この間、すでに500体の砲弾に詰め込まれたサリンとマスタードガスがイラクで発見されていたという話を共和党議員が発表した話をしたが、まだ主流メディアはそれに反論するどころか報道すらしていない。やはり完全無視の体制をとり続けるようだ。
ところで、コメンターのアセアンさんからこんな質問があった。

化学兵器・・ってな話は何時頃から、特定されたんでしたっけ? 大量破壊兵器・・・ってだけ言ってませんでした? 化学兵器に関しては、経年劣化(なんてもんじゃない、もっと短期間で劣化したと思いますし、その程度の技術力だったのは自明なんですが)・・・

アセアンさんの疑問は二つに別れる。
1)化学兵器は大量破壊兵器に含まれるのか?
2)劣化した化学兵器は危険なのか?
イラク戦争反戦派が自分らの都合のいいように規則を書き換え続けるので、アセアンさんがこんな疑問を持つのも無理はない。だが、化学兵器はれっきとした大量破壊兵器であり、化学兵器が大量破壊兵器であるという規則は第一次世界大戦の時、ヨーロッパでマスタードガスが使われた頃から国際社会で規定されたものなのである。

NBCR兵器
* N (Nuclear) – 核兵器 A(Atomic)兵器とも呼ばれる。原子爆弾、水素爆弾、中性子爆弾など。 (中略)
* B (biological) – 生物兵器 細菌兵器(細菌、ウイルス、それらを媒介する宿主生物を含む)など
* C (chemical) – 化学兵器 毒ガス、枯れ葉剤等の薬物、薬品、毒物などこれはハーグ陸戦条約にて使用が禁じられている。
以上をまとめて、NBC兵器もしくはABC兵器と呼ぶ。
* R (radiological) – 放射能兵器 (略)
以上をまとめて、NBCR兵器と呼び、大量破壊兵器という場合、通常はこれをさす。

化学兵器が大量破壊兵器のなかには含まれないという見解は、2年くらい前だったか微量の炭疽菌を含む砲弾が発見された時にイラク戦争反対派がいい始めたことであって、これは発見されたものが大量破壊兵器などと呼べるような代物ではないといって笑に伏すために、彼等が言い出した偽りである。
大量破壊兵器が何かということは国際社会できちんとした取り決めがあり、大量破壊兵器に含まれるのは、核兵器、化学兵器、生物兵器がある。2003年に行われたCIA査察団の報告書でも、カテゴリーはこの三つに別れて報告されている。今回発見された炭疽菌、マスタードガスは、れっきとした化学兵器であり、全く同一の武器で5500人のクルド人がいっぺんに殺されたことがある。その時使われたのはたった15砲弾。イラクで発見されたのはその33倍の量の500砲弾である。これは備蓄というにふさわしい数量である。
同一の化学兵器で殺されたのはクルド人だけではない。シーア派や、イラン兵も、サリンやマスタードで何万人も殺害されているという事実を忘れてはならない。
では、短期間で劣化するような科学兵器が危険なのかという疑問だが、この劣化というのがくせ者で、いったいどの程度の劣化なのかがはっきりしていない。また、発見された武器は温度や湿度の調整のされた場所に保管されていたものもあり、明らかにその性能を保つ努力がされていたことも分かっている。昨日も発見された化学兵器は一般家庭の納屋にあるような無害なものだとカリフォルニアの民主党議員がいっていたが、納屋にある殺虫剤を大量に砲弾に詰め込んで打ち込まれたとき、彼女が防御服なしてつったっていられるかどうかお聞きしたいものだ。
問題は発見された武器が今の状態で危険かどうかということではない。またフセインイラクが化学兵器の性能を保つ技術を保持していたかということでもない。重要なのはフセインイラクがそのまま放置された場合、彼が自由世界に危険を及ぼす可能性があったのかどうかということだ。
湾岸戦争が終わった段階で、国連は停戦条約のひとつとして、すでに所持している大量破壊兵器の全てを破棄し、今後も大量破壊兵器の開発を完全にあきらめることをフセインイラクに義務つけた。にもかかわらずフセインが核兵器開発を全くあきらめていなかったことはすでに発見された数々の書類や亡命者からの証言ではっきりしているし、それに加えて所持していた化学兵器を故意に国連査察団から大量に隠していたことも今回はっきりしたのである。
つまり、ブッシュ大統領がフセインが国連の条例に違反していると公言したことはすべて正しかったのである。
ではなぜブッシュ政権はこのことを大々的に発表しなかったのか? なぜ国家機密にしたまま今まで隠しておいたのか? 考えられるのは、ブッシュ政権はイラク国内にまだまだこのような生物/化学兵器が隠されていると考えている。だからその存在や発見された場所などをあまり詳細に発表してしまうと、隠されている兵器がテロリストや抵抗軍の手に渡る可能性があるという危惧があったからではないだろうか。
何にしても、ことの詳細は追って明らかになることであろう。むろんアメリカのメディアは完全無視を決め込むだろうから、この問題が闇から闇へ葬られないよう我々ブロガーが常にこの話題を取り上げる必要がある。今後もいろいろな事実があきらかになるにつれ、ここでも読者の皆様に紹介したい。
今回アセアンさんがして下さったように、みなさんからの質問をお待ちしているので、どうぞご遠慮なくコメントされたし。


3 responses to 化学兵器は立派な大量破壊兵器!

silverlining18 years ago

湾岸以前のdegradeな化学薬弾の発見の話ですが
発見されたものにいかほどの殺傷能力があるのか
ってことについての説明はないのですか?
あるのであれば、そのことについての説明も
同時に掲載した方がいいですよ。
でなければ、どうしてもこれは
価値のある話にはならないんですね。
弾頭にマスタードなどの化学薬物が付着していた
ってだけの話にしか聞こえないんですけど。
それだとフセイン政権が大量破壊兵器を新規開発していて
戦争に使用可能なWMDを保有していたって
証拠にはならなくてですね
むしろ、同政権の兵器管理の仕方が杜撰でひどくて
管理能力がなしに等しかったってだけの
話にしかならないと思うんですね。
それから、フセイン政権のですね、化学兵器の廃棄の仕方は
査察団が立ち会ってないものはかなり雑ですよ。
廃棄ってよりも、放置に近い形。
で、ちゃんと廃棄するにはそれなりに
コストもかかるんですけど
そうしたコストをかける余裕がない場合には
査察団も、そうした放置みたいな形の廃棄を
半ば容認している場合もあるんですね。
それはなんだかんだいっても
ま~、1週間もすれば組成劣化起こして
無害化するだろうって見込みがあってのことですからね。
ですので、この発見したものって
ひょっとしたら一応、廃棄のつもりで放置してあったのを
回収したにすぎないってだけかもしれないんですよね。
特段、真新しい話でもなさそうだという印象が強いので
ニュースが立たないから主要メディアはこの話には
飛び付かないでしょうね。

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asean_peace18 years ago

どうも、今一、Typekeyの調子が・・・ぅううっ、aseanっす(笑)
大量破壊兵器・・・の中に化学兵器が含まれるのは分かるんです。
問題はですね、米国がイランに先制攻撃を仕掛ける最も初めに問題にしていた大量破壊兵器ってのは
科学兵器でしたっけ?・・・ってことなんですよ。
クルド人への化学兵器使用は周知の事実ですから、持ってもいたでしょうし、製造することも当然出来た。
イラクが何処ぞやから濃縮ウランを手に入れようとしている・・・ってなそれこそガセネタを
米国政府は掴まれそうになった・・・それを英国政府は”聞いた?)知った(?)”ってな演説をブッシュ大統領が
やってしまった・・・・その真偽を正す為に奥さんがCIA要員だかの(笑)元ガボン大使だかを使って・・云々
・・・CIAは濃縮ウランの話は完全に怪しい・・っと演説から削除しようとしたが「英国政府は聞いた」みたいな文言が
入っていたので、止む無くパスした・・・
化学兵器に関してはシルバさんも書いてますし、上でも書いたように使った実績があるんだから
製造は出来た・・・「が」問題は、何処まで兵器として実用になるモンだったか?
保守技術やそれこそ廃棄する為の技術・・・運搬の技術ってのも要りますが、そうしたモノが本当に使い物になったのか?
ってことだと思いますね。
ですんでね、イラクの中で、核爆弾を製造可能な施設やら痕跡をもしも発見した!って言うなら
それこそブッシュ政権は「どうだ!」って声明出しますよ、絶対。
しかし、化学兵器に関しては・・・これ以上はどうともこうとも言いたくない(触りたくない)ってのがホンネじゃないですか?

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In the Strawberry Field18 years ago

もっとあった大量破壊兵器!!!

イラクで大量破壊兵器のひとつである化学兵器が2003年以降大量にイラクでみつかっていたという話はもうしたが、ここ数カ月の間にさらにもっと多くの化学兵器が発見されていたこ…

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