数日前、アメリカのニューリパブリック(TNR)という三流新聞にスコット・トーマスという仮名を使ったイラク駐留米兵によるものとされる「日記」が掲載された。三部に分けて掲載されたその日記に描かれた兵士らの行動は、路肩爆弾で顔に傷を負った女性を大声でからかった話や、大量埋葬地で見つかった子供の骸骨を頭に乗せて遊んでいる兵士、ブラッドリー戦車を乱暴に乗り回して野良犬を殺す悪趣味な兵士の話など、戦争犯罪に値するひどいものであった。(最後に日記の詳細を掲載するのでご参照のこと。)
このため現役や退役及び家族など軍関係の人々が書いているミルブログとよばれるブロガーたちの間で怒りが爆発。この話はねつ造だ、著者が本当はきっと偽兵士に違いない、TNRは真義を確かめもせず掲載したのか、本当にそんな事実があったのなら著者は仮名など使わず実名で正々堂々と名乗りを上げるべきだと、非難轟々の声があがった。そのなかでもあるブロガーは仲間のブロガーたちに、この著者の正体や日記の審議を確かめようとイラクに駐留したことのある軍人らに呼びかけた。
その結果、このスコット・トーマスSir Real Scott Thomasというブログを書いていたイラク駐留陸軍スコット・ビーチャム二等兵であることが判明した。間抜けなことにスコットは自分の本名のファーストネームのスコットとミドルネームのトーマスを仮名としてTNRの「日記」に使っていたのだからおかしい。しかも本人のブログに自分の連絡先まで明記されている。これについて陸軍の名簿を調べたある兵士によると、、

自分は現役の陸軍兵でイラク帰還兵であります。今スコット・トーマス・ビーチャムで陸軍名簿のウェッブサイトを検索してみました。それによると彼の階級は二等兵となっています。…

2006年9月のブログエントリーでは彼は自分の階級を一等兵と記述しています。ということはこの人間は軍隊規則の(Uniform Code of Military Jsutice)の15条に触れる罪を犯して少なくとも一階級格下げされたものと思われ、軍隊に恨みを持っていると考えられます。

格下げされたのか最初から嘘をついて階級を一つ上と偽っていたのかは解らないが、二等兵と言えば陸軍でも一番下っ端である。この男どうやらまったくうだつの上がらない陸軍兵のようだ。最初にビーチャムの日記が掲載された時、元陸軍特別部隊出身のミルブロガー,Black Fiveのジンボー親爺がこんなことを書いていた。

スコット・トーマスは嘘つきの糞野郎だ。どの部隊にもスコット・トーマスみてえな奴はいる。自分のすばらしい才能を誰も認めてくれない、自分は悪くないのにいつも上官から叱られていると文句ばかり言ってる奴だ。だから周りからは、ぐだぐだ文句ばっかいってないで黙って仕事しろと怒鳴られてばかりいるんだ。

ジンボー親爺は、こういう人間が軍隊をこき下ろすのは理解できるし、そういう話をメディアが鵜呑みしたとしても不思議でもなんでもないと語る。スコット・トーマスの正体が割れて、彼が2006年の9月に書いたこのエントリーを読んでみると、ジンボー親爺の分析がどれだけ正しかったかがわかる。(カカシ注:訳そうと思ったが句読点のない、ながったらしい文章なので、このまま訳したら訳が分からなくなる。仕方ないので意訳することにした。これで作家志望だというのだから驚くな。)

毎朝俺は起きる度に自分に言う。俺、スコット・ビーチャム、陸軍兵、ドイツ在住。これが俺の人生だ。俺は今日も糞みてえな扱いをされ、庭仕事や掃除だのをして、人殺しの訓練をする。この経験に耐えられなければ、俺がかつてもっていたもの、そして俺が外へ出てから持つだろう人生のありがたさが十分に理解できなかっただろう。俺が本当にしたいことは歴史を教えたり、寝転んだり、世界中飛び回って世界を修理することなんだ。…でもそれをするにはこの陸軍での経験を積んどかなきゃ出来ないんだ。俺が何をするにしても陸軍体験でハクをつけた後じゃなきゃだめなんだ。

ビーチャムは将来作家になりたいらしい。それでイラク帰還兵だということになれば、それなりにハクがつくからと陸軍に志願したらしいのだが、仕事が思った以上に辛くて毎日愚痴ばかり言ってるというわけだ。しかしビーチャムの所属隊も分かったことだし彼のこれまでの任務もすぐに明らかになることなので、彼のいうような体験を本当に彼がしているならば事実はそのうちハッキリするだろう。
ただ、ビーチャムの書いたようなことが本当に起きたのだとしたら、ビーチャムはその場にいた当事者であったにも関わらず同胞がこのような軍規約に触れる違法行為をしていたことを今まで黙っていたことになり、それ自体規約違反である。もし彼の話が本当ならこれらの事件に関わった人間はビーチャムも含めてすべて戦争犯罪者として罰せられるべきである。
だがもしこれがビーチャムによるただのでっちあげであったとしたら、現役兵隊が軍隊の活動を批判する政治意見を公の場で述べること自体が違法であるから、その罪で罰せられるべきである。とにかくこんな奴が大事なアメリカ軍のブラッドリーの修理に当たっているというのは非常に危険だ。早速最前線から取り除いて帰国させ、臭い飯でも食ってもらいたいものだ。
それにしても、自分の隊にこんな負け犬の非国民が混ざっていたことを知った所属隊の面々はいったいどんな気持ちだろうか?


スコット・トーマスのイラク日記
下記は7月18日付けのThe Daily StandardのFact or Fiction? を参照した。
第一話: 火傷の痕がある女性をからかった米兵
まず最初の話はイラクのグリーンゾーンでの出来事。トーマスとその仲間たちが食事をする大食堂においてしょっちゅう見かける女性がいたが、彼女は路肩爆弾の被害にあって顔半分に大やけどの痕があった。ある日トーマスと仲間たちが食事中にこの女性が現れ近くのテーブルに腰を掛けた。

おれたちの食事が半分くらいすんだ頃、彼女は現れた。2〜3分黙って食べていた俺の友達は突然乱暴にスプーンをマッシュポテトにつきたてて叫んだ。

「ちぇ、くってらんねえよ。」と彼は言った。

「なんでだよ、まずい飯が気に入らないのか?」

「違うよ、後ろに座ってる化けもんのことだよ。」と彼は後ろにいる彼女だけでなく、周りに座っている人々も聞こえるような大声で叫んだ。俺は振り向いてその女を見た。女は自分の食べる一口一口の食事を食べる前にじっと見つめてから半分溶けているその口へ運んでいた。

「ばかいうなよ、彼女すっげー美人じゃねえか」と俺は言い放った。

「なんだと?」と友達は半分にやにやしながら聞き返した。

「そうさ」と続ける俺。「路肩爆弾と親密な関係になった女って、俺をその気にさせるね。解けた肌、失った手足、プラスチックの鼻、、、」
「おめえ変態だな!」友達はそういいながら身をくの字にして曲げながら大笑いした。

この後もトーマスと友達はわいわいと大声で冗談を言い合っては大笑いしたと話が続く。ついにたえきれなくなった女性は食事も途中で大食堂から逃げるように飛び出してしまったとなって話は終わっている。
この話を読んだ現役・退役の兵士らの話によると、もし自分の近くで路肩爆弾の犠牲者を大声でおちょくるような態度をとる人間がいたら絶対にぶっ飛ばしてやると書いている。そして、そんなことをイラクにある基地の食堂でやっていて周りの兵士らから袋だたきにならなかったということは考えられないと言うのが大半の意見だ。イラクでアメリカ兵を一番殺しているのがこの路肩爆弾である。トーマスとその友達が食事をしていた食堂にもきっと仲間を路肩爆弾で失った兵士ら何人か食事をしていたはずである。にも関わらずトーマスらが他の兵士から注意も受けなかったというのは信じがたい。
第二話:子供の頭がい骨を頭に乗せて遊ぶ米兵
イラクに出動して6か月後トーマスの隊はバグダッドの西南で建設作業に携わっていたが、そこでトーマスらは大量埋葬地に出くわしたという。

冗談好きで問題児と評判の二等兵が完璧に保存されていた頭がい骨の上の部分を見つけた。それには髪の毛までついていた。二等兵は笑いながら頭がい骨を自分の頭にのせると王冠のようにぴったりはまった。二等兵は頭に頭がい骨を乗せたまま歩きはじめた。周りの奴らはシャベルやサンドバッグを落としてげらげらと笑いこけた。二等兵を止めるものはいなかった。俺も含めて気分を害したものはひとりもいなかった。

この二等兵はその後も一日中頭がい骨を頭につけたまま遊んでいたというのである。埋葬地を冒涜する行為はは明かに軍の規約に違反する。しかも頭がい骨を頭につけたまま一日中歩き回っていた二等兵を上等兵が誰も注意しなかったというのは先ず考えられない。ところで、2006年の10月頃、アフガニスタンの埋葬地で見つかった骸骨と遊んでいたというドイツ兵の話がドイツではかなり問題になった。スコット・トーマスはその頃すでにイラクに出動していたが、アメリカ兵はイラク入りする前にドイツで訓練を受けるので、ドイツを通り越したほかの兵士らからこの話を聞いて知っていた可能性は大きい。別の国の軍隊がしたことをまるで自分の体験でもあるかのように書いたとしても特におかしくはない。
第三話:戦車で犬を轢き殺すことが好きな悪趣味な米兵
トーマスの友人の二等兵にブラッドリー戦車の運転手がいたが、彼は機会がある毎にガードレールやフェンスを壊し、周りにある屋台やマーケットのスタンドを壊して走るのが好きな人間だったという。

…奴が一番すきな標的は犬だった。 時々勇気のある犬がブラッドリーを追いかけまわし、アメリカでトラックに吠えるみたいにブラッドリーに吠えるやつがいると、二等兵は好都合とばかりにハンドルを切って犬のしっぽを戦車に巻き込むんだ。奴は何匹犬をころしたか運転席のダッシュボードの上においてある緑色の帳面に記録していた。ある日奴は三匹も殺した。 奴はブラッドリーの速度を落とし犬をおびき寄せて近くまできたかと思うと戦車を右に急転させて犬の足をすくった。足がひっかかった犬をしばらく引きずり回してから、ぴくぴくしてる犬を放してやるんだ。そいつが大声で笑う声がラジオから響いてきた。帳面にもうひとつ記録が伸びた。二匹目の犬は簡単だった。通り道でひなたぼっこをしていた犬は逃げる暇もなくスピードをあげているブラッドリーの下敷きになった。犬の上半身は完全に激しく痙攣している下半身から引きちぎられていた。顔は太陽に向けてもちあげられたまま何もおきなかったかのように微笑んでいた。

訳していて胸が悪くなった。(おえ!)


3 responses to 「冬の兵士」再び、米二等兵の軍隊バッシング

In the Strawberry Field17 years ago

暴かれたイラク版冬の兵士の嘘

この間からスコット・トーマス・ビーチャムというイラク駐留のぺーぺー二等兵著のイラク駐留のアメリカ兵士の悪行を綴ったイラク日記三部作の真偽について色々と取りざたがされていることを私はここで書いた。 スコットは自分と友達がイラクの基地食堂で路肩爆弾で大けがをし顔に傷のある女性をからかって友達と大笑いした話や、大量埋葬地で見つかった子供の頭がい骨を頭にのせて歩き回った二等兵を周りにいたどの兵士たちもとがめるどころかげらげらと笑って見ていた話、そして同胞の兵士が戦車を日常的に乱暴に乗り回して地元の出店などを…

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In the Strawberry Field17 years ago

嘘つき二等兵、取り調べで嘘を全面的に認める!

この間からイラク駐留の米兵の悪行についてザ・ニューリパブリック(TNR)誌のイラク日記というコラムでショック・トゥループという記事を書いたスコット・トーマス・ビーチャム陸軍二等兵の話をしてきたが、本日、陸軍の捜査でビーチャム二等兵はTNRに書いたことはすべて嘘であることを認めたという記事が8月6日付けのウィークリースタンダードに掲載された。これは先日マット・サンチェズが報告しConfederate Yankeeのオーウェンが確認を取った陸軍による捜査の結果をさらに詳しく報道したものだ。 事件の背景は…

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In the Strawberry Field17 years ago

TNRバグダッド日記ねつ造記事事件に学ぶ匿名記事の危険性

アップデートあり:後部参照 スコット・トーマス・ビーチャムの、今はねつ造がはっきりしたバグダッド日記がザ・ニューリパブリック(TNR)に掲載されてからというもの、ブログ社会、特に米軍関係者が書いているミルブログの間ではここ数週間この話で持ち切りだった。その間主流メディアはこの出来事をほとんど無視してきたが、昨日になってとうとうアメリカのワイヤーサービスであるAPニュースまでもがTNRを厳しく批判する記事を書いている。 陸軍は今週捜査を終了させ、ビーチャムの証言はすべて嘘であったことが判明したと言って…

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