多様文化(multiculturism)という不思議な概念がある。これはどの文化も同じように価値があり、同じように受け入れられなければならないという考え方だ。私は昔からこの考え方には非常な疑問があった。なぜならば、もし多様文化のひとつに異文化を絶対に受け入れない、異文化を排斥すべきだという異文化排斥主義が存在したばあい、それを受け入れれば多様文化主義はすぐさま異文化排斥主義と化すからである。不許容を許容すれば不許容が支配するということだ。
具体的にいったいこれはどういう意味を持つのか考えてみよう。民主主義社会の基本は多数決でものが決まる。だが民主的な決議だからといって、常に正当な決断が下されるとは限らない。ここに民主主義のジレンマが存在する。もし次の選挙に立候補している政党が共産主義で、自分らが与党となった場合は現在ある民主主義制度を廃止、今後は党のメンバーだけで国の方針を決めていくと公約していたとしよう。彼等の選挙運動は資金もあり国民からの人気もあって、共産主義独裁政党が多数議席をおさめたとする。現政権は民主的に正当に選ばれたこの政党に政権をおとなしく譲り渡すべきであろうか?
ここで現政権が共産主義独裁政党に政権を譲りわたしたりするのは愚の骨頂である。なぜならば、その時点でこの国は民主主義と永遠におさらばすることになるからだ。
このたびのオランダの大臣が、もし国の2/3がイスラム回教徒の宗教法であるシャリアを望んだら、オランダ政府はシャリアを受け入れるべきだと発言したことはオランダ市民の間に大きな波紋をよんでいる。
この心配な発言をしたのはオランダのキリスト教民主党(CDA)の議員、ピエット·ヘイン·ドナー(Piet Hein Donner)大臣で、イスラム教の教えもプロテスタントやカトリックと同じように民主政治において受け入れられるべきだと語った。

氏はさらに「イスラム集団がオランダによいて民主的な過程を経て、勢力を握る可能性は多いにあり得る。彼等が法律に従ってさえいれば、法律を変える必要はないと誰でも考えるはずだ。」とか立った。
「私が確信することは、もし三分のニのオランダ人が明日、シャリアを取り入れたいと望むならば、この可能性は存在するということです。この合法を阻止しますか? これが許されないなどとなったらスキャンダルです。」
「多数決が、民主主義の基本です。」

だが多数派が少数派の人権を守るのも民主主義社会の責任のはずだ。 三分のニのイスラム教市民が今後キリスト教やユダヤ教は違法にすると投票したら、民主主義の過程を踏んだ合法な決議だから受け入れてもいいというのであろうか?
この発言はCDAの党首で、すでにイスラム教徒が過半数を占めている地域でのシャリア法取り入れを懸念しているマキシム·バーゲン氏(Maxime Verhagen)の意見と真っ向から反するものである。バーゲン議員はすぐにドナー氏に質問状を送った。また自由党の議員で右翼のガート·ワイルダース(Geert Wilders)や、労働党の議員らからの批判の声が殺到している。
最近オランダでは他のヨーロッパ諸国と同じように、イスラム移民による暴力行為などが頻発し、市民の安全を脅かす事件が多くおきているため、ドナー議員はイスラム系市民をなだめようとしているのかもしれないが、このような発言はかえってイスラム系市民に対する反感を増発する。イスラム教徒が多数を占めた場合その地域がシャリアによっておさめられるなどということになったら、オランダ市民の自然な反応はどのようなものになるか誰が考えても明白なはずだ。
民主主義を尊ぶ市民なら自分たちのすむ地域においてイスラム教徒の人口が増えないように、イスラム教徒が近所に引っ越してくるのをなんとしてでも阻止するようになるだろう。そして今後一切オランダへのイスラム教徒の移民は廃止すべきだと唱えるようになり、現在オランダで違法に暮らしているイスラム教徒は即刻国外追放し、合法就労者も任期が切れ次第帰国を強制。合法移民でまだ市民になっていない移民でも、イスラム教徒には市民権を与えないなど、かえってイスラム教徒への迫害が激しくなり、イスラム教徒はオランダ社会でさらに孤立するのがおちである。
イスラム教移民がオランダにいるということ事態は問題ではない。もし彼等がオランダの文化を取り入れ、オランダの法律を尊重し、次の世代にはイスラム系の「オランダ人」として融合するのであれば、協会のかわりにモスクへ通い、復活祭のかわりにラマダンを祝おうとかまわない。だが、移民である彼等が彼等の文化や法律をホストカントリーであるオランダに強制する時、オランダ人は足を踏んばって拒絶せねばならない。
民主主義は国家心中の道具であってはならない。


4 responses to 「民主主義とシャリアは両立する」オランダ大臣の心配な宣言

ななっち18 years ago

今の国連が抱えている問題ですよね。イスラエル非難決議も提案国みたらイスラム系の国が持ちまわりでやっていることがすぐわかりますし、数で押し上げようという感じなんでしょう。
ドイツでもイスラム教の祝日を公共の祝日にとかいろいろありますが・・・
現状ではスイスは永住権獲得のためにはあらゆるチェックに加えて「地域住民の住民投票」実施と大変厳しいものになっていますが、スイス人の言い分を聞いていると、イスラム教徒以外になら永住権を与えてもいい、これはイスラム教徒を締め出すためなんだ、という人多いです。 なぜそんなにイスラム教徒に恐怖を感じるのかと質問すると返って来る答えは、「マナーの悪さ」、「公共性のなさ(暴力やバンダリズム)」への怒り(要するに社会に溶け込もうという意思を感じないということでしょう)、そして「スイスはいずれイスラムの国になる」というイスラム教徒側からの意思表示への恐怖で・・という感じでしょう。 
ではこうした行為をするイスラム教徒が全員テロリストかというとそうではなくて、彼らは母国で振舞っているように振舞っているだけなんですよね。それがヨーロッパでは許されないことがわからない。
彼らは民主主義における「権利」は理解できるけど「義務」や前提となる「寛容さ」というのはまったく理解できない。
もちろん穏やかで普通の人もいますが、やはり目立つのは声が大きく野蛮な行為をする人間のほうです。
ぶっちゃけいうと「イスラムの国」に対して「あら、ステキ、私たちもああいう国になるといいわよね」という感情がわかないんでしょうね。 イスラムの国になったら自分は・・確実に殺されるだろうなぁ(笑)
イギリスでもシャリーアの導入を求めるイスラム側に対してイギリス人が、「婚前交渉した女性を土に生き埋めにして石を投げて殺すようなことは人間としてできない!」と感情的に切り返すのを何回かみています。
日本はずいぶんと、イスラム系のテロ組織にいたるまで、そちら側に同情的ですが、実際ヨーロッパではもう、「ロンドニスタン」ではありませんが、こうした「シャリーア導入」要求は陰に隠れた社会問題だと思います。将来、ヨーロッパに「そんなにハマスやヒズボラに同情的なら、この人たちは穏健派だから大丈夫」とイスラム系の移民を押し付けられたらどうするんでしょうね? 数が多数になれば当然「シャリーア導入」要求は日本でも出てくるでしょうに。
故アラファトの子宮爆弾、ではありませんが・・・

ReplyEdit
asean18 years ago

この大臣は何か大きな勘違いをしてるんじゃないかなぁ?
それでなかったら、敢えて世論を喚起する為の発言だったのか?
まぁ~いずれにせよ、欧米のリベラルにありがちな「困ったちゃん発言」であることは間違いないですけどね・・・
因みに、カカシさんもご存知のように、イスラムが欧米で多数派になった日にゃぁ~それこそ
日光浴も海水浴も出来なくなりますし(特に女性がね、笑)タンクトップもショートパンツも駄目
街中の高級下着店なんかはいの一番に背教的だ!っと破壊の対象になってしまう・・・
離婚はもちろん駄目で、結婚も本人の意思とは無関係に、テラスハウスを購入するのに現金が足りないから娘を付けましょう!ってな話になる・・・・
(真っ先に正当な粛清をななっちさんが受けるか?は分かりませんが・・スイマセン)
問題はですね、イスラム系の移民を受け入れる際に、厳格な審査(試験)をすることと同時に
いわゆる自由民主的な教育と宗教を分離することに同意する的な誓約書をとることに加えて
(まぁ、これだけでも背教的な行為なんですが)いわゆるチャンスの公平性を民間レベルからでも徹底するしかないんですけどね・・・
特にチャンスの公平性に関しては政府レベル以上に民間レベルで重要になるんですよ。
イスラム教徒が多い地域の人達が元々持っている民族性(宗教よりも実はコッチが強力なんでイスラムが入って来たんですけどね)からすると、有効な手段なんですが・・・

ReplyEdit
ななっち18 years ago

aseanさん
>(真っ先に正当な粛清をななっちさんが受けるか?は分かりませんが・・スイマセン)
半分冗談でしたが・・スイマセン(笑) まぁ自分の家族関係を考えた場合そうなってもおかしくはないなぁと言う感じです。
イギリスでは、市民権取得の際に「イギリス国家に忠誠を誓う」という一節ですら、イスラム教徒から「忠誠を誓うのは神のみであるから、これはイスラム差別だ」という騒ぎになっていました。
イスラムは離婚はOKですよ。結婚する際に、マハルという結納金(この高騰でアラブ諸国ではマハルを女性の家に払えず結婚できない男性の存在が社会問題になっている)のほかに、離婚時の女性への慰謝料が結婚当時に払われるはずです。
イギリスでもこのイスラムスタイル(離婚時の財産分与を結婚時に決める)を取り入れる非イスラム教徒のカップルがずいぶん増えています。
実際のところ一番シャリーアを厳格に国の法律としているサウジ人に聞いてみてもかなりの不倫・愛人社会みたいですね。 
聞いていてもこれだけ厳しい刑罰が待っているのになぜこんな簡単な理由で簡単に不倫に突入しているという感じで、これはおそらくあまりにも男女の接触がないために、感謝の気持ちと恋愛の気持ちがごっちゃになっているのかなぁと思いました。よほどのことがない限り、ばれたら一時的にお金をかき集めて結婚させてほとぼりが冷めたころ離婚するというのが普通だそうですが、中にはどうしようもなく斬首となるケースもあるみたいです。
今のところ(集団としてのイスラム)とヨーロッパの問題というと、シャリーアもそうですが、イスラム側に「他の宗教との共存」の意思がなく、「ヨーロピアンはイスラムに改宗するべき」という信念が強すぎることでしょうね。

ReplyEdit
asean18 years ago

ななっちさん、おはようございます。
申し訳ありませんでした、ちょっと時間がなかったので大雑把過ぎました・・・
>離婚
は確かに可能ではあります、ありますが・・・仰るように「結婚、離婚」が可能な環境にいる人間には可能ではある。
・・・というのが正確でしたね、はい。
(アフガンの現状をイメージしてたので・・・)
例えば、アフガンではタリバンが認めた(夫との死別による)女性側からの離婚、他者との再婚が、タリバン政権が崩壊したお陰で再婚した女性の所へ前夫の親戚が現れて
前夫の兄弟と結婚しろ!しなければ、正当な粛清を与える、っとなって、殺害された女性の数は女性保護局が保護出来た数の数百倍になるのではないか?っと当局自身が認めていたりもしますで・・・
>不倫、愛人社会
まぁ~これも、雑な言い方をすると「男性が無類の女好き(笑)」ってのもありますが
不倫、愛人関係を持てる環境にいる人間ということに限られる・・
それよりは「DV」が簡単に多発する環境であることが問題ですね。
マレーシアでもそうですが、DV(子供、大人、配偶者に対する性的虐待)の問題は「家庭内」であることを理由に
厚生省が把握出来ているのはせいぜい数%だろう・・と理解されている。
他の記事の話もそうなんですが、金銭的に余裕のある階層と余裕のない階層とでは(上位層、下位層)明らかにイスラム法の適用のされ方が違う訳です。
(それぞれの階層に於ける自由・平等・慣用ということでもある訳ですが)
>共存の意思
は元々無い、っと言うか、下位層の人間からすると、イスラム以外は知らない訳でして・・・
>改宗すべき~という信念
を持っているのは、いわゆる上位層に属する弁が立つヤツらに限った話なんですが
そういうのに限って「声がデカイ上に金持ってる」ので、簡単に扇動者になれてしまう・・・
ですんで、過激な宗教教義を説く宗教指導者は国外追放にする、ってな英国の方針はまんざら間違っている訳ではない。
サウジは・・・まぁ~何と言うか(僕は基本的に、サウジの人間が言う話は半値八掛けでも未だ危ない・・・っと思ってますが。。。)
因みにサウジ、クェート等で英国等へ海外留学する人間の大半がいわゆる「体の良い国外追放処置」だと思っていますんですけどね・・(はは)

ReplyEdit

Leave a Reply to ななっち Cancel reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *