イラク戦争においてアメリカ兵を一番殺しているのはなんといっても路肩改良爆弾(IED)だろう。2003年フセイン政権が崩壊した直後、まだスンニとアルカエダの反乱分子がテロ行為を始める前まではアメリカ兵は交通手段としてハンビー(HUMVEE)と呼ばれる21世紀版ジープに乗っていた。もともと移動用の乗り物で戦闘用ではないので攻撃からは全く無防備だった。この弱点を最大限利用したのが敵の肩撃ちロケット弾(RPG)とIEDだ。
そこでアメリカ軍はバンドエイド型改良を行いハンビーに装甲を加えたがこれはあくまで臨時対策。そこでもっと効果のある対策としてストライカーと呼ばれる装甲車が2003年の終わり頃からじょじょに取り入れられた。これはハンビーよりも大型で戦車の乗組員は完全に囲まれている。ハンビーより重いし頑丈なのでちょっとやそっとのIEDでは吹っ飛ばせないし、RPGも突き抜けない。ストライカーのおかげで米軍兵の犠牲者はかなり減った。
しかし、敵もさるもの、こちらが強くなれば向こうも対抗して別の方法を考えてくる。ストライカーもデザイン的には下からの攻撃には弱い。ハンビーより重いとはいえ、その分爆薬を増やし地面の奥深くに埋めておけばストライカーでもふっとばすことは可能だ。ほぼ無敵と思えたストライカーも2006年の終わりごろからイランから入ってきた爆発成形弾(EFP)などによって致命的な被害を蒙ることが多くなってkた。

陸軍の兵輸送車として一時はより軽く小回りが効くとして歓声を浴びたストライカーも強力な路肩爆弾による一連の致命的な被害から、その弱点が新たに見直されている。

バグダッドの北方にある治安の悪いディヤラ地方にストライカーが出動した二ヶ月前から、ストライカーの損失が確実に増えていると軍当局は語っている。
損失に詳しい兵士の話によるとディヤラにいるひとつの歩兵中隊だけで今月に入って一週間未満で5台のストライカーが失われたという。 兵は情報を公開する資格がないため匿名でインタビューに答えた。ストライカー損失の合計数は非公開である。

明らかに敵はストライカーの弱点を見出しその弱点を多いに利用しているわけだ。ストライカーの真平らな床は下からの強力な爆弾攻撃には対抗の仕様がない。

明らかに敵は装置を隠す技術を向上させたようで、殺された1人の記者と6人の兵士とを殺害したIEDは下水パイプのなかに隠されていたと思われる。殺害機能を高めるため反乱分子は装置をセメントで固め爆発力がタンクのある上向きに行くように仕掛けてあったと捜査に携わった兵士は語った。

すとらいかー擁護者はこれらの攻撃は単に爆弾の致命的な強さを証明するものであり、ストライカーそのものに問題があるのではないと主張する。最近の爆弾はあまりにも強力であるためエイブラハム戦車でも立ち向かえないと言う。

ストライカーだけでなくエイブラハムもブラッドリーも最近は非常に高い率で損失を得ている。これははっきり言って由々しき状況といえる。我々が気がつかなければならないのは、イラク戦争は湾岸戦争とは違うのだということだ。我々はこれまでのように軍隊対軍隊が戦うような戦争をやっているわけではない。真正面から撃ってくる敵の弾をよければ済んでいた時代は終わったのだ。ゲリラに対する軍事作戦が正規軍との戦いとは全く異なるように、闇に潜む敵と対抗する武器もまたそれに適応して変わっていかなければならないのだ。
ストライカーにしろハンビー、エイブラハム、ブラッドリーにしろ、単に現在のEFPが突き抜けられない装甲装備をするだけでは常により強力な破壊力を持つ武器改良を厭わない敵相手に不十分である。
しかし忘れてならないのは、武器改良の点ではこちらの方が敵よりも一枚も二枚も上手(うわて)だということだ。第一ラウンドは取られたかもしれないが、第二ラウンドは見ていろよ、おれっちの番でえ。
アメリカ軍が誇る新兵器 MRAP級装甲車: をごらんあれ! これはthe Mine Resistant Ambush Protected級 と言い、日本語にすると「爾来抵抗待ち伏せ防御」とでもいうのかなあ?いやもっとチャントした日本語訳があるはず。 とにかく海兵隊と陸軍がそれぞれ独自にデザインしたもので、クーガーHシリーズのMRAP型(the Couger H-series of MRAP)とバッファローHシリーズのMPCV型(the Buffalo H-series of Mine Protected Route Clearance (MPCV) vehicles)がある。どちらもフォースプロテクションインク( Force Protection Inc)製造。バッファローの方がクーガーより大型で爆弾を掘り起こす装置がついている。ちなみにバッファローのあだ名はクロー(大爪)。

Couger H-series MRAP    Buffalo H-series MPCV

クーガーHシリーズ:Couger H-series MRAP () とバッファローHシリーズ: Buffalo H-series MPCV ()


画期的な改良デザインは輸送車の底の部分。下からの攻撃に弱かった平らな底をV型にすることで爆発の威力を拡散させるデザインがほどこされている。下記の写真を見ていただくとその意味がお分かりいただけると思う。

MRAP taking blast

IED攻撃を受けるMRAP: 爆弾の威力が車の両側に拡散されている


陸軍と海兵隊は現在クーガーを7,774 台注文しており ロバート・ゲイツ国防長官も大いに期待をかけている。

私の目に留まったのはある新聞の300以上のIED攻撃を受けたMRAPでは海兵隊員が一人も殺されなかったという記事です。.

アーミータイムスによるとイラク多国籍軍の中将(Lt. Gen. Raymond Odierno)は, 二年以内にイラクにあるハンビーをすべて MRAPと切り替えるように 命令したという。

ピート・ゲレン陸軍代理長官は本日陸軍は現在イラクにある17,700台のハンビーを二年以内にMine Resistant Ambush Protected装甲車に切り替えるため、購入の数を大幅に増やす計画を確認した。

海兵隊はすでに100台以上の MRAPイラク現地に備えている。陸軍も現在ある700台に加え、8月の初旬には2500台のMRAPを備える予定であるとゲレン代理長官は語った。
MRAP プログラムは速やかに進んでおり、陸軍と海兵隊による合同購入の努力がされている。

しかしここにひとつ難関がある。これは一般的に考えられる軍隊の変化に対する抵抗であるとか融通が利かないとかいうことではなく、もっと現実的な 製造過程での問題なのだ。このような新兵器を2年以内という時間制限で製造するのに充分な数の製造工場がないのである。

2006年7月現在200台のバッファローとクーガーがイラクとアフガニスタンに起用され、1000以上の地雷やIED攻撃を受けたにも拘わらず、ひとりの戦死者も出していない。しかしアメリカ、イラク、そしてイギリスの顧客からの注文が殺到するなか2004年にたった12人の従業員で始めた製造工場では注文に応じるのは至難の業である。

フォースプロテクションインクは2006年7月に500人目の従業員を雇い、製造率を3倍に増加させると発表した。クーガー製造のため四千百万ドルの資金を得、第二第三の製造ラインが設置された。またバッファーロー製造も二倍になる予定だ。

敵がこちらの弱点をついてくるなら、こちらも相手の攻撃に対抗してさらに武器を改良する。無装備のハンビーが狙われるならストライカーで対抗。ストライカーがIEDに弱いならクーガーやバッファローで対抗である。敵のこちらの攻撃への順応性とこのちらの対抗力のどちらが勝つか、戦争は常に競争だ。しかし武器改良の競争ならアメリカはテロリストたちよりよっぽど資金もあれば技術才能もある。たかがタオル頭のイラン人やマフディの猿どもには負けはしない。
しかしこういっちゃなんだが、技術の発展のためにもやはり戦争というのは時々やらないと駄目だな。


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