January 10, 2010
自己責任説より強姦への無理解を攻撃すべき
一連の自衛は自己責任かという話題について、カカシが特に書いてこなかった二次被害について、今日はきちんと私の意見を表明しておきたいと思う。
私は最終的には個々が自分の身を守るしかないと思っているが、それは決して、回りが協力する必要はない、とか、警察や行政には何の責任もないというかいう意味ではない。ましてや被害者が自衛対策を取っていなかったという理由で、強姦のような極悪犯罪を犯す人間の罪が軽くなるべきだなどとは思いも寄らない。被害者の防犯対策と加害者の罪はまるで別である。
以前にも書いたが、私も二次被害は経験している。アメリカは強姦被害者に対する偏見が日本ほどはひどくないとはいうものの、それでも私が被害を受けた1980年代では、まだまだ警察官や検察官らの間ですらも被害者に対する心遣いというものがほとんど見られなかった。ましてや世間一般の男性の間では強姦に関する理解度はゼロに近かったと言っていい。
先ず第一に、強姦事件の事情聴取をする警察官が男性であること。被害者が男性であれば別だが、女性の被害者が警察官に屈辱的な攻撃の詳細を事細かく話さなければならないことがどれほどつらいか、ましてや見ず知らずの男性にその話をするのは、それだけ考えても告訴などしたくなくなる。
それに加えて警察官に「あんたがだらしないからだ」とか「あんたがふしだらな女だからだ」といった批判的な態度を取られたら、気の弱いひとなら、ここで終わりだ。
私の場合は強姦が起きたことすら信じてもらえず、同居していた恋人に浮気がバレたので強姦話をでっちあげたのだろうと、事情聴取をした検察官から面と向かって言われて裁判にもならなかった。
性的には結構オープンなアメリカですらこれだから、保守的な日本の場合はもっとひどいのだろう。
よしんば裁判に持って行く事が出来たとしても、弁護側が被害者の生活習慣や自衛対策を弁護に使うことを裁判長が許可したりすれば、ここでも被害者は彼女の人生そのものを吟味される。アメリカでも昔の強姦裁判では、女性がそれまでに何人の男性と性交渉があったかなどという意味のない話題が持ち出され、被害者が屈辱的な思いをすることがよくあった。これではいったいどちらが裁かれているのかわからない。
私は断固そのようなシステムには反対だ。被害者の態度や生活習慣と加害者の罪とどういう関係があるというのだ?そんなことが本当に弁護の議論として許可されているのだとしたら、日本の裁判制度には非常に深刻な問題があるといえる。
しかし、こうした二次被害があるからといって、被害者の自己責任を説いてはならないという理屈はおかしい。自分を危険な場所や状況に置かない責任は誰にでもある。親が子供に知らない人に着いて行ってはいけません、と普段から教育しておく責任があるのも、子供を犯罪者の手から守る最小限の自衛だろう。
ここで問題にしなければならないのは、個人には自衛の自己責任があるからといって、強姦の罪が加害者ではなく被害者にあるという考え方である。以前に私が例に出したオーストラリアのイスラム教イマームなどは、集団強姦にあったオーストラリア人の女性に向かって、「(ブルカ)を被っていない女は布の被っていない肉と同じ。」と宣言し、だから男たちが強姦したくなって当然なのであり、強姦加害者に罪はないという発言をして多大なる批難を浴びた。
今回の曾野綾子のエッセーに対する反応は、まるで曾野綾子がこのイマームのようなことを言ったかのような反応だ。ま、曾野もイスラム教の習慣を良い例として出しているので、批難される要素が全くなかったとは言えないが。
二次被害を避けるためには、自己責任説を攻撃するのではなく、加害者への容認や寛容性を攻撃すべきだ。自己責任説の攻撃に精力を注ぐよりも、強姦とはいったいどのように極悪な犯罪であるのか、本質への理解度を高めることが先決だと思う。
確かに「自衛をしていない女は強姦されて当然」などと平気で言うけしからん奴も居るだろう。だからといってナイーブかもしれないが「こうしたら犯罪が防げるのではないか」と善意で言っている人々を一緒くたにして、だから自衛の自己責任を説くべきではない、としてしまうのは、今後被害にあうかもしれない人たちに対して無責任過ぎる。
自己責任説と二次被害とは別の話だ。二次被害は自己責任説から来るのではなく、「だから加害者は悪くない」という極悪な犯罪への無理解から起きるのである。何度も言うが強姦はセックスではない。これは暴力的な極悪犯罪である。
防犯設備のついていない家に泥棒がはいったからといって泥棒の罪は軽くならない。それなら何故強姦被害者だけがその自衛責任を追ってすべての罪をかぶらなければならないのだ?
そこに焦点をあてて問題を追求すべきなのではないか?
自衛論否定者はそこでピントがずれてしまっていると思う。
January 10, 2010, 現時間 9:31 PM
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コメント
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下記投稿者名: Sachi
柳生大佐
2010/01/11 22:04
苺畑カカシさま
あなたのところにコメントできないのでここに書きます。(文句あるか?lefty!)
あなたの最新記事
「自己責任説より強姦への無理解を攻撃すべき」
が どうも理解しかねる?のです。
私が以前車を運転していて女性ドライバーからぶつけられたとき検証に来た警官は
「相手は女性だから・・・ね? ね?」
・・・と 女性が加害者だと日本の警察は非常に甘い態度なのですよ。
また昔・ファッションモデルの海外旅行記事が週刊誌に載っていましたが・・・
「フランスのパリの警官は
美人が交通違反をしても”お咎めなし”」
だそうです。
・・・実際はかなり・あなたの記事とは違うんですが・・・
上記投稿者名: Sachi 日付 January 11, 2010 5:43 PM
下記投稿者名: Sachi
柳生大佐さんへ、
こちらへはコメントが書けなくても読めますよね?このコメントへのご返答があったら、メールをください。アドレスはここです。
日本の警察の女性への扱いについては私は全く知らないので何ともお話しかねます。
アメリカの警察の扱いも、大分前のことなので、今ではもっと良くなっていると思います。(少なくともそう願いたいものです。)
カカシ
上記投稿者名: Sachi 日付 January 11, 2010 5:46 PM
下記投稿者名: Sachi
AmanoJack 性犯罪, あとで読む 犯罪者が勝手に「危険でない場所や状況」を「危険な場所や状況」にしちゃうんだよ。 2010/01/12
fessin メタブあり 「自己責任説」が「強姦への無理解」。身体を守る「義務」と犯罪の「責任」をすり替えて、ありもしない「自己責任」を演出している。「責任」はあるけど「罪」はない、という言説は、そもそも日本語的に矛盾している 2010/01/12
aruzentina 正論 最後の一文はまったく同意見。 2010/01/11
predator995 社会 いろいろ読んだけど、これが一番納得。はてサの皆さんには、ブコメや影で罵倒するだけでなく、トラバ送るなり直接コメントで建設的に反論してほしいんだけどな。ブログ主さんはわざわざブコメをコピペして反論してる 2010/01/11
yotayotaahiru ジェンダー, セクシュアリティ, 性犯罪, 性暴力, 性差別 2010/01/11
miki_tea_ks アメリカ, 女性, 日本, 強姦, 自衛 2010/01/11
Pz-4 狭窄 この人にとっての性犯罪とは強姦、それも特定の種類のものしか指さないようだ。より一般的なものを考えた場合、自分は「自分を危険な場所や状況に置かない責任は誰にでもある。」とはなかなか言えない。 2010/01/11
上記投稿者名: Sachi 日付 January 11, 2010 8:20 PM
下記投稿者名: Sachi
Pz-4へ、
狭窄 この人にとっての性犯罪とは強姦、それも特定の種類のものしか指さないようだ。より一般的なものを考えた場合、自分は「自分を危険な場所や状況に置かない責任は誰にでもある。」とはなかなか言えない。
あなたが知らないだけであって、私が他の犯罪について全く興味がないと結論づけるのは早合点もいいところだ。
私は日本で生まれ育ち、中高生の時代から電車内での痴漢に悩まされた経験がある。
日本でもアメリカでも職場でセクハラの被害にあったこともある。
家に泥棒に入られた事もある。
すりや置き引きの被害にあったこともある。
ピストルで犯罪者を追い払ったこともある。
言ってみれば、隙だらけでうぶでどうしようもない能天気という批判なら受け入れるが、特定の種類の犯罪にしか興味がないなどと、全くしらない赤の他人に対して決めつけるものではない。
私はブログ上で自分の人生の全てをさらけだすつもりはない。これまでに書いたことだけでもかなり勇気の要ることだったというのは、自衛論は被害者の気持ちを傷つける云々を語って来たあなたにはよくわかるはずだ。
カカシ
上記投稿者名: Sachi 日付 January 11, 2010 10:47 PM
下記投稿者名: Sachi
predator995 さん、
ありがとう。
被害者の気持ちがどうのこうのってきれいごというくせに、被害者がどれほど苦しんでいるか、そういう被害者をひとりでも少なくしようとする人たちに理不尽な攻撃をする人たちが多い中、
あなたは救いです。
ありがとう。
カカシ。
上記投稿者名: Sachi 日付 January 11, 2010 10:50 PM
下記投稿者名: Sachi
manysided 「加害者への容認や寛容性」を許容しないためには被害者を責める意識をなくす必要があり「自衛」は悪循環です。「自衛」で個人のリスクは減っても他の人が被害に遭い犯罪は減らず手口はどんどん巧妙になるだけです 2010/01/12
『被害者を責める意識をなくす』ことと『自衛を否定する事』は同じじゃないはず。先ずは個人のリスクを減らす事、他の人に被害が及ばないように、他の人にも自衛に努めてもらうことを促進するのが大事。
犯罪の手口がどんどん巧妙になるというなら、それにあわせた自衛を考えるのが建設的な解決方法。
何もしないで最初から諦めムードじゃ何の解決にもなりません。
カカシ
上記投稿者名: Sachi 日付 January 12, 2010 8:55 PM
下記投稿者名: Sachi
Pz-4 血涙, コメント欄, 馬鹿たれが! "隙だらけでうぶでどうしようもない能天気という批判なら受け入れるが" 受け入れるなよそんなもん!なんちゅうレイピスト共に都合のいい性格してるねん。理不尽に対し理由がある事にしたいだけやろ。お前は悪ないわ! 2010/01/12
これには素直に笑っちゃいました。反省してます。カカシ
上記投稿者名: Sachi 日付 January 12, 2010 9:31 PM
下記投稿者名: Sachi
leftyさんのところに載ったコメントだが、私宛なので、こちらに転載させてもらう。未だには私が被害者を責めていると思い込んでいる人がいるとは、どうも悲しいばかりである。
井上希美
2010/01/25 00:30
権限どうこうではなくまた自衛論を唱えること自体が間違っているのでもなく、単にその自衛論の内容や言ってる立場が責められてるんだと思いますが・・
井上希美
2010/01/25 02:15
苺さんはなんとしても被害者側に非を見つけてやろうという姿勢が批判されてるのだと思います。
ミニスカートだから狙われるというのが実態とかけ離れてるというのは置いておいたとしても、限りなく女性側の非がゼロな場合でも「ここがこうだったから完璧な自衛じゃない」と言おうという姿勢が。
「夜道に一人で歩かなきゃいけない環境なら引越ししろ」なんていうのは最終的には「美人だからいけない、ブスに整形しろ」みたいな話になりかねません。
上記投稿者名: Sachi 日付 January 24, 2010 10:31 AM
下記投稿者名: Sachi
井上希美さんへ、
私の書いている内容をきちんと指摘して批判したコメントはひとつも読んでません。大抵の批判は私が本筋を勘違いしているというもので、それについてはすでに反論しています。
>苺さんはなんとしても被害者側に非を見つけてやろうという姿勢が批判されてるのだと思います
非を見つけてやろうとしているのではなく、自分の守りには隙があるということを自覚してもらいたいのです。出来る自衛はちゃんとやってると主張する人たちがあまりにも多いので、本当にそうだろうかと疑問を投げかけているのです。私は守りの甘さをとがめているのではなく、それを指摘することによって守りを固めようと呼びかけているのです。
コメンターの人たちは、常に私が被害者を責めているという先入観で読んでいるので、そういうふうに取れるのだと思います。
>「夜道に一人で歩かなきゃいけない環境なら引越ししろ」なんていうのは最終的には「美人だからいけない、ブスに整形しろ」みたいな話になりかねません。
環境の悪い場所には住まないというのも一つの防衛方法として考慮すべきだと言ったまでで、引っ越せとは言ってません。他にも夜道の一人歩きを避ける方法を提案したはずです。
カカシ
上記投稿者名: Sachi 日付 January 24, 2010 10:43 AM
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