う〜ん、映画の邦題をつくるっていうのは非常に難かしいものだ。ミスタービーンというキャラクターを知らないひとにこれがコメディだということを題名だけで知らせるにはどうしたらいいのだろう?
ミスタービーンの珍道中!、ミスタービーンのそこ抜け休暇、ミスタービーンいざカンヌへ、
なんだかどれも古くさいなあ。
****アップデート! (2007年11月27日現在)Mr. Bean’s Holidayは 「ミスタービーン、 カンヌで大迷惑?!」の邦題で2008年1月18日に日本で公開されることになりました。*****
ミスタービーンといえば、1990年から1995年にかけてイギリスのテレビで放映された一回完結編で30分もののコメディ番組。伝統的なスラップスティック(どたばたコメディ)で会話はほとんどない。1920年代の無声映画をそのまま現代に持ってきたような構成で、言葉が分からなくても見てるだけで笑ってしまう傑作シリーズ。
1997年にアメリカ映画になったが、これはハッキリ言って失敗作だった。それというのも、ミスタービーンというキャラクターに親しみのないアメリカの観客のために、ミスタービーンがアメリカの家族を訪れるという設定で、テレビのエピソードで面白かった部分を無理矢理筋にあてはめて紹介するという形がとられていたからだ。
ミスタービーンの魅力は彼の個性的な宇宙人のような不思議な行動にあるのであって、込み入った筋にあるのではない。彼のコメディはそのまま1920年代の映画館へ持っていっても十分に通じるビジュアルなコメディであり、ミスタービーンを演じるローウェン・アトキンソンは世が世ならチャーリー・チャプリンや、バスター・キートンのような大スターになっていたことだろう。
そういう点で今度の新作、ミスタービーンズホリデー(Mr. Bean’s Holiday)はミスター・ビーンの原点にもどったどたばたコメディで、ミスタービーンの精神が生きていて笑いが止まらない。
先ず舞台がフランスになっているところが賢い。ミスタービーンはあまり会話を交わさないのがミソなので、外国で言葉が通じないというのは格好の設定である。明らかにこれはフランス映画のジャック・タティ主演のムッシュ・ユロの休暇、(Les Vacances de Monsieur Hulot)を意識して作られたものだろう。ムッシュ・ユロでも映画のなかで台詞はほとんどといっていいほどなかった。長距離列車駅のプラットフォームで構内放送が聞き取れずにとまどう観光客の様子はどこの国も同じだなと笑った覚えがある。
映画のあらすじといっても、特にこれといった筋はない。ミスタービーンが協会のくじ引きでフランスはカンヌの浜辺を訪れる旅行を勝ち取る。後はミスタービーンが長距離列車にのってフランス国内をカンヌの浜辺目指して旅をするという設定。もちろんミスタービーンのことだから、普通の旅にはならない。誰でも旅行中に体験したことのあるごく普通の状況をミスタービーン風にどうやって乗り切っていくか、そこにローウェン・アトキンソンならではの冒険がある。
例えば、列車の待ち時間に入ったレストランでフランス語のわからないミスタービーンは知ったかぶりして自分の嫌いな生ガキや甘エビを注文してしまう。それをどうやってウエイターに軽蔑されずに食べるのかに悩むミスター・ビーン。
列車に乗る前に自分の姿を写真に撮ってくれといって、他人の迷惑も顧みずにコーヒーを両手に持ってる男性に無理矢理写真を撮らせるミスタービーン。
電話をかけるためにお財布や地図や切符を公衆電話の受け代においたミスタービーンだが、、
バスに手いっぱい荷物をもって口に乗車券を加えているミスタービーン。行く先はどこかと運転手に聞かれて思わず口を開けると乗車券が風に舞い上がり、、、
とまあ、ミスタービーンのテレビ番組を見たことのある人ならこれがどのようにおかしなシーンになるかご想像がつくことだろう。しかし、ミスタービーンを全くご存じない方々でも、この映画をみればいっぺんにミスタービーンのファンになること間違いなし。
ミスタービーンは旅の途中で色々な人に迷惑をかけるが、特にひょんなことから一緒に旅をすることになったロシア人のステパン少年(Max Baldry)との掛け合いが面白い。ステパンはこまっしゃくれた憎たらしい子供でもなければ、不自然に可愛い子供でもない。ごくごく普通の男の子で好感がもてる。何度もいうようにミスタービーンの魅力は込み入った会話にあるわけではないので、ミスタービーンがフランス語が分からないことや、ロシア人のステパンとは全く言葉が通じないのでなんでも身ぶり手ぶりで意志の伝達をしなければならないところが面白い。特にお財布をなくした二人がお金を稼ぐために路上芸人さながらの口パクをプッチーニのトスカにあわせてやるところは床に転がるほどおかしかった。
ところで、込み入った筋はないと最初に書いたが、映画の冒頭で何気なく出会う人々が、最後のほうで非常に大切な役割を果たす。駅へ向かう途中で出会うエゴイスティックなアメリカ人映画監督の役でウィレム・デフォー(Willem Dafoe)もその一人だ。デフォーのようなまじめな俳優でもミスタービーンの前ではたじたじである。
この映画、世界中で大ヒットを遂げているのに、なぜかアメリカでは興行成績いまひとつ。パントマイムは世界の言葉のはずなのに、なぜだろう?


2 responses to 現代の無声映画、ミスタービーンお仏蘭西を行く!

rice_shower16 years ago

日本人で、英語も聞き取れないくせに、ウディ・アレンのコメディが好きだって言う奴ら、大嫌いです!
私は彼のシリアスなドラマがお気に入りです。(InteriorsとかAnother Womenとか。 旧ーーい)
以前、浜村淳さんの放送を聴かれていると言ってましたよね。
お笑いつながりですが、下の番組聴いたこと有りますか?
http://asahi.co.jp/webio/ram/seiten1.ram
関西人の私が、浜村淳、やしきたかじん、さんま、島田紳助と並んで“大阪の宝”思う上沼恵美子の番組です。

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scarecrowstrawberryfield16 years ago

ライスさん、
私はウッディ・アレンの初期のものがすきです。バナナとか”Everything you need to know about sex”みたいなタイトル。(ちゃんと思い出せない)
ライスさんも上沼恵美子さんのファンですか。うれしい! 私も「心晴天」はもう4〜5年ずっと月曜日と火曜日に聴いています。上沼さんはよく旅行の話をしますが、その解説が非常に庶民的で面白いですね。
ご存じかも知れませんが、ミスタービーンのローウェン・アトキンソンは他にもテレビシリーズに出演しています。他の番組では全く違うキャラクターを演じています。ブラック・アターやThin Blue Lineでは無口なビーンとは対照的にべらべらと皮肉たらたらの話し方をし、イギリス風のブラックコメディになってます。
カカシ

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