私はイスラエルとヒズボラの停戦が決まった時から、主流メディアやアメリカ保守派がいっているような、ヒズボラの勝利など信じていなかった。先日もヒズボラが拉致誤算を認める理由でも

どうも勝ったといわれる勢力のリーダーがいうような声明ではない…我々の聞く報道はともかく、地元レバノン市民の間からはシーア派も含めてヒズボラへの批判が案外高まっているのではないだろうか…
ナスララが国連軍に抵抗しないといってみたり、挑発されなければ自分達からイスラエルを攻めることはないとわざわざ公約しているところをみると、今回のイスラエルとの戦争は決してレバノン人の間でも人気があったわけではなさそうだ…
イスラム教のジハーディストの語彙に「抑制」などという言葉があったとは初耳だ。もちろん私はナスララの公約など花から信じているわけではない。だが不本意でもこのような声明を公表しなければならない状況にナスララが置かれているのだということには深い意味があると考える。

と書いたが、今日になって政治評論家のチャールズ·クラウトハンマー氏がワシントンポストに同じようなことを書いている。(訳:kitaryunosukeさん)

2週間も経たない前にナスララが宣言した「戦略的歴史的大勝利」なんぞこんなものだ。知っていたら大勝利に終わる戦争なぞ始めなかった、と宣言するなど、どんな真の勝者だ。

西側では恐ろしく抑えられているナスララの告白は、レバノン人が既に知っている事を明らかにしている。ヒズボラはプロパガンダ戦争に勝ったかも知れないが、闘いでは負けた。惨敗した…
ヒズボラは重傷だ。数百人の優秀な戦闘員を失った。イスラエル国境の深くに築いたインフラは破壊された。偉大な英雄は余りにも深く身を隠していたので、ナスララは「地下ムラー」と呼ばれている。
最も重要な事に、戦争の間にレバノン内でのヒズボラの政治的メリットは幻想だと証明された。事態が沈静化するにつれレバノン人は、破滅以外の何物をももたらさなかった戦争を引き起こし…後になって瓦礫の中で勝利を自慢して歩くヒズボラに対して怒り狂っている。

ナスララ氏のいいわけがましい声明について、アセアンさんがこんなことを書いていた。

ナスララの発言ですが・・・いわゆるレバノン南部での非戦闘員(一般住民)向けに加えて、レバノン政府(シニオラ)及び周辺アラブ諸国向けのモノであることは明らかですね。

クラウトハンマー氏もアセアンさんと同意見だ。

西側メディアはまたもや「アラブ・ストリート」の神秘に引きずり込まれている。イスラエルにロケット弾を雨霰と降らせたヒズボラに歓声を上げて群衆が出てくる(仰天!)。そして当初はヒズボラを批判していたアラブ諸国の政府は都合良くもダンマリ。今、この群衆はオウチに帰り、ヒズボラは改めて攻撃の下にさらされている…サウジアラビア、クウェート、エジプトの新聞で。影響力の強いシーア派学者や部族のリーダー達を含む、多くのレバノン人にも同様に。アラブ人は自分の利益がどこに転がっているか知っている。そして、彼等はイランの為に闘うような、シーア派武装組織と懇ろになったりはしないのだ。

ヒズボラは紛争前にかなりレバノン内部で顰蹙を買っており、武装解除の圧力が高まっていた。イスラエル兵を数人殺して二人を拉致した行為も、イスラエル兵とイスラエルに拘留されているレバノン人を交換できれば、ヒズボラのレバノン内部の人気が高まるとの計算だったのかもしれない。むろんこれはナスララも認めるとおり大誤算だったわけだ。
またヒズボラがイランの先行特別部隊であることは周知の事実であり、アラブ諸国がレバノンをイランの傘下にすることを望んでいるわけがない。それでなくてもアラブ人ではないペルシャ人にイスラム教徒の代表のように威張られることをアラブ諸国はいまいましく感じているし、イランの核武装にもすくなからぬ脅威をだいている。
という状況だから、クラウトハンマー氏は第2ラウンドは起きないだろうという。

だからこそ、予測されている第2ラウンドは実は起こらないのだ。ヒズボラは軍事的にも政治的にも、次のラウンドを闘えるような状態ではない。あの戦争が過ちであった、というナスララの告白は、繰り返さないという明確な誓約である。
レバノン人は、次は、イスラエルの指導者が躊躇も自制もほとんどしないだろう、と知っている。
ヒズボラは次という危険を冒す勇気はないだろう。

クラウトハンマー氏の間違いは第2ラウンドがヒズボラのほうからでしか始まらないと決めつけていることだ。確かにこれまでイスラエルは挑発されなければ攻撃しないという姿勢を貫き通してきた。だからヒズボラがイスラエルを攻めさえしなければイスラエルからの総攻撃はあり得ないと思い込むのも無理はない。だが、今回の紛争でイスラエル内部の政治は一変したのである。
オルメルト首相はその決断力と行動力のなさでさんざんイスラエル軍からもイスラエル市民からも批難されている。もし彼が信任投票を許せばオルメルト内閣は解散せざる終えなくなる。ということはオルメルト首相は停戦条約を最後の一字一句まで相手が守らない限り、イスラエルは絶対に引かないという立場をはっきりイスラエル市民んに見せる必要があるのだ。
屈辱的な停戦条約を飲んで、ヒズボラは武装解除できない、人質は帰ってこないでは、オルメルトの面目はまるつぶれである。オルメルトが国連事務総長のコフィアナンが何をいおうと一歩も引かない理由はここにある。
この間も書いた通り、ヒズボラが武装解除をするなどということはあり得ない。人質だってかえってこないだろう。そして国連軍がイスラエルとの国境を守るなんてのは冗談に等しい。ということは、第2ラウンドはイスラエルの手によってはじめられると考えた方がいい。オルメルト首相が首相の座を守りたいのであれば彼にはほかに手段がないからである。
第2ラウンドは必ずおきる。それが来週か来年かは分からないが、一年のうちには決着がつくものを私は予測する。
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