March 21, 2011

福島第一原発で何が起きたのか?

今回の地震による福島第一原発の溶解はメディアや原発反対派が騒ぎ立てるほどひどい状態ではないようだ。いやそれどころか、今回のことで、きちんと設計され建築された原子炉は史上まれにみる強大な地震にも津波にも立派に耐えうるということが明らかになった。

パワーラインが科学記者のケニス・ハーパラによる福島第一原子力発電所に関するリポートを紹介している。福島第一原発において、いったい何が起きたのか、詳しい書かれているので、その一部から読んでみよう。ところどころウィキの説明からも引用する。(引用文は『』で示す。)

福島第一原発の六つの原子炉はすべてGE(ジェネラルエレクトリック)の二世代目デザイン、沸騰水型軽水炉である。一番古い軽水炉は1971年操業開始なので、すでに40年になる。チェルノーブルの原子炉と違って、福島原発は事故が起きた時に放射能を内部で隔離するデザインになっており、分厚い鉄の壁が圧力容器を覆っていることと、さらにその容器がもう一つの壁に囲われ、その上に外部からの天候から容器を守る防御壁で覆われるという三重の守りになっている。

この型の原子炉は『核分裂反応によって生じた熱エネルギーで軽水を沸騰させ、高温・高圧の蒸気として取り出す原子炉であり、発電炉として広く用いられている。炉心で取り出された汽水混合流の蒸気は汽水分離器、蒸気乾燥機を経てタービン発電機に送られ電力を生ずる。』

『原子炉の出力制御のためには原子炉内の中性子数を調整して反応度を制御することが必要である。停止状態の原子炉には中性子を吸収する制御材でできている制御棒が差しこまれており、核分裂反応に伴なう中性子を吸収して臨界状態にならない様にしている。原子炉の起動時、制御棒を徐々に引きぬく事で炉内の中性子数を増加させ、臨界から定格出力になるまで反応を上げてゆく。緊急時には全て挿入され、原子炉を停止(原子炉スクラム)させる。』

『沸騰水型原子炉 (BWR) は、冷却水の水量の増減による炉内蒸気ボイド(泡)の量によって短期的な出力調整が行えるため、制御棒は主に長期的な反応度の調整に用いられる。BWRは圧力容器上部に主蒸気系配管が通っているため、圧力容器の下方から水圧動作の制御棒駆動装置 (CRD) で炉心内に挿入される。緊急時には蓄圧タンクからのガス圧で炉心に全挿入される。』

ただ、原子炉が遮断された後でも燃料棒内での核反応は続いており熱を発し続ける。そのため燃料器具は水や冷却液に浸されていなければならない。この冷却機能が失われると燃料棒の温度は上がり続け溶解という結果を生む。

加えて、燃料棒が空気や蒸気にさらされた場合、棒に塗られたジルコニウムと酸素が強く反応して酸素をはがし水素のみがのこされる。水素は大気圏には自然に存在せず大気に触れると極端な化学反応を起こし急速に燃えるため、爆破したかのような印象を与える。

みっつの原子炉は燃料補給のため閉鎖されていた。原子炉には燃料棒が入れられていたか燃料棒の冷却液の中で貯蔵されていた。後になって解ったことだが、この冷却液貯蔵タンクが圧力容器の上に位地していたことが問題だった。

この間の地震は記録が取られるようになった1900年から、1960年のチリの地震に次いで史上二番目に激しい地震だった。(チリの地震でも日本は津波に襲われている。)

しかし、このような大地震であったにも関わらず、地震は原子炉を接続する電気グリッドを破壊したが、原子炉そのものに損害は与えず、加熱を防ぐ制御棒は適切に挿入され原子炉の核反応を停止させた。安全システムは完璧に機能したのである。

だが、その一時間後、津波がおしよせ冷却水を供給する電力システムが破壊された。冷却水は急速に加熱され蒸気となり燃料棒と科学反応を起こし水素が発生し圧力容器溶解となったわけだ。

原子炉の職員が容器の圧力を逃すためバルブを開けたとき、中の水素が外に逃げ猛烈な燃焼をおこした。これが容器の外壁を破損させた。水素の燃焼が容器の上部にあった冷却水貯蔵タンクにどのような影響を及ぼしたのかは定かではない。圧力が抜けたとき、多少の放射能が大気に放たれた。

津波によって原子炉の現場と本社との連絡がとだえたため、オーバーヒートしている原子炉に海水を挿入する決断を下すのが遅れた。この遅れがもとで原子炉は将来使用不可となった。

今回の事故で一番の問題は冷却水貯蔵タンクの水が加熱しすぎて蒸発してしまったことにある。それによって燃料棒が大気と蒸気に節食し水素と放射性ガスを発生させた。しかし、いまのところ冷却タンクの温度は安定しているという。

まだ詳細は解らないが、今解っていることだけで今回の事故を分析してみると、一部の原発反対派や政治家がいうほどひどい状態ではないということだ。

  1. 原子炉は設計で予期していたよりずっと強大な地震に耐えた。
  2. 当初の地震で第一電気システムは故障したが、予備システムは機能した。
  3. 原子炉は予期された波より高い津波に耐えた。
  4. 津波は予備電気システムのディーゼル発電機を破壊し、電池システムは機能しなかったか不十分だった。
  5. 原子炉現場と本社の経営側との連絡が途絶え適切な処置の決断が遅れ、原子炉の破壊につながった。
  6. 当初「爆発」と思われたのは水素の燃焼だった。
  7. 原子炉内で一部溶解が起きた。
  8. 冷却水貯蔵タンクの温度が上がり過ぎ燃料棒を露出させ水素と放射がスの発生にいたった。
  9. いまのところ、直下以外の場所における放射能被爆は極わずかである。


今回の大災害で我々が学んだ事は、きちんと設計され建設された原子炉は強大な地震にも津波にも耐えうるということである。しかし当初の地震には耐えても、冷却水貯蔵タンクが圧力容器付近にあると、予備システムが地震後の種々の影響を受け破損され機能不可になることも解った。冷却水貯蔵タンクは原子炉から離れた場所に設置されるべきである。また現場と本社との通信システムも今回のような大災害という非常時でも、きちんとつながるよう予備システムを確保をしておくことが必要だ。

ところで、冒頭で述べた通り、福島原発のデザインは二世代目だが、いまは第四世代の時代である。海水を挿入させたことで福島原発は完全に破壊されたわけだが、はっきり言って時代送れの原発をいつまでも使っているより、この際だから完全に新型の原発として新しく建て直すことが必要だろう。ただ、日本において原発に対する政治的な姿勢がどのようなものなのかアメリカ住まいの私には解らない。

少なくともカリフォルニアでは環境保全団体や左翼リベラルの連中の反対にあって、原発建設は完全に不可能な状態にある。中東の紛争で原油の値段は上がる一方であり、資源のない日本では原発による発電は必要不可欠なものだ。どうにかこの災害を糧にして新しい型の原子炉建設に努めて欲しい。

March 21, 2011, 現時間 10:51 AM

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コメント

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下記投稿者名: oldman

原子力発電は危険だからやめるべきとの風潮は短絡的に過ぎます。今回の事故を教訓に安全対策を強化すればいいのであって、原子力発電を全否定すべきではありません。

ただ、今回の事故では、最悪の場合、日本国の消滅もあり得ると考えざるを得ないほどの衝撃を受けました。東京を含む東日本が壊滅すれば国家そのものの存続がむつかしくなるからです。

したがって、長期的には脱原発および脱石油を志向すべきであり、筑波大が発見した高効率の石油藻類の実用化に期待しています。それと、日本近海のメタンハイドレートの開発にも力をいれるべきだと考えます。

上記投稿者名: oldman Author Profile Page 日付 March 21, 2011 11:09 PM

下記投稿者名: Sachi

oldmanさん、

私は別に脱石油を目指す必要はないと思うのですが、アラブの石油にばかり頼っているのは良くありません。環境の面でも安全な原子力発電が可能ならば、どんどん建築をすすめてほしいとおもってます。

アメリカの場合はアラスカなど原油産出は可能なので、この際国内での産出をすすめてほしい。

カカシ

上記投稿者名: Sachi Author Profile Page 日付 March 25, 2011 11:14 AM

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