今年の7月、ニューリパブリック(TNR)という週刊誌にバグダッドに駐留している米陸軍兵の捏造日記が掲載された事件を覚えておられるだろうか。ことの詳細は下記のエントリーを参照いただきたい。
まず著者のスコット・ビーチャムの書いた内容はこちら。
「冬の兵士」再び、米二等兵の軍隊バッシング
それが嘘だったことがばれたいきさつがこちら。
暴かれたイラク版冬の兵士の嘘
ビーチャムは陸軍の取調べで、自分がTNRで書いたことはすべて捏造であったことを認めた。最後に聞いた話では謹慎処分を受けたという話だったのだが、その後どうなっていたのか私は良く知らなかった。ところが数日前、ここでも何度も紹介しているフリーランスの従軍記者マイケル・ヨンが偶然にもばったりとビーチャムの所属する隊にバグダッドで出くわしたと言う。その時の模様をマイケルが書いているのでこちらでちょっと引用したい。

俺はスンニとシーアの和平会議に出席するべく10月24日、バグダッドの西ラシド地区にいた。その時全くの偶然だったのだが、ビーチャムの旅団と一緒になった。 事実その時は全然しらなかったのだが、俺はビーチャムの元隊長と一日一緒に過ごしていたのだ。

和平会議の席でビーチャムの旅団の現司令官、ジョージ・グレーズ中佐は丁寧に俺に自己紹介をした後、俺がどこの新聞社の記者なのかと聞いた。俺は別にどこということもないしがないブログを書いてるという答えると、中佐はビーチャムの名前を口にした。俺は彼の話は聞いたことがあると答えた。グレーズ中佐は、この若い兵士が彼の同胞の兵士らを散々侮辱したというのに、彼を守ろうとしているかのようだった。事実中佐によると、ビーチャムは除隊するかそのまま在留するか選択を与えられたが、教訓を生かして在留することを選んだと言う。
ここは本当にたいへんなところだ。ビーチャムの小隊の兵士らは戦闘を何度も経験している。長い間睡眠不足で疲労困憊のまま継続してゲリラ戦に挑むなんてことはしょっちゅうだ。これほどストレスのたまる仕事は世界ひろしといえそれほどはないだろう。特にイラクを侵略する決断が下された頃自分はただのティーンエージャーだったというのに、何百万て人間が三年かそれ以上前の失敗を責め立てるんだから。さらに悪いことに何百万という人々が、兵士らの任務は絶望的だと諦めてるとしたらなおさらだ。それに加えて自分の同胞が目の前で殺されてんだ。(現にビーチャムの旅団では70人が戦死している。)俺はこれらの若い男女がどんな目にあってるか見てきた。そして信じられないほどのプロ意識を見るとき俺は毎日のように感嘆している。
誤った判断を下すことがあっても不思議じゃない。責任追及をするのは当然だが、いちいち兵士が間違いをおかすたびに吊るし上げることもないだろう。
ビーチャムは若い。これだけのプレッシャーにかかれば間違いもおかす。奴は実際模範兵だったとは言いがたい。だが、彼が偉いのはこの若い兵士は在留を選んだことだ。そして今夜も危険なバグダッドのどこかで任務をはたしているのだ。奴は重症を負ったり殺されたりするかもしれないのを覚悟の上なのだ。奴は辞めることも出来た。でも辞めなかった。奴は同胞に面と向かった。同胞からどんなに冷たく扱われたか想像がつく。別の隊へ移動することも出来たのにグレーズ中佐はビーチャムは今の隊に残りたいと自分から言ったという。奴は自分の罪がどのような償いになろうとも償っているのだ。
…グレーズ中佐はビーチャムをそっとしておいて欲しいという。ビーチャムを戦争に戻らせる時だと。 若い兵士はよく勉強になっただろう。二度のやり直しの機会を与えられたのだ。三度目はないことは十分承知だろう。
ビーチャムは近くにいるはずだが、おれは探してまで話をしたいとは思わない。今朝もロケット弾が米軍基地近くに落下した音で目をさました。誰がビーチャムをつるし上げてる暇なんてあるだろう。俺達はビーチャムに仕事に熱中してもらわなきゃならない。

自分の過ちに気がついて、命がけで償いをしているビーチャムの潔さに比べ、見苦しいのは当の記事を掲載したニューリパブリックの編集部だ。これだけ記事が捏造だったことがはっきりした今となっても、まだ捏造記事掲載の責任をとるどころか、なんだかんだ言い訳をして時間稼ぎをしている。
数日前に、陸軍のビーチャムに関する調査書類がドラッジリポートというオンライン新聞ですっぱ抜かれた。ミルブロガーで、最初にビーチャムの嘘を暴露したボブ・オーウェンの話だと、これは軍幹部からの漏洩らしい。誰が漏らしたのかはいま捜査中だということだ。これに関してTNRはドラッジを脅迫したらしく記事はすぐに取り下げられたが、それはインターネットの恐ろしさ。ほんの5分でもアップしてあれば、誰かがダウンロードしている。無論この場合もその例外ではない。
漏洩された書類のなかに、ビーチャムとTNRの編集長や他の数人による電話会議のトランスクリプトが含まれているという。オーウェンは軍関係の人間なのでそのつてから書類が本物であることを確認したという。これまでにもオーウェンは信頼のできる記事を書いて来ているので彼がそういうなら信用できると思う。
さてこの電話会議の内容なのだが、It’s the coverup that kills you, part 5″>パワーラインによれば、TNRの編集長がビーチャムにすべて本当だったと保証して欲しいと頼んだり、捏造だったと公表したりすればTNRの従業員であるビーチャムの妻の立場や、ビーチャムの将来作家としてのキャリアも危ぶまれるだろうという脅迫まで入っているという。
ビーチャムが捏造記事を書いたことは無論悪いことだ。だが、でたらめの記事など誰でも書けるわけで、それを裏も取らずにそのまま掲載したTNRのほうがプロのジャーナリストとして完全に失格ではないか。掲載して読者から真偽を問いただされるまで真偽のチェックをしなかったというのはどういうことなのだ?いくら自分らの米軍に対する偏見と内容が一致しているからといって、こういう出来すぎた話には必ず裏があると判断するのがプロたるものの仕事のはず。特にTNRは捏造記事を何年にも渡って書いていた若い記者に信用度を散々落とされた過去のある雑誌なのである、注意に注意を重ねることが本当のはず。それを怠っておいて、不心得もののアホ兵士のでたらめを鵜呑みにして、ビーチャムに本当のことを言ったら将来は保障できないなどと脅迫までするとは、もう見苦しいなんて言葉では表しきれない。
さてビーチャムの作家としての将来だが、彼が除隊後、自分の過ちを悔い改めて、どのようにプロの戦士として生まれ変わったかという日記でも書いてくれたら、多分私は読むだろうな。


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