September 16, 2012

最後の一滴の勇気、お説教じみた完全な右翼プロパガンダだけど、こんな映画もあっていいさ

本日の映画は"Last Ounce of Courage ラストオンスオブカレッジ"。あえて訳すならば「最後の一滴の勇気」という意味。ラジオで聞いた広告では、戦争で英雄として勲章までもらったことがある男が、息子が戦死し、その嘆きのあまり愛国心を見失って失望しているところへ、ずっと離れ離れに暮らしていた亡き息子の未亡人と10代の若者に育った孫息子が帰ってくる。孫との交流を通じて男は新たな戦いに挑む。戦いはもっと身の回りに近いところにあった。というものだった。

しかしこれが、最初は頑固だったおじいちゃんの気持ちが孫の真心が通じて温まるというような映画だと思ったら大間違い。実際はアメリカ人が忘れかけているキリスト教を基本とするアメリカの価値観を見直し、自由の国アメリカへの愛国心を奮い立たせようという宗教保守のプロパガンダ映画なのである!

以前に自分の言いたいことを頭ごなしに説教するような映画は、映画の作り方のなかでも最低のやり方だと聞いたことがあるが、まさにこれがそれ。プロパガンダは熟練している左翼リベラルの映画つくりみたいに、ロマンスとかアクションとかおもしろいストーリーの裏に隠して何気なく知らないうちにプロパガンダを説くなんて器用な真似は出来ない。

この「ラスト、、」ときたら、あまりにも不器用で、最初から最後まで宗教保守の価値観をかなづちを振り下ろすごとく、これでもかあ、あれでもかあ、と説教するのだ。最後のほうでは、なんと主人公のボブが孫のクリスチャンと一緒に重たい十字架をミッションの建物の上に引き上げ、逮捕寸前にビルの屋上で演説をぶったりする。ちょっと、あんた、そこまでやる?

であるから、映画の出来としてはかなりの素人芸だし、特撮は低レベルだし、ストリー展開もぎこちない。 役者の演技ときたら、見てらんないのから名演技まであって、かなりまちまちだ。だから、芸術としての映画を考えた場合、かなりひどい点数を取りそうな映画である。

し、か、し、プロパガンダもここまであからさまにやられると、かえって気持ちよかったりする。特に右翼や宗教保守のプロパガンダ映画は珍しいので、それなりの価値はあるだろう。

それに、悪者として出てくる左翼リベラルたちの描写が、あまりにも大げさで突拍子もなくてステレオタイプで、これじゃあまるでパロディじゃないの、と思わせるほどおかしいのだが、実はそれが的を射ていて笑えないのだ。

ボブの孫息子クリスチャン(名前からしてキリスト教徒!)が、転入したばかりの中学に父の遺品である聖書を持ち込み罰せられるシーンからして実際にありそうなことだし、市役所の敷地内に大きなクリスマスツリーを建てることが禁止されたり、市スポンサーのミッションから十字架が取り除かれたり、市主催のクリスマス祭りが冬祭りと改名されたりなど、すべて実際のアメリカ全国各地で起きている現状なのである。

映画の中で私がもっとも気に入ったのは、主人公ボブのクリスマスを取り戻そうキャンペーンよりも、中学で冬の学芸会にキリスト誕生のお芝居を復活させようと学校のドラマコーチの目を盗んで子供たちが陰謀を企む筋。題して「クリスマス大作戦」。この作戦の名前を考えるシーンでの子供たちの素朴な演技がほほえましい。

ドラマコーチの書いた冬のお芝居は宗教に関する言葉がすべて削除され、天使の変わりに宇宙人が出てきたりする。「清しこの夜」から宗教取り除いて何が残るんだ、と聞きたくなるが、この替え歌が笑える。また、このお芝居で歌ったり踊ったりする子供たちの演技は子供らしくてかわいい。実際に私はキリスト生誕劇中劇を全編みたいなとおもってしまったくらい。

クリスマスの映画を何でこの暑い9月に公開するのかといえば、もちろん11月の選挙を前に公開しておきたかったということだろう。そりゃそうだ、プロパガンダは世論に影響を及ぼすのが目的だからね。選挙前にやんなきゃ意味が無い。

ただ、選挙云々に限らず、亡き父をしのんで、孫息子のクリスチャンが祖父のボブに向かって尋ねるシーン、脚本を読んだわけではないので覚えている限り再現すると、、

「おじいちゃん、お父さんは何のために死んだの?」

「そりゃお前、お国のためだよ。」

「そうじゃなくて、何を守るために死んだの?」

と言う会話があった。

これはアメリカ人一人一人が尋ねる価値のある重大な質問だと思う。

September 16, 2012, 現時間 9:11 PM

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