ことイスラエル関係の記事になると、どうしても反イスラエルの世論ばかりが取りざたされる世界の主流メディアだが、当事者であるアラブ諸国ではなにもかもイスラエルのせいだという考えはそれほど普通ではない。これは決してイスラム教徒らの間でユダヤ人に対する偏見が減っているとか、イスラム教徒の大半がユダヤ人の主権国家であるイスラエルが存在することを快く思っているという意味ではない。

ただ教養ある人々の目には、自分らの政治家たちが自分らの不能で国内政治をきちんと営めず国内からの批判がたかまると、イスラエルを持ち出してごまかそうとする行為が丸見えなのである。

パレスチナではガザからイスラエル入植者が撤去することでパレスチナは初めて自治をする機会を持った。ここでパレスチナ市民たちはイスラエルに妨害されずに平和にすむことができたはずなのに、彼等のしたことといったら不能なハマスを政権にえらび、せっかく出ていってくれたイスラエルに何千ものロケット弾をうち続け、あげくのはてにイスラエル兵を拉致してイスラエル軍を呼び戻してしまうというばかさ加減。いい加減近隣諸国のイスラム教徒らもこのハマスの愚行にはあきれている。(kokunan_jerusalem678さん紹介)

サウジのコラムニスト アル・スウェィダン(Yusuf Nasir Al-Suweidan)はクウェート紙Al-Siyassaに「ケレム・シャロム分岐点の犯罪」と題する論評を寄稿した。これは、2006年6月25日ハマスがこの分岐点(検問所付近)を攻撃し、イスラエル兵ギラッド・シャリット伍長を拉致した事件である。筆者は、この犯罪行為でパレスチナ独立の夢はまた遠のいた、パレスチナ人は銃をおき、エネルギーをパレスチナ社会の建設に注ぐべきである、と論じた。

アル・スウェィダン氏はハマスによるイスラエル兵殺しと拉致は国際法に違反する犯罪であるとし、この行為はかえってパレスチナ庶民の身に危機を及ぼし、せっかく解決しかけていたイスラエル/パレスチナ問題が振り出しにもどってしまったという。ハマスはこの事件で自分らが大勝利を得たなどと騒いでいるが圧倒的に優勢なイスラエルの勢力がこの冒涜行為をみすみす羊のように黙って受け入れるはずがない、イスラエルの反撃はパレスチナ崩壊にすらつながるだろうと予測している。

イスラエルは今回のケレム・シャロム分岐点攻撃に対して、おとなしい羊の如くに振舞い、人畜無害の反応しかしないのだろうか。もしそう考えるなら、突拍子もない幻想である。この攻撃の直後、分岐点は閉鎖され、イスラエルの部隊が戦闘隊形を以てガザに入ってきた。これは昨年9月のガザ撤収以来最大の軍事行動である。イスラエルの決意は固い。三つの条件がクリアーされなければ、数時間内にガザ回廊へ侵攻するとみてよい。その条件とは、第一に拉致されたイスラエル人の釈放、第二はカッサムロケットの発射中止、そして第三が、テロ組織のインフラ潰滅である。

そしてこのガザ侵攻が実現してしまえば、すべてが振出しに戻るどころの話ではなくなってしまう。新しい現実がつくられてしまうからである。状況は振り出し地点をはるかに越えて後戻りしてしまう。追放、人口構成の変更等が話し合われ、その計画がすぐに実行に移されるかも知れぬのである。そうなれば、パレスチナ人の国家独立の夢は過去のものになってしまうだろう…。

スウェイダン氏がこのコラムを書いた時点ではイスラエルの反応はまだ激化していなかったが、氏が語るようにイスラエルの反応は常識のある人間ならだれでも予測できたはずである。氏はさらにハマスがガザでしなければならないことはテロ行為ではなくパレスチナの統治のはずだと語る。

パレスチナ諸機関がイスラエルのガザ撤収に正しく対応しなかったことに、そもそも間違いがある。剣をうち直してパレスチナ社会の建設に必要な鋤、鍬、ペンに変える必要があるのに、彼等は全く読み違えてしまった。経済開発、文化、社会の発展等が一番大切なのにである。テロ組織は、テヘランの聖職者やシリアのバース(党)政権の資金援助をうけ、それに踊らされながら、撤収をくいものにした。そして(人民は)、川から海までの全面解放といった空虚なスローガンや妄想に踊らされている。飢えて絶望的な貧しい人民が、腹のたしに全然ならぬ文句を唱えているのだ。今(人民に)必要なのは食料、医薬品、衣服その他生活の必需品なのである。自爆用の爆薬ベルトや、自動車爆弾、そして「おめでとう、おお殉教者よ、黒い瞳の処女達が君を待っているぞ」といったスローガンはいらないのだ。

むろんそんなことをハマスにできれば苦労はない。彼等には最初からそんな能力もないし意志もない。生まれた時からイスラエル憎し、ユダヤ憎しの教育しか受けていないのだ。イスラエルを攻撃しユダヤ人を殺す以外なにをして生きていけばいいのか分からないのである。そんなバカ庶民に経済開発だの文明開化だの期待するほうが酷というものだろう。

さてハマスの連中には何も期待できないとしても、いったいヒズボラはどうなっているのか? ハマスはまだこれまでの勢いというものがあるからイスラエルを攻撃し続けるというのも愚かだが理解できる。だがヒズボラとイスラエルはもうずっと戦闘状態になどない。イスラエルがレバノンから撤退して20年はたっているのではないか?いったい何が苦しくて今さらイスラエル攻撃などにおよんだのだろう。これについては次に続く。


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