どこの国も差し置いて、日本がいち早く北朝鮮に経済制裁を強行したという記事を読んで、これまでずいぶん優柔不断だった日本もついに決断したかと安心した。経済制裁がどれだけ北朝鮮に効き目があるのかはまだ分からないが、少なくとも日本が音頭を取って北朝鮮制裁に踏み切ったことは歓迎すべきだろう。
国連も安保理で制裁決議がでたようだ。

北制裁決議最終案で合意、安保理で採択へ

ニューヨーク=白川義和】米国は13日午前(日本時間同日夜)の国連安全保障理事会非公式協議で、北朝鮮の核実験実施発表に対する制裁決議案を提出、安保理は14日午前(日本時間同日夜)に決議案を採決に付すことで合意した。
各理事国は基本的に決議案支持を表明し、北朝鮮に対する初の制裁決議が採択されることになった…
ボルトン米国連大使は、記者団に対し、決議案に船舶検査が盛り込まれたことについて、米国が主導する大量破壊兵器拡散阻止構想(PSI)が「(安保理決議で)成文化された」との認識を表明。北朝鮮への圧力強化で大きな進展になると強調した。これに対し、中国の王光亜国連大使は、中国としては米国が主張する「国際版PSI」との概念は支持できず、参加できないとの考えを明言した。
(2006年10月14日1時59分 読売新聞)

ブッシュ大統領もカカシのアドバイスは完全無視して北朝鮮に武力行使はあり得ないと言い切ってしまったし、国連は日本を見習って経済制裁で北朝鮮に対処しようという意図らしい。ま、いまのところは仕方ないだろう。
ところで、アメリカ大使館にコネのある木走日記のまさみずさんが、面白いインタビューを掲載しているのでちょっと紹介。
木走さんのコネのアメリカ大使館のスティーブさんは、北朝鮮の今回の実験は失敗かもしれないが、偽装ではないだろうと語る。そして近日中に北朝鮮は核実験を繰り返すだろうと語っている。

木「つまり、ここまでリスクの高い賭けに出ている北朝鮮からすれば、核実験を偽装する必然性は何もないということだね。」
ス「そういうことだ。あともう一つの理由は、アメリカ大使館側では、北朝鮮がかなりの高い確率で近日中に2回目、もしかしたらそれ以上の回数の実験まで行うであろうと危惧していること。続けて行うのだとしたら偽装する意味はないでしょ」
木「え? 高い確率で近日中に核実験を繰り返すと予測しているの? その予測の根拠は?」
ス「根拠というよりも常識だよ。パキスタンやインドの核実験の例を持ち出すまでもなく、1回の核実験だけで技術的に成功を収めることはあり得ないからだ。通常は複数回繰り返すことにより精度の高いデータも蓄積できるし、技術的課題も改良したりしながらはじめてクリアできる。あと、衛星写真からのやつらの動きや中国政府筋の北朝鮮情報などを総合して分析して、核実験を再度彼らが行うことはほぼ間違いないだろうとふんでいるんだ」

ふむ、北朝鮮がまた実験をやった場合は国連はどう対処するつもりなのだろう。ここ数日中に決めなければならないことだ。
ところで、スティーブさんは中国の反応について今後中国は北朝鮮への方針を大幅にかえる用意があるかもしれないと語る。

ス「我々の入手している情報によれば、正式な決定ではないが、現在、中国政府内で極秘裏に大きな外交政策の転換が図られている可能性があるとのことだ。詳細は不明だがそれは北朝鮮の将来に関わる重大な内容を含んでいるはずで、もしその政策転換が決定すれば、もしかしたら中国政府として金正日体制との決別を意味する明示的な行動が近いウチに示される可能性ですら、ゼロではないようだ」
木「中国政府として金正日体制との決別を意味する明示的な行動とは具体的には何を指すの?」
ス「もちろん軍事的行動では絶対ないと思うし、その真意とは裏腹に、外交的配慮がなされたゆるやかな表現に加工されるだろう。が、私たちの現在得ている情報はそこまで。今後の中国と北朝鮮の関係は極めて流動的だが、アメリカ政府としては、現在中国政府との北朝鮮に関する情報交換はかつてない良好な関係で推移している。大使館としても冷静に情報収集しながらその関係の推移を見守っているところだ」

さてコメンターのsouさんがいくつか面白い記事を紹介してくれているが、そのなかでもワシントンポストに載ったチャールズ・クラウスハンマー氏の論文は面白い。(What Will Stop North Korea、By Charles Krauthammer The Washington Post、訳:喜多龍之介さん)

『我が国の政策は、西半球のあらゆる国に対してキューバから発射されたあらゆる核ミサイルを、アメリカ合衆国に対するソビエト連邦による攻撃だとみなし、ソ連に対する全面報復を要請するものである。ー ジョン・F・ケネディ大統領、1962年10月22日』
おお、これこそ抑止力。
キューバからどんな核が発射されようが、アメリカはキューバなんぞ目もくれず、さっさと報復に突っ込んで、大規模な核攻撃でロシアをアポカリプスに突き落とす。ケネディはそう誓っていた。

これを見習ってブッシュ大統領は北朝鮮へも同じような警告をすべきだとクラウスハンマー氏は言う。

これほど無鉄砲に核の義務に違反する核保有国家は他に一切存在しない、という事実を考慮し、アメリカ合衆国、もしくはその同盟国における核爆発物のあらゆる起爆は、北朝鮮によるアメリカ合衆国への攻撃としてみなし、北朝鮮に対する全面報復を要請する事を、我が国家の方針とする。
これこそ金正日が拡散しちゃうのを留める方法じゃん?
自分のサバイバルは、自分が兵器を売ったテロ・グループの行動の人質だ、って奴に理解させるんだよ…
とはいえ、この政策も問題はあるんだな。これはね、一個しか、核保有ならず者国家がない世界でだけ、機能するんだよね。一旦クラブが2個に膨張しちゃえば、この政策はおしまい。だって、核テロ攻撃専用自動お返事先がなくなっちゃうんだから。
これなんだよ、イランが核保有国にならないようにする事が凄く重要な理由ってんは。北朝鮮が後戻りなんざしない。でもイランは未だそこに辿り着いちゃいないんだ。ならず者国家が1個ならなんとかなる。責任はこいつにある、って言えるんだから。でもならず者国家が2個だと、抑止不可は保証付き。
従って、核テロも不可避って事。

経済制裁にしろ、こうした警告にしろ、うまくいかなかった場合にはどうするかという覚悟は必要。本当に北朝鮮んが近日中に実験を繰り返すのだとしたら、アメリカを初め、中国、韓国、日本、ロシアはかなり真剣に対応策を練っておく必要がある。


1 response to すばやい日本の北朝鮮経済制裁

asean17 years ago

こんにちは、カカシさん
米同盟国への如何なる云々かんぬんは米国への攻撃(?)とみなして同種の報復を行う・・・
ですからね、最初に書いたでしょ!
やるなら2,300万人丸ごとDPRKを地図上から消滅させてしまえばいいんですよ、腹くくってね米国は・・・
でもこの理屈は米国だけが採用出来るモノであって、DPRK周辺国は同じように採用出来る話じゃない。
DPRKの目的はイランのような地域覇権主義で核武装しようというものではないですよ。
単に、キムジョンイル体制を維持したいだけで「オイラ、核兵器持っちゃったもんねぇ!苛めると爆発させちゃうぞぉ!」
ってなだけの話じゃないですか?
(テログループに開発した核爆弾をバーゲンする・・・ってのもなぁ~、実績の無い兵器を核だってだけで購入する程テログループが間抜けだったらあり得なくもないですが・・・)
現状の国際社会(先進国)が持っている道徳律からすると、独裁体制の最貧国と言えども主権国家をその国民丸ごと含めて地図上から抹消するなんてモノは持っていない。
つまり、そんな阿呆なことは出来ないしやる気も無い、ってことですよ。
それでは後のオプションは(軍事力を使用するなら)限定攻撃か経済封鎖・・・
(中国も協力しないと駄目ですが)
この方法は何度も書いたように「中途半端な形で体制崩壊」する可能性が高い、つまりDPRKは破綻国家になる。
キムジョンイルが暴走するかも知れないから抑止力としての核武装・・・は何度も言いますが
現実的ではないんですよ・・・日本は金持ちだから維持費に糸目は付けない?っと言うなら別ですけどね
(独自開発した抑止核兵器の実験を何処でするのか?ってのもありますけど・・・崩壊したDPRKの跡地利用なんてこともあるかな?爆笑)
核ミサイルの発射基地を先制攻撃出来る程度の抑止力・・まぁ、日米同盟だからと言ってですね
戦術核を米国が貸与してくれる訳もないですから・・・結局は自主開発せざるえない。
(FSXさえ自主開発を許可しなかたっし、イージスにしても揉めに揉めた)
同じでしょ?確実に使用可能な兵器としての確証が得られないままで国産迎撃、限定先制攻撃用戦術核ミサイルの配備なんてのは今のDPRKの地下核実験に成功した!のと
抑止力なり国防軍事力なりを全面否定する程ナイーブじゃないですけどね問題なのは
日本にとって(価値観を共有可能なDPRK周辺諸国にとって、でも)DPRKがどういう姿であることが自国とアジアの安全保障上Betterなのか?
っという議論が行われないで、条約やら協定やらを守らないのはアッチなんだから脅威だ!ってな話は
DPRK側にしたら生き残りだけが目的なのですから余計なお世話でしかないからそんなモノは守る気などない。
大体、DPRKが崩壊した後にその抑止力とやらはどうする気なのか?ですよ・・・
対テロの抑止・・・なんてのは詭弁でしかない、大体大方のテロは相手国の国内で起こすんですから
戦術核なんてのは無用の長物でしかなくなる。
(テロリストが意志強固で自爆型テロを実施した場合、阻止する手段は現段階では存在しないのも事実です)
強攻策一本槍の外交なんてのは時代遅れどころの話じゃない。
(大体が日本外交は交渉外交や対外工作一つまともに出来ないのが現状ですよ、知っているだけとそれを有効に利用出来るは全く次元が違うんですよ)
外交交渉と対外工作にかけては日本は世界屈指だ!てな評価があって抑止力もと言うなら話は違ってきますけどね・・・
新内閣が強硬姿勢を採用してもそれは何も問題はないんですよ、現実主義的な右派政権の方が外交はどちらも対応しやすい(理想主義の左派リベラル政権が最も信用出来ない)
国論、世論のコンセンサスなしで軍備増強が出来るなら日本はそれこそとうの昔にやってるはずですよ。
総合的な情勢判断がないままに抑止力的な軍備増強論はそれこそ大きな勘違い。
取りうるオプションがDPRKの抹消ではないのなら、相当な覚悟をしもって対応策を実施しないとならないのは事実でしょうね。

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