本日フランス大統領候補の上位二位になった社会主義のロヤル女史(Ségolène Royal)と保守派のサルコージ氏(Nicolas Sarkozy)との討論会があった。
アメリカの選挙も汚いと思ったが、フランスのそれに比べたらきれいなもんだ。私がよく読んでいるフランスのブログle’Extreme-Centreで紹介しているミッシェル・ガーフィンケル(Michel Gurfinkiel)の記事では、まず二人とも外交よりも国内の問題に焦点を当てたいようだ。二人とも外交面でかなり批判を浴びていとしているが、、

ロヤル女史は外交の経験がないと批判されている。そしてサルコージ氏はハンガリー移民の息子でバルカン人の孫であることから「外国人」と攻撃され、アメリカとイスラエルの工作員だと攻められている。インターネットのあるサイトでは地獄の三角形といってワシントン=テルアビブ=サルコージと称し、サルコージの顔の真ん中にダビデの星を描いている。

アメリカでもブッシュをヒットラーと例える過激派がいるにはいるが、これがフランスでは普通だというのだから驚く。ま、フランスではかなり反ユダヤの人種差別意識が強いので驚くこともないのかもしれないが、それにしてもひどものだ。 
さてそれでは肝心の討論会からいくつか面白いやり取りを抜粋してみよう。International Herald の記事参照。
二時間に渡って行われた討論会ではフランスの国内の問題である、高い失業率、犯罪、若者の希望喪失、健康保険、年金の不足などについて激しい論争が交わされた。なにしろシラクのじいさんが長いこと大統領をやっていたから、今回の討論はなんと12年ぶり。支持率では多少遅れ気味のロヤル女史はこの日曜日の選挙を前に、ここでノックアウトパンチを見せたいところ。
最初の重要な質問は双方の候補がどういうスタイルで大統領の仕事に挑むかというものだったが、討論はすぐにフランスの失業率と犯罪率の高さに関する激しい討論へと進んだ。まずロヤル候補は現在内政省の大臣としてのサルコージ候補の過去5年間に渡る仕事振りについて、内政省は犯罪を減らすことも出来ず、福祉や病院警察に充分に予算をあてがわなかったと批判した。

「あなたは5年間何をやってたんですか? この5年間すべての力を所持していたのですよ。これは信頼度の問題です。」とロヤルはサルコージが今後の組織と経済の改革について概要を述べた後突っ込んだ。

「信頼度とおっしゃいますか?ロヤル夫人。」とサルコージは問い返した。
司会者がペリーでかわすなか二人のボレーに閃光が走った。討論の途中で障害者の教育についてロヤルはサルコージを冷血漢扱いした。サルコージはロヤルに落ち着くように言うと、「私は落ち着きません!、落ち着きません!」とロヤルは三回繰り返して怒鳴った。サルコージはすかさず「共和国の大統領となるには落ち着かなければなりません。」と答えた。(Touche!)

大統領候補がヒステリーを起こした伯母さんのように写ってはよくないだろう。ここはロヤル、一本取られたな。

…大統領とは「常に約束を守り、特定の問題について本当に取り組む人を言います。…私はフランスに頻繁に話かけるつもりです。」これは明らかに現大統領シラク氏へのジャブである。シラク大統領は12年間にわたり、危機の際に沈黙を守ることが多かった。「私はタブーの背後に隠れるようなことはしません。」とサルコージ。

さて、現役の内政省大臣としてサルコージは失業率や犯罪率について何もしてこなかったというロヤルの批判に対して、ロヤルの所属する社会党が政府を握っていたときはもっとひどかった、自分らの代になってかなり改善されたとサルコージは反撃。
サルコージの言うとおりフランスの経済困窮は何も5年前に始まったわけではない。長年にわたる社会主義のせいで失業保険だの、生活保護だの、高い年金だのでたまった借金が返せない状態になっている。いくら税金を上げてみても少子化の進むフランスでは産業率も低い。税金が高くなりすぎて若い労働者は外国へ移住してしまうし、失業手当が高いから若者の就業意欲も落ちる。フランスは基礎からのやり直しが必要なのだ。にも拘わらずロヤルは福祉を減らす気はないと断言している。

「私は週35時間の就業を好みます。」とサルコージは主張。しかし、それ以上働きたいひとは働く自由があるべきだとする。特に低所得の人々は。「お金がないのに休む時間が余計にあるからってなんになるでしょう?…もっと働きたいと言う人たちに稼がせてあげるべきです。」

今夜激しく交わされた論議のひとつで、サルコージはロヤルは信頼できる経済計画がまったくないと攻めた。
「借金についてですが」氏はいった。「どうやって減らすのかという話をまったくしていません。それはあなたの権利ですが、経済成長というからにはそれなりに成長を吹き返す必要があります。おっしゃるとおり経済成長は必要です。フランスの問題は経済成長率が他の民主主義国家よりも1%低いことです。なぜでしょうか?その理由は単純です。ロヤル夫人。我々は他の国の人々ほど働いてないからです。」
「驚かれるかもしれませんが」氏は、ヨーロッパの10カ国のうち週35時間の就業時間をフルタイムとしている国はないと語った。「公務員を増やしたいですか?」氏は付け加えた。「それはいいですね。でもどうやって払うんですか?」ロヤルはつき返した。「私の言葉を歪曲しないでください。私は公務員の数を保持するといったのです。増やすとは言ってません。私はもっと能率的な人事異動をするつもりです。」

インターナショナルヘラルドの書き方から言ってかなりロヤル候補を押しているように読めるので、そのヘラルドがここまで書くとなると、この討論会はどうやらサルコージに軍配が上がったようである。それにしても福祉を減らすという話が出るたびに労働組合がストを起こして町中が麻痺してしまったような国で、サルコージのようにあからさまに福祉を減らすと言っている候補者が人気を得ているということは、フランス人もやっと自分達の非現実的な社会主義の限界に気がつき始めたのだろうか?
今フランスでは一人の引退者を二人以下の就業者が背負っている状態だと言う。 このままいけば一人当たり一人が背負う日も近い。そんな社会には生きられないとフランスは目をさましつつあるのかもしれない。


1 response to ロヤル対サルコージ、フランス大統領候補討論会

アラメイン伯17 years ago

ロワイヤルさんはあるテレビ番組でフランス海軍の原子力潜水艦についてまったく知らないことが露見してしまい。
支持率を落としてしまったそうです。
彼女はどうもプロの政治家とは言い難いです。

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