昔読んだパール・バック著の「大地」という小説のなかに王虎という将軍が出てくる。彼は若い頃は大軍を引きつれ次々に領土を奪い勝ち戦に明け暮れたが、年とともに怠慢になり士気が衰える。そして毎年「春になったら兵を挙げる」というのが口癖になっていた。ところがある年ライバルの軍が「春を待つまでもない」と攻めて来て滅ぼされてしまう。
もう何年も冬になると「春の大攻撃」を宣言しているアフガニスタンのタリバンをみていると、どうもこの王虎を思い出してしまうのである。
今年のはじめ頃タリバンはまたぞろ「春の大攻撃」を宣言した。読者のみなさんはその攻撃がどうなったかご存じだろうか? タリバンの「春になったら、、、」という呑気な宣言に北大西洋条約機構(NATO)軍は「春を待つまでもない」と言って今年の初めアキレス作戦なる攻撃をはじめた。

今回の連合軍に参加しているのはアメリカ、イギリス、オランダ、カナダあわせて4000の兵、それに1000のアフガン兵が加わる。

今回の作戦は北側のヘルムランド地区に集中される。タリバンが占拠したと発表しているムサカラ(Musa Qala) とワシア(Washir)そしてナズワドの位置する地域である。

どうやらこの作戦大成功だったようで、おかげでタリバンは再編成の暇もなく、ただただ逃げまどうばかりで春の攻撃どころではなくなってしまった。APの記事によれば、NATO軍はすでに今年にはいって2000人以上のタリバン戦闘員を殺しており、これは去年一年間の3000人を大きく上回る率である。
アフガニスタンでの戦闘が激化しているとはいえ、味方の犠牲者せいぜい100人に比べタリバンの受けている打撃は大きい。しかも追いつめられるとすぐにパキスタンに逃げ込んでいたタリバンだが、先日パキスタンのムシャラフ大統領はNATO軍のパキスタン内追跡を許可したため、今後はパキスタンに逃げても安全ではなくなってしまった。これは非常に歓迎すべき発展である。
ムシャラフ大統領は国民からの人気はあまりない。この間も7回目からの暗殺未遂があったばかり。テロリストもタリバンもムシャラフには目の上のたんこぶであり放っておけば自らの滅亡におよぶ。ここはNATOに媚びを売っておく必要があると読んだのだろう。
それにしてもタリバンはいったい何時までこの不毛な戦いを続けるつもりなのだろうか?このままではいつか、彼等が春を見ない年が訪れるだろう。
関連エントリー:タリバン勢力がますパキスタン北西部何がタリバン春の大攻撃だ!


2 responses to アフガニスタン: どうなったのタリバン春の大攻撃?

In the Strawberry Field16 years ago

何がタリバン春の大攻撃だ!

今日、産経新聞の「タリバン、春に大攻勢へ アフガン駐留外国部隊が標的」という記事を読んでカカシが大学生の、パキスタンの留学生との会話を思い出した。ある時私はパキスタンとインドがカシミアを巡ってまた戦闘を始めたようだねという話をしたら、パキスタン空軍でパイロットをしていたこともある彼は、「あ~春だからね」と退屈そうに答えた。彼に言わせるとカシミアあたりは冬は寒くて雪もつもり山岳地帯での戦闘はほぼ不可能。暖かくなってくるとお互い何発か打ち合って形だけの戦闘をやるのが習慣なんだそうだ。これじゃまるで日本の…

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In the Strawberry Field16 years ago

またまたオバマの失言、アフガニスタンでアラビア語の通訳が足りないって?

私は何度もヒラリーが賢く見えるオバマの失言の話はここやここなどで書いてきたが、今回もまたまたバラク・オバマがおかしなことを言った。 ミズーリ州で選挙運動中のオバマはアフガニスタンの戦況がうまくいっていないことの理由として、アフガニスタンに充分なアラビア語通訳がいないことがあると語ったのである。下記はレッドステートから引用。 「特定の数の(通訳)しかいないのに、それが全員イラクにいってるので、アフガニスタンの我が軍は困っています。」とオバマは語った。もちろん事実はアフガニスタンではアラビア語ははなされ…

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