アップデートあり文章の終わりを参照ください。
イラク戦争の新しい進路がうまく進めば進むほど民主党は新作戦を脱線させようと必死である。彼等の行動を見ていればその動機はあきらかである。民主党はイラク戦争に負けることを恐れているのではなく、アメリカがイラク戦争に勝つことを心から恐れているのである。
なぜアメリカ人である民主党議員たちがアメリカが戦争に負けることを望むのかといえば、イラク戦争は共和党のブッシュによる戦争であるという考えから、イラク戦争が失敗すれば国民は共和党全体を罰して民主党が2008年の一般選挙で大幅に議席を増やし、大統領選にも勝ち、大勝利を迎えられるという思惑が根本にあるのである。
16日の金曜日、米国下院はブッシュ政権によるイラク増派反対の決議を通した。ブッシュの報道官であるトニー・スノー氏は記者会見で「民主党はアメリカの敗北に賭けている」と苦々しく語っていた。

 【ワシントン=山本秀也】米下院本会議は16日、ブッシュ大統領が表明したイラクへの兵力増派に反対する決議を賛成246、反対182で採択した。決議に拘束力はなく、ブッシュ政権はイラク新政策で表明した2万人以上の兵力増派を続行する構えだ。

 決議は民主党のスケルトン軍事委員長らに共和党の議員が加わって超党派議案として提出され、現行の米軍のイラク駐留には支持を表明しながらも、ブッシュ大統領がイラク新政策の目玉とした米軍増派を不支持とする内容だ。本会議での討論に4日間を要し、議員の9割に当たる392人が発言する本格的な論戦となった。この日の採決では共和党の17議員が賛成にまわった。
 民主党のペロシ下院議長は、「決議の採択は戦闘終結と駐留米軍の帰還に向けたイラクでの方向転換のシグナルとなる」と語った。民主党は戦費執行に制約を設ける法的措置なども検討しており、イラク政策をめぐって大統領と議会の対立は一段と強まりそうだ。一方、上院本会議も17日、同様の増派反対決議案の採決を予定している。

民主党議員たちはブッシュの新作戦が早くも実りを見せていることにうろたえて、ついこの間まで絶対にしないと誓っていたくせに与党リーダーのハリー・リード上院議員とナンシー・ペロシ下院議長があり得ないといっていたイラク戦争の戦費差し止め執行を振り回して真っ向からブッシュ大統領を脅迫しにかかっている

民主党はイラクへの増派とイランへの先制攻撃を阻止する方法を見つけたとしてブッシュ大統領の開戦権限に真っ向から挑戦している….

「わが国はイラク路線について劇的な変更をおこなう必要があります。そしてその変更を実現させるのは議会の責任であります」と下院において軍隊支出の監督にあたっている民主党のジョン・マーサ下院議員は下院議員は語った。
マーサ議員は兵士の戦線出動に一年の期間をおくなど戦闘員動員について厳しい規制をかける議案を準備している。最終的にはこの案によってブッシュが計画している16万兵を何か月にも渡って維持することは不可能になるであろうとマーサ議員は語った。

マーサ議員の決議案は要するに戦闘員を出動させるにあたり、何かについていろいろと理不尽な規制をつけて、大統領がいちいち議会にお伺いをたてなければ軍隊を出動させることができなくなるというもので、現実的には戦闘員の速やかな出動をほぼ不可能にすることになる。これはどう考えても三権分立の憲法に違反する。
例えば一旦イラクに出動した隊が帰国したら、どんな場合でも、少なくとも一年は戦場へ出動させてはいけないという規則がある。このほかにも、理不尽に高いレベルの訓練を受けていなければならないとか、戦士の任務期間を延長してはならない、軍需品が理不尽に高度なスタンダードに達していなければならないなどという規制がかけられ、しかもこれをいちいち大統領が確認し議会に提出し議会の承認がなければ出動できないとなっているのである。(この案はイラクだけに限られ、アフガニスタンにはあてはまらない。)
このような案が通ったならば、戦場での貴重な経験を得た戦士が数カ月後に新しく動員される戦士と一緒に出動して知識や技術を引き継がせることができなくなる。また戦況が変化し経験ある隊の任期を延長させたり、帰国して数カ月しかたっていない軍を援軍としておくることもできなくなるのである。
ムーブコングレス(MoveCongress.org)というウェッブサイトのインタビューでマーサ議員はこの案の本当の目的はイラク増派を阻止することであると意図を明かにしている。。(注:掲載した後でまずいと気が付いたのか、サイト経営者は内容を書き換えてしまった。下記は書き換える前の記事である。)

防衛費充当委員会は大統領の930億ドルの追加予算申請について審議をはじめた。この申請への行動が新しい議会がイラク戦争において「財布の紐を締める」ことのできる最初の機会である。.

マーサ会長は自分の作戦はイラクへの動員を制限するだけでなく、大統領の外交、国内警備政策をことごとく邪魔することにあると説明した。

しかし専門家の間ではこのような議案は下院すらも通らないだろうという見解だ。この議案は一見アメリカ兵に無理な出動をさせないという思いやりがあるようにもとれるが、実際にマーサ議員が裏口から増派阻止を行おうとしていることは一目瞭然であり、アメリカ市民はこのような卑怯な手段には騙されないであろう。
フォックスニュースの解説者はこの議決案は民主党にとって非常にまずい動きだと解説していた。その理由は:

  • 増派に反対している人でも、一旦出動している軍隊に必要な資金を断ち切るという考えには非常な抵抗がある。
  • このような行為は民主党は国防に弱いという先入観を強化することにつながり、民主党は戦争を嫌うあまり、勝利よりも敗北を望むと思われる。
  • そこまで思わないひとでも、議会が出動する軍隊の規模や場所まで規定するのは行き過ぎだと考えるだろう。
  • 2007年の予算は9月分まで充当されており、議会は早くても10月までは戦費を差しとめることはできない。
  • しかし10月までには民主党が最も恐れているブッシュの新作戦の成功があきらかになり反戦のメディアでも隠しきれなくなっている、という可能性がある。

つまりマーサの作戦は失敗が目に見えているということだ。であるから下院の民主党議員ですらこの議決案には投票しないであろう。また、金曜日に増派反対の議決案が下院を通ったとはいえ、当初予測されていた共和党議員による大幅な寝返りは見られなかった。この議決案には拘束力はないが下院議員のイラク戦争に対する意見が反映する。共和党議員が多数投票していたならば、戦費差し止めの議決案を検討する意味もあったが、たった17人の寝返りでは共和党は民主党が期待したほど戦争反対の意識はないということになり、戦費差し止めの議決案が通る見込みはまずない。
それでも民主党が戦費差し止め議案を提案するならば、国民には共和党は必死にイラク戦争に勝とうと努力しているのに、民主党は自分らの勢力を強めるために、なんとかしてイラク戦争に負けようとしているという印象を与えてしまうだろう。
アップデート: 上院議会イラク議決案を否決
わざわざ土曜日に出頭してきた上院だが、昨日下院で通ったイラク増派反対の議決案は上院で否決された。賛成56、反対34、可決に必要な60票には満たなかった。
「軍隊への支持に関する投票で戦費について沈黙しているのは両方の道をとろうとする試みだ。」とケンタッキー代表で共和党リーダーのミッチ・マコーネル氏は語った。「だから我々はもっと正直な公の討論をしようと要求しているのだ。」
民主党は戦費差し止め案をあからさまにだして国民から軍隊を支持していないと思われるのは嫌だが、反戦派にいい顔を見せたいので増派には反対だという拘束力のない意思表示だけをしておこうという魂胆である。マコーネル議員が抗議しているのは、戦争に反対なら反対で戦費差し止め執行を提案するぐらいの根性をみせろ、双方で良い顔をしようなどとは卑怯だ。正直に討論しろと要求しているわけだ。


2 responses to なんとしてもイラク戦争に負けたい米民主党

アラメイン伯17 years ago

ナンシー・ペロシはチベット問題等で中国には厳しいと聞いてましたので評価してたのですが、こんなこと言うようではね。
アメリカがひけばイラクがチベットのようになると彼女は解らないのでしょうか?

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In the Strawberry Field17 years ago

イラク増派阻止議案で大失敗、マーサ議員赤恥を掻く

下院でイラク増派反対という拘束力はないが抗議としては意味のある決議案を通すことが出来民主党は気を良くしていた。この議決が上院でも通り国民の支持を得られれば、それを踏み台にこの次はいよいよ拘束力のあるイラク戦費停止議案も通せるかもしれないと意欲を燃やしていた。 しかし翌日の上院議会では可決に必要な賛成票を60票を集めることができず採決にすらもちこめずに議案は果てた。上院議会で可決できなかったことだけでなく民主党にはもうひとつ問題が生じた。 下院議会が反増派議案を通す直前、海兵隊出身で退役軍人としても申…

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