September 9, 2012

党大会、共和党と民主党の違い

やっと共和党と民主党の党大会が終わった。よく、アメリカの政治を知らずに、アメリカの二党制は共和党にしろ民主党にしろ大した差はないと言う人があるが、実はとんでもない。共和党と民主党ではその思想には雲泥の差がある。今回の党大会ではその差が非常に顕著に現れていた。

先ず最初に開かれた共和党の全体的なムードは「楽観性」と「やる気」に満ちたものだった。私が共和党支持だから言うのではない。前回のジョン・マケインの時は、中庸派のマケイン候補に共和党だから仕方ないと鼻をつまんで支持した人が多く(私も含めて)、大会でもその嫌々ながらのムードが漂っていた。極右のサラ・ペイリンを後で加わて、保守派の支持を得ようという作戦も、ペイリンに対する左翼メディアの猛攻撃がペイリンの政治家としての未経験さを暴露してしまい裏目にでた。

だが、ロムニーは予選の最初から優勢で他の候補たちが熾烈な戦いをしてどんどん自滅していくかたわら、ロムニーだけは全くそんな戦いに巻き込まれずに独走していた。だから共和党の核の人々はすでにロムニーが候補になるとずいぶん前から考えていたし、それが一番いいことだと感じていた。

党大会の演説が、保守派の信念を守りながらも、現政権をこてんぱんに責めるような挑戦者にありがちな怒りに満ちたものではなく、前回オバマに投票した人々に理解を示し、無所属や民主支持の保守派への訴えに満ちていたことでも、共和党核のやる気満々な余裕が伺われる。

四年前に「希望」と「変革」という言葉に魅了されてオバマに投票した皆さんの気持ちはよ〜く解る。だが、そうやって皆さんの期待を一身に受けながら、オバマ大統領は皆さんの期待に応えることが出来なかった。皆さんの生活は四年前と比べて良くなっていますか?

というのがロムニーのメッセージ。

さて対照的に民主党大会のムードは現職大統領のものとは思えないほど怒りに満ちたもので、大統領のこれまでの功績を讃えるような演説はほとんどなく、すべてライバル共和党議会やその大統領候補ロムニーへの個人攻撃に終始した。

特に民主党がでっちあげた「共和党による対女性戦争」のテーマが三日目の党大会を独占し、自分の避妊や堕胎費用を宗教の教えに反しようがどうしようが無理矢理国民の税金で強制的に払わせるべきだと主張する市民運動家のサンドラ・フルークなどが壇上に上がり、共和党に政権を任せたら人口妊娠中絶は違法になると訴えた。

民主党大会の会場外では、女性性器の形をしたぬいぐるみを着たコードピンクという極左翼フェミニストたちがデモ行進をした。はっきり言ってこのような行為は、女性を性の対象としてのみ扱う姿勢に抗議した、一昔前のフェミニスト達への侮辱である。女性問題はセックスのみにあるという彼女たちの態度は多くの女性を怒らせる。

また、民主党の綱領(こうりょう:政党や労働組合などの団体の政策・方針などの基本を示したもの)から「神」やイスラエルの首都としての「エルサレム」を削除した件などは、一旦削除したのであれば放っておけばいいものを、ロムニーに指摘されてから再注入しようとして、民主党核の反宗教及び反イスラエルの姿勢を明らかにしてしまっただけでなく、民主党がいかに多数決という民主主義の基本を無下にするかを表明するに至った。(どうして大多数が賛成するように会場の参加者を選ばなかったのかと、投票の議長を勤めたロサンゼルス市長の不能ぶりが指摘された。)

民主党の段取りの悪さの現れはこれだけに過ぎない。オバマは当初、大統領受諾演説を7万人収容可能な野外球場で行う予定だったのを急遽、悪天候を理由に2万人収容が限度な屋内会場に変更した。しかし当日のシャーロッテの天気予報は「晴れ、ところどころに夕立あり」という南部では極普通の予報であり、突然会場を変更しなければならないような悪天候ではなかった。現に現地取材を行っていたトークラジオの特派員などは「いい天気ですよ。党大会演説には最適ですね。」などとおちょくっていたくらいだ。

土壇場での会場変更の本当の理由は、7万人からの観客を集めることが不可能だという党大会主催者側の判断によるものだろう。だが演説前日までどのくらいの人が会場に現れるのか把握できていなかったというのもおかしな話。党大会は何ヶ月も前から予定されていたもので、どの会場にどのくらいの人数が入るかという予測はとうの昔にされていたはず。例えばコンサートの切符売り上げが芳しくない場合、コンサート開催のずっと以前に会場変更がされるのは常識。そんな用意も出来ていなかったとしたら、民主党選挙事務所の運営能力に大きな疑問が投げかけられる。

全体的に見て、共和党大会は希望に満ちた楽観的なムードを押し通し、お膳立て通りに無難に終わったが、民主党は現政権の貢献を自慢することが不可能だったため、ライバル党を責めながら、大会そのものもハチャメチャに終わったという印象を受けた。

民主党大会直後に発表された失業率や雇用率の報告もかなり悪い。それでいて大会後の世論調査でオバマが優勢というリポートもあり、今後この選挙の行方はまだまだ解らないものとなった。

September 9, 2012, 現時間 8:41 AM

エントリーが気に入ったらクリックしてください。
にほんブログ村 政治ブログへ

トラックバック

この記事のトラックバックURL: http://biglizards.net/mt4.21/agakhantrack.cgi/5146

コメント

前のコメント

登録ありがとうございます。 さん コメントを残して下さい。 (サインアウト)

このサイトへ初めて投稿される場合には、サイト主による承認が済むまで投稿が画面に現れないことがあります。しばらくお待ちください。


登録者を記憶する(URL必要)


© 2006-2015 by 苺畑カカシ - All Rights Reserved