カカシが寝泊りする寝室は団体部屋で、普通のリビングルームほどの広さに30人からの若い女の子達がひしめいている。 ベッドは三段ベッドが10台あるわけだが、天井は低いからベッドに座って起き上がったら頭をぶつける!ベッドには、はいつくばって出入りするしかない。 ベッドの丈は約180センチ、それより背が高いひとは足を折って寝るはめになる。 (カカシは背が低くて助かった)幅も狭いから二段目や三段目に寝る場合には寝返りをうつと落ちてしまうので要注意。 大抵の人たちは三段目を嫌うので、私のような常備の乗組員でない人間がいくと、必ず三段目があてがわれる。 足の短い私が寝ぼけ眼でベッドを上ったり降りたりするのはかなりたいへん。 (背が低いのがここでは災い)
この三十人部屋にあるトイレは二つ、シャワーはひとつ! この狭い部屋にこれだけの人数が一緒に寝泊りしていると嫌がおうでも気がつくのが臭い。 女の子達は清潔なので、トイレや部屋の掃除は毎日しているけれど、大勢いれば体臭は避けられない。 そこで女の子達は部屋のあちこちに置かれている花の香りの脱臭剤スプレーをしょっちゅうかけるので、これがまた個人の香水だの化粧水だのの臭いとまざってものすごい。 三段目のベッドにいると天井に上ってくるこのガスの臭いで息がつまる。 それでなくても私は鼻が利くほうなので。 私が犬だったら気が狂っているところだ。
船の中は色々な音がする。 エンジンの音や波の音、その他色々な機械類の音は慣れてしまうと結構子守唄のようで心地よい。 ただ気になるのはそれぞれの乗組員ガ使っている何百万という目覚まし時計の音! 乗組員はそれぞれ皆違う時間帯で仕事をしているため、みな起きる時間が別々なのである。 それで真夜中を過ぎると朝6時まで毎時間どこかでビービーという音がする。それぞれの時計は少しづつずれてるから数分に渡ってあちこちからビービー、ジージー、りんりん、とベルが鳴り響く。 なかにはアラームがなってもすぐ起きない人がいて何分もベルがなりつづけるので、「さっさとおきなさい!」と心の中で叫んでいるカカシ。
そしてもちろん6時になれば、起床の笛がスピーカーを通じて「ぴーひゃらら~!」と鳴り響く。 私は船に乗ってる間自分の時計の目覚ましなどつかったことがない。 これだけ周りにビービーいってちゃ、どれが自分の目覚ましなんだかわからなくなる。 セットするだけ無駄である。 自慢じゃないがこれでも私は寝坊は一度もしたことがない。
団体生活で一番苦痛と思われるのがプライバシーの欠如。 人によってはこれが全くだめらしいが、私はこれが全くきにならない。 同じ時間に10人以上の人間がトイレに行きシャワーを浴び歯を磨いているような生活で、プライバシーなど気にしていては生きていけない。 女の子といえどもゲップもすればおならもする。そんなこと気にして余裕はない。 もっとも私は船にのってる間はなるべく豆類は避けたけどね。
棺おけベッドとあだ名される我々のベッドにも、一応カーテンはついているので、ベッドに寝そべってヘッドフォンをつけて閉じこもり、わずかなプライバシーを守る人もいるが、私はイスに座って本を読んでるだけで充分幸せ。 前回の航海ではダビンチコードを読んでしまったし、今回の航海ではトム・クランシーの分厚い二部作をすでに半分読んでしまった。
だからまあ航海も完全に無駄というわけではないのよね。


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