この間からブッシュ大統領はイランの核兵器開発を批判する演説を続けているが、先日アメリカはいよいよイランを攻める準備にはいったのではないかというニュースがはいった。(10月25日23時3分配信 毎日新聞より。)

<米国>イランに経済制裁 革命防衛隊との商取引禁止など

 【ワシントン笠原敏彦】米政府は25日、イラン革命防衛隊を大量破壊兵器の拡散に関わる組織に指定し、米企業・個人との取引を禁止する経済制裁を発動する、と発表した。また、防衛隊傘下の精鋭部隊、クッズ部隊を主権国家の軍として初めてテロ支援組織に指定。一連の制裁は1979年の米大使館人質占拠事件以来、最も強硬な措置とされ、イランとの緊張が一層高まるのは必至だ。
 ライス国務長官とポールソン財務長官が発表した制裁内容は、主に金融面での締め付けに焦点が当てられている。軍組織の他にイランの国営主要3銀行(メリ、メラト、サデラト)が国際金融システムを悪用してミサイル拡散やテロ支援に関わっているとし、同じく制裁対象に指定した。
 経済活動でも重要な位置を占める革命防衛隊は、ミサイル拡散のほか核開発への関与が指摘されている組織で、関連の20以上の企業・個人が制裁対象となる。また、クッズ部隊は、米国がイラクやアフガンなどで武器を供与していると見る組織。制裁対象となった組織・銀行は、米国内の資産凍結や米企業・個人との取引禁止が科される。の反対でメドが立たない中、米国は今回の措置が国際的な波及効果を生むことを期待している。

さて、このような措置に対してイラン側はどういう反応をみせているのかといえば、経済制裁などなんの効力もないと見ているようである。(翻訳:喜多龍之介さん)

アメリカがテロや核拡散への国家的関与を狙った新たな制裁を科した一日後、イラン当局は反抗姿勢を表明した。

強硬派のイラン革命防衛隊司令官モハマド・アリ・ジャファリ将軍は、イランはアメリカによるいかなる猛攻撃にも耐えられると宣言した。「イスラム共和国は人々の侵攻の強さと力を持っている」。
「この力には防衛における経験、知識、技術が加わる。我々は更に決定的な攻撃で、如何なる攻撃にも応じるだろう」。
より厳しい制裁もイランに核開発を諦めさせることはない、と同国の新しい核交渉責任者であるサイード・ジャリリは言った。「その前のものと同じく、新しい制裁はイランの方針に一切の影響を与えないだろう」。
コンドリーザ・ライス国務長官は、イラン政府内に亀裂を作ることでマハムード・アハマディネジャド大統領を孤立させることを目的とした措置だ、と言った。「イランと指導部にはアハマディネジャド大統領よりも沢山人がいる」。

ライス国務長官が表向きにはイランと交戦の意志はないといくら主張してみても、ブッシュ大統領の本音はイランへの経済制裁は極一部的な効果しか得られないことは承知の上だろう。私がアメリカがイラン攻撃の準備を進めているのではないかと懸念する理由はフォックスニュースで報道された下記のようなニュースが原因だ。

バグダッド南東にあるアメリカ軍基地に打ち込まれたロケット弾はイランで製造されたものであると米軍当局は土曜日発表した。これはイランがイラクの反乱分子に継続的に援助をしている証拠である。

10月23日に戦闘武器庫で行われた攻撃ではけが人はひとりも出なかったが、米軍の乗り物が一台破損されたと米当局は語っている。
米軍当局によれば、107mm のロケットは今年の三月ごろイランで製造されたもである。ロケット発射位置を捜査中の隊は標的を定めは発射するための六つの発射台を未発のロケットとタイミング機がついたままの状態で発見した。
押収されたロケットは過去4ヶ月に渡って兵士らが押収したイラン製造ロケットの40台目のロケットであると軍は発表した。

イラン製造のロケット弾がアメリカ兵宛てに打ち込まれているという事実はなにも今に始まったことではない。イラクで戦闘に携わっていた人なら誰でも反乱分子が使っている武器の多くがイランから供給されていることは二年前くらいから知っていた。しかし軍当局もブッシュ政権もイランのイラク関与については公式な認識はしてこなかった。その理由は色々取りざたされるが、一番単純な理由はブッシュ政権がイランとの時期尚早の戦闘は避けたいと考えていたからだろう。それが軍当局がイランからの武器がイラクで発見され押収されたという事件を大々的に発表したり、ブッシュ大統領がイランへの経済制裁をいまの時期に強行するということは、ブッシュ政権はいよいよイランを攻める準備態勢にはいったのだと考えるのが自然だ。
さて、ここでイランを攻めるとしたどういう方法があるのか、今年の初めにカカシが今こそイランを攻めるチャンス!で紹介した歴史家のアーサー・ハーマン氏のイラン攻撃作戦を振り返ってみよう。

ホルムズ海峡は確かにイランからの石油輸送にとって非常に大事な場所である。だが、それをいうならイランにとってもこの海峡は非常に重要な航路だ。イランはホルムズ海峡を手に取って世界をコントロールしようとしているが、アメリカはこれを逆手にとってイランをコントロールできるとハーマン氏は語る。それをどういうふうにするのか、下記がハーマン氏の提案だ。

  1. まずホルムズ海峡を通る石油輸送を阻止する国はどこであろうと容赦しないと発表する。
  2. その脅しを証明するために対潜水艦船、戦闘機、じ来除去装置、イージスBMDシステムなどを含む空母艦バトルグループをペルシャ湾に派遣する。むろんこちらの潜水艦も含む。
  3. アメリカ一国によるイランの石油タンカー通行を封鎖。イランから出る石油、イランへ入るガソリンなどを完全阻止する。ほかの国の船は自由に通過させる。
  4. イランの空軍基地を徹底的に攻撃し、イランの空の防衛を完全に破壊する。
  5. イランの核兵器開発地及び関係基地、インフラなどを攻撃する。
  6. そしてこれが一番大切なことなのだが、イランのガソリン精製施設の徹底破壊である。
  7. アメリカの特別部隊がイラン国外にあるイランの油田を占拠する。

イランは今非常に厳しい状況にある。ハーマン氏は我々はそれを最大限に利用すべきだという。

イランは非常に大きな石油輸出国であるにもかかわらず、なんとガソリンの40%を湾岸諸国を含む外国からの輸入に頼っている国なのである。精製施設がなくなり保存施設も破壊されれば、イランの自動車、トラック、バス、飛行機、戦車および軍事機器がすべて乾いてしまう。これだけでイランはイラン軍による反撃など不可能となってしまうのである。(イランの海軍は年老いて破損が激しい。一番の財産であるロシア製キロ級潜水艦は港を出る前に破壊してしまうべきである。)

この攻撃と同時にアメリカはイラン国民に「イラン政府を倒しアメリカに協力してガソリンを取り戻すか、イラン政権のムラーたちと餓死の運命を共にするか、君たちが選びたまえ」と呼びかける。もともとイラン市民はイラン政府に満足しているというわけではない。イラン国民は意外と世俗主義で西洋的な文化を持っており、宗教家ムラーたちの政権では圧迫を受けている。若者の失業率は75%というひどい状態で、最近では若い男女がイスラム教徒としてふさわしくない格好をしているという口実で無差別に服装警察に拘束され拷問されるという事件があいついでいる。イラン市民は今こそ自分らの将来をどうするのか、選択の時である。
ところで、イラン関係の記事を探していたら、先月の9月にブッシュ大統領のイラン批判演説について、毎日新聞のイラン:米大統領演説に反発必至 イラク情勢さらに混迷か(2007年9月15日)という記事を見つけた。
この「イラク情勢さらに混迷か」という部分が私は非常に気になったので読んでみると、記事はこんな具合に始まる。

【テヘラン春日孝之】イラク情勢を巡り、ブッシュ米大統領が13日の演説で「イラン脅威論」を展開、米軍のイラク駐留継続の必要性を強調したことに対し、イランが反発を強めるのは必至だ。イランでは国際協調を志向する穏健派が巻き返しつつあるが、米国のイラン敵視の先鋭化はイランの強硬派を勢いづかせ、イラク安定化を一層困難にする可能性がある。

毎日新聞はこれまでにすでにイランがイラクにクォッズという特別部隊を送り込んで、イラクのスンニ、シーアにかかわらず戦闘訓練をしたり武器供給をしたり、時にはイラン兵事態がイラクでアメリカ兵を殺しているという事実を全くしらないかのようだ。アメリカをサタン(悪魔)と呼び、アメリカやイスラエルの撲滅を公言している国がこれ以上アメリカを嫌うなどということが可能なのか?しかも毎日新聞は今年の2月ごろから始まったアメリカ軍のCOINと呼ばれる対反乱分子作戦が非常な効果を上げている事実を完全に無視している。あたかも今が2005年か2006年の秋ごろのような言い方だ。日本でも指折りの新聞である毎日がここまでイラク情勢に無知というのは信じがたい。

イランでは昨年末の地方選挙や最高指導者の任免権を持つ専門家会議の選挙で強硬派が惨敗。米国との和解を検討しているとされるラフサンジャニ元大統領を中心とする穏健派が巻き返しを図っている。こうした流れの中で今年5月、イラク安定に向け80年のイラン・米国の断交以来初めての公式協議が始まった。

だが、最近は米国内でイラン空爆論が再燃し、イラン革命防衛隊を「テロ組織」に指定する動きが浮上するなどイラン敵視が激しくなっており、両国協議は7月に2回目を開催して以降、めどは立っていない。
米国の対イラン強硬論は「米国との対話は無駄」「米国とは徹底的に対決すべきだ」というイラン強硬派の主張に正当性を与え、穏健派の動きを封じ込めかねない。米国がイラクのイスラム教シーア派武装勢力を支援していると主張するイラン革命防衛隊は強硬派の牙城でもあり、対抗措置を本格化させれば、イラク情勢の一層の悪化は避けられない。

もし毎日新聞がラフサンジャニが「穏健派」でアメリカと交渉の意志があるなどと考えているならナイーブとしか言いようがない。イランでいう「比較的穏健派」などという言葉はほとんど意味がないのだ。ラフサンジャニはアクマディネジャドほどあからさまにアメリカへの敵意を表していないというだけであって、彼らが核兵器を使って中東をコントロールしたいという野心に変わりはない。ラフサンジャニは確かにアメリカと交渉するかのようなそぶりはするかもしれないが、交渉しながら影で武器開発を進める分、正直にアメリカへの敵意を表明するアクマディネジャドより始末が悪い。
イラク情勢がこのまま良化の一途をたどり、比較的自由な国として復興することができれば、イラン国民も自分らの独裁政権を倒してアメリカという勝ち馬についたほうが懸命だと思うかもしれない。アメリカがイランを攻めるとしたら、なるべく非戦闘員を巻き込まないように充分気をつけてやってもらいたい。なにしろ将来イラン市民とは本当の意味での友人関係を結びたいのだから。


Leave a Reply

Your email address will not be published.