私がこのブログをはじめた一番の動機は日本の皆様に真のアメリカを解ってほしいということからだった。本来ならばアメリカを強い味方とすべき日本が誤ったアメリカ観から反米意識を持ってしまうのを見ると非常に悲しい。なんとかより多くの日本人にアメリカは日本の友達であり、決して日本を蔑んだり、押さえつけようとしたり、思うがままに操ろうなどと思っていないのだということを解って頂きたいという思いでいっぱいになる。
特に最近起きているアメリカ下院議会での慰安婦に関する決議案などでも、日本の皆さんによるアメリカ政界への誤解から不必要で有害な反米感情が生まれていることが残念でたまらない。そこでなんとかして私はここで皆様のアメリカへの誤解を解きたいと思う。
先日私がニュースウィーク誌が安倍首相を国粋主義者扱いしているという記事をかいたことがきっかけで、ある右翼ブロガーが書いていたことを例にあげて説明しよう。私は特定のブロガーと言い争いをしたいわけではない。私としては非常に残念なことなのだが、ほかのことでは非常に理屈にかなったことをおっしゃる右翼や保守派の人たちが、こと戦時中の話となると感情論でアメリカバッシングに走る傾向があることを示したいだけである。
まず、下記のような意見は非常に典型的な誤解といえる。
アメリカという国は基本的に左翼国家であり保守派の存立基盤は薄い。歴史も伝統も保守すべきものが無いのだから保守派は無いのだ。あるとすれば宗教的原理主義ぐらいである。だからアメリカは基本的にリベラルでありソ連という共産主義国家の兄弟的存在だ。
まず、アメリカはアメリカ合衆国として独立宣言をしたのは1776年のことであるが、アメリカの歴史自体はその200年前、偶然だが今年はアメリカ初期の入植地のひとつでありジェームスタウン入植からちょうど400年目にあたる。今訪米中のエリザベス女王が先日訪問したばかりである。
400年も前から存在している社会に守るべき伝統も歴史もないなどという言い方はおかしい。しかもアメリカは移民の国である。アメリカ大陸に400年前に突然降って湧いてできたわけではない。最初はイギリスから、その後はフランスやドイツといったヨーロッパからの移民が集まってそれぞれのヨーロッパの歴史や伝統を受け継いできた。バージニアにあるウィリアムスバーグ入植地公園などに行くと、当時の建物がそのまま残っているが明かにイギリスの影響を受けていることがわかるし、東海岸などの古い町にいくと明かにヨーロッパから受け継いだアメリカの伝統を伺うことができる。
そしてここが一番大切なところなのだが、アメリカの移民たちはヨーロッパで起きた宗教弾圧を逃れてきた人々で出来た国なので、祖国のヨーロッパ諸国よりも宗教心の強い人々が多い。特にここ100年近くヨーロッパ諸国が宗教をあまり重視しない世俗主義になっていったのとは反対に、アメリカ人の信心はよりその深さを増していったのである。アメリカの独立精神は開拓者精神とジュデオクリスチャン宗教が基盤になっている。近年のヨーロッパが社会主義的傾向があるのと反対にアメリカが資本主義を守る続けられるのもそうした伝統があるからである。
こう書けば、アメリカが無宗教主義と全体主義をモットーとする共産主義とは全く相容れない考えをもった文化であり、絶対に兄弟関係になどなれないことがすぐにご理解いただけるはずだ。
また、冷戦時代がどういう形で終わったのか思い出していただきたい。冷戦時代のソ連は強力な存在だった。洋の東西を問わず世界中の人々がソ連の存在は永久でありソ連が滅びるなどと考えていた国はひとつもない。そんな中アメリカの保守派大統領のレーガンがただ一人「ソ連は悪の帝国だ」と言い、ソ連は滅ぼさねばならない、自分がそれを実現させると言い切ったのだ。
当時のヨーロッパ諸国やアメリカ国内でのレーガンのこの発言に対する反響はほとんどが嘲笑だった。役者上がりが何を思い上がったことをいっているのだ。ソ連をお前が倒せるわけないだろうが。ばっかじゃなかろか。
しかし現実はレーガンがドイツを東西の二つに分離していたベルリンの壁の前で「ゴルバチョフさん、この壁を崩しなさい!」と言ったあの有名な演説の数年後に、ベルリンの壁は崩壊しソ連が崩れ東ヨーロッパを支配していた共産主義ががたがたと音をたてて崩壊したのである。アメリカは共産主義の兄弟どころか、アメリカこそが共産主義ソ連の宿敵だったのであり、アメリカの保守派大統領レーガンこそがソ連を倒した英雄なのである!
レーガン大統領は多くのリベラルや左翼を保守派に改心させた責任者でもあり、今ネオコンとよばれている思想は、それまでリベラルとして迷っていた心をレーガンによって保守派として目をさまされた人々から受け継がれている。
この間も述べた通り、アメリカのメディアは非常に左よりでありアメリカ社会を代表しない。ましてはブッシュ政権とは敵対関係にあり、アメリカのメディアがアメリカの外交政策を代弁しているなどと考えるのは完全な間違いである。このブロガーもその典型的な間違いをおかしている。
だからアメリカのメディアは日本やヨーロッパの保守派に対しては憎悪に近い敵意を抱くのであり、自由主義に対する認識もヨーロッパとアメリカとではかなりずれがある。だからアメリカの新聞各紙は安倍内閣に対して「ナショナリスト・アベ」と書きたてている。
ちょっと分かりにくいことではあるが、アメリカの議会とアメリカの政権は同じではない。日本も三権分立制を取り入れているが、アメリカの場合特に政権と議会との勢力争いはものすごく激しい。大統領と議会が同じ党派である場合ですら勢力争いは避けられない。ましてや今のように議会が大統領と違う野党である場合には議会と政権との意見は180度反対であることも珍しくない。よく諸外国のみなさんはアメリカの民主党と共和党は大差ないというが、その政策や思想には雲泥の差がある。
また民主党はヨーロッパ風の社会主義をモットーとしており、世俗主義で軍隊が大嫌いである。特に愛国心とか言う言葉をみると背筋がぞっとするほどグローバル主義なのだ。(ジョン・レノンのイマジンという曲を思い出してもらえれば、彼等が理想とする社会がどういうものなのかが分かるというものだ。)だから「美しい国」などという安倍首相を「国粋主義者」と批判するわけだ。それが理解できないとこういう誤解が生じる。
大東亜戦争の本質は、日本の伝統的保守主義とアメリカのリベラル主義との思想的な戦いでもあった。その結果、日本の保守主義はアメリカ占領軍により徹底的に弾圧されて、7700冊もの本が発禁処分されて焚書された。だからアメリカは安倍内閣によって日本の保守主義が復活したのではないかと恐れているのだ。
民主党は日本が多少でも軍事強化することをいやがっているが、これは大東亜戦争当時の軍事独裁政権が日本に戻ってくるのを懸念するなどという高レベルのものではない。彼等は軍事を強調するブッシュ政権と軍事的に独立しようとしている日本とが仲良くなるのが気に食わないだけだ。慰安婦問題だの安倍政権の国粋主義だのは単なるジャパンバッシングの道具に過ぎない。彼等はなんとか日本政府とアメリカ政府の間に深い亀裂を生じさせようと必死なのである。
そしてそれにつけ込んでアメリカ議会を利用しているのが中共や親北朝鮮の韓国というわけだ。(在米韓国人の間には北朝鮮の工作員も多く混ざっているだろうことは想像に難くない。)
であるから、民主党の議会や左翼メディアの攻撃に腹をたてて、アメリカ政府から批判を受けたと誤解し、戦争当時のアメリカの所行についてアメリカはこんなこともした、あんなこともした、と蒸し返してお互いの間をきまずくするようなやり方は中共や韓国そして北朝鮮の思う壷である。愚かである。
日本の右翼のみなさんに心から訴えたい! アメリカは左翼主義の国ではない! アメリカは日本の敵ではない!左翼連中の思惑にだまされてアメリカとの友好関係を壊すような行為はぜひとも思いとどまっていただきたい。
ただ、強い日本をめざす人々にとって、次の政権が民主党に渡った場合は問題である。アメリカには右翼も左翼もいるが、この間からの選挙でも分かるようにアメリカは左系の民主党と右系の共和党とでまっぷたつに割れている。もしヒラリー・クリントンやジョン・エドワードが大統領になり、議会も民主党に制覇されたら、その時は私も「アメリカは左翼主義だ」といってアメリカバッシングに加わるかもしれない。(苦笑)
しかし大事なのはそうならないようにすることだ。アメリカの保守派として、日本を祖国に持つものとして、日本とアメリカは常に友好的な関係を保ってほしいと願っている。そのためには次回の選挙で共和党が政権を保ち議会を取り戻す必要がある。であるから日本の皆様にも共和党の全面的勝利を応援していただきたい。