世界の警備ができるわけでもなし、アメリカの手の届かないところで日本が攻められたらこれはどうしようもない。

  • 第三に、この作戦が失敗する最大の原因は「壁の上の男達」現象だ。

    「壁の上の男達」とは、ロブ・ライナー監督の1992年製作映画“A Few Good Men”での、ジャック・ニコルソン扮するジョセップ大佐のことばだ。 (実はジョセップ大佐は映画では悪役だが、彼のこの演説は軍人には非常に気に入られており、映画自体はあまり覚えられていないが、この台詞だけがよく軍事基地のオフィスなどに張られているのを私は目にする。)
    自分達が戦争をせずに傭兵に頼って戦争をしてもらっていると、だんだんと一般市民は戦争の必要性を忘れてしまう。なぜ傭兵を雇ったのか、なぜ傭兵に家を提供し必要経費を払い給料まではらっているのか、その根本的な原因を忘れてしまうものだ。それでいつの間にか、傭兵なんか必要ないんじゃないだろうかと考え出す。あの壁の上で行ったりきたりしている番兵はいったい何の役にたっているのだ、邪魔だからとっととグアムあたりに引っ越してもらおう。国民の血税でアメリカの経済支える義理はないよってなことになる。
    それじゃあアメリカがいい加減に頭にきて、「さよでござますか、じゃあ、どうぞご勝手に」と言って何もしてくれなくなったら日本はどうするのか?日本にはアメリカの加護を受けずに自分らだけで国を守る能力など持ち合わせていないではないか?

いま日本人が米軍基地にかかる費用とか、日本が言い出したグアム島移転の引越し代を払うのを渋っているのも、みなどうしてアメリカ軍が日本に駐留しているのかを忘れてしまったからだ。
日本の血税無駄使いして家賃も払わねえでいすわってるこいつらは誰なんだ? と日本市民は問いただす。しかしこれは「ただ」ではない。アメリカ軍は日本にいることで日本を守っているのである。日本は自分らが戦わない代わりにその経費を払うんじゃなかったのか?戦わないで済むならそのぐらい安いもんだと思ったのではなかったのか?一時は価値があると思った人々が、いまやこの値段は高すぎると文句をいっているのである。(ところで米軍基地は家賃を払っていないわけではない。米軍側は日本にかなり高額な土地代を払っている。日本の方々はそのことをご存じないようだが。)
日本人が日本駐留のアメリカ軍に対してこのような感情を持つのは当たり前だ。なぜなら現代の日本人は全く戦争というものをみたことがないからだ。彼らにとって戦争など存在しないのだ。どうして壁の上に男達が立つようになったのか完全に忘れてしまったのである。(アメリカの古いことわざに、最初に壁が建てられた理由を確かめずに壁を壊してはいけない、というのがある。)
私が指輪物語の「ホビット庄の掃蕩」が大事だといっているのはこの点だ。戦争はついにホビット庄に訪れる。故郷のホビット庄を出て冒険の旅を終えてもどったホビットたちを待っていたのは、よそ者によってすっかり乗っ取られて見る影もなくなっていた故郷ホビット庄だった。
すでにこれまでずっと頼りにしていたレンジャーたちも、魔法使いも、エルフ達もそれぞれ故郷へ帰ってしまい頼れるものは自分達だけになったホビットたちは、これまでの平和主義を捨てて自分達だけで侵略者たちと戦わねばならない。
ここでホビット庄を悪者からとりかえすべく、ピピンとメリーという二人のホビットたちが中心になってホビット庄を侵略者から取り戻す。二人は外地で戦争を見て体験してきた。彼らはどうやって戦えばいいかを知っていた。この掃蕩こそが、指輪物語をまとめるうえで非常に大事な要となっているのである。
日本人が非戦闘員としてでも平和維持作戦に参加して、アメリカ軍や他国の戦士たちの戦いぶりをみれば、彼らも戦争という日本人が失った人間の伝統を思い出すかもしれない。こうして本当の戦争を体験した日本人が国に帰って日本人に戦争の何たるかを思い出させることができるかもしれない。そうして日本人に再び名誉、義務、規律といった、概念を思い出させてくれるだろう。なにしろ日本にはもともと武士道というものがあったのだ。日本の若者がそれをきいたことがないのは非常に残念だが。
テロリストはこれまでにもバリ島での爆破事件でオーストラリア人及び日本人を大量に殺している。エジプトでも日本人を含む観光客がテロリストの乱射によって殺された事件があった。ソマリアはイスラム系の国であり、アルカエダのようなイスラム系テロリストがソマリアの海賊を使って海賊行為で金儲けと同時に世界に脅威感を与えようとする可能性は大いにある。彼らにとて旗がアメリカであろうが日本であろうがおなじことだ。日本だけがテロの標的から見逃してもらえるなんて考えているなら甘いとしかいいようがない。
無論これは決して日本だけの現象ではない。ヨーロッパなどもっとひどい。いったい何度テロ攻撃にあったり、過激派による暴動を経験すれば彼らは目覚めるのだ?
日本もヨーロッパもそろそろ自分らの庄を掃蕩する時期が来ているのではないか?

下記にジョセップ大佐のスピーチを掲載しておく。難しいので翻訳できないが、英語に自身のあるかたは是非読んでみていただきたい。

We live in a world that has walls, and those walls have to be guarded by men with guns. Whose gonna do it? You? You, Lt. Weinburg?

I have a greater responsibility than you could possibly fathom. You weep for Santiago, and you curse the Marines. You have that luxury. You have the luxury of not knowing what I know: That Santiago’s death, while tragic, probably saved lives.
And my existence, while grotesque and incomprehensible to you, saves lives. You don’t want the truth because deep down, in places you don’t talk about at parties, you want me on that wall, you need me on that wall.
We use words like honor, code, loyalty; we use these words as the backbone of a life spent defending something. You use them as a punchline.
I have neither the time nor the inclination to explain myself to a man who rises and sleeps under the blanket of the very freedom that I provide, and then questions the manner in which I provide it. I would rather you just said “thank you,” and went on your way. Otherwise, I suggest you pick up a weapon and stand a post.
Either way, I don’t give a damn what you think you are “entitled” to.


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イギリス諜報部、アメリカはイランに一杯食わされたと指摘

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イランが2003年後期に核兵器開発を停止していたというNIEの報告はどうも疑わしいと感じているのはカカシだけではない。どうやらイギリスの諜報部もこの報告書はかなり眉唾だと感じているようだ。 英国のテレグラフ紙によると、

イギリスの秘密工作員たちはアメリカの諜報報告が先週発表したイランが核兵器プログラムをお釈迦にしたという話は非常に疑わしいとし、CIAはテヘランに一杯食わされたと考えている。

先日カカシがここここでも書いたように、イギリス諜報部もNIEが元にしたという新しい情報とは、イランが意図的に流した偽情報なのではないか考えているらしい。
先日紹介したワシントンタイムスの記事で、アメリカ諜報部の幹部は新しい証拠がイランの情報操作による偽情報あるという可能性はみとめたが、多分そんなことはないだろうと語ったとあった。しかし同じ諜報幹部はイランがウラニウム濃縮をしていることを認めておりイランが始めようと思えばいつでも核開発を始められる体制にあることは多いにありうると認めたとあった。
次に紹介したロサンゼルスタイムスの記事で、我々は新しい情報とはイラン軍部高官同士の盗聴された電話での会話と、後にみつかった軍人の日記だということを学んだ。.
素人目でみても、イラン政府が経済制裁や軍事行使の危機を防ぐため、自分らが敵に対して驚異的な存在ではないことを証明する偽情報を流し、必ず見つかる場所においておくなんてことはすぐに思いつく。これ、情報操作の常識。NIEは諜報分析の専門家なのであるから、これが偽情報である可能性についてもっと深い分析が必要なのではないか?
前述のテレグラフでもイギリスの分析者によってその点に焦点が当てられている。

関係者の話によるとイギリスの分析者はイランの核兵器開発スタッフは自分らの電話が盗聴されていることを承知のうで意図的に偽情報を流したと考えているという。「我々は非常に疑っている。我々はこの情報がいったい何を基にしているのか、いったいどこからきたのか、これは亡命者から得たじょうほうなのか、盗聴した内容が基本なのか、知りたい。彼らは電話が盗聴されていることは知っている。こちらを混乱させるためにどんなことでもいうだろう。」
「だいたいアメリカの諜報部はあのあたりではあまりたいした仕事をしていない。イラクの件でもかなり痛い目にあってるし。」

どうやらイギリス諜報部はアメリカのCIAを高くかっていないようである。
ジミー・カーターやビル・クリントンの時代に、アメリカは実際にスパイを敵地に送り込む、いわゆるヒューマンインテリジェンスを極端に減らしてしまった。それで我々の諜報技術は衛星写真だの、盗聴だの、ネット監視だのといったものに頼りすぎる傾向がある。こうした情報はその国の非常網がどうなっているかといったことを調べるには格好の道具なのだが、敵側の意図を分析するには不十分である。こうして得た情報では、相手側が意図的に嘘をついているかどうかを分析することは出来ない。
敵側の意図を確かめるためには、どうしても生身の人間によるアメリカに忠誠心をもったスパイによる諜報が必要になってくる。この人間は敵国に長年普通の市民として住み着き、敵国の文化や宗教に慣れ親しみ、表向きの政権ではないく実権を握っている組織やその機構について充分に理解し、敵の言動の微妙なニュアンスを正確に捉えることができ、実際に敵がどのくらい真剣にわが国や近隣諸国を攻めるつもりなのかといったことをきちんと把握できる人間でなければならない。このような人材はちょっとやそっとでは育たない。敵国への諜報行為は長年にわたる長期計画でやっていかなければ駄目なのである。
まさにイギリスやイスラエルが何十年もかけてやってきた諜報作戦がそれである。イギリスに関しては帝国時代からすでに世紀単位で諜報活動を行ってきたし、イスラエルの場合は諜報が間違っていればイランのアクマディネジャド大統領の希望通り、この世から抹殺されてしまう恐れがあるのであるから、諜報にかけては真剣だ。
アメリカの諜報はスパイによる諜報ではなく単なる盗聴だけだ。才能ある人材を駆使してアメリカよりもずっと諜報網が優れているイギリスとイスラエルの諜報部が、NIEはイランに一杯食わされたといっている以上、ブッシュ政権はNIEの報告をもう一度真剣に見直す必要がある。もしもこの情報が偽情報でNIEが本当にイランに騙されていたとしたら、そしてこの情報をもとにイランへの圧力を緩和してしまって二年後にイランに核兵器完成なんてことになったら目も当てられない。
もっともアメリカのスパイのなかにも、この問題をかなり心配している人たちがいる。上記の記事によれば、CIAの中間層の工作員の間でもイランは核兵器開発を続けていると考えている人たちが多いようだ。ただ残念なことにCIAは2004年にイラン国内での大事なコネを大量に失ってしまったため、その確認がとれないのだという。
どうして2004年なのかというと、2004年はイランで選挙があり、当時テヘランの市長だったアクマディネジャドが大統領に選ばれた年で、彼の党が圧倒的多数議席を取り、ハシミ・ラフサンジャニ前大統領とその配下のものが一世に取り除かれてしまったのである。どうやらアメリカのコネはアメリカ人スパイではなくて、すべてイラン人高官だったらしく、彼らが勢力を失ったとともに、アメリカもコネを失ってしまったというわけだ。
イスラエルもイギリスも自国民をスパイとしてイランに送り込んできた。両国とも多くの才能あるスパイをその正体がばれて暗殺されるという犠牲を払ってきた。アメリカは賄賂を使ってイラン高官を買収することと、盗聴や衛星写真での諜報に力を入れてきた。どのやり方も諜報には重要な役割を果たす。しかしアメリカは、(特に民主党は)短期的な目でしか物事を見ることが出来ず、長期的に敵国の様子を探るスパイの育成を全くしてこなかった。アヤトラ・ホメイニによる宗教革命をCIAが全く予期できなかったのも、CIAがイランからスパイを一斉に引き上げてしまったことが直接の原因だ。
現在の世界は非常に危険な状態にある。このような非常時には非常対策が必要だ。北朝鮮、ベネズエラ、ロシア、中国など、スパイを送り込んでアメリカがじっくり観察しておかなければならない危ない国がいくらもある。アメリカ市民はアメリカ政府によるスパイ活動を反対したりはしないだろう。だが、問題は民主党ならびに、共和党とは名ばかりのRINOと呼ばれる政治家達である。CIAがテロリストを尋問するときに多少手荒な真似をしたというだけで大騒ぎをしている連中だ、アメリカのスパイがイランに潜入して任務のために人殺しもいとわないなどとなったらねずみを怖がるご婦人のように机の上にのっかって裾をまくって叫び出しかねない。
繊細な心の持ち主に諜報政策を任せていてもいい時代はとっくの昔に終わったのだ。我々にはラングリーにあるCIA司令部の壁にもっともっと多くの黒星(殉職した人は黒星で表される)が張られる覚悟ができるような根性の座った男女が必要なのである。アメリカには「非合法戦闘員」を敵国に潜入させるという誇り高い伝統が以前には存在した。いまやアメリカはその伝統に戻るときである。いや、もうとっくに戻っているべきだったのである。


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信仰と政治の両立は可能か? ミット・ロムニー候補の演説を考える

共和党大統領に立候補しているミット・ロムニーマサチューセッツ元知事は、モルモン教徒であるということで、福音書右翼や世俗主義左翼から、大統領にふさわしくないという批判を多く受けている。
モルモン教はその始まりが過激思想のジョン・スミスとその妻エマによって創設されたが、そのあまりの過激さにジョン・スミスは暗殺され、教徒は追放の憂き目をみた。二代目のブリガミア・ヤングは自由の地をもとめて従者をひきつれ旅にで、ユタ州におちついた。しかしその後もモルモン教はテロリスト的な暴力行為を繰り返し、主流キリスト教徒たちからは「カルト」として忌み嫌われた。彼等の一夫多妻制度も長いこと批判の対象となっていた。
しかし時とともにモルモン教は主流化し、今ではごく普通のキリスト教の一宗派として受け入れられている。一夫多妻制度など、とっくの昔に破棄されており、ミット・ロムニーは二十何年前にめとった最初の細君といまだに円満だ。カトリック教徒なのに三回も離婚しているジュリアーニ元ニューヨーク市長とは大違いである。
にも関わらず、ロムニー候補に対する「モルモン教徒」批判は強まる一方である。そこで数カ月前から、ロム二ーは昔、ジョン・F・ケネディがアメリカで初のカトリック教大統領となるべく立候補した時にしたように、自分の信仰と大統領としての信念を国民にきちんと説明する必要があるといわれてきた。ロム二ーは最近ぱ浸礼派教徒の候補者マイク・ハッカビーに押され気味でもあり、1月のアイオワコーカスを前にここはひとつ演説をぶっておかねばならないと考えたようだ。
その演説が、先日パパブッシュの大統領図書館において行われた。上記のリンクからビデオをみることが出来るので、英語のヒアリングに自信のある方はぜひ演説を聞いていただきたい。
まずロムニー候補は先の大統領の紹介に感謝した後、パパブッシュが第二次世界大戦中に戦闘パイロットで活躍し、のちに敵に撃ち落とされたのを米潜水艦に救われたという話をし、先代はアメリカの自由を守るために常に立ち上がって戦ってくれたと讃えた。これが先の世代が「偉大なる世代」といわれるゆえんだとし、自分達の世代が直面するイスラム過激派テロリストによる脅威、国家の莫大な負債、石油の使い過ぎ、離婚問題といった問題をかかえ、先代に見習って自由を守るために戦わねばならないと演説をはじめた。

人によっては、我々の直面する脅威において宗教など特に真剣に考える必要はないといいます。しかし彼等のそうした考えはアメリカ国家創設者たちの考えと異なります。 国家創設者たちは国家の偉大なる危機に瀕した時、創造者の祝福を求めました。そしてさらに、自由な国の生存と宗教の自由を守ることが深くつながっていることを発見したのです。ジョン・アダムスの言葉ですが、「道徳と信仰によって、束縛を解かれた人間の情熱と戦うことができるほど、強く武装した政府は存在しません。我々の憲法は道徳的で信仰心の強い人々によって作られたのです。」
自由は宗教を必要とし、宗教は自由を必要とします。自由は心の窓を開け放ち、魂が神と一体となるためのもっとも重大な信仰を発見することができるのです。 自由は宗教と共に耐え、宗教なくして滅びるのです。
….
50年ほど前、マサチューセッツ出身のもうひとりの候補者が、彼はアメリカ人として大統領に立候補しているのであり、カトリックとして大統領に立候補しているのではないと説明しました。彼と同じように、私もアメリカ人として大統領に立候補しています。私は自分の候補性を私の宗教で形作るつもりはありません。人は、宗教が理由で選ばれるべきでもなければ、宗教ゆえに拒絶されるべきでもありません。
私の協会も、いやそれをいうならどの協会も、私の大統領としての決断に影響を及ぼすことはないと保証します。彼らの権限は彼らの協会内部にのみあるのであり、彼らの権限の境界から国の政が始まるのです。
…..
人によってはそのような保証だけでは不十分だと言います。彼らは私が単に私の宗教から遠ざかるべきだといいます…私はそのようなことはしません。私はモルモン教を信じ、その教えに従って生きるつもりです。
…..
私の信仰に対するこのような告白は私の候補としての立場を危険にさらすことになるという人がいます。もしそれが正しいのであれば、それは仕方ありません。しかし私は彼らはアメリカ市民を見損なっていると思います。アメリカ市民はたとえ世界を得るためでも、自分の信じるものをおざなりにする者を見飽きているのです。

ここでロムニーはイエス・キリストをどう考えるかという説明を始める。モルモン教と福音書ではこのあたりでかなり違った教えがあるからなのだろう。しかしロムニーは自分がモルモン教の教えをつぶさにせつめいする義務はないと語る。なぜならば、そのようなことをするのは国の創設者たちが憲法で禁じた宗教の試験をすることになるからだ。ロムにーが、「どんな候補も彼の宗教の報道官になるべきではありません。そして彼が大統領になったときは彼は人々のすべての信仰によるお祈りを必要とするのです。」と言ったところでは、会場から一斉に歓声が沸いた。
ロムニーは宗教こそがアメリカ国家の基盤だとしながらも、どの宗教を個人が選ぶかは個人の自由だとしている。そして政教分離の大事さを唱え、どのような宗教も政府を独裁してはいけないし、宗教の自由を迫害してもいけないと語った。しかし最近の公の場での宗教関係のシンボルがことごとく取り除かれている傾向については、これはアメリカ国家創設者たちの意図に反するものだと主張した。このような行為は世俗主義という宗教の押し付けであり間違っているとロムニーは言う。また、大統領となった暁には保守派の裁判官を任命するという意志を次のようにあらわした。

創設者たちは、国家宗教の設立は禁じましたが、公共の場から宗教を取り除けなどとはいっていません。私たちは「神の元に」そして神の中にある国家で神を信頼しています。私たちは創設者がそうしたように創造者の存在を認めるべきです。神は私たちの貨幣にも、私たちの宣誓にも、歴史の教えのなかにも、そして祝いの季節のあいだも、残るべきです。キリスト降誕の図やマノラは公共の場で歓迎されるべきです。わが国の偉大さは憲法の元となった信仰の基盤を尊敬する裁判官なくしては長くは持ちません。私は政府の政と宗教の分離に関してはきちんと計らいます。しかし、私は自由をもたらした神から人々を離すようなことは致しません。

宗教保守がこれを聞いて気分が悪いはずがない。なにしろリベラルな裁判官によって何かと宗教が迫害されている今日この頃、公共の場での宗教シンボル掲示は政教分離の精神に反さないという裁判官を多く任命してもらえるかどうかは非常に大切な問題だ。
ロムニーは大事なのは大統領が宗教を基盤にした、平等、助け合い、自由の保護といったアメリカの価値観をもっているかどうかなのであり、このような価値観はどの宗派を信じていても同じだという。この宗教の価値観によってアメリカはまとまってきたのだと語る。
アメリカ人は皆自由は神からの贈り物であることを知っている。アメリカほど自由のために自らを犠牲にして戦ってきた国はないとロムニーは言う。このアメリカの価値観と道徳的伝統はロムニー自身の宗教にも他の宗教にも共通するものだ。
現在のアメリカ人は常に宗教の自由を経験してきたので、そういう自由が無かった時代を忘れてしまったのかもしれないとロムニー。ヨーロッパから宗教弾圧を逃れるために新世界へ逃げてきた人たちが、今度は自分達が異教徒を迫害する立場になったりした歴史を振り返り、ロムニーはアメリカの創設者こそが、フィラデルフィアで「自由とは何か」という画期的な定義付けをしたのだと語る。
ロムニーは自分が欧州を訪れたとき、国教のあった国々には美しい教会がいくつもあったが、礼拝者がいずに空っぽのところが多かったという。これは一重に国が国民に宗教を押し付けたことが原因だという。宗教を国民に押し付けることも悪いが、それ以上に悪いのは過激派聖戦主義者が暴力で人々を改宗させようと言う行為だ。我々はこれまでには無かった偉大なる危機に瀕しているとする。ここでロムニーは対テロ戦争にも真剣に取り組むつもりだと国民に約束しているわけだ。
アメリカの創設者たちは、イギリスとの独立戦争に面して、宗派の違うもの同士がアメリカの愛国者として心をひとつにして祈った過去をもう一度語りかける。

この精神を、神聖な自由の著者に感謝し、一緒にこの国が常に自由の聖なる火にともされ神に祝福されるよう、祈ろうではありませんか。

神よアメリカ合衆国にご加護を与えたまえ!

このような演説を聴くと、日本の読者の皆様は何か神がかりすぎて変な印象を受けるかもしれない。だが、ロムニーが今捕らえなければならない投票者は世俗主義のリベラルではなく、信心深い宗教右翼なのである。ロムニーの最大のライバルであるマイク・ハッカビーは、ロムニーの宗教は本物のキリスト教ではないとでも言わんばかりに、自分は「キリスト教徒の候補だ」とテレビでビデオコマーシャルを流しているほどなのである。
ロムニーは今の時点で無所属やリベラルの支持を得る必要は全くない。大切なのはアイオワとニューハンプシャーで保守派の票を稼ぐことにある。だから自分が信心深い人間であり、アメリカの基盤となっているイエス・キリストが救世主であることを信じていると主張することで、他のキリスト教宗派にこの人間は安全だと信用してもらうことが大事なのだ。私はロムニーはこの演説でそれをやり遂げたと思う。


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影響力減るアメリカのユダヤ系、ユダヤ教徒相手の豚ハム宣伝が意味するもの

実はこの記事、アメリカのブログで2〜3日前に読んで大笑いしたのだが、陳さんの感想が面白いのでちょっとここで載せてみたい。しかしその前に事件の詳細。

【12月7日 AFP】米ニューヨーク(New York)のグリニッジビレッジにある高級食料品店が、ブタ肉を原料としたハムを、同教宗教行事ハヌカ(Hanukkah)用の「おすすめ品」として売り出していたことが分かった。ブタは、ユダヤ教の戒律で食べることが禁じられている不浄な食べ物の1つである。

同店でハヌカ用おすすめ品として売られていたハムに、ユダヤ教の戒律に即した適性食品を意味する「コーシャ」の印がないことに気がついたある女性が、店側に注意はせずインターネットにそのハムの画像を投稿した。
自身は厳格なユダヤ教徒ではないというその女性は、ニューヨーク・ポスト(New York Post)の取材に対し「おもしろいと思っただけで、別に怒っているわけではない。ただ、ユダヤ人の食べる物について何も知らない人がいると思ったの」と語った。
女性がハヌカ初日の4日に再び店を訪れたとき、「ハヌカ用おすすめ品」の文字はなくなっていた。店長によると、あの宣伝文句は店員が勘違いをして記載したものだったという。

これに関する陳さんの感想はこちら。

★まずこのニュースがなぜ深刻な内容を含んでいるかというと、アメリカにおけるユダヤ系市民の影響力低下を如実に示す内容だからです。…

★そもそも、これがアラブ人向けに同じ事をしていたら、今頃はテロが起こっていた筈です。発見したユダヤ人女性は「おもしろいと思っただけで、別に怒っているわけではない」などと言っていますが、これがレーガン大統領の頃なら、A○Lなんかが糾弾会をして、スーパーは倒産に追い込まれていたでしょう。そればかりか、マスコミを巻き込んでの大騒ぎになっていたはずです。そもそもユダヤ人がブタ肉を食べないなどというのは…常識であったはずなのです。そしてもともとユダヤ人が多い街で、その常識が通用しなくなったということが事態の深刻さを表しているのです。
★それにしても、ユダヤ人がこの手の深刻な人権侵害を「笑って済ませるようになった」となると・・・それもニューヨークで・・・こうした、ユダヤ人としてのアイデンティティーを喪失した単なる白人系のアメリカ人が増加しているというのは、アメリカが今後どのような方向に向かうのかを象徴しています。そして、アメリカの保護を受けることが期待できなくなるイスラエルの将来も。…

うちも世俗主義のユダヤ系で、ミスター苺は豚まんもトンカツも平気で食べるし、宗教らしいことは冠婚葬祭の時のみで、この記事を読んだ時も写真を撮った女性同様「面白いと思った」クチだ。アメリカのユダヤ系はうちみたいな世俗主義が非常に多いので、(大抵がリベラルなのだが)こういった風潮はそれほど新しいとは思えない。
ただ陳さんも指摘しているように、グリニッジビレッジといえば、ユダヤ系アメリカ人が非常に多いところで、地元の人たちもユダヤ系が豚肉を食べないことくらい常識として知っているはずだが、それがこんな大間違いを仕出かすというのは確かに不思議だ。
陳さんがいう通り、これが「ラマダンにぴったり」なんていう広告だったら、この店がイスラム教徒らによって爆破されていた可能性は大きい。そしてCAIRとかACLUなんていうお節介市民団体が乗り込んできて、この店はつぶれてしまっただろう。
ただユダヤ系は確かに訴訟好き(なにしろ弁護士が多いので)ではあるが、こと宗教にかんしてはあまりうるさくいわない主義だ。これは宗教によって差別され迫害されてきた歴史が長いことから、ユダヤ系はあまり宗教の面で社会的に目立ちたがらないせいではないかと思う。
しかし私が陳さんのいう、アメリカのユダヤ系はユダヤ系としてのアイデンティティーを失っているとか、イスラエルへの支持が低下しているというのはちょっと違うという気がする。
昔は反ユダヤ教徒といえば、右翼のキリスト教徒が多かったのだが、最近は同じ「聖書の人々」ということで、右翼キリスト教の間でユダヤ教徒やイスラエルを支持するひとたちが増えてきている。皮肉なことに、世俗主義ユダヤ系が多く所属しているリベラル派の間で、最近とみにあからさまな反ユダヤ教偏見が見られるようになった。
リベラルのモットーは「寛容」ということになっているため、表向きは彼等は人種差別を徹底的に糾弾するが、実はこれ、彼等の心の奥底にある強い人種差別意識の現れだと私は思う。だから保守派や右翼が何気なくする言動が常に人種差別意識からくるものだと我々を責め立てるのも投影というやつで、彼等は自分らの言動が常に人種差別意識から動かされているものだから、我々もそうに違いないと考えてしまうのだ。
リベラルのなかには、もともと反ユダヤ意識がいくらも存在していた。しかし口に出していうのははばかられるのでこれまで遠慮していたにすぎない。ところが、リベラルの宿敵である保守派やネオコンや宗教右翼がイスラム系テロリストと戦いはじめると、敵の敵は味方という意識でイスラム教徒への同情が強まった。そうなれば必然的にイスラム教の宿敵ユダヤ教が迫害の対象となるわけだ。元民主党議員でユダヤ教徒のジョー・リーバーマン上院議員がイラク戦争を支持したというだけで、先の選挙でリベラル派から攻撃されたが、その攻撃の仕方は彼の政策よりも彼がユダヤ人であることに集中されていた。こういうところで左翼の汚い本性が出るのだなと私は非常に嫌な気持ちになったものである。
イスラエル・パレスチナ政策でみられるように、アメリカのリベラルの間で増えているあからさまなユダヤ差別はアメリカの世俗主義ユダヤ系リベラルを複雑な立場に追い込む。一方で彼等は保守派の政策とは完全に相容れないが、もう一方でリベラルによるユダヤ差別は直接自分らの身の安全を脅かすことを知っている。彼等は宗教心など強くなく完全な世俗主義としてリベラルに融合してきた。しかし、異教社会に完全融合することが身の安全を保証しないことは、地元文化と完全融合していた彼等の祖父母たちがナチスドイツ及びヨーロッパでユダヤの血を引いているというだけで人種浄化の憂き目にあったことが証明している。
だから最近とみに力をみせてきているムーブオンなどという市民団体のあからさまなユダや差別がこれらのユダヤ系リベラルを不安な気持ちにさせているのは当然だろう。こうしてみていみると、今回のハム事件が「ユダヤ系市民の影響力低下を如実に示す」という陳さんの意見もまんざら的外れとはいえないのかもしれない。


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NIEはイランの情報操作にまんまとのせられたのか?

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昨日も疑問点多いNIEのイラン核開発停止報告で書いたように、今回のアメリカの国家情報評価(NIE)による、イランは2003年秋に核兵器開発を停止していたという調査報告には腑に落ちない点が多すぎるのだが、アメリカ主流メディア各紙の反応を読み比べてみよう。
まずはウォールストリートジャーナル(WSJ, 登録有料)の社説 からよんでみると、WSJはカカシが昨日指摘したように、この報告書が2年前の報告書を完全に覆しているという事実そのものがNIEの信用度を落としていると書いている。:

ほんのつい2005年までは「国際的な義務や圧力にも関わらず」「イランは現在核兵器開発を行っていると確信している」というのが一般的な見方だった。これはNIEによる「高度の自信を持った」判断だった。ところが新しいNIEはイランが「国際社会の圧力に反応」して2003年に核兵器開発プログラムをあきらめていたという。そしてこれもまた「高度の自信を持った」結論だという。とすれば二つの結論のうちどちらかが間違っていることになり、根本的な分析過程の信用度そのものがかなり疑わしくなってくる。

NIEの主要な著者たちが「極度にブッシュ政権に反対していた」元国務庁の役人たちであると知って、我々は報告書に高度な「自信」をもつことができない。彼等はトム・フィンガー元国務庁諜報調査部、バン・バンダイパン国家諜報大量破壊兵器部、ケニース・ブリル元国際原子力機関(IAEA)アメリカ大使である。

またWSJは2003年にイランに圧力をかけた事件といえば、イラク戦争しかないことを指摘している。ジョージ・W・ブッシュのイラク戦争は単にパパブッシュやクリントンのやった戦争のように、短期間にやって「よくやった」とお互いの肩をたたきあってさっさと撤退し、後の混乱には全く無頓着などという戦争ではなかった。ジョージ・Wの戦争では、フセインを倒しバース党を崩壊させた後の反乱分子との戦いにアメリカは苦戦して歯を食いしばって居座った。ジョージ・Wは内外からの批判をよそに全く方針をかえる気配もなかった。これはそれまでイスラム諸国がアメリカ軍にたいして持っていた印象とは正反対の反応だった。もしイランがジョージ・Wの態度に圧力を感じて核兵器開発を一時停止したのだとしたら、これはブッシュ政策の大勝利と考えるべきではないのか?
だがNIEはこれを「国際的な圧力」としている。国際社会のどのような圧力のことをいっているのか報告書は特定していない。 2003年にあった国際的圧力とはいったい何だ?当時アメリカはヨーロッパにイランと核兵器開発について交渉してほしいと説得している最中で、まだとりたてた圧力がかけられていた時期ではない。
WSJ はもっと大事な点はイラン核プログラムにあるという。イランはいまだに核爆弾の燃料となるうるウラニウム濃縮作業を工業並みのスケールで継続している。そしてこれは明らかな国連条例違反である。しかもIAEAはイランにはすでにウラニウムを核兵器の核形に製造する設計図を持っていることを確認しているというのだ。それに加えてイランには弾道ミサイルを武装する技術的な知識があることはすでにアメリカ諜報部は知っているのである。またイランの革命防衛隊はすでに点火の技術すら開発中だという。だとすれば、単に核兵器製造をおこなっていないというだけであって、イランの核開発プログラムは健在だということになるではないか?
ロサンゼルスタイムスによるとNIEが2005年の結論を完全に覆した理由は新しく取得された証拠によるものだという。
その新しい証拠というのは、現職ならびに退職した合衆国諜報部の関係者によると、この夏にアメリカの諜報部がイラン高官同士の核兵器プログラムに関する電話での会話内容を取得したというところからはじまる。どうやって取得したかという詳細は載ってないが、多分衛星電話などの会話を途中で捉えたのだろう。またこれと共に高官同士の会話が記載された核兵器開発に関する日記がみつかったのだそうだ。
この新しい情報がきっかけとなって、これまでの諜報が大幅に見直しされたのだとロサンゼルスタイムスは伝えている。
しかしここで注意しなければならないのは、諜報というものは最終的な絵がわからない点の集まりだ。この点をどう結び付けるかは分析者の判断に頼らなければならない。星座などでも柄杓だといわれるからそうかなという気もするが、見る人によって見える絵は違う。NICは2005年にはこの点のかたまりを「高度な自信」を持って核兵器開発がされていると判断したが、今回は全く同じ点と新しくできたふたつみっつの点をあわせて、同じく「高度な自信」をもってイラン核兵器開発を停止したと判断していることになる。
NIEはイラク戦争の前イラクに大量破壊兵器の備蓄があるという誤った結論を出してしまったことから、その教訓を生かしてもっと慎重に今回の分析にあたったという。ひらたくいうならば、アメリカはイラクの大量破壊兵器について1990年に過小評価しすぎていた。そして2002年には過大評価していた。そして2004年にはイランの核兵器開発を過小評価していたので、2005年には過大評価し、2007年には過小評価して調節しているということだ。
そうだとすれば、今回の結論も極端な過小評価である可能性が非常に大きいということになる。しかも著者三人が極端にブッシュ政策に批判的であるということも考慮にいれると、今回の報告書がいったいどこまで信用できるものなのか、ハッキリ言ってカカシには「高度の自信」がもてない。(笑)
ニューヨークサンはNIEは明かに外交政策に影響を与えようとしていると書いている。

この報告書の正しい読みはワシントンにいる選ばれた政権にたいして諜報組織が長年に渡って挑戦してきた葛藤の結果だということだ。彼等はずっとブッシュ大統領の主な政策決断に反対してきた。 彼等はイラク国会に反対だったし、イラクの選挙にも反対だった。彼等はI. Lewis Libbyにも反対だったし、イランへの強硬路線にも反対だった。

言ってみればこれは役人の復讐のようなものだ。著者の重要なひとりであるバン・バンダイペンはアメリカにイランのウラニウム濃縮をみとめさせようと過去5年にわたって働きかけてきた。バンダイペンがこの見積もり報告を組織のなかで押し進めることによってワシントンでの政策に影響を及ぼすことが出来ると考えていることはあきらかだ。役人たちは自分らの手で次の戦争をとめようとしているのかもしれない。
しかしこの危険なゲームはブーメランのように戻ってきて、かえって戦争が起きる可能性を高めてしまう可能性がある。外交官たちは今月中になんとか安全保障委員会でイランに関する三つ目の条例を通過させたいと望んでいた。すでにタートルベイ(国連ビル)の中国代表はそのような書類を支持するのはやめたいと騒ぎはじめている。…

イランが差しせまった脅威ではないということになれば、国際諸国はイランへの経済制裁だの条例だのに控えめな姿勢を示すようになるのは必定だ。国際社会からの圧力によってイランに核開発をやめさせようとアメリカ民主党が考えているなら、この報告書のおかげで国際社会からの圧力など全く見込みがなくなってしまった。
さて前述の「新しい証拠」だが、これについてはニューヨークタイムスがもっと詳しく説明している。

入手されたノートに2003年後期に核兵器の複雑なエンジニアリングデザイン企画を差しとめたことについて、軍幹部の人間が苦々しく文句をいっている会話が記載されている….

ニューヨークタイムスはこのノートの内容は別の幹部によって確認されており、別に取得された会話の内容とも一致していることから、このノートの中身は信用できるとしている。しかしこのノートも衛生電話の内容もイランが故意に流した嘘情報であるという可能性は多いにある。イランはCIAがイラン国内で電話の盗聴をしていることは十分承知しているはずだ。だとしたらこちらを惑わすために偽情報を盛り込んだ会話をわざわざ軍隊幹部にやらせるなど朝飯前だろう。同じ内容の情報が別々に集められたからといって、その情報が正しいということにはならない。
ニューヨークタイムスによるとCIAはこれがイランが経済制裁から逃れるために意図的に流した偽情報ではないかという意見は拒絶している。しかしCIAはそのことについてどうしてこれが偽情報ではないと思うのか、二週間前に大統領、副大統領ならびに政府高官の前で説明したそうだ。
その会議に是非出席したかったな。


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疑問点多いNIEのイラン核開発停止報告

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先日、アメリカの国家情報評価(NIE)が、イランは2003年秋に核兵器開発を停止していたという調査報告を発表したが、それについてミスター苺がカカシより一足先に詳細に渡る分析をしているので、今日はミスター苺のエントリーをそのまま紹介したいと思う。
まずはこの国家情報評価の報告内容について読売新聞の記事から。 

【ワシントン=坂元隆】米政府は3日、イランの核問題に関し、米国のすべての情報機関の情報をまとめた国家情報評価(NIE)を発表し、イランが2003年秋の段階で核兵器開発計画を停止していたとの分析結果を示した。
 ただ、ウラン濃縮活動は継続しているため、2010〜15年に核兵器製造に十分な高濃縮ウランを生産することは可能だとも指摘。ハドリー国家安全保障担当大統領補佐官は同日、イランの核問題は依然、「きわめて深刻」として、外交的手段を通じてイランに国際的圧力をかけていくこれまでの政策に変化はないと強調した。
 米情報機関は2005年の同様の報告では、イランは「核兵器開発を決断している」と述べていた。今回のNIE報告は米政府がイランの核問題に関する認識を転換したことを意味している。ブッシュ政権内では、大統領自らが今年10月に「第3次世界大戦を回避したければイランに核開発させてはならない」と発言するなど、イランに対して武力行使も辞さない強硬論が出ていたが、今回の報告で強硬論は沈静化しそうだ。

米民主党のいうことを信じるなら、NIEのイラクの核兵器開発プログラムに関する調査書にはイランには最初から全く心配することなど何もなく、ヒラリー曰く「剣を振り回す」行為は今すぐやめて、イランに今後アメリカの安全を脅かさないでもらうよう賄賂を検討する平和的な交渉を初めるべきだと書かれているかのような印象を受ける。 (俗な言い方をすれば、イランの恐喝に従えということだ。)
NIEの調査結果が本当だとしても、実際に調査書の指摘する重要点は四つある。

  • パキスタンの核兵器科学者A.Q.Khanから買い求めた知識によりイランは核兵器開発プログラムを所持していた。
  • イランは核兵器開発を2003年の後期に(中止ではなく)停止したが、これはすぐお隣のイラクを侵略するという、ブッシュ大統領の「剣を振り回す行為」への直接的な反応だった。

    核兵器開発停止が起きたとされているのは2003年の秋である。これはアメリカがイラクに攻め入ってバース党を倒した直後ではなく、イラクでアルカエダやイランが支援しているシーア派の反乱分子との戦いがすでに始まってからのことだ。ビンラデンやアラブ諸国の予測に反してアメリカ軍は逆境に立たされても怯む様子を全く見せていなかった。
    アメリカ軍によるイラク占領がイランに安堵感を与えていたはずはない。ということはこのまま核兵器開発を進めていては「悪の枢軸」とブッシュに名指しされている自国がブッシュにいつ攻められるか分からないと心配したイランが核兵器開発の一時停止を考えた可能性は大いにある。

  • イランは核兵器に必要なウラニウム濃縮プログラムは継続している。
  • イランはアメリカ政権がバラク・オバマやヒラリー・クリントンのようなイラン政策穏健派に代わってイランへの圧力が減り次第、核兵器開発プログラム再開する機能を保持している。

注意すべきなのはイスラエルの諜報部もイランが2003年に核開発を一時停止したことは確認しているが、すでに再開されているとしている点である。 (hat tip to Hugh Hewitt):

イスラエルのエクード・バラク防衛長官によるとイランが2003年に軍事的な核開発を停止したというのは「本当らしい」とのことだ。

「しかし我々の見解では 以来プログラムを継続している模様だということです」 とバラクは陸軍ラジオで語った。「世界の諜報組織によって意見の違いが見られます。誰が正しいのかは時とともに明らかになるでしょう。」

ミスター苺の見解は、NIEの情報が正しいとするならば、 イランは核兵器開発をジョージ・W・ブッシュの任期中は一旦差し止め、民主党の候補者が2008年の選挙で勝利して彼等の公約通り、イランへの圧力を減らすという状況になってからプログラムを再開させようと考えているのではないかというものだ。なにしろ米民主党はイランをイラクの安定化に協力してもらおうと考えているくらいだから。
NIEも認めているとおり、イランは核開発施設を解体したわけではない。 ウラニウム濃縮施設はそのまま残っているし、核兵器開発知識も保持している。彼等は単に見張りの交代を待っているにすぎないのだ。
ところで、ミスター苺がいちいち、NIEのリポートが本当ならば、と注釈をつけている理由はケニース・ティマーマンというイラン関係に詳しいジャーナリストが、これは国務庁の妥協派のでっちあげだと主張しているからだ。ティマーマンの記事はニュースマックスにて掲載された。普通ミスター苺はニュースマックスの記事はあまり信用できないと感じているのだが、ティマーマン自身が中東の大量破壊兵器プログラムについて少なくとも1990年から研究している人であること、彼の著書Poison Gas Connection: Western Suppliers of Unconventional Weapons and Technologies to Iraq and Iranにおいてはイランとイラクの化学兵器についてかなり詳しい研究が発表されている。また、最近ではフランス政府とフセインイラクの癒着やイランの核兵器開発について、またCIAがそれを容認してきたことなどに関していくつかの著書がある。
過去のティマーマンの著書からティマーマンの分析は信用できるとミスター苺は考える。であるからミスター苺は彼がCIA並びその背後の国務省がイランの核兵器開発の危険性について過小評価しているという批判は真剣に注意を払う必要があると言う。

イランの核開発プログラムにおける国家情報評価(NIE)の150ページに渡る非常に問題の多い報告書は、元国務庁の諜報分析者らによって書かれたもので、もっと経験をつんだ諜報部員によって書かれたものではないことをニュースマックスは学んだ。

イランが国際社会からの圧力によって核兵器開発を2003年に閉鎖していたという最も劇的な結論はたったひとつの確認できない情報源を元にしており、これは外国の諜報組織から得た情報でアメリカによって直接尋問はまだ行われていない。
テヘランのニュースマックスの情報元はワシントンはイラン革命防衛隊による「意図的は情報操作」に嵌っている と感じている。これは革命防衛隊の諜報部員がヨーロッパの外交官に扮してアメリカの諜報部へ送り込んだねつ造情報ではないかという。

ティマーマンによれば、新しいNIEは国家情報審議会(NIC)の会長であるトーマス・フィンガー(Thomas Fingar)という典型的なペルシャ親派によって仕切られているらしい。彼等はもと国務庁の中東専門家だったのだが、とっくの昔にアメリカのことより中東優先の姿勢をとるようになっている役人だ。もしフィンガー会長がイランの情報操作に騙されているとしたら、それは彼がもともとイランのムラー達とまともな外交交渉ができるという偏見があるからで、 国務庁の多くの役人がそうであるように、ジョージ・W・ブッシュ こそがイランの核兵器よりも国家にとって危険だという考えているからに他ならない。
フィンガー会長は国務庁の諜報分析のベテランであり、長年に渡る民主党支持でブッシュ政権批判家だという。フィンガー氏こそが民主党と協力してボルトン国連大使を引退に持ち込んだ責任者だ。フィンガー氏は国務庁や国家情報審議会でベネズエラのチャベズやキューバのカストロとも深い関係のあるイランがアメリカに脅威的だという分析結果を出すアナリストを次から次へと首にしてきた歴史がある。
もしそれが本当だとすれば、お世辞にもフィンガー氏は中立な分析者とはいえなくなる。 フィンガー氏の愛弟子のケニース・ブリル(Kenneth Brill, Director of the National Counterproliferation Center, 国家対増殖センターの責任者)、とバン・H・バンダイペン(Vann H. Van Diepen, 大量破壊兵器および増殖対策専門の国家諜報委員)はNIEにイランと交渉する政策を強く押しているという。
さてここでカカシから、ブッシュ政権対国務庁及びCIAの対立についてちょっと説明しておく必要があるだろう。読者の皆様のなかには国務庁もCIAもブッシュ政権の統治下にあり、すべて政権の言いなりになっていると感じておられる方が多いのではないかと思う。
国務庁やCIAの長官は大統領の任命によって決まるが、その下で働く人々は政権をまたがって働いているただの役人である。彼等にはそれぞれの政権に対する忠誠心などというものはない。彼等にとって一番大切なのは自分らの権力を維持していくことなのであって、国家安全や愛国心など二の次という役人意識の人が多い。
だから、イランやイラクが国家にとって驚異的であるとすることで、諜報活動が活発に取り入れられ、自分らが国家政策に大きな影響を与えることができる時は敵の危険度を割高に評価するが、敵が危険すぎて軍隊(防衛庁)が乗り出して来て自分らの権力が弱体すると判断した途端に敵の脅威度を過小評価するという傾向がある。イラク戦争直前まではイラクは核兵器開発間近だとか、化学生物兵器の完成品の備蓄が大量にあると主張していたCIAが、いざ戦争となると、それまでの自分らの報告をそっちのけにして、本来ならば大量破壊兵器、すくなくともその成分や部品であると解釈されてもいいような発見までWMDとは無関係であると判断してブッシュ大統領に恥をかかせ、国家警備に関わる秘密情報を漏えいしたりする有り様だ。
今回のイランの件にしても、イランの核兵器開発が危険だとして、外交交渉やCIAのイラン国内での活躍が活発に行われると判断した時期には、イランの核兵器開発の脅威を誇張し、それが戦争に結びつくかもしれないとなると、とたんにイランは危険ではないと報告する。そうだとすれば、2005年にNIEがイランは危険だと報告した内容と、今回イランは差しせまった危険ではないと判断した報告内容とどちらが正しいといえるのだ?
ティマーマンが参照しているこの ワシントンタイムスの記事においてビル・ガーツ記者は2005年の結論を覆すこととなったNIEのいう「新しい情報』とは元革命護衛隊から今年の2月に亡命したアスガリ将軍(Gen. Alireza Asgari)の証言からではないかという。
アスガリはイラクやレバノンにおけるイラン革命護衛隊の活動に関する詳細な知識を持っているとされる。それというのも自分がその訓練にあたったからだという。またアスガリはイランの核兵器など秘密兵器についても必要物資の調達にあたっていたためよく知っているとされる。しかし、アスガリは核兵器開発の任務には当たったことがなく、開発プログラムについては何も知らないとイランのコネはニュースマックスに語っている。
ガーツ記者のリポートはティマーマンの説を裏付けるものだが、アメリカの諜報部も記者たちの説をいまのところ否定していない。アメリカ諜報部の高官もこの報告がイランからの意図的な情報操作という「可能性はある」と認めている。
イランが核兵器開発を続行しているという情報が間違っていたとしても危険ではないが、イランが開発を続行しているのに停止したと思い込んで政策を変えたらそれは非常に危険だ。この問題は早急に真実を突き止める必要がある。NIEの新しい情報とはどこから得たものなのか?もしこれがアスガリの証言だとしたら、アメリカ側はすでにアスガリを尋問しているのか?していないならなぜなのか?
もしNIEが国家警備のことよりも自分らの政治的権力保持を望むペルシャシンパの集まりで戦争を避けたいばかりに情報をねつ造したとしたらこれは由々しきことだ。
むろんこのニュースに米国民主党は大喜び。「だからいったじゃないの… イランには優しく褒美でつればいいんだって。」:

剣を振り回すのはやめるべきだったのです。最初かはじめるべきじゃなかった。」とバラク・オバマ上院議員。ニューヨーク代表ヒラリー・ロダム・クリントン上院議員はブッシュ大統領は「この機会を利用すべき」としながら、アメリカからの圧力が効果があったとし、ライバルのデルウェアー出身ジョー・バイドン上院議員の発言とは異論をとなえた。

ブッシュは報告書の内容については先週ブリーフィングを受けたばかりだとしているが、この点について民主党は信用していない。
「大統領は知っていたにもかかわらず『大三次世界大戦』なんてことを言ってたのです。」ウエストバージニアのジェイ・ロックフェラー議員。「知っていたのです。知っていたのです。 ブリーフィングを受けていたのですから」
「ブッシュ大統領はアメリカ市民からの信用度を落としました。 民主党委員会のハワード・ディーン会長。「我々は イラクでもだまされ、今度はイランです。 私たちは真実を知る必要があります。外交問題ではタフであるとともに賢くなければなりません。」

しかしカカシにいわせるならばだ、2005年に報告したNIEのイランの核兵器開発は間近だという内容を信用できないと言っていた民主党は、いったい何の根拠があって同じ組織による別の内容は信用できると判断しているのだ? 2005年にそんな大幅な間違いをおかしている諜報機関なら、今回の調査報告にしてもどれほど信用できるかわからないではないか!
それにたとえNIEの調査報告が正しいとしても、それはブッシュ大統領の強行作戦にイランが恐れをなして核開発を一時停止したにすぎない。そうだとすれば、イランが穏健派のオバマ、エドワーズ、ヒラリーの到来を心待ちして核兵器開発の準備を着々と進めているということにある。国防に弱いとされている民主党にとってこの事実が国民に良い印象を与えるとは思えない。
無論そのことを、共和党がきちんとアメリカ市民に説明できるかどうかはまた別問題。なにかとつまづきの多い共和党なので、あまり当てにはならないが、、


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米フェミニストの偽善を暴いたモハメッドという熊のぬいぐるみ

最近イスラム圏の二つの国で女性を虐待する二つの事件が起きた。そのひとつはスーダンで小学校の教師をしていたイギリス人女性が生徒たちがマスコットにしているぬいぐるみの熊に「モハメッド」という名前をつけることを許可したことが、イスラム教を冒涜するとして15日間の禁固刑を受けたこと。そしてもうひとつはサウジアラビアで集団強姦された女性が強姦された際、親族でない男性と外出していたという理由で反対にむち打ちの刑にさらされることになったという事件だ。
まずはスーダンのイギリス人女性教師の事件

ハルツーム(CNN) スーダンの学校での授業中、ぬいぐるみのクマにイスラム教の預言者ムハンマドの名を付けたとして有罪判決を受け、バシル大統領から恩赦を与えられた英国人教師ジリアン・ギボンズさん(54)が、スーダンを出国した。英外務省関係者が3日明らかにした。

ギボンズさんはスーダンを訪問した英上院のイスラム系議員を通じて声明を発表し、「わたしはイスラム教を尊重しており、他人を傷つける意図はなかった」と述べ、自身の行動が苦痛を与えたことについて謝罪を表明した。
ギボンズさんは裁判所から国外退去を命じられた数時間後、旅客機でスーダンを離れた。ドバイ経由でロンドンに向かっており、4日未明にヒースロー空港に到着する予定。空港でマスコミ向けに声明を発表するとみられている。

この記事には詳細が述べられていないが、スーダン政府の15日禁固刑に不満をもったスダーン市民たちギボンズさんの処刑を要求して町で暴力的なデモンストレーションを行っていた。スダーン政府がギボンズさんを国外退去したのも、イギリス政府への遠慮と国内のイスラム市民への配慮との間をとった苦肉の策だったといえるだろう。
そして二つ目のサウジアラビアの事件

サウジアラビアの裁判所はこのほど、集団強姦罪で有罪とされた被告らの上訴審で、被害者の女性側の主張を受け入れて被告らの刑を重くする一方、女性の刑も加重する判決を言い渡した。女性の弁護士がCNNに語った。
集団暴行を受けた女性(19)は昨年の裁判で、親族ではない男性と会ったとして、むち打ち90回の刑を言い渡された。それが、14日の上訴審判決では、6カ月の服役とむち打ち200回の刑に加重されたという。
女性と友人男性を拉致・暴行した7被告に対しては、裁判所が昨年、10カ月〜5年の服役刑を宣告。女性側は死刑が妥当として、この判決への不服を表明していた。上訴審では、7被告に2年〜9年の服役刑が言い渡されたという。
女性の弁護士は「被告だけでなく、被害者の刑まで変えられたことに衝撃を受けている」と話している。裁判所はこの弁護士資格を取り消し、司法省の調べに応じるよう命じたという。
英字紙アラブ・ニューズは情報筋の話として、女性側がメディアを通じて裁判所に影響を与えようとしたことが、刑の加重につながったと伝えた。

カカシがイスラム教が嫌いな一番の理由が女性虐待の方針だ。これは単に女性蔑視などという概念では片付けられない。強姦の被害者が辱めをうけて世間に顔向け出来ないと感じるというのならまだ理解できるが、裁判所が被害者を罰するなど言語道断だ。これでは強姦の被害者が訴え出るなどということは絶対に出来なくなる。本来ならば親族の男性に復讐をしてもらいたいところだが、イスラム社会ではやたらに被害者が親族に訴えようものなら、親族を辱めたといって反対に実の兄弟に殺されかねない。要するに女は男の冒涜に黙って耐えよというのがイスラム教の教えなのだろうか?
さて、このような男尊女卑の裁判に対してアメリカではなにかと女性の人権問題で口うるさいフェミニストたちはどれほどの抗議をしているかというと、これが完全なる沈黙を守っている。
元全国女性協会(National Organization of Women, NOW)のテキサス支部長だった、タミー・ブルースがこのアメリカのフェミニストたちの偽善について書いている。(私の記憶が正しければ、先の大統領ビル・クリントンのセクハラ事件を巡ってタミー・ブルースはNOWがクリントンを批判するどころか、クリントンを弁護し、かえって被害者を攻める姿勢をとったことでNOWを辞任した。)

どうやら(スダーンでは)かわいい熊をモハメッドと名付けるのは予言者への冒涜だが、モハメッドと名乗る男が大量殺人を犯すのはイスラムへの冒涜にならないらしい。

少なくとも過去14年間にわたって、特に1993年にオサマ・ビン・ラデンが西洋文化に宣戦布告をして以来、私たちはイスラム原理教の狂気に直面してきた。そして同時に、いかにアメリカの左翼が臆病かということが暴露された。 その通り、ぬいぐるみの熊をもってして敵の精神異常性に焦点が当てられたと同時に、(アメリカの)フェミニストのだらしない実態が明らかにされたのだ。
国際社会のほとんどからギボンズへの仕打ちに適切な怒りが向けられた、ただしアメリカのフェミニストは例外だ。イギリス国内の数々のイスラム教団体がこの判決を批判した。ギブソン先生のクラスで人気者の男の子ですら先生の弁護に出て、熊は自分の名前からつけたと説明している。
しかし、フォックスニュースからコメントを求められたNOWの代表者は「このことについて見解を述べるつもりはない」と答えている。
これほどアメリカの左翼は堕落してしまったのだ。スダーンの幼いモスリムの男の子のほうがワシントンにいる「女性人権の代弁者」と自称する女性集団よりもよっぽども攻撃を受けた女性を守ろうという勇気と信念を持っている。
もう何年もアメリカのフェミニストの体制は便宜上フェミニストを名乗って民主党左翼のサクラと成り果てていることはあきらかだった。NOWやエレノア・スミールのフェミニストマジョリティーなどというグループは過去五年間に渡るイスラム教テロリストの女性への暴力に完全沈黙を守ってきた。女性問題は彼女たちにとって政治的勢力を得るためにがなり立てる便利なスローガンに過ぎない。
彼女らの悪意に満ちた沈黙はギボンズさんの事件に留まらない。サウジアラビアでは集団強姦された犠牲者が200回のむち打ちと6か月の禁固刑という判決を受けている。なぜかといえば、それは彼女が(強姦された時)親族でない男性と外出というシャリア法に違反する行為をとっていたからだ。彼女が生意気にも控訴したことで彼女の刑はより加算されたのだ。
このような奇怪な暴行にNOWやフェミニストマジョリティーの反応はどうかといえば、ジリアン・ギボンズの時と同様、全く同じく無反応。何故ならば(神よ禁めたまえ)戦うに値する邪悪な敵が存在するなどと認めるわけにはいかないからだ。そして(神よ禁めたまえ)一人の女性のためにアメリカが邪悪な帝国主義ではないかもしれないなど人々に気が付かれては困るからだ。

これは決してフェミニスト団体だけのことではないが、1960年代に創設されたアメリカの人権擁護市民団体はことごとく共産主義者や左翼主義者に乗っ取られてしまった。いまや彼等は人権擁護も女性問題も人種問題も興味がない。あるのはどれだけこれらの問題を悪用して自分達の政治的勢力を得られるかということだけだ。彼等は常に自分達こそが弱いものの味方だと言って、平等と公正を求める保守派を冷酷だとか男尊女卑主義だの人種差別者だのといって批判してきた。
だが、彼等こそが体制のみを重んじ、イスラム圏で野蛮人に教養をつけようと出かけていった善良なギボンズおなご先生や、か弱い19歳の乙女が冒涜されたことなど、自分らの政治勢力獲得に役に立たないものはことごとく無視するか邪魔になるものは敵視するかしかしない冷酷な人間どもなのだ。
タミー・ブルースはここ数年に渡ってアフガニスタンやイラクで婦女子虐待の悪を駆除するため感謝もされず認識もされずにひたすら戦ってきたのはNOWやリベラルや左翼が忌み嫌うアメリカ軍隊そのものだという。アメリカの海兵隊が自称フェミニストから命令を受けていたなら、彼等がこれまでに解放した何百万という女性たちがいまでも奴隷生活をしいられていたことだろうとタミー。
まさしくその通りだ。本来ならば女性虐待のイスラム教過激派の冒涜を真っ先に糾弾し、その過激派の悪と戦うブッシュ政権を率先して支持すべきアメリカのフェミニストたち。しかし彼女等の本性は女性人権擁護でもなんでもない。彼女たちの本来の目的は共産主義の促進だ。女性人権問題など単なる道具にすぎないのである。
無邪気なこどもたちのマスコット熊のぬいぐるみがアメリカフェミニストたちの偽善を暴くことになったのだ。


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度重なる中国の米艦香港寄港拒否、今度はクリスマスを台無しに?

この間キティホーク戦闘群の香港寄港許可をドタキャンして乗組員や家族たちの感謝祭の休暇を台無しにした中国は今度はクリスマス休暇を香港で楽しもうとしていたフリゲート、ローベン・ジェームズの寄港要請を拒否した。

 【ワシントン=山本秀也】米中間の軍事緊張を招いた米海軍艦艇の香港寄港拒否問題で、米国防総省は11月30日、太平洋艦隊所属のミサイル・フリゲート、ルーベン・ジェームズ(4100トン)が、新たに寄港申請を拒否されたことを明らかにした。中国政府が米艦の香港寄港を拒否したのは、11月以降3件連続となり、米中の確執がより深まったかたちだ。

 国防総省によると、ハワイの真珠湾を母港とするルーベン・ジェームズは、乗員の年末休暇のため香港寄港を申請していた。艦艇のほか、香港の米国総領事館の支援業務にあたる米空軍のC17輸送機についても、同省は中国政府が11月22日に「次回の着陸を認めない」と米側に通告していたことを公表した。
 1997年の香港返還後、米艦艇の香港寄港は年平均約50回。中国政府は11月21日に寄港を求めた休暇目的の空母キティホーク戦闘群のほか、これより前に荒天回避と給油を求めたガーディアンなど掃海艦2隻の香港寄港も拒んでいた。
 寄港拒否で感謝祭の休暇を棒に振ったキティホーク戦闘群は、横須賀基地への帰途、台湾海峡を通過する事実上の報復に出るなど、米中の対応は、これまでの寄港問題を越えるエスカレートぶりをみせ始めた。

平和時に他国の船を寄港させるのは国際社会では常識的な礼儀だ。それを拒否するということはかなり問題である。なぜならば平和時においての寄港拒否ほど攻撃的な行為はないからだ。これはまかり間違えば戦争行為と取られても仕方ないほどの過激な行為なのである。アメリカはことがエスカレートしないように冷静な対処を中国に促しているようだが、私には今の時期に中国がアメリカの神経を逆撫ですることの意図がいまひとつ理解できない。
フォックスニュースによると日本はアメリカ側に同調して横須賀を訪問中の中国駆逐艦に乗船しないことを決定したとある。しかしオーマイニュースによると海上自衛隊が訪問したとあるので、中国艦を訪問しなかったというのは誰をさすのか良く分からない。
ところで中国のメディアが11月25日に海上自衛隊の横須賀基地を訪問した際、対岸の米軍基地をビデオ撮影するという狼藉をはたらいていたそうではないか? となると今回の中国艦による日本訪問も友好目的とはいうもののスパイ行為が目的なのではないかと勘ぐられても仕方あるまい。
先に中国メディアのけしからん振る舞い、アメリカ艦への度重なる理不尽な行為などをあわせて、日本政府は訪問中の船を訪問するとかしないとかいう以前に中国艦の入港を許可すべきではなかったのではないか?
当のアメリカだが、アメリカには中国からの商船がいくらも入港してきていることでもあり、中国がこのような行為を悔い改めないというのであれば、こちらも中国船の入港をかたっぱしから拒否すればいい。中国製不良製品のこともあることだし中国製品のアメリカ流入を防ぐ意味でも一石二鳥かもしれない。


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海上自衛隊は原油航路をパトロールすべき

先日、10月の終わりに日本のタンカーがソマリア沖で海賊船にシージャックされ、アメリカの護衛艦が海賊船を撃墜していたという話を兎に風さんのところで読んで驚いた。しかも3年前の2004年にもペルシャ湾で同じような事件がおき、その時はアメリカの海兵隊員二人と湾岸警備隊員の一人がテロリストの撃ち合いで命を落としていたということまで知ってもっと驚いてしまった。
実は最近、海上自衛隊の幹部の人と話をする機会があり、その人の話だと海上自衛隊は日本の商船を守りたくてもペルシャ湾まで出かけていって警備をする権限がないのだと嘆いていた。それで日本の商船が海賊やテロリストに襲われた場合、頼りになるのはアメリカの船だけというていたらく。
日本は原油の9割を中東に依存している。しかもその警備を全面的に米海軍に頼っているにも関わらず、日本政府は日本が世界の対テロ戦争にかかわれる最低の任務であるテロ対策特別阻止法を期限切れにしたままインド洋から補給艦をひきあげてしまった。このような恩を仇で返すような行為が今後の日本の防衛に役にたつとは思えない。
先の自衛隊幹部の方もおっしゃていたが、日本人には日本が世界で危険にさらされているという自覚がほとんどない。テロとの戦いはアメリカが勝手にやっていることで、日本とは関係ないと考えている人が多すぎるのだ。これは最近海上自衛隊の人に見せてもらった2〜3年前の日本のニュースで、アメリカと合同演習をしている海上自衛隊に対して、海上自衛隊はアメリカ軍の一部に成り果てたなどと批判的ないい方をしていたのと重複する。
しかし現実に日本の石油タンカーなど重要な商船がテロリストや海賊たちに脅かされているのだ。それを海上自衛隊が十分な武力を備えていながら憲法上の理由で自国の商船を外敵から守れない状況がはたして日本にとって好ましいことなのだろうか?これが独立国たるものの姿であろうか?
ところで10月の末に起きたソマリア沖合でのシージャック事件だが、去年の3月にもアメリカの護衛艦二隻がソマリア沖合で海賊たちと撃ち合い になっている。実はこの戦いに巻き込まれた二隻、ケープセントジョージ(USS Cape St. George)とゴンザレス(USS Gonzalez)のうち、ゴンザレスのほうに私の同僚が乗っていて、この時の話をしてくれたので私はよく覚えている。
12月1日付けのAPニュースによれば、ソマリアでは今年だけですでに31件の海賊による攻撃がおきており、10月に日本のタンカーを攻撃した小型ボートはどこかの母船から派遣されたものではないかという疑いが強まっている。
この記事によれば、当初日本のタンカーは化学物質を輸送する船だったことから、テロリストがテロ行為に利用するのではないかと懸念されたが、乗っ取り犯人から身代金要求があったことからただの海賊による乗っ取りだったことが分かって、関係者はほっとしたという。
しかし、今後海賊を利用してテロリストが科学製品や原油を自分らのテロ行為に悪用しないという保証は全くない。ソマリアはイスラム圏国であることを我々は忘れてはならない。
それにしても、このような重要な問題がソマリア沖合で起きているにも関わらず、ほとんどの日本人がその事実を知らないのはどういうわけだろうか? これは一重に平和ぼけした日本メディアがこうした重大事件を過小評価してほとんど報道しないことに問題がある。日本メディアは日本がどれほど危険な状態にあるのかを日本人が本気で悟ったら、日本の軍事強化は避けられない事実を十分に承知しているのだろう。だからそれを阻止するためになら本当の危険からすら目をそらそうというのだ。
アメリカがイラク戦争に負けることで国内での勢力を取り戻そうとしている米民主党のやり方となんらかわりのない非国民的背信行為だ。
しかし今はネットの時代。いつまでもメジャーなメディアの新聞やテレビが事実を隠しとおせるものではない。実際に私はこれらの事件をネットブロガーたちのおかげで知ることができた。日本にも自衛隊幹部の人々だけでなく、実際に日本の将来を憂う愛国者たちが大勢いる。テロ対策特別阻止法も、もう一度見直され、インド洋での補給活動もいずれは再開されるだろう。
ソマリア沖合では海賊に対抗すべく、すでにアメリカが率先して諸外国の有志同盟が結成されつつある。日本は自分らのタンカーを守るという直接的国益がかかっているのだ。この際アメリカに協力して自国の原油航路くらい自国で警護してはどうだろうか? 日本がアメリカのポチだのなんだのと批判するやからでも、日本が自国の商船を守るのであれば文句あるまい。
日本は先進国として日本の安全を国内でも国外でも守る責任をとるべきである。それには主流メディアの平和ぼけにいつまでもつきあっている余裕はないのだ。


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